僕は真の勇者だ!その1
僕の名前は天上院古里。18歳の高校3年生。
僕は自分で言うのもあれだけどイケメンだ。身長はそこそこ高く180くらいはあり、筋骨隆々というわけではないがしっかりと筋肉はついていて力も強い。締まってるところはしっかりしまっていて無駄な脂肪なんかほぼない。きれいな黒髪は長すぎず短すぎず、清潔感漂う感じだ。
成績は優秀。常に上位のほうにいた。悪くても学年全体の1割を下回ったことはない。学外で行われる模試でも総合で1000位台をキープしてる。
運動もできた。剣道部のエースで、1年2年とともに全国大会も経験してる。どちらも優勝はできなかったが3年生になった今では絶対優勝してみせる。というか優勝するのが当然だ。
当然モテた。そりゃあイケメンで勉強も運動もできるスーパーマンをほっとくわけがない。いつも周りには女子がいることが多かった。でも僕にはある秘密があった。
何を隠そう僕はオタクなのだ!
異世界に召喚されて神様からもらったチート能力で世界を救ったり魔王を倒したりとか最高じゃん! そして巨乳美少女でハーレムを作ってゆくゆくは……えへへ。
そんな妄想を他人に悟られるわけにはいかないのでこっそりとしてるんだけどね。
そんな僕は今……
「……参りました」
「あなたは強かった。でも僕は勇者だからね。負けるわけにはいかないんだよ」
そう。勇者をやっている!
ある日いきなり目の前が光ったかと思ったらそこは見たこともない広場。そこで勇者だといわれて、先に2人来てるって言われて、説明を受けて、下っ端っぽい騎士と戦って、あっという間に倒して、騎士団長を若干苦戦しつつも下した。これは……チートじゃん! チートの中でも剣術チートってやつ?
「あの方が新たな勇者、天上院古里様です」
お、あの二人が先に呼ばれたっていう人たちか。かわいい女の子もいるな。あの子も僕のハーレムに加えたいところだな。
僕はさわやかスマイルで話しかける。
「やあ! 君たちが昨日召喚されたっていう二人かい? 僕は天上院古里。よろしく!」
「刈谷鳴だ。でこっちが」
「高坂真那だよ」
鳴という男は黒髪で僕より背は低く、なんか嫌な感じ。真那さんはかわいい! 女子はみんな僕のものだ! まあ、ここは友好的に行こうじゃないか。僕が勇者だから彼らは結局引き立て役。悲しい運命だな……。
「鳴に真那か。これから力を合わせて魔王からこの世界を救おうじゃないか!」
今僕すごいかっこいい!
「俺たちはそんな危ないことに参加する気はない。ある程度生活できるようになればすぐにでも引っ越してのんびり暮らす」
信じられないことを言ったよこの男! せっかくチートもらっておきながらのんびり暮らすだって!? ありえない! しかも真那さんまで巻き込んで。ここは僕の言葉で正気に戻してあげないと……。
「なぜなんだい!? 僕たちがやらないとこの世界は――」
「もともと俺たちは地球の、ごく普通の高校生だ。この世界には関係ない。なのになんでわざわざ危険なことに挑まなきゃいけないんだよ」
「君には勇者としての志はないのか!」
せっかく選ばれた存在なんだぞ! 力があるものがないものを救う。そんな当たり前のこともやろうとしないのかこいつは!
「そんなもの欠片もない。世界が救いたきゃ一人でやってくれ。俺は危険なことに真那を巻き込みたくないし、俺自身も巻き込まれたくない」
「そんなこと言って、この世界の人はどうするんだ!!」
「もともとこの世界の奴らの問題だ。この世界の奴らでなんとかしてもらわないと困る」
「ふざけるなぁぁあぁああ!」
僕は全力で彼を殴る。一瞬で肉薄してすさまじい速さで顔面をとらえた。彼は吹き飛んで壁に激突する。僕には剣術以外にも格闘系のチートがあることが分かった。このことは感謝だが僕は彼を許せない。
彼がやろうとしてることは立派な裏切り行為だ。力を与えてくれた人たちに対しての。この世界を救えるのは僕しかいない!
