エルフの里の異変です15
『龍化』で姿を変えて飛び始めてしばらくが経ち、戦場の様子がはっきりと見えてきた。あの指令室で聞いていた通り後方にいる本隊に対して一部隊だけが前線で今も戦っている。敵モンスターの死体を障害物として活用しているようで侵入する経路はかなり絞られているようだった。ただ、それも上位種が動き出したことによって越えられていた。
ドォン!
部隊から比較的近い位置で爆発が起こった。魔力を貯めていたらしい魔法使いによって放たれた魔法だ。その一撃で障害物と化していたゴーレムの死体を越えてきた上位種が吹き飛ぶ。倒すことはできたらしいが最後の力で障害物をどけられてしまい、射線が通った。
「まずそうだな」
モンスターの群れから放たれた光線が、鋭く飛ばされた弓矢が残された部隊に突き刺さる。光線に貫かれた男が倒れた。そして続けざまの攻撃で数人が負傷した。
後方の本隊が隊列を組むまで。それまでの時間稼ぎなのであれば問題なく済んでいたのだろう。本隊から魔法や弓矢で援護してもらいながら少しずつ本隊のところまで後退する。その後はしばらくの休息の後で前線に復帰するか、怪我の状態によってはさらに後方へ下がるか。本来ならばそれでよかった。
しかし、あのクソエルフの命令によってその時間というのは戦争の終了まで、あるいは彼らが死ぬまでに変わってしまった。それはひとえに彼らが冒険者でエルフではないこと、そして指示にはむかったことがむかついたというくそみたいな理由でだ。
苛立ちも混じりながら、とりあえずはモンスターたちの注意をこちらに向けなければならないと思考を戦闘に戻す。単純に殲滅だけを考えればここからでも『ダークネスランス』やブレス系で消し飛ばすことは可能だろう。しかしその攻撃が届くまでに何人がやられるか、あるいはさらに近づいたことで俺の攻撃の巻き添えをくうかわからない。であるならば殺すための攻撃よりはこちらを使うべきだな。
「『ヘイト』『威嚇』すぅぅぅ」
『ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
大きく息を吸い込んで戦場全域に響き渡れと思いながら『威嚇』を放つ。『龍化』の影響なのか、自分でもびっくりするくらいの大音量で叫び声が響いた。若干自分自身耳が痛いくらいだ。
だが、そのおかげで彼らに攻撃をしかけようとしていた敵モンスターたちの動きが止まった。しっかりと『ヘイト』の効果も発揮しているようで『威嚇』による圧力を受けて若干の怯えも見れる中でもしっかりこちらに意識が向いていた。
「これだけ距離があれば巻き込むことはないな『ブレス』!」
吐いた息を吸いなおして『サンダーブレス』で比較的近い位置にいるモンスターを横一列に薙ぎ払った。さらに追撃に『ダークランス』を制御して『サンダーブレス』を逃れたモンスターたちを仕留めていく。そのまま腕に『鬼の一撃・付与』をかけて爪で『一閃』を放ち、『威嚇』による圧力でまだ動かないモンスターたちを上下に切り裂きながら前に出ていた部隊の前に着陸した。
『一閃』が『サンダーブレス』によって上がった土煙を切り裂いてその向こうのモンスターたちの姿がはっきりと見える。『威嚇』の圧力によって恐怖を覚えたのかいまだにまったく動けない下位のモンスターたちもちらほらといるがほとんどは追撃の『ダークランス』で仕留めきれていたようだ。
俺を狙った攻撃が外れた場合山なりに後方の部隊のところまで跳んで行ってしまう可能性も考えると、龍になったまま空を飛び回って上から戦場のモンスターを殺しきるような戦法はとりづらいし、それをしないのであればこのまま龍の姿になっているのはただの的になるだけだから、『龍化』を解除して両手に『ダークネスソード』を構える。
「エンシェントエルフ様の命で来た! これからこの戦場からモンスターを殲滅する! 俺の射線上に入るなよ!」
先ほど光線のような攻撃も見えていたしどこまで有効になるかは疑問なところもあるが、少しでも被害が出ないようにするために背後に『クエイク』で壁を作りだしていく。今度も『ダークランス』を背後に大量に展開して広範囲のモンスターに当たるように発射する。
