エルフの里の異変です4
「はぁ、はぁ、私が転移できるのはここまでですのでここから先はご自分でお願いします。あちらの方角に700メートルも行けば前線が見えてくるはずです」
「了解した。ありがとう」
この戦場の本陣とも言える場所から前線の東端まで転移してきたことで相当消耗している魔法使いの男に礼を述べると、俺は『スピードエンチャント』をかけて走り出した。
森の中と言うこともあり視界は悪いが、森の木々の間からは多くのエルフたちが弓と魔法で牽制攻撃を行っているのが見えた。小規模の部隊が複数、それぞれの指揮官の指示のもと迫りくるモンスターたちに攻撃を仕掛けている。まだ戦闘が始まって何時間も経過していないというのもあるのだろうが、それ以上にうまい具合に交代ができているらしく、先ほどの魔法使いのようにかなり疲労の色が現れている様子はない。
走って近づくまでに『ガードエンチャント』や『マジックエンチャント』など、見た目には影響が出ない範囲のエンチャントを使用して強化する。転移に伴って一度消していた『魔力盾』も5枚ほど再展開し、現在交代で休憩に入っている部隊の指揮官の下へ急ぐ。
近づいてくるとだんだんと声が聞こえてきた。
「交代、弓部隊斉射開始! 前衛部隊、抜けてくる奴らを押し返せ! 援軍が来るまでの辛抱だ!」
返事の代わりとばかりに放たれた大量の風切り音とそれに遅れて聞こえてくる打撃音。聞こえてくる音だけだと前衛が受け持っている抜けてくるモンスターの数が多いように感じる。俺たちがあの里からの冒険者の第一陣だと考えるとこの地点での戦闘開始からはまだ何時間もは経っていないと思うが『魔力矢』のような物でもなければ弓矢は消耗品だ。物資の搬送も中央の最も激しい戦場が優先にはなるだろうし、数が減ったことで殲滅力が下がっている可能性は十分あり得る。ただでさえここの部隊は数を減らしてあると言っていたし。
『空蹴り』を駆使して森の中を高速で移動してきたが、それが後衛部隊の索敵に反応し、敵と勘違いされたのか近づいてくる俺に向かって待機していた部隊の兵士たちが槍を構えた。
このまま槍に突っ込んで刺される気もなければ蹴散らしてしまうような気もない。攻撃が来る前にとスピードは緩めずに接近し、槍の届かない距離に着地する。
「待て、エンシェントエルフ様からの命により敵の殲滅に来た。指揮官はどいつだ? すぐに戦闘に入るから俺の射線上からどかしてくれ!」
最低限だけ告げて、まだ戸惑いながら槍を構える兵士たちを『魔力盾』を足場に『空蹴り』で超えて前線に向かった。
50メートルと離れていない前線の指揮官にも俺の声は聞こえていたのか若干ためらいはありそうではあるが前に出ていた前衛部隊を少しずつ下げていた。それでも前衛で戦っている兵士たちも迫りくる敵を前に下がっていくことにためらいがあるのか、完全に下がっていない。下手な攻撃だとあまり手前の方に攻撃すると巻き込みかねないが、弓の牽制により多少距離が開いた。今ならいける。
「一発大きいの行くぞ! 『ダークランス』」
制御の難しい『ダークネスランス』ではなく『ダークランス』を背後に大量に展開して迫りくるモンスターたちめがけて一斉に放つ。ぱっと目に入っただけでも数十種類ものモンスターたちが押し合いへし合い我先にと殺到してきて、視界の中地平線の向こうまでモンスターで埋め尽くされているようにも感じるな。
兵士たちの後退の援護のために味方が放った矢を黒い槍が巻き込みながら、前線から下がりながら戦う兵士たちの頭上を越えてモンスターたちめがけて面となって迫る。地面には落ちずに平行気味に飛ぶ黒い槍が、もはや壁とでも呼べる物量を発揮してモンスターたちを押し返していく。兵士たちの中には目の前の光景に思わず後退する足が止まってしまう者も出ていたがすぐに指揮官の「止まるな!」という声ですぐに再び足を動かし始めていた。
「『ダークランス』」
より奥の敵にも攻撃を届かせるべく前に進みながら、味方が下がって撃ちやすくなった『ダークランス』の追加を放つ。どれだけやられようとまっすぐに突っ込んできていたモンスターたちを再び黒い槍の壁が呑み込んでいった。味方を避けることを優先していたからか空を飛んでいる一部の鳥系モンスターやデビルなどの闇属性に耐性を持つモンスターたちがノーダメージあるいはダメージを負っていても軽傷程度でしのがれておりその中でも元気なやつは後退していく兵士たちに向かってエアロやダークボールを放って攻撃しようと魔力を貯めていた。
「抜けると思うな。『サンダーレーザー』『ヘイト』『威圧』『魔力矢』『ダークランス』」