「なにするのよ!」
真那さんが僕をにらみつける。な、なんでそんな顔をするんだよ。
「そいつが悪いんだ! 僕は正しいことをしようとしているのに」
「落ち着いてください! 古里様はこちらへいらしてください。そこにいる騎士が案内します。お二方は私とこちらへ」
騎士団長さんが間に入ってきて僕たちを離す。
「古里様、どうぞこちらに」
若い騎士二人に連れられて僕は広場を出る。とりあえず王様のところに行くらしい。一旦落ち着こう。
「よく来てくれたの古里殿。私がカシュマ王国国王、エルンスド・マ・カシュマである」
王の間に案内された僕の目の前には玉座に座る王様がいた。
この世界にはどうやらいくつかの王国があるらしいが、そのうちの1つにしてもっとも大きな王国がここカシュマ王国らしい。正確に言えばこの国にある町すべてを束ねると『デルフィナ』と呼ばれて、この王都の名前を『カシュマ王国』と呼んでいるらしい。初めてこの世界に呼ばれた男の名前がカシュマだったためにこの名前になったらしいが、それカシュマじゃなくてカシマじゃないのかな?まあいいや。
この世界では、5つの『国』に分かれている。その1つが今いるこのデルフィナというわけだ。デルフィナだけでなくすべての国で共通のことは、国と言っているけど、どちらかといえば勢力圏と言ったほうがあっていることだ。
王都のような中心となる町が1つあり、勢力圏内のあちこちに町がある。1つ1つの町の距離は、隣接しているものから、100km以上離れているものまであるらしい。それぞれの国の特徴は聞いたけどあまり詳しいことは教えてもらえなかった。どうも国のなかには、仲が悪く、いつ戦争になってもおかしくない国もあるとのことで、同盟を組んでいる国もあるが、あまり僕が他国にいくのはよくないと言われたのだ。
「初めまして。僕は天上院古里です」
「聞き及んでおる。そなたにも改めて今我々が置かれている状況をお伝えしておきたくてのう」
「魔王の脅威にさらされていると聞いてます。ご安心ください。この僕が、見事魔王を打ち取り、この世界に平和を取り戻してみせます!」
意気揚々と宣言する僕。うん、かっこいいよね!
「これはこれはすばらしいことだ。して勇者殿は何か特別な力がおありで?」
召喚の儀で呼ばれたものは基本的に力を得るらしい。その中でも鳴だけが例外的に力なく呼ばれたらしい。なんだあの男は弱いと思ったけどそういうことか。これはますます僕が真の勇者っていう説が濃厚になってきた!
「詳しくはまだわかりませんがひとまず戦闘では問題ないかと。すでに騎士団長バラーガ様を剣にて下しております。そして魔法にも才があるのではないかという見方もあります」
「おお! それはすばらしい。ぜひともその力この世界のために生かしていただきたい」
「もちろんです! 僕はあのもう一人の男とは違いますから!」
と勢いよく言ったところで突然僕のずっと後方にある大きな扉が開かれた。
「大変です王様!」
「王は今勇者殿とお話の最中だぞ! 場をわきまえろ!」
その扉から入ってきた一人の騎士を王のそばにいた騎士が怒鳴りつける。そこそこ上の立場なんだろうな。
「よい。騎士にはそのあたりの礼儀はきちんと備わっているはずであろう。それでもなおこうして急がなくてはならない案件だとわかる。で、どうした」
「し、失礼しました! たった今騎士団長から刈谷鳴殿が谷底に落下し死亡したとの連絡が入りました!」
「なんだと?」
「それは本当なのか?」
「はい! 騎士団長が確実に落下していくのを確認したそうです。谷の深さから考えて生存は絶望的だろうとのことから確認の部隊はだしておりません。また真那様が乱心し、後を追いかねなかったということもありましてその場にいた騎士は全員真那様を連れて王都へと帰還しております」
なんだか目の前で話されたことが急すぎてよくわかっていないが、要するにこうだ。
何の力も持たなかった鳴が、バカなことに橋から谷底に落ちて死んだ。
あいつが悪いじゃん。だいたい、なんで騎士と一緒にわたってて橋から落ちるんだろうか?
「そうか……。こうなっては仕方ないな。古里殿、真那殿と勇者二人手を合わせてこの世界を救ってくだされ」
「わかりました! 彼みたいにドジやらかしたりせずがんばります!」
そして王の間を出た僕は国から用意された宿へと向かった。
どうもコクトーです
宣言どおり3人目の話です
まずは登場のところを3人目視点でやりました
あと1.2話書いたら第3章に入る予定
あくまで予定です。スキルまとめを先にやるかも…
スキルまとめに関して
なにか要望ありますか?
なければ前回と同じ感じでいきます
ではまた次回