エルフの里の異変です21
「ヴァウ」
「ひゃあ!」
次の戦場に転移してきた途端、とびかかってきたウルフが展開していた盾に噛みついた。突然のことに驚いた魔法使いの女性の悲鳴があがり、遅れて尻もちをついたドタっという音がこの青空に響く。
「『ニードル』」
とりあえず噛みついた盾を足場にその場からいったん離れようとしたウルフを串刺しにして仕留め、魔法使いを抱き寄せて周囲に『全方位結界』と大量の『魔力盾』を展開した。
「え、え、え、何何何!?」
混乱する魔法使いをよそに隙間ができないように『魔力盾』を増やしていく。そしてすぐにその増やした盾に全方位から魔法や弓矢が直撃した。
「ひゃあああ!?」
盾で魔法自体は防ぐことができるが盾にあたったことにより爆発が起きた。爆風も大量に展開していた盾で防いだが多少の衝撃は内側にまで突き抜ける。
「あんた、すぐにまた転移はできるか?」
「へ? 魔力ポーションは袋に入ってますから飲めば行けますけど」
「ならすぐに飲んでくれ。それまでは俺が守る。転移したらここの現状を伝えて、下手に人を送らないようにと。ここの殲滅は俺がやっておくから」
「殲滅って……あ」
突然の出来事に散々混乱していた様子だったがようやく周りの状況を把握したようだ。
雲一つないというわけではないが青々とした空の元、魔法陣の周りの地面には壊れた机やいす、小屋の残骸が散乱しているが魔法陣自体は消えないようにしっかりとどけられているようにも見える。さらに外側に目を向けると、おそらくここに臨時で建てられていたと思われる小屋やテントなどの残骸がまとめられており、そこにはあまり見たくもない肌色の何かの一部なども一緒に片付けられていた。
そして何よりも俺たちを囲むように展開されている多量のモンスターたち。外れた魔法や爆風で上がった砂煙で見づらいが『探知』にはしっかりとモンスターたちが引っかかっていた。確認できるモンスターたちは多種多様。それでもきちんと統率がとれているのはこの場に他の戦場にいたような指揮官クラスのモンスターが残っているからだろう。
「なんでこんな、ここはもう押し返し始めてるんじゃなかったの?」
「まあその情報がデマだったんだろうな。ほら」
土煙も少しずつ晴れてきて、周りがしっかりと見える状態になってきた。顔色を悪くさせながら言う彼女の言葉の原因を見つけ、そこを指差しながら話す。そこでは首が直角に折れてこと切れたエルフが通信用の魔道具で通常と同じように通信を続けていた。いや、正確には後ろにたたずむモンスターに操られて嘘の情報を流し続けているのだろう。
「でも、いくら情報って言ってもここにきた人が戻らなかったらすぐにばれるじゃん! 魔法陣の部屋がこんなことになってたらいくらなんでも……」
「前にここに転移してきたことは?」
「他の人と一緒に来たよ。でもその時はちゃんとした小屋だった」
「前回の転移はあんたじゃないのか?」
「ええ。別に専属というわけではないし、みんなそうだと思う。でも、魔法使いが転移先から戻らないって話は聞いてないわ」
「なら前に魔法使いが戻った後にここを壊したんだろうな。もうこれ以上隠さなくていいから」
多少は冷静さを取り戻した彼女が指示通りに魔力回復ポーションを飲みながら会話を続ける。煙が晴れたことで結界に防がれたことを知ったモンスターたちから追加の攻撃が放たれ、その衝撃が通る度にびくりと体が跳ねて飲みづらそうだな。
これ以上この攻撃を隠す必要がない。それはつまりこの戦場にいた兵士、そして追加でやってきた援軍も含めて虐殺しつくしたということに他ならない。敵の情報操作によってここの戦場には俺を最後に援軍はやってこない。魔法使いの彼女も魔力回復のために待機してもらっているとか、兵士の回復に協力してもらっているとか言っておけば戻ってくるのが遅れるのも説明がつくから仕留めてしまっても問題ないとの判断だろう。
「もう生き残りはいないのかな?」
「いたとしても捕虜だけだろうな。モンスターに捕虜なんて概念があるのかどうかは知らないが」
『探知』の範囲には一人もひっかからない。しかし、他の戦場ではまったく見なかった種類のモンスターが4体ヒットしていた。死んだエルフを操って情報操作をしていたのもそのうちの1体だ。
「エルフでもないし知らないかもしれないが、堕ちた精霊ってモンスターを知ってるか?」
「堕ちた精霊……たしかエルフの友達が言っていた魔物化した精霊だったかな? もしかしてそれがここにいるってこと?」
「地水火風といるな。弱点とか知らないか?」
「弱点ってわけじゃないけど物理的な攻撃は無効化してしまうそうだから気を付けて」
「魔法でやるしかないわけか。なら問題ない。もういけるか?」
空になった魔力回復用ポーションを袋にしまった彼女にそのまま問いかける。そして攻撃はまだ続いているが彼女が戻ったらすぐに動けるように『ダークネスハンマー』を両手に構えた。
