マナと『魔法学園』です
今回はマナ視点となります。ご注意ください。
「えー前回から続けて自分の得意な魔法を使って今の皆さんの制御能力を見てみたいと思います」
私は今、以前に鉄人形の試練を行った訓練場で10人ほどの『魔法学園』のギルドメンバー相手に講義を行っていた。
私が『魔法学園』で魔法の勉強を始めてから怒涛の1週間が経過した。幹部の1人が魔族と共謀して反旗を翻そうとするなんていうちょっとした大事件に巻き込まれたり、封印していたアイテムの輸送中に調子に乗った若いメンバーのポカによってその封印が解かれてモンスターが暴れるなんて騒動に巻き込まれたりとメイのことを歩くトラブル製造機などと呼んでいた自分に対してブーメランとして同じ言葉が帰ってくるような日々だった。
幹部連中1人1人が出す、一部まともじゃないような課題の数々をこなしていくことで、なんとか国王様との謁見が叶うまでに全員の承認を得られたが、その中の幹部の1人の出した課題が今の状況を作り出した原因だった。
『3日間程学園を離れたいからその間の臨時講師を務めること』
私が彼の部屋を訪れた時、待ってましたと言わんばかりに提示してきたのはそんな課題だった。
なんでも、この時期にだけ飛来してくる鳥系モンスターの素材を研究に使いたいから狩りに出かけたいけれど、講師の期間だからと『魔法学園』としては承認が下りなかったのだとか。依頼の形で誰かにとってきてもらおうにも研究に使う以上下手に傷がついてしまうと使えないからこそ自分で狩りに行っているとのこと。もともとの生息地がこのベスティア獣神国ではなく魔族の国アーディアにあるらしく、今を逃すと次に採取できるのはもう来年になってしまうということだ。正直3日くらいなら『魔法学園』として許可を出してあげてもいいのにと思いながらも、講義の内容は基本的なものでいいと言うし、それで許可をもらえるならと承諾した。
実際に講義をやるとなると、やはりと言うべきか『魔法学園』幹部クラスの人物がやるはずだった講義を私のような部外者の臨時講師が引き受けることを良しとしない人が多かった。つい先日ギルドに入ったばかりの新人も含めた若いメンバーばかりだったことも災いしたのか、当初40人はいた受講者は初日の開始時に不服ならこの3日間は受けなくてもいいと伝えた結果今いる10人しか残らなかった。
私が講義で最初にやったことはそれぞれの得意属性をわからせること。基本となる闇光火風土水氷の7属性。私みたいな『力』によって使えるようになったり、トーチさんのように上位属性となると途端に適性が少なくなっても基本なら全部使えるという人もいる。何もわからないままにたまたま今覚えているというだけでその魔法を使い続けるよりも、きちんと自分の得意不得意を理解して使った方がより強くなれるだろうからね。
トーチさんに極少のヘルフレアを渡して見てもらった時のようにビー玉サイズで起動したそれぞれのボール系魔法を自身の魔力を送ってその大きさのまま1分間維持してもらうこと。さすがにこの魔法使いしかいない『魔法学園』に入ることを許されただけでなく、私みたいな部外者の講義であっても聞こうとしてくれる人たちだけあって、渡した魔法玉をまったく維持できないような人はいなかった。それでも適性のない属性の魔法の球は私が注いだわずかな量の魔力しかないからすぐに消えてしまっていた。1分間維持できたのは2人が3属性。残りは全員1属性だけだった。
この講義以外にもいろいろと講義がある関係上、そこまで時間が取れなくて初日は属性の得意不得意を調べるだけで終わってしまったが、2日目からは得意な魔法を利用しての魔力制御の強化に充てることにした。
そして3日目になり、コツをつかんだらしい数人が、初日から比べると目に見えて魔法の精度が上がっていた。正直、この手の魔力制御の練習は地味だし成果が出るまでは時間がかかる。ここまで早く成果が出るのはあまり見ない例だ。
しかし、その全員がそれまで自身が使っていた属性とは別の属性に適性があったというのだからおもしろいね。普段雷、いや雷光魔法しか使わない黄龍ちゃんにやらせてみたらどうなるのだろう?
最後には的に向かってそれぞれが普段から使用している魔法を使ってもらって、3日間だけの講義は幕を閉じた。得意な属性の魔法を軸として魔力制御を学び、それを自分が使いたい魔法に対して応用する。本来のこの講義で伝えたかった内容がどんなものだったのかは聞いてないから知らないけど、魔力の制御技術は座学以外の魔法学すべてに影響があるものだ。どんな内容だったとしてもまったく役に立たないというわけではないだろう。
初日に7割の人がいなくなってしまったのは本当にショックだったけど、今回の講義でやった練習法を今後の自主練に取り入れると言ってくれた人もいたのは少し救われた気分だった。だけどお手本を見してくれと言われたから指先に5属性のボールを作って両手の間を高速で往復させたのを見てきもいと言った端っこの君。君だけは減点しておこう。
そんな風に変わったこともありつつも、『魔法学園』での日々は等級が上がって専門性を増していく資料とのにらめっこと共に過ぎていくのであった。
そしてそこからさらに1週間後。私とトーチさんは、ベスティア獣神国国王、ドルトムント・ベスティア・レルド様との謁見の日を迎えることになった。
どうもコクトーです。
今回はメイ視点ではないので職業レベルはなしとなります。
地上に戻った後の話だと思った? 残念! マナの話でした!
いや、正直試練の話がここまで長くなる予定じゃなくて、もともとここらでマナの話を入れる予定だったんです。ハイ。
次回はメイの話に戻るかな?
ではまた次回。




