エルフの里の異変です24
手下にしたベア系モンスターたちを全滅させたことで撤退した死の救済の勇者の追撃を諦めて広場まで戻ってきた。時間が経って風に流されたようで、心なしか辺りに広がる血の匂いも薄まった気がする。まあそう思いたいだけなのかもしれないけど。
瓦礫の山から通信の魔道具を取り出した。敵が利用していたこともあって魔道具もそれが置かれている机も傷はついていたが壊れてはいなかった。戦闘前までは。机はもはやただの板切れになり果てていたが、それが盾のようになってくれたおかげで通信の魔道具は無事のようだ。敵の密度を考えるとこの辺りだけしっかりと避けながら攻撃とかはできなかったし、流れ弾でピンポイントで撃ち抜いてなくてよかった。
『通信が回復した! こちら本部。応答せよ!』
通信の魔道具に魔力を注いだところで即座に焦ったような声で反応が返ってきた。思ったよりは魔力を消費しないが、どちらかが話している限りずっと魔力を消費し続けるようだ。
「こちら『マツノキ』のメイだ。状況は魔法使いから聞いているか?」
『問題ない。まさか拠点を壊滅させられているとは……。通信を入れてきたということは一旦でも状況は落ち着いたとみていいのか? ならば先に合言葉を』
「タイタンズ。彼女のパーティ名だ」
『……間違いない。確認した。それで、大丈夫なのか?』
「このあたりに陣取っていた敵モンスターは全滅させた。俺の『探知』にはもう敵集団は見当たらない。離れたところにいた援軍と思わしき集団は消したがその指揮官は取り逃した。死霊術師を名乗るゴースト。正体まではつかめなかった」
峰岸綾乃のことについては嘘をついた。正直本当のことを話しても信じてもらえる気がしないと言うのが一番だが、仮に信じてもらえた場合それはそれで問題が出てくるだろう。レベル90を超えるような死霊術師が敵にいること。そしてなによりもそれが勇者であること。
彼女が言うには自身は4代目の勇者とのことだが、今がそもそも何代なのかは知らない。しかし最低でも1000年以上昔にこの世界に呼ばれた人ではあるし、記録が残っていたとしても歴史書レベル、あるいは名もなき物語と同じように御伽話として残っているかだろう。
もしも話が何も残っていなければ魔族に組した死霊術師、もしくは死後モンスターとして操られている死霊術師の霊くらいの扱いで済む。多少では済まないほど凄腕だが。ただ、残っていた場合は勇者としてその当時モンスター、そしてもしかしたら当時の魔王と戦ったかもしれない人物が当代の魔王、あのマモルと名乗った青年の下で人類の敵として立ちはだかる。それが伝わって混乱をきたすことは避けなければならない。ただでさえ勇者とそのパーティメンバーだった柩、オルス、エルギウス・ファントムの3人が魔王軍の七魔将として所属していることはわかっているし、セン・グーテンもおそらく幹部クラスだろう。後は俺たちが倒したグラトニーも『四つ魔の覇者』として名をはせた英雄だった。その正体はわかっていないがあの渦を使う転移魔法使いもおそらく似たような境遇だろう。そして姿さえわからない傲慢も。
『その、言いづらいかもしれないが、生き残りは……』
「すまない、ゼロだ。死体のほとんどは餌にされたと思う。瓦礫の山の中に骨もかなりあった」
『送り込んだ軍勢が全滅、か。了解した。一応安全は確保できたとのことだし兵を送ろうと思う。場所はあるか?』
「広場は一応開いているが転移の魔法陣の場所は今瓦礫に埋もれてる。敵が武器として瓦礫を利用してきた際にかなりばらまかれたんだ」
『一人しかいないとどけるには時間がかかるか……よし、別口で転移させるように調整する。人を送るまでその場に待機してもらえるか? ただし状況が変わったらすぐに連絡を』
「了解した。人が来たらすぐに最後の戦場に直接飛ぶつもりだ。ここからどの方角に向かえばいいか指示できるように情報を伝えておいてもらえると助かる」
『今は各地の戦力を動かすのに魔法使いは総動員中だから一度戻ってくるならともかく直接いけるように人員を確保するのは難しいぞ』
「空を飛んでいくから方角さえわかれば問題ない」
『飛んで? ……ま、まあいいか。了解した。先行して向かわせるやつらに伝えておこ。うわ!』
話していると急に向こうが騒がしくなった。なにやら鬼だとかモンスターだと聞こえてくる。もしかして本部が直接襲われているのか?
