試練後の地上です3
「はっはっは! 私は帰ってきた!」
エンシェントエルフ様と小屋まで戻ってきた俺たちを出迎えたのはやけに肌ツヤがよくなってノリノリのエルメラさんだった。俺たちが戻ってくるのをいつから待っていたのだろうか。しかし、玄関で仁王立ちをするエルメラさんの左手には俺から奪っていった黒曜龍のものと思われる爪が1本握られている他は腰にある袋の中だろうか。
「最後に出てから早10カ月、もとい半日。気が付いたら説明もなくここに一人残された私の気持ちがわかるか!」
「何を聞くでもなく素材を持ち去って部屋に閉じこもったのはあなたでしょうに。説明する暇もありませんでしたよ」
「ソレはソレ。コレはコレですよ! さあさあ許してほしくば私に龍の素材を渡すのだ!」
ジェスチャーを交えつつ力説するエルメラさんにエンシェントエルフ様は呆れ顔を浮かべていた。一方で俺も苦笑いをしつつ、龍の素材ではなく折れたステュラを出した。
「むむむ? それはノーだよノー。私が欲しいのは龍であって魔剣じゃないのよー」
俺が出したステュラを指刺して首をぶんぶんと横に振るエルメラさん。地味に怖いからその手に持った爪を目の前で振り回さないでほしい。でも、ここで伝えるべきことはもう決まっていた。
「あなたが普段から龍の素材を扱っているのは聞きましたし、剣を見る目があるということもこうしてわかりました。その腕を見込んで龍の素材を使った武器製作の依頼をしたいのですが話を聞いてもらえますか?」
俺の言葉を受けて10秒程たっぷりと唖然とした表情を浮かべたエルメラさんだったが、持っていた爪を袋にしまい、パンと自らの頬を両手で叩くと真剣な表情に変わった。
「エンシェントエルフ様、仕事の話をしたいので先ほど使わせていただいてた部屋をお貸し願えますか? 欲を言えばすぐにでも工房に戻り、そちらで話とさせていただきたいですがまだ御用があられると聞いています。であればここでする他ありませんが、私の主義ですが依頼の話は必ず依頼主と一対一。それを曲げたくありません」
「ええ。構いませんよ。私は先ほどの部屋で待っていますから、話が終わったら来てください」
エルメラさんのお願いに即答で答えたエンシェントエルフ様は俺の肩に手を置いてそのまま小屋に入っていった。俺はこっちこっちと別の部屋を指さしたエルメラさんの後について行くことにした。
エルメラさんに続いて部屋に入り、机を挟んで対面に座る。改めてこちらから話を切り出そうとしたところでエルメラさんが体を乗り出してバンと机に両手をついた。
「依頼をしたいということであれば私もそれなりの対応をさせてもらうからね。ただのエルメラとしてではなく鍛冶師のエルメラとして。一応言っておくけど、私の作る武器は高いよ?」
「その点は何とかなりそうな金が手に入ったのでお構いなく。もし足りないとなったら龍の素材を売って金を作りますし」
「とととととと、特別に素材払いなんて制度を検討しないわけでもないよ? ドラゴンから龍に至るまで完璧に査定はできるからさ。……黒曜龍クラスの龍の素材をポンと渡してしまえるような宝物庫をそう簡単に手放してたまるものか」
「エルメラさん、聞こえてます」
「うぅおっほん! じゃあ前提条件はクリアしているとみて話を進めましょうか。依頼を受けるかどうかを決めるにあたって聞きたいことは3つ。まあまずは作ってほしい武器について。剣でも槍でも槌でも弓でも、基本的に何でも作れるけど能力を持った武器となるとまた話は別だから。あんまり無茶苦茶言うようならどれだけ金を積まれてもよそに行ってもらうことにしてるんだ。無理なものは無理だから」
「俺が作ってほしいのは剣が1本。そのでき次第でもう1本といったところですかね」
「へえ私を相手に腕前を見て決めるって? これでも特殊な金属を除けば最上級の剣に必ず使われているような素材、すなわち龍の素材に関する扱いは世界でも1,2を争うレベルなんだけど?」
「武器自体の出来が良かったとしても俺に合わない物を作られてはたまりませんから。そのあたりまで含めて判断したいんですよ。お願いしたい素材が素材なので」
「私は自分が作る物に絶対の自信があるし選ばれる自信もあるから聞きたいんだけどどんな素材? ま、まあ、そんじょそこらの龍の素材じゃ驚かないけど!」
「深緑龍王の爪。剥ぎたてです」
「ひゅくぅいえい! 守護龍様の素材! しかも生え変わりのものとかでもなく剥ぎたて? なんで!?」
「あまり細かくは言えませんが特殊な試練をクリアした報酬です」
試練のことを軽く思い出しながら話す俺の表情を見てかわいそうなものを見る目を向けるエルメラさんに気付いてにらみ返し、慌てた様子を見せたところで続きに戻るべく、アイテムボックスから先ほども見せた折れた魔剣ステュラを取り出した。
「これは俺がずっと使っていた剣なんですが、オリハルコン以上の硬度が相手じゃなければ折れたり曲がったり刃こぼれしたりしないという効果がありました」
