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試練後の地上です1


 雷龍の用意した地上への転移陣で移動すると、そこは樹の外だった。試練でずっと戦っていた広場は別に暗いわけではなかったが、こうして日の光を浴びるのがなぜかものすごい久しぶりなように感じてしまう。

 何かの拍子にうっかり起動してしまわないように『クエイク』で箱を作って転移陣を隠す。簡易的な物だし、ちょっとの衝撃で壊れてしまうだろうが、ないよりはましだろう。

 てっきり試練のために俺を穴に叩き落すのにエンシェントエルフ様を巻き込まないようにするための口実とばかり思っていた会話にあったように、既にそこに穴はなく、中に入ることはできそうにない。かと言って、中にいる守護龍様とエンシェントエルフ様に気が付いてもらおうにも、ここから叫んだとしても中には聞こえないだろうし、なんとか気づいてもらえるのを待つしかないか。


「ヒメ、もう出てこれるんだろう?」


 自分の中に語り聞かせるように尋ねてみると、その返答はすぐに返ってきた。


「かぁう?」


 出てきたヒメは大丈夫かと問うように首を傾けた。うん、かわいい。


「黄龍はさっき会ったけど疲れからだろうな、寝てた。ゼルセはまだ無理そうか」


 アイテムボックスから串肉を取り出しながら聞くと、目線は完全にそちらにロックされていたがヒメは控えめにうなずいた。エンシェントエルフ様とエルメラさんから聞いた話では、死にかけていた俺を除けば従魔達の中で最もダメージが大きかったのはゼルセだ。それは戦闘のダメージだけではない。俺を救うために犠牲にした腕もまたそうだ。

 俺の回復系スキルは俺の魔力によって構成されている俺の従魔達にも適用される。このまま魔力の中で休み続ければゼルセの腕もまた回復してくれる。あいつのことだから試練の100連戦に自分が参加できなかったことを嘆くかもしれないが、出てこれないほどのダメージを受けたからにはきっとさらに強くなるために鍛えるだろう。


 ぴょんぴょんと跳ねるヒメの口元から串肉を上に遠ざけて遊んでいると、樹木という巨大な壁があるはずの方向から風が吹いた。それに気を取られて串肉を奪われ、振り返るとそこには中に通じる穴が開いていた。今度はそのまま地面とつながった状態で、樹によって作られてはいるが普通の洞窟のようだ。先ほどわざわざ高い位置に作っていたのはやはり俺を叩き落しやすくするためだったのだろう。やはり1発殴ろうか。


「ヒメ、行こうか」


「ムァウ」


 自らが勝ち得た戦利品として串肉を頬張りながら答えたヒメの頭に弱めにデコピンを入れてから頭に乗せる(定位置)と、再び開いてくれた穴を通って守護龍様の元へ向かった。




 エンシェントエルフ様の使った足元のライトもなく、俺にはそんな魔法は使えないから完全に真っ暗な洞窟を進むこととなったが、地面すら木でできている凸凹の道と違い、平らにならされた土の道は特に躓くようなこともなく、曲がり角もない洞窟をまっすぐに進んでいった。それでも暗闇で無意識にスピードが出ていなかったのか、先ほどよりは時間がかかって奥の広場にまで到着した。


「メイさん、よくぞご無事で。試練の突破おめでとうございます」


 試練の間ずっとここで待っていてくださったのか、守護龍様の居る空間までやってくるとエンシェントエルフ様から心配と安堵のまざった声がかけられた。


「ありがとうございます。おかげ様で無事……とは言い難い場面も幾度となくありましたがこうして突破できました」



「小僧、先だってここに来た時よりも一回り強くなっておるようだな。我が試練、よくぞクリアした。今回はお主を今代の白虎の主に足りる者であると認めよう」


『加護:古き森の守護者の加護 を与えられました。 』

『スキル:森の癒しLvMAXを習得しました。 』


 褒美だと言わんばかりに無言で守護龍様から加護が与えられた。また確認しなければならないスキルも増えてしまったが、まあ癒しであるし回復系と考えて後回しでいいだろう。


「守護龍様、ほんとに死ぬかと思いました。問答無用で底も見えぬ穴に叩き落されたお返しに1発でいいので殴らせてください」


「試練を受けよと言って素直にはい分かりましたと言うような男ではあるまい。だが、問答無用で落としたのはすまなんだ。エンシェントエルフからどれだけ言われたことか……。まあ、腕に1発程度であれば受けてやらんこともない」


 エンシェントエルフ様の無言の笑顔から目を背けつつ、守護龍様はべりべり根付いた木を大地から剥がして、顔を守るように腕を俺の方に差し出した。


「では遠慮なく殴らせてもらいます。『鬼の一撃・付与』」


 ヒメに頭から降りてもらい、腕に力を籠める。『鬼化』や『獣化』はさすがにやめておくが、あまりにも強化しなさすぎるのは何のダメージにもならないどころか下手したら俺の手がダメージを受けるだけになってしまいそうだ。


「ただし、できればだがな」


 腕に意識を集中していたところを守護龍様の圧力が襲い掛かった。出そうとした右足が突っ張って前のめりに地面に倒れてしまう。手で体を支えるくらいは間に合ったが危うく顔面を打ち付けるところだった。


