エルフの里の異変です14
後半は一般冒険者部隊の隊長視点です。ご注意ください
「まったく、おい、そろそろ隊列の組みなおしが終わる頃だろう。追加の命令を伝えるのだ。他の戦場へ現在援軍を要請している。その援軍が来るまでその場で食い止めよと。後方の部隊はいつでも魔法を撃てるように準備。援軍の部隊が合流し次第前線を上げると。冒険者風情が私に意見してきた罰だ。せいぜい時間稼ぎのための囮として朽ち果てさせろ」
もはや取り繕う気もないと言わんばかりに冒険者の部隊へ死ねという命令を出し、俺に向かって自分の意見を話し続けるエルフの指揮官。エルフの騎士団がいかに普段から努力しているのか、そしてどれだけ国のために働いているか。そんな話を垂れ流し続けるが、すべての話が右から入ってきてすぐに左に抜けていく。
仮にもこの中央の戦場における複数の部隊の一つとは言え指揮官を任せられるということは優秀なことは間違いないのだろう。そうでもなければ今頃戦場で一兵士として戦っていただろうしな。ただ、その優秀さはエルフのため、その一点に向けられている。もしかしたら魔王軍の侵略という異常な事態にあたって精神が高揚してまともに考えが回らないという可能性もあるが、普通にこんなことをして噂がたち、冒険者が全く寄り付かなくなってしまうと困るのはエルフの方だと思うんだがな。
俺は指揮官の言葉を無視して、通信で受けた内容を地図に書き込むエルフたちの一人に近づく。
「すまない、さっき話していた戦場はここからどの方角だ?」
「え? 北西ですが」
「助かった」
突然話しかけられてふと出てしまったといった感じのエルフに礼を言い、そのまま指令室から出ようとする。
「おい! どこに行くつもりだ?」
「戦場に決まってるだろ? そもそもここには押されている戦場の場所を聞きに来たんだから」
「貴様はここの警備を命ずると伝えたはずだ! 私の、上官の命令に背く気か!?」
バンと机を強く叩いて部屋から出ようとする俺を怒鳴りつける。
「俺の上官はエンシェントエルフ様だよ。間違ってもお前のようなやつじゃあない」
エンシェントエルフ様には悪いがその名前の力をお借りし、立ち止まることなく指令室を出る。背後からは「命令違反だぞ!」とか「このことは本部に報告させてもらう!」とか「今すぐに連れ戻せ!」とか喚きたてる声が聞こえてくるがどうでもいい。
指令室を出たら少し離れたところで『龍化』する。すると指令室の扉を突き破って一本の矢が飛んできた。龍の鱗を貫通できるほどの威力はなく、かつんと足に当たって地面に落ちる。誰が撃ってきたのかはまあはっきりしているが、あまりにも短気すぎやしないか?
突然人が龍に変わったことで周りから少なくない悲鳴が上がるが、無視して空へ飛ぶ。先ほどの戦場と違い、既に戦場が見えているわけではないし、方角しかわかっていない以上森の上を行かなければ戦場を見つけるのが遅れてしまう。そう考えたら龍になって飛んで行った方が早いだろう。どうしても加速するためには『空蹴り』や盾系スキルを使う必要はあるが、それは普段と変わらないし、『龍化』しない状態であっても『マジックハンマー』に乗って移動するくらいしか他に方法はないし、別にそれが早いわけではないんだよな。
「『ダークネスシールド』『シールドバッシュ』」
足元に盾を出して勢いをつけて空へ飛びあがる。引っかかった木が折れるがまあやむを得ないとしよう。空高く飛び上がったことで遠めに煙が上がっているのが見えた。あそこがその戦場だろう。
俺は『空蹴り』で水平方向に加速して戦場に向かって全速力で飛んでいった。
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「おっしゃ、またかてえのが前に出てきやがったな。お前ら! 潰してバリケードにすんぞ!」
「「おお!」」
絶望的とも思えた、後方で状況を整えるまでの時間稼ぎ。俺自身も含めて負傷者を出しつつも敵モンスターの死体をバリケードとして進路を塞ぎ、一定範囲から外れた敵は無視するという方法で何とか耐えていた。当然無視したモンスターは奥に抜けていくが端からすべてを引き付けることは無理。奥のやつらもそれを理解してそいつらに対処する部隊を作っていた。エルフも冒険者も関係ない寄せ集め部隊だ。エルフだけの部隊よりは連携面では拙さは出るだろうが有志が集まったってところか?