耐性によって『ダークランス』を耐えたと思われるモンスターたちを速度の速い『サンダーレーザー』で射抜き、合わせて属性を持たない『魔力矢』で追い打ちをかける。そしてそうそう使う機会のない敵の攻撃を集める『ヘイト』と『威圧』で動きの素早い鳥系モンスターたちの動きを鈍らせてそこに槍を向かわせた。
動きが速いだけのモンスターたちは面を意識した『ダークランス』の物量作戦で消しとばし、その奥からやってくるモンスターたちの足場を埋める障害物へと変わっていく。貫通性能の高い『ダークランス』ではあるが、何十体も貫くことはできず、足の遅さがゆえに初撃に巻き込まれなかった中型のモンスターたちに届かずに消えていく。目立つ敵としてはオーガやオークが多いように見えるその中型のモンスター群たちに護られるような形で展開していた各種族の魔法使いたちの反撃が飛んできた。
「だから後ろに飛ばすつもりはないんだ。『ダークシールド』『シールドバッシュ』『バーストショット』」
『ヘイト』と『威圧』が届く範囲内であれば引き受けられるが、この広い戦場すべてを受け持つことは難しい。しかし一人でこの東の殲滅を試練としてあたえられた以上はやり遂げなくてはならない。そんな思いで放たれた魔法のうち俺ではなく後方に控える味方部隊に届きそうなものを広げた魔力盾を飛ばして防いでいく。狙いどころか魔力不足で奥まで届かないような攻撃は無視だ。
数の優位を活かしたモンスター側の戦略か散発的にあちこちからまとまった量の魔法が飛んでくる。速攻でお返しに放った『バーストショット』がそれを防ごうとしたゴーレムごと魔法使いたちを爆殺してみたが、そこが比較的多めに集まった場所というだけであちこちに魔法使いや弓使いを中心にした個所があるらしい。すべてに返すのは無理か。
それでも奥の味方に届きかねない攻撃は脅威には違いないのでできる限り攻撃を飛ばしてみるが、防いだゴーレムに当たった瞬間に爆発した『バーストショット』で警戒されたのか空中で撃退したり結界で防ごうとする個所も見えていた。そうした箇所には敵側の指揮官クラスのモンスターがいる可能性も考えて『ダークランス』の面攻撃とは別に『黒槍の雨』で上から刺し殺す。さすがに魔力消費が『再生』などの回復量を上回っているが『ダークランス』を途切れさせないことを優先だ。
まだ後方にも控えていたらしい足の速いモンスターたちが、狙われている中型モンスター群を抜けて前へと躍り出てきた。面制圧によって大半は死滅して後続の足場を奪う形になるが、中には上位種と思わしき個体が数体混ざっていて、前からも上からも降り注ぐ槍の雨を突き進んでくる。
「『アイスレーザー』『獣の一撃・付与』『剣閃』」
たとえ当たらずとも地面を凍らせて妨害のできる『アイスレーザー』で浮かし、スピード重視の『剣閃』で殺しきる。そんなコンボすらも防ぎきるような上位種たちですら追い打ちとして放たれ続ける槍の前になすすべなく足元に転がる障害物の一員に変わっていく姿に恐れをなしたのか、単なる魔力切れかはわからないが少しずつ飛んでくる魔法や弓が減っていた。『探知』によると今のところ視界の届く範囲で抜けられた場所はなさそうだ。
「これなら90戦目の方がきつかったかな。奥を刈り取る」
中型のモンスター群の殲滅を進め、その奥に控える大型モンスターと上位種たち、そしてどこかにいるだろう指揮官を仕留め、まずはこの戦場を終わらせる。まだまだ戦場はここだけじゃないからな。
俺は前に出る足を止めずに、逆に前に出る動きを止めつつあるモンスターたちに向かってより攻撃の激しさを増した。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50) 剣闘士(60) 重戦士(70)
龍人 (20) 死龍人(20)
有効職業
聖魔??の勇者Lv20/?? ローグ Lv64/70
精霊使いLv32/40 舞闘家 Lv59/70
大鬼人 Lv20/40 上級獣人Lv15/30
魔導士 Lv81/90 魔人 Lv12/20
探究者 Lv31/99 狙撃王 Lv1/90
上級薬師Lv1/80
非有効職業
呪術師 Lv1/80 死霊術師Lv1/100
アーマーナイトLv1/99 剣闘騎士Lv1/99
上級龍人Lv1/30 死龍王Lv1/30 』
かなり遅れてすみません。案の定と言いますか信長の野望・新生が楽しすぎて(1敗)翌週は体調崩して(1敗)と気づけば8月に入っていました…
新作ゲームは諸刃の剣ですね。楽しすぎて書く時間が取れない…。あ、ドラクエトレジャーズとポケモンは予約済みですのでその時期はまた投稿が遅れるかもです。ウパーかわいいよウパー。
ではまた次回




