守護龍の試練です22
『竜化』した姿は記憶にある姿とは変わっていた。
レベルが上がっているわけだから以前よりも一回り大きくなっているのは当然のことだが、それとは別の大きな変化があった。腕や足を覆う鱗が以前と比べて厚みを増し、色が若干紫がかった色に変わっているのだ。その一方で尻尾と翼は今までと変わらない。それぞれ付け根のところできっかりと色が変わっており、他の厚みが増しているせいでなんとなくそれらが頼りなく見えた。
『竜化』にかかった時間は数秒程度。その間九頭龍王は止まっているわけでもなく、すぐに雷と闇のブレスが飛んできた。最低限の『魔力盾』を展開して躱しきれない部分を防ぎながら横に跳ぶ。ブレスで迎撃するには間に合わずに盾を構えたが、いくつかある盾の隙間から細く弱いブレスが漏れてきた。俺は腕を盾に漏れ出てくるブレスを受ける。盾で威力を殺したことでほとんどダメージはない。
「「「ガガガガガガガガ」」」
ブレスの対処をしているうちにすぐそこまで広がってきていた森から木の根が伸びてくる。『火炎壁』で根こそぎ燃やすが、範囲を優先したせいで火力不足となって灰にまではならずに焦げ付いた根が左足に絡みついた。
空中にいる俺を地面に引きずりおろすために木の根がうねるが、力強く引かれる前に足に絡まっていたそれが崩れた。次の根に捕まらないように『爪斬撃』で伸びてくる根元を断ち切りつつちらりと視線を向ける。
左足を掴んでいた木の根は、焼け焦げているのとは別に腐り落ちるようにしてボロボロになっていた。その様子で、この『竜化』に起きた変化の理由に察しが付いた。死龍人のレベルアップで習得していたいくつかの死龍とつくスキルの効果だ。さすがに目の前の暗闇と森に姿を隠す強敵を前に確認をしようという気はないが、たしか腕や足は既にスキルとして持っていたはず。『死龍のブレス』と同じように攻撃に使うスキルだと思っていたがパッシブスキルだったとは。実際問題としてすべてを確認しているような余裕はなかったが、少しだけでも確認しておけばよかった。
爪にも龍殺しの力が働いたようで飛ばした斬撃によって切り裂かれた部分も同じように腐ってはいたが、それが広がるような様子はない。さすがにそこまでの効果はなかったか。
暗闇の中に光が見えると同時に俺もすぅと息を吸い込む。『竜化』しているからいつもの姿の時とは違ってこの溜めは必要ないのだが、ついついやってしまう。この癖はなんとかしないと隙になってしまうと反省しながらも溜め込んだ空気を吐き出すがごとく、全力で『死龍のブレス』を撃ち出す。
塊として飛ばしたブレスに暗闇の中9カ所からのブレスが殺到した。『竜化』状態によるブレス系の威力上昇の仕方がおかしなことになっている気がする。
すぐに次に動けるように構えながらブレスの塊の行く末を見守っていると、9本ものブレス攻撃によって減衰しながらも闇の中を突き進み、何にも当たることなく後方の壁をえぐった。
「なっ」
明らかにブレスの進行方向からもブレスが飛んでいたのにも関わらず九頭龍王の頭を消し飛ばせなかったのは解せないが、それならと範囲を広げて森ごと消し飛ばすように『死龍のブレス』を放った。
今度は3本の雷と、急成長を始めた木々、そして収束する闇がブレスを遮るために動き出す。先んじて木々から飛び出した葉がブレスに次々と呑まれていくが、広がるブレスには微塵の影響もない。吐き続ける『死龍のブレス』に宿る龍殺しの力の余波だけで消し飛んでいく。
『再生』がギリギリ追いつかない程度に魔力を消費し続けて吐き出すブレスは、広場一帯に広がった闇を収束させて作られた守りを少しずつ削り取っていく。雷も1本ずつであれば今の状態でも抑え込めるが、3つの頭からの攻撃を集められてしまうと次第にそこから押されてしまう。しかし、それでは他の部分の浸食が早まる結果になり、急速に削られていく闇から、森龍の頭が1本顔をのぞかせた。
必死の形相で木々にエネルギーを送って成長させている頭は、闇から出てしまっても再びひっこめるのが遅れた。そこに狙いを定めてブレスを収束させる。
「「「ガァァァアアアア」」」
俺の狙いはわかり切っていると言わんばかりに他8つの頭の攻撃が苛烈になる。だが、集中型のブレスが9本分の攻撃を突破できるのは証明済みだ。広がっていた闇を集めすぎて他の頭も2本3本と表に出てくる中、最後までなんとか躱そうと足掻いた森龍の頭を消し飛ばした。頭が消えたことで首がだらりと力を失って血を噴き出しながら崩れ落ちる。