「た、隊長、連絡が、連絡が聞こえて」
「なんだ!」
抜けたやつらが引き返してきた時のために下がり気味に構えていたやつの一人が顔色を真っ青にしながら、最前線でモンスターを殴り殺していた俺のところにやってきた。あーもう、絶対にいい連絡じゃねえってことは確かだろうな。
「え、援軍が来るまでこの場でって」
「くそったれ! ここ生き残ってその上のやつらぶち殺しに行くぞ!」
状況を整えるまでというだけでも死ねと言われた気分だったってのになかなか死なねえからって追い討ちまでかけてきやがった。本音を言えば命令無視がなんぼのもんじゃいと全員で撤退したいところだが、これだけの負傷者がいて、仮にそいつらを見捨てたとしても俺自身足をやられていた。一人でも多く逃がすことはできたとしても残念ながら仲間との冒険はここまでだ。
「ぐわぁ!」
「ヒュウ! くそ、上位種だ! バリケードの上を超えてきやがった!」
生き残りの中で一番の槍遣いがやられた。すぐに一人が手斧を投げつけて運よくそのウルフ系の上位種に致命傷を与えるが、死ぬ前にゴーレムの死体で作ったバリケードに突っ込んで破壊する。数人で盾と槍を構えて守りを固めようとするが、開けた視界から殺到するモンスターが目に入る。
「『炎よ炎よ炎よ! 大きく燃え盛り我が敵を討て』バーストショット!」
唯一の魔法使いから放たれたとっておきによって壊れたバリケードごと迫る敵を吹き飛ばしてモンスターたちと俺たちの間に隙間を作った。
「マックス!」
「撤退すんなって連絡は俺も聞いた! もう後先なんか考えてられっか。今この時を生き残れ!」
撤退のための切り札として温存させていたが、味方のピンチに我慢できなくなったか。かなりの魔力量を持っていかれる魔法を撃って魔力不足による体調不良が襲っているだろうに、マックスはすぐにヒールの準備をし始めた。
「はは、援軍が来るまであと5分か? 10分か? いくらでも耐えてやろうじゃね」
負傷した味方の回復のために魔力を込めながら鼓舞しようとしたマックスの胸をバーストショットによって巻き起こった土煙の向こうから光線が貫いた。的確に心臓の位置に開いた穴の大きさを見るに、即死だ。
「なんだってんだよ……。まだ、まだまだ主力はこれからだってか?」
煙が晴れた先に見えたのはゴーレム、ではなく魔法も使うガーゴイルだ。モンスターどもが俺たちを絶望させるためにわざわざ温存でもしてたのか?
「終わった……」
無意識だろうが誰かがそう呟く。もうこの部隊に魔法を使えるやつはいない。矢ももう残されているのはごくわずかだ。そんな状態で他のモンスターどもの相手をしつつ遠距離から光線を放つガーゴイルの対処まではとても手が回らない。
「諦めるんじゃねえ! 俺が突っ込む。だからてめえらは逃げろ!」
そう叫んで動かない足を前に出すと、俺の決意を嘲笑うかのようにその踏み出した足をオーガアーチャーの放った矢が貫いた。足から力が抜けて、俺は無様に倒れ込む。
「ああ、くそが」
毒でも塗られていたのか、立ち上がろうとする足に力が入らない。せめて、せめて一人でも多く逃がしてやらねえといけねえってのに!
『ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
薄れる意識の中、その意識を無理矢理覚醒させてくれるような、恐怖の重みをもった叫び声が戦場に響き渡った。
そしてモンスターどもの多くが足を止めて宙を見る中、俺たちの頭上に現れた影から放たれた熱が、目の前を薙ぎ払っていった。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50) 剣闘士(60) 重戦士(70)
龍人 (20) 死龍人(20) ローグ(70)
魔導士 (90)
有効職業
聖魔??の勇者Lv23/?? 精霊使いLv32/40
舞闘家 Lv69/70 大鬼人 Lv24/40
上級獣人Lv17/30 魔人 Lv14/20
探究者 Lv34/99 狙撃王 Lv7/90
上級薬師Lv4/80 上級龍人Lv1/30
死霊術師Lv1/100
非有効職業
アーマーナイトLv1/99 剣闘騎士Lv1/99
呪術師 Lv1/80 死龍王Lv1/30
盗賊王Lv1/100 大魔導士Lv1/100』
はい。少し0時には間に合いませんでしたが誤差ということで一つ。
いよいよ金曜にはポケモンの新作発売……つまりきっと来週はお休みでしょうね(メソラシ)
まあ今週は夜勤もあるので明けの日に書く体力があればいけるかな?
ではまた次回




