試練後の地上です4
設計図に書かれていたという内容を読み上げ、やれやれと首を振るエルメラさんは、なんとも言えない表情を浮かべた俺には気が付かずに自分の考察を続けた。
「私としては以前オーガの群れが確認されたという地域が怪しいと思うんだよね。オーガの群れなんてそうそう見ないし、群れを統べるキングがいてもなんらおかしくない。さらに上位と思われるオーガエンペラーがいるかどうかはわからないけど、可能性はありそう」
「あの」
「でも待って、そういえば今年の武闘大会で変異種オーガを連れた新人がいたって聞いた気がする。その人がそのオーガをどこで捕まえたのか聞いた方がいいかな?」
俺の声も聞こえないと言わんばかりに自分の世界に入り込み、ひたすらにあれなら、これならと案を列挙していくが、そのいずれもオーガ種が確認されている未攻略のダンジョンであったり、オーガキングの討伐報告のある土地で、感覚としてはオーガエンペラーがいたらいいなという願望が強いのだろう。それ以上に確定的と言える情報がないのだろうから仕方ないか。
完全に思考の海に呑まれて戻ってこないエルメラさんをよそに俺は自分のアイテムボックスの中からお目当ての物を探し出す。
基本的に俺の従魔たちは傷ついた時、そして倒れた時には俺の魔力に戻ってその肉体を再構築する。こうした特徴は一般的な従魔とはかけ離れているそうだが、そこはまあヒメだから仕方ない。
俺やユウカとの鍛錬の場であったり、今まではないが単純に強敵と戦い、完全に死んでしまった場合その死体は残ることなく俺の魔力に還ってくる。アンナ、みぃちゃん、カルア、コルクと今俺とリンクが完全に切れてしまっている4体はおそらく無理なのだろうが、ヒメ、ゼルセ、黄龍は可能だろう。
しかし、死体として残らないだけで、千切れた体の部位が残るような場合もある。今のゼルセがまさにそうで、ダメージを負ったまま俺の魔力に戻り、肉体を再生させる場合だ。基本的にはステータスにもスキルにもできず、下手に表に出すこともできない素材であるそれらは喰らってしまって従魔たちの回復の助けになるようにしていたが、そのあとは寝るだけだったり、別に急ぐ必要もないような時は必ずしもそうでもなく、1つ2つはアイテムボックスにしまっていた。俺のちょっとしたもったいない心が功を奏したようだ。
途中から言葉にならずに一人考え続けていたエルメラさんに気付いてもらえるようにトントンと机をたたき、視線が向いたのを確認して2本の角を取り出した。
「あーごめんね。ちょっと考えこんじゃってた。まあでもそんなわけだからさ、素材を手に入れることはできないと思うわけ。さすがの私も無から物を作り出すことはできないし、一から折れない武器の設計図を作り上げられるほどは知識がない。悪いんだけどその依頼は断らせて……ナニソレ?」
「角ですよ」
「はーなんだ角かー。何を取り出したのかと思ったよ。そりゃ角だよね。こんなところで爆弾なんか出さないよねーはっはっは……何の角?」
「俺の従魔の折れた物ですが、片方は今のゼルセ、龍鬼王の角で、もう1つは以前のゼルセ、オーガエンペラーの角です」
「なるほどなるほど。そういえばあのオーガ君も濃厚な龍のかほりがしてたね。龍の力を持つ鬼の王ってことだったのね。なにそれ超興味ある。ねえ素材が集まらない依頼よりもさ、黄龍ちゃんや龍のオーガ君、あと君の龍の力の研究しない? ちょっとだけ、先っちょだけ解剖させてくれない?」
「ゼルセはダメージが回復しきってなくてまだ出てこれないですし、解剖は勘弁してください」
「えー、先っちょだけ、先っちょだけだから!」
よだれを垂らしながら身を乗り出して爛々とした目を向けてくるエルメラさんだったが、その表情が唐突に固まった。よだれが垂れないようにすっとひっこめて、視線がふと下に落ちる。
「話を戻していい? 何の角だっけ?」
「龍鬼王とオーガエンペラーの角です。以前に折れた物がアイテムボックスに入れたままでした」
「……」
「龍鬼王という種がどういう立ち位置なのか知らないんであれですけど、オーガエンペラーから進化した種ではあるんですよ。そういう意味では上位種と呼ばなくもないのかなと」