「ひっひっふー、ひっひっふー。よし、落ち着いた。折れない、曲がらない、刃こぼれしないとなると不壊系の状態不変系かな。一定の硬度以上っていうのはよくある条件だね。まあオリハルコン以上となるとなかなか見ないんだけど……折れてるね。あの刺さってたやつでしょ? 見てもいいよね?」
エルメラさんは俺の返事を待たずにテーブルに置いいたステュラを取り上げて、その断面を調べ始めた。
「ふむふむふむ。しっかりと見てみると確かにこれは折れた時の断面だ。断ち切られたのならこんな風にはならない。どちらかと言うと防御時に折れた感じかな。打ちつけた時に折れたのならもっと負担が寄っててもおかしくない」
「そこまでわかるものなんですか?」
「まあなんでもかんでもわかるというわけじゃないけど、正しい使い方で壊れたのかどうかくらいはある程度の鍛冶師ならわかると思うよ。私も含めてね。それで、依頼はこれの修繕と言う形になるということ?」
「いえ、同じ物ができたとしても、それでは同じ未来をたどるだけですから。俺が望むのはそれ以上の物です。決して壊れることのない剣。それが依頼の内容です」
エルメラさんの言いようであればおそらく魔剣ステュラの復活はそう難しいことではないのだろう。しかし、それを成したところで魔王と再戦する時に必ず俺の前に立つであろうヒツギを倒すためには足りない。聖雪属性が乗った棺桶による一撃であっさりと壊れてしまうだろう。
「要するに国宝として名高いデュランダルに代表されるような不壊の魔剣。それが依頼内容ってことであってるかい?」
「それで間違いないです。作れますか?」
俺の問いにエルメラさんはうーんと考え込んでしまった。腕を組みながら何度も体を前後左右に揺らし、あーでもないこーでもないとぶつぶつ唱えている。
そして1分ほど経過し、ようやく1つの結論が出たらしく、口を開いた。
「……今の私の手持ちの素材じゃあ無理かなー。次の質問にもかかってくる話だけど、素材の持ち込みができるなら何とかってところ。私の持ち出しならその分金額も高くなるし、できない物も増えるから」
「アイテムボックスにあるものであればすぐに出せますけど、どんな物が必要なんですか?」
「不壊の魔剣自体は前に貴族の館からパク、代金としていただいた設計図を基に改良してやればできないことはないと思うんだけど、材料として聞いたことすらないモンスターの素材が使われてたりしてねー。結局のところそれと同じ効果を持つものであれば代替品でも互換品でもいいわけよ。下位互換はだめだけど」
「となると、エルメラさんに物を見てもらって、代替品として使うことができるかどうかを調べた方が早いって感じですかね?」
「それがいいかなー。私もいろんな龍の素材を舐めまわー…すように見て判断しなくちゃだめだと思うな! まあそれでも3つだけはそれじゃなくちゃだめって素材があるから、それが確保できるのか否かによるよ。ないなら1から研究になるね」
「その3つとは?」
「ずばり、鬼の皇帝だからオーガキングの上位種だろう、オーガエンペラーってモンスターの角。これは正確には素材とするんじゃなくて加工の魔道具として必要な感じかな。あと、文字がかすんでて見えないんだけど、太古に生きたとされる謎のアント種の甲殻。そんな昔から生きているアントがいるとは思えないんだけど、砕いて粉末状にして剣に混ぜこむんだ。不壊の能力の基礎になる部分だから、量が多ければ多いほどいいと思う。そして何よりも重要なのがオリハルコンを超える硬度の物質! この3つがあれば後は属性竜の素材とかで代用できるはず」
「……」
「まーいきなり言われても無理だよねー。そもそもオーガキングですらそうそう見ないのに、その上位種の角とか。あと太古に生きた謎のアント種って何! 設計図書いた人ももっとちゃんと書いとけっての」
やれやれと首を振るエルメラさんに対して、俺は何とも言えない表情を浮かべていた。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50) 剣闘士(60) 重戦士(70)
龍人 (20) 死龍人(20)
有効職業
聖魔??の勇者Lv20/?? ローグ Lv64/70
精霊使いLv32/40 舞闘家 Lv59/70
大鬼人 Lv20/40 上級獣人Lv15/30
魔導士 Lv81/90 魔人 Lv12/20
探究者 Lv31/99 狙撃王 Lv1/90
上級薬師Lv1/80
非有効職業
呪術師 Lv1/80 死霊術師Lv1/100
アーマーナイトLv1/99 剣闘騎士Lv1/99
上級龍人Lv1/30 死龍王Lv1/30 』
またも先週は投稿できずすみませんでした。
隔週更新が当たり前になってきているのが怖い…。まだ書く予定のない新作のネタばかり浮かんでくる…なぜだ!
それにしてもヤクルトの後半戦の勢いがやばすぎる…阪神の応援は止めないけどね。
ではまた次回