「どうした小僧?」


 ちょうど腕に隠れてここからは顔が見えないが、おそらくニヤニヤしているのだろう。声が笑っている。


「……『死龍装甲』」


 全身に紫色の装甲を纏い、まるで何もないかのようにむくりと起き上がる。

 『死龍装甲』は名前の通り死龍の力を装甲として纏うスキルだ。『竜化』の状態で使うのであれば鱗が変色するだけなのだろうが、人型で使えばこの通り表面に鱗のような魔力の鎧を纏う。説明を調べる限りでは龍系統のもたらすあらゆる効果に対して抵抗力を上げるとあったが、これは抵抗力が上がっているというどころではないな。


「む」


 起き上がったことを察知した守護龍様から声が漏れる。俺が一度はなすすべなく地面に倒れたのはもちろん気が付いているだろうし、なおさらあっさりと起き上がったのには驚いただろう。


「『獣の一撃・付与』『破壊の一撃』」


 咄嗟に地面に手をついた時に消えてしまった『鬼の一撃』の代わりに強化を付与した。今度は重ね掛けだ。


「おい、小僧何をした? その力はなんだ?」


 守護龍様の放つ圧力がさらに強くなり、踏み出した俺の足元に軽いクレーターができる。しかし、歩きにくくはあるが、それほどの圧力を受けても『死龍装甲』による抵抗力によってまったく重みを感じない。


「エンシェントエルフ! 小僧を止めよ。その力はわしに届く」


 『死龍装甲』のもつ死龍の力の怖さを感じとった守護龍様からエンシェントエルフ様に指示が出る。しかし、エンシェントエルフ様はまったく動く気がなさそうだった。

 どんな表情をしているのかは見えないが、少しでも俺の動きを止めるためか、守護龍様の腕のすぐ真下から試練で戦った森龍の桁違いの魔力を帯びた根が行く手を遮らんとする。その太さは守護龍様の腕よりも細いが、九頭龍王の生やす森の木々よりも太い。『エアロ』と『バーストショット』の合わせ技でバカスカ吹き飛ばしていたあの森とは違い、生半可な攻撃ではこの根を貫くことすらできないだろう。


「守護龍様、これでは殴りにくいのですが」


「やめい。その力で殴られては腕を持っていかれかねん。小僧、その力を解除せよ」


「いや、最初にやったの守護龍様ですよね? 見てくださいよこの足元」


「い、いやちょっとしたいたずらだったのだ。エンシェントエルフ、お主からも言ってやれ」


「守護龍様、殴られてもいいと言いましたよね?」


「まだ怒っておったのか!? 龍殺しの力なぞ受けてはこの地の守護にも影響を及ぼしかねん。抵抗はせん。だがその力だけはだめなのだ」


 守護龍様の声に必死さが生まれた。さすがに守護に影響があるかもと言われてしまうと俺としても引かざるを得ないし、エンシェントエルフ様の立場からしたら止めざるを得ない。


「はぁ。メイさん、こうしましょう。牙か爪どちらか守護龍様が切り落とします」


「それわし痛いんだけど!?」


 止めているようで俺が直接腕を殴るよりもダメージが大きくなるように提案を出した。いつのまにか守護龍様の顔の隣にいたヒメがポンポンとやっているが諦めろと言っているのだろうか。あとでサイコロサイズのお肉をあげようじゃないか。


「どちらが剣に向いていますか? 普段から龍系の素材を扱っているというならエルメラさんに依頼しようかと思うのですが」


「耐久性を重視するのであれば牙、鋭さを重視するのであれば爪でしょうね。まあ守護龍様の爪ともなればそこらの物よりよっぽど頑丈にはなるでしょうが」


「どっちも欲しいですね……」


「さすがにどちらかにしてください」


「……なら爪でお願いします」


「守護龍様、だそうですので自分で切り落としてください」


「……龍殺しを受けるよりはましであるか。それに白虎様に言われてしまっては仕方ない」


 守護龍様は不承不承ながら反対の手で1本爪を切り落とすと、根を使ってこちらに差し出した。


「ありがたく受け取らせていただきます」


 授与式のように爪を受け取り、そのままアイテムボックスへしまうと、頭の上(定位置)まで戻ってきたヒメの口元へピンとサイコロ肉を弾く。


「かう!」


 目の前に来たお肉をパクンと捕まえると、そのまま頭の上でもにゅもにゅと味わい始めた。

 腕も元の位置まで戻し、恨みがましくこちらを見る守護龍様をよそに、エンシェントエルフ様から試練の様子について尋ねられた。


どうもコクトーです。


『刈谷鳴』

職業

『最大

 ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)

 盗賊  (50) 剣士 (50) 戦士 (50)

 魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)

 冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)

 狂人  (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)

 神官  (50) 剣闘士(60) 重戦士(70)

 龍人  (20) 死龍人(20)

有効職業

 聖魔??の勇者Lv20/?? ローグ Lv64/70

 精霊使いLv32/40   舞闘家 Lv59/70

 大鬼人 Lv20/40   上級獣人Lv15/30

 魔導士 Lv81/90    魔人  Lv12/20 

 探究者 Lv31/99   狙撃王 Lv1/90

 上級薬師Lv1/80

非有効職業

 呪術師 Lv1/80    死霊術師Lv1/100

 アーマーナイトLv1/99 剣闘騎士Lv1/99

 上級龍人Lv1/30    死龍王Lv1/30 』

先週は投稿できずすみませんでした。


ようやく地上に戻ってきましたね。ヒメの登場が1年ぶりということに驚きを隠せない…。これはヒメ祭を開催するしかない(焦)


ではまた次回

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