「いやいやいあいあ、いあいあいやいや。オーガエンペラーって言った!? なんであんの!?」
「なんでと言われましても……たまたま俺の従魔の進化前の状態がオーガエンペラーだったんですよ。その時に折れた角を何かに使えるかもととっておいたんですが、物が物だけに売ることもできなくて。まさかそれを使う機会が来るとは」
「ふぇー。そんな偶然ある? ま、まあ龍鬼王の方の角はもらっていいならもらうけど、今回は使えないかなー。さっきちらりと話したけど、この角は武器を加工するための素材になるからね。龍の力が入ることで強くなりすぎて素材を傷つけちゃうかもしれないし、オーガエンペラーの角があるならそれが使えるかな」
「ならしまいますね」
「あぁ!」
呆れの混ざった驚きにより半ば放心状態のエルメラさんの手からするりと龍鬼王の角を引き抜きアイテムボックスにしまう。エルメラさんは名残惜しそうに手を伸ばしかけるがぐっと力を込めて自分を諫めたていた。
「ま、まあ角だけあってもね。もう1つの素材はモンスターの名前がわからないから。さすがに無理なんじゃない?」
「……とりあえずこちらをご覧ください」
まさかないよね? という言葉が表情にありありと出ているエルメラさんに10個ほどの甲殻の欠片を取り出した。
「あー、見たところ虫系のモンスターの甲殻ですね本当にありがとうございます」
「これも従魔、元従魔のモンスターの素材の一部なんですが、アンセスタークイーンアントの甲殻です」
「まーた聞いたことない名前が出てきたねー。でもアンセスター、先祖とか祖先だっけ? そうだね太古に生きていたと言われてもおかしくないや。うん揃っちゃったねどこにあるかもわからない謎の素材。後はオリハルコンを超える硬度の素材があればいいんだけど、それもあったりする?」
「実際これがどこまでの硬度なのかわからないんですが、たぶん大丈夫だと思います」
正直これがオリハルコンをも超える硬度を持っているのかどうかはわからない。でも、俺のアイテムボックスの中身でオリハルコンを超えられる可能性がある物はこれしかないだろう。
「死龍王ダムドレアスの右目に突き刺さって、その死体をゾンビへと変えて、幾度も復活する怪物に変えてしまう魔法あるいは呪術的な物の核となっていた、その昔生前のダムドレアスと戦った龍人の角です。どれくらいの年月かはわかりませんが、ダムドレアスの瞳に刺さり、その魔力を吸い続けていた龍人の角です。龍人の角はその強さの証。強くなれば強くなるほどより硬く、強靭になると聞きます。であればこれならオリハルコンを超えられるかと」
名も知らぬ、かつてダムドレアスと死闘を繰り広げた偉大なる戦士。その力をお借りする。
注意深く、壊れ物を扱うように角に触れるエルメラさんは、しばし角の様子を観察すると、問題ないとばかりにこくりとうなずいた。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50) 剣闘士(60) 重戦士(70)
龍人 (20) 死龍人(20)
有効職業
聖魔??の勇者Lv20/?? ローグ Lv64/70
精霊使いLv32/40 舞闘家 Lv59/70
大鬼人 Lv20/40 上級獣人Lv15/30
魔導士 Lv81/90 魔人 Lv12/20
探究者 Lv31/99 狙撃王 Lv1/90
上級薬師Lv1/80
非有効職業
呪術師 Lv1/80 死霊術師Lv1/100
アーマーナイトLv1/99 剣闘騎士Lv1/99
上級龍人Lv1/30 死龍王Lv1/30 』
そうなんです。今回も1週空きました。すみません…
もはや1話に2週かかるのがデフォになってきてますね。なんで昔は2~3日で1話を続けられたんだろうか…
阪神は残念ながらリーグ優勝は逃してしまいました。今年も最終戦の日有給とってたんですが、小笠原に抑え込まれる様子を見ることになるとは…。CSでの逆転優勝に向けて応援します!
ではまた次回。