こちらの戦場では大規模の戦闘が行われていたということもあり、俺が殲滅を開始した時点で既にあちらこちらにモンスターの死体が転がっていた。ただ、同時に嫌でも視界に入ってくるのが戦っていた人たちの死体だった。モンスターにやられてそのままの状態で安置されているわけがないと言うのはわかっていることだが、明らかに喰われた形跡のある死体というのは見たくないな。
飛んできた時には手前の部隊のことばかりを気にしていたせいで奥の方まで見切れなかったのもあって、まずは奥の状態を確認することにした。今度も奥にゴーレム軍団がいるとなるとまたあの特異ゴーレムにとらわれた冒険者がいる可能性は否定できない。
そのためにも大量の魔法をばらまきながら一点集中で奥まで貫通させるために魔力を込める。
「『死龍のブレス』集束『サンダーレーザー』」
真正面の敵に向かってブレスを放ち、その周りにいるちょっかいをかけてきそうな大型モンスターたちにレーザーをぶつける。
『死龍のブレス』は特に集束させてはいないが、その威力に物を言わせて範囲内のモンスターの悉くを消し飛ばせた。だが、追加で大型モンスターに向けて飛ばした『サンダーレーザー』は、敵を倒すという意味合いではきちんと仕事をしたが、奥に行かせない、あるいは奥を見せないようにと動くやつらの牽制というもう一つ考えていた仕事は果たせなかった。
「穴を埋めに来ない?」
抜けた穴の奥には今度はゴーレムたちがずらりと並んでいるような様子はない。それをしっかり見えているということが先ほどの戦場と違う点だった。つまるところいつまでたっても穴を埋めに来るようなモンスターがいない。空白地帯が空いたままこちらに攻めてきている状態だ。
たまたまこのあたりにはそういうモンスターたちがいない可能性も考えて別の方向にもう一カ所穴を作ってみるが同じく穴を埋めに来る気配はなかった。先ほどの戦場では穴を埋めるために中央に殺到してくれたから殺しやすかったが、その気配がなく広がったまま攻められるとなるとやりづらいことこの上ない。
「『ヘイト』」
定期的に『ヘイト』で端の方のモンスターたちに働きかけてこちらに向かうように仕向けながらそのまま戦場に魔法の雨を降らし続ける。ここの戦場は先ほどの戦場と違ってドラゴン系のモンスターは見えないがガーゴイルやオーガなどの下位種でもある程度強いモンスターたちが多い。周囲に張り巡らせた『魔法盾』に阻まれたとはいえ、『ダークランス』を始めとした大量の魔法の雨の中でこちらまで攻撃を届かせるレベルのモンスターが複数体いるのだから、安全な場所で入ってくるわずかな情報だけを頼りにエルフと冒険者とでわざわざ差別化までするような指揮で押されるなというのも無理だったのかもしれない。それでも現場で全体をまとめ上げられるような補佐的な奴がいれば別だったのだろうけど、そのあたりは文句を言っても仕方なかろう。
『ヘイト』で注意を引き付けてちらりと見えたガーゴイルの上位種と思わしきモンスターに『サンダーレーザー』を飛ばして頭を消し飛ばしていると、割と端の方の壁が背中側から砕かれた。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50) 剣闘士(60) 重戦士(70)
龍人 (20) 死龍人(20) ローグ(70)
魔導士 (90)
有効職業
聖魔??の勇者Lv23/?? 精霊使いLv32/40
舞闘家 Lv69/70 大鬼人 Lv24/40
上級獣人Lv17/30 魔人 Lv14/20
探究者 Lv34/99 狙撃王 Lv7/90
上級薬師Lv4/80 上級龍人Lv1/30
死霊術師Lv1/100
非有効職業
アーマーナイトLv1/99 剣闘騎士Lv1/99
呪術師 Lv1/80 死龍王Lv1/30
盗賊王Lv1/100 大魔導士Lv1/100』
今週は投稿しないと言ったな。あれは嘘だ。
というわけで更新です。
パルデア地方での冒険はホゲータと行くことにしました。たのしいんじゃー
ではまた次回