さすがにこちらもブレスを吐き続けるのは限界で、首が倒れるのを確認してブレスを一時止めた。『竜化』状態でのブレスは通常と比べて破格の威力を発揮するものの、圧倒的な燃費の悪さで『再生』があったのにもかかわらず、成長している俺の魔力を既に半分以上持っていっていた。
1本撃ち落としたとはいえ、まだまだ8本の頭が残っている以上、威力を落とせないために『竜化』を解くわけにはいかない。それはわかっているが、すぐに『死龍のブレス』を再開してしまっては待っているのは魔力切れによる敗北だろう。4本、5本と頭を落としたのち、『竜化』を維持できなくなったことで自然と元の姿に戻るその感覚のずれが起きる隙をつかれて致命傷を負う。未来視などという特殊能力は持っていないはずだが、俺にはそんな未来がおぼろげに見えていた。
その状態で俺がすべきことは1つだった。大きく翼を広げ、地面を蹴ると同時に羽ばたきで勢いを増し、闇からある程度体が出てきた九頭龍王めがけて突っ込む。再び闇に隠れさせるわけにはいかないからだ。
向かってくる俺に、雷と木の根が襲い掛かってくる。『爪斬撃』を地面と平行に放って木々を切り払い、雷は仕方なしに腕の鱗を盾にして受けた。分厚い鱗は雷を受けて腕に若干の痺れを残したものの、大きなダメージにはならない。
雷を受けながら九頭龍王の頭の直接攻撃の射程に入ったところで翼を折りたたみ、邪魔にならないようにする。3本の雷が降ってきて、それを受け止めるのとほぼ同時に森が形を変えて俺を包み込む。さらにその木々すらも隠すように闇が流れてきた。さすがにこの距離にまでなってしまうと九頭龍王も瞬時に空間を広げることができる範囲に入ってしまうようだ。
光も入らぬ木々と闇の中で、雷を伴って頭が2つ牙を剥き出しにして襲い掛かってきた。
龍殺しの能力を帯びているとはいえ、雷龍の牙を無力化できるほど強くはないだろう。『雷纏』で少しでも影響を抑える努力をしつつ、両手に『鬼の一撃・纏』を使って回転するように裏拳で突進を流す。牙を数本へし折り、俺の腕も切り傷を付けられるが、比較的掴みやすい方の首をがっしりと両腕で捕まえると、その首に爪を突き立てた。そのまま力づくでその傷口を切り開き、もう片方の首には『ファングショット』を纏わせて鱗のない部分をを噛み千切る。
それぞれの開いた傷口から雷が暴発し、その衝撃で俺も上に弾き飛ばされた。空中に浮いた俺めがけて大量の葉が降り注ぐ。しかし、それらは『雷纏』と鱗に守られる俺には効果を発揮しなかった。
闇は残っていたが、木々の葉が一気になくなったことで枝の隙間から九頭龍王の胴体が見えた。俺は痺れの残る腕に『爪斬撃』を帯びた状態でその方向に突き出して木々の壁を壊す。そして、そのまま胴体の元までまっすぐ走り抜ける。このサイズをここからもう見逃すことはない。
九頭龍王をはっきり視界にとらえた。一瞬で壊されるのを覚悟のうえで『アイスロック』による足止めを試みると、案の定氷はすぐに砕ける。動きが少し遅くなった俺に森を砕きながら迫ってきた闇龍の頭が噛みつきに来るが、それをよけずに攻撃に魔力を回す。牙が脇腹に突き刺さり、鱗の放つ龍殺しの力が雷龍の頭にダメージを与えるが、離すまいとして牙がさらに肉に食い込む。
「このチャンス逃す手はねえ! 『死龍のブレス』」
3分の2ほどまで回復していた魔力を半分ほど使って至近距離から収束させたブレスをその無防備な胴体にぶっ放した。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50) 剣闘士(60) 重戦士(70)
有効職業
聖魔??の勇者Lv19/?? ローグ Lv61/70
龍人 Lv15/20 精霊使いLv28/40
舞闘家 Lv50/70 大鬼人 Lv17/40
上級獣人Lv12/30 魔導士 Lv62/90
死龍人 Lv14/20 魔人 Lv10/20
探究者 Lv15/99
非有効職業
狙撃王 Lv1/90 上級薬師Lv1/80
呪術師 Lv1/80 死霊術師Lv1/100
アーマーナイト Lv1/99 剣闘騎士Lv1/99 』
2週間ごとがデフォになりつつある気がしますが一応毎週更新が目標です。
ウソジャナイヨ。
いろいろありましたがオリンピック盛り上がってますね!野球が楽しみで仕方ないです。
みんなで雨柳さんが発動しないことを祈りましょう。
ではまた次回