「本部、大丈夫か! おい!」
『通信設備を守れ! 敵は1体だ。とにかく中に入れないように立ちまわれ!』
やはりモンスターが向こうに現れたらしい。エルメラさんのところはゼルセに任せてあるから大丈夫だとしても本部に直接となると裏切り者がいる可能性が高いか。
『わー、待って待って! ひぃいいいい! 撃たないでー! いや何も言わずに直接来たのは謝るからさー! ガァ。あ、結界ありがと。ってひぃいい! 弓向けるの辞めてよー。ちゃんと里の支部で話をつけてここにいるんだって。オーガ君が怖いのはわかるけども。ガ? あーごめんごめんごめん! 怖くない、ぜーんぜん怖くないからねー!』
事前に注がれた魔力がまだ残っているのか向こうのやりとりが聞こえてくる。とても聞きなれた声とつい最近知り合った声だ。それはそこにいるはずがない声でもあった。
「エルメラさん? なぜそこに?」
『お、おーいメイさん! メーイさーん! 今つながってる? ちょうどいいときに来たねやっほい!』
「いや、だからなぜそこに?」
『もともとはこの戦争が終わってからやるつもりだったんだけど武器に呼ばれてね。予定よりも早まったけど君の新しい武器の作成に成功したんだよ! あまり信じてもらえないけど私みたいな優れた作り手を武器が呼ぶってことは何かしらの意味があるってことだからね。これから訪れるこ』
エルメラさんが熱く語り始めたところで魔力が切れたのか、向こうからの通信が途絶えた。こちらはずっと魔力を送り続けているが混乱もあったであろうし向こうではそうもいかなかったようだ。
それから30秒程待っていると再び向こうから通信が入った。
『あー、すまない。敵襲ではなかったようだ。知り合いでいいんだよな?』
「ええ。手持ちの武器を全部失ってしまって。新しい武器の製作を依頼したんだ。念のために従魔に彼女と工房を守るようにと頼んでいたんで。まあそこにいるんでしょうけど……。彼女から武器を受け取りに一度戻りたい。魔法使いを送ってもらえるか?」
『武器全部……って今までどうやって戦いを?』
「魔法で無理矢理。いまいちよくわかりませんがエルメラさん曰く武器が今必要になると、そう思われているみたいですし、最後の戦場に行く前にもらっておきたい」
『さすがにだめとは言えないな。了解した。すぐに手配する』
向こうの了承も得て、俺は俺の力不足で折られてしまったステュラに変わる新たな武器を求めて一度本部へ戻ることになった。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50) 剣闘士(60) 重戦士(70)
龍人 (20) 死龍人(20) ローグ(70)
魔導士 (90)
有効職業
聖魔??の勇者Lv23/?? 精霊使いLv32/40
舞闘家 Lv69/70 大鬼人 Lv24/40
上級獣人Lv17/30 魔人 Lv14/20
探究者 Lv34/99 狙撃王 Lv7/90
上級薬師Lv4/80 上級龍人Lv1/30
死霊術師Lv1/100
非有効職業
アーマーナイトLv1/99 剣闘騎士Lv1/99
呪術師 Lv1/80 死龍王Lv1/30
盗賊王Lv1/100 大魔導士Lv1/100』
今回はちゃんと後書きに書きました(自ら触れていくスタイル)
まさか前書きと後書き間違えるとは…感想でご指摘ありがとうございました。
ではまた次回