「ちょっと微妙な感じだけど一人なら大丈夫。ほんとにいいの?」
「ああ。ここの惨状を伝えて、同時に援軍は送らないようにと伝えてほしい。ただ、もう向かっているモンスターはいるかもしれないからこの方角の守りだけは固めるようにと」
「わかった。通信の魔道具はたしか他の人でも使えるようになっていたはずだから、勝ったらそれで連絡してもらえばいいはず」
「一応操られてないことを示すための合言葉でも決めておくか?」
「なら私のパーティ名で。『タイタンズ』よ」
「了解した。司令部にも伝えておいてくれよ」
「ええ。お気をつけて!」
彼女は呪文を唱えて元の場所に転移していった。
彼女を守る必要がなくなったため、展開していた『魔力盾』の一部を『シールドバッシュ』で周りを囲むモンスターたちめがけて飛ばす。そして空いた全方位に向けて『ダークランス』を放った。それまで防御一辺倒だったこちらからの唐突な全方位攻撃になす術もなく多くのモンスターが倒れる。あまり密度を上げることができなかったのでそこまで多くは倒せていないが、防御に動く個体が多くいるのか攻撃がかなり薄くなった。
「拡散『アイスレーザー』」
『探知』によってわかっている堕ちた精霊・地のいる方に走り出し、左右に両手のハンマーの先から範囲重視の『アイスレーザー』を放つ。範囲重視だから下位の個体や先ほどの攻撃でダメージを負っていた個体以外はほとんど仕留めきれないが、凍ってその動きを止めるだけでも問題ない。
反応はあっても姿自体はまだ見えていない堕ちた精霊・地の姿を確認するためにもまずは前方に『ダークネスランス』を放つ。防御しようとするモンスターたちも含めてまとめて貫き殺し、奥にいるはずの堕ちた精霊・地を探すが、そいつ以外すべてを殺しても見つからない。
「下か? 『龍殺しのブレス』」
上に跳んで、『探知』に反応がある辺りへブレスを叩き込む。飛び上がった俺にチャンスとばかりに周りのモンスターたちと3体の堕ちた精霊から攻撃が放たれる。光属性はなさそうなので『ダークネスシールド』も混ぜつつ周囲の盾を増やして対応したが、その内側に火属性の拳が現れる。
『スキル:ファイアナックルLv1 を習得しました。 』
拳が腹にあたると同時に喰われてスキルに変わる。堕ちた精霊・火の攻撃だったのだろうか。
堕ちた精霊・地がいる辺りの死体をブレスで消し去り、地面を軽くえぐった。しかし、その本体にまでは攻撃が届かなかったようで反応が消えることはない。
「『サンダーレーザー』『鬼の一撃・付与』『破壊の一撃・付与』『ブレイクショット』」
3体の堕ちた精霊には『サンダーレーザー』を集束させて飛ばし、ブレスでも届かなかった堕ちた精霊・地を仕留めるべく地面に強化したハンマーを『ブレイクショット』で叩きつける。爆発によって地面が大きく抉れると、その衝撃によって地面から堕ちた精霊・地が空に浮かび上がった。
「モグラか? 『ファングショット』『黒槍の雨』『ダークランス』『黒雷』」
短い手足をパタパタ揺らしながら地面に向かっていこうとする堕ちた精霊・地を確実に仕留めるために大量の槍を放ち、全身ハリネズミに作り替える。堕ちたとは言えど精霊というだけあり、仕留めきったと思ったらその体がふっと消え去った。
「まずは1体。他は……なんか大きくなってないか?」
先ほどの『サンダーレーザー』の影響か焼け焦げた跡があったり、貫通して背後の森が見えている様子もあるが、残る3体の堕ちた精霊たちは攻撃の際に見えたものよりも大きくなっていた。比較的人型に近い風、リザードマンのような姿の火、金魚のような姿の水とエンシェントエルフ様の試練で戦った精霊ともまた違う姿だ。
「倒す度に他の奴に力が行くとかなのか? どちらにせよ殲滅するだけだが」
こちらに向かってくるモンスターたちを優先し、周りのモンスターを殲滅しながら次の標的として堕ちた精霊・風に向かって走り出した。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50) 剣闘士(60) 重戦士(70)
龍人 (20) 死龍人(20) ローグ(70)
魔導士 (90)
有効職業
聖魔??の勇者Lv23/?? 精霊使いLv32/40
舞闘家 Lv69/70 大鬼人 Lv24/40
上級獣人Lv17/30 魔人 Lv14/20
探究者 Lv34/99 狙撃王 Lv7/90
上級薬師Lv4/80 上級龍人Lv1/30
死霊術師Lv1/100
非有効職業
アーマーナイトLv1/99 剣闘騎士Lv1/99
呪術師 Lv1/80 死龍王Lv1/30
盗賊王Lv1/100 大魔導士Lv1/100』
新年あけましておめでとうございます(遅)今年もよろしくお願いします!
はい。2023年初投稿となります。年明けから夜勤ラッシュでようやくの休日でした…。チカレタヨ
今年も基本日曜更新でのんびりだらだら進めていきますので楽しんでいただけると幸いです。
ではまた次回