守護龍の試練です21
「……頭多くない?」
目の前に現れた九頭龍王。今までの傾向からてっきり三頭龍だと思い込んでいた俺はつい言葉を漏らした。九頭龍王は上位種であるだけあって三頭竜よりもさらに大きい巨体で、3種が3本ずつで計9本の頭を持ったモンスターだ。それぞれに対策を考える必要があることを思えば9種の龍じゃないだけましなのだろうが、それなら9本にすることないじゃないか……。
3種類の頭はそれぞれ先ほども戦った森龍、闇龍、雷龍のものだとは思うが、目の前のこいつの種類が九頭龍ではなく九頭龍王であることを考えればそちらも龍王になっているかもしれない。ただでさえ闇龍と雷龍という属性龍が2種。2体しかいないと言われていた龍王クラスの存在がそうポンポンと出てきてほしくはないけど。
あらかたの強化を終えていた俺ではあるが、戦闘の開始は九頭龍王からだった。
3つの森龍の頭と闇龍の頭が吠え、それぞれのWAVEで経験した2種による自身の空間の作成が始まる。3つの頭が同時にやっているからか、九頭龍王の周りに瞬く間に森ができていった。WAVE96の時とは違い、巨体がゆえに森の木々によって九頭龍王の体全体が隠れるようなことはないが、その森を包み込むように今度は闇が広がり、姿を隠していく。
「『エアロ』『バーストショット』」
広がる森めがけて魔法を連射する。森龍と戦った時の反省点として、この森が広がっていくことを許してはならないのだ。魔法で生み出された森ではあるが、この森自体は単なる物でしかないから『喰らう瞳』の効果は発揮されない。それでいて森龍の支配下にあるこの森はすべてが自由自在に動く。地面から根を突き出す。視界を覆いつくすように葉を飛ばす。枝が俺を捕らえようと鞭のように伸びる。『鬼化』で強化した力で引きちぎることはできるし、『全方位結界』で守ることもできるが、少しのミスで致命傷になる。実際、飛んでくる葉っぱで視界を塞いだ状態で、その奥から森龍が噛みついてきたときには反応が遅れてしまっていた。より強化されているはずの九頭龍王相手にそれは危険だ。
『バーストショット』の爆発が闇ごと木々を薙ぎ払い、こちらに飛んできそうな破片は『エアロ』が弾き飛ばす。一方の九頭龍王は爆風で飛んでくる木々には目もくれないし、ダメージを受けている様子もないが、それでもうざったさは感じているようで、闇龍の頭の1つが防御に闇魔法を回していた。
頭1つ分が闇を広げるのから外れてくれたものの、残念ながら俺の破壊よりも九頭龍王が森と闇を広げる方がわずかに早かった。『エアロ』に回している分を『バーストショット』にするか、ブレス系で薙ぎ払うのも手なのだろうが、雷龍の頭が一向に動かないのが不気味だ。
九頭龍王ほどの体格があれば爆風で飛ばされた木がクリーンヒットしても少し痛い程度で済むのだろう。しかし、俺に置き換えてみると木の枝1本であっても腕に当たれば打撲か骨折。頭に当たれば下手すれば死にかねない。『全方位結界』を張ってもそれを上回る威力だったのであれば意味がないし、他の攻撃で動いてしまえば結界など意味がない。
リスクを承知で『エアロ』を減らして『バーストショット』を増やし、ようやく広がりに対して上回れるようになったというところで、なかなか完成しない闇と森のフィールドに業を煮やした雷龍の頭も攻撃に移り始めた。
雷龍の頭の口元に集められた魔力から3本の雷が放たれる。森の広がりを防ぐのに回していた『バーストショット』が雷に貫かれて届く前に爆発させられた。放たれた先で枝分かれして広がる雷は、的確に『バーストショット』の炎を撃ち抜き、広がる森に届くことを許さない。
30秒程も続いた向こうの雷がいったん打ち止めになったところで『バーストショット』と『エアロ』を止め、バックステップで下がりながら『ダークネスランス』を本体に向けて放った。
しかし、闇の空間は爆風で散ってはいたが、既に広場の3分の2を埋め尽くした森から伸びる木々の盾によって軌道を変えられた槍はまともに九頭龍王に届くことはなく、数本の木を倒すだけに終わってしまう。そして爆風すらもなくなったことによって九頭龍王はその姿を完全に広がる闇の中に消した。雷龍の頭が纏っている雷が時々光って見えることはあるが、闇が広がっていくのにつれて見えなくなるだろう。
「『死龍のブレス』」
完全に見えなくなる前にと、闇の空間の中でパチパチと光って見えるそれめがけてブレスを放った。闇を切り開いて進むブレスに対して、九頭龍王も5つの頭からブレスを放って対抗してきた。何とかブレスは拮抗していたが、闇の中、別角度から飛び出してきた2本のブレスがそれ以上の抵抗を許さなかった。
『魔力盾』に乗り、『シールドバッシュ』で体を動かして逃げると集中が分散して威力の弱まったブレスが九頭龍王のブレスに押し切られる。
『スキル:森のブレスLv1 を習得しました。 』
『スキル:雷耐性Lv3 を習得しました。 』
『スキル:死龍のブレスLv3 を習得しました。 』
躱しきれずに受けてしまったブレスに混ざった枝葉が左足を持っていきそうになり、バランスが崩れたところをサンダーブレスが撃ち抜く。『喰らう瞳』でブレスは喰らえるが、それに付随する雷の熱が俺を焼く。威力の上昇に一躍買ってくれそうなレベルアップではあるが、本気になった九頭龍王の9本のブレスを同時に打ち破れるかと聞かれると自信はなかった。
『死龍のブレス』は龍に対して絶大な効果を誇るが、今の状態では頭5本分の威力しかないことが証明されてしまった。このままの状態では1レベル上がったことで6本目に耐えられるかもしれないが、7本、8本と攻撃に回されたら一瞬で飲み込まれるだろう。
しかし、この状況で九頭龍王を倒すことができる手段は何かと言われれば、それもまた『死龍のブレス』しかないと断言できた。闇と森によって姿形が見えなくなる前であれば『獣進化』からの攻撃もありだっただろうが、今となっては後の祭りだ。直接殴ろうにも近づけば森に呑まれかねず、召喚した魔法武器による攻撃、各種スキルを思い浮かべてみても、他に思いつくのは『暴食の王』くらいでそれもまたまともに使える状況ではない。
『再生』による回復に頼りながら『空蹴り』と『シールドバッシュ』で次々と闇の中から飛んでくるブレスや魔法をよけ、砲撃タイプにした『死龍のブレス』を放つ。しかし、向こうからは見えていることも影響し、それ以上の威力になるような本数のブレスで撃ち落とされてしまう。
「ダメージ覚悟でやるしかねえ! 『竜化』」
壁際まで追い込まれた俺は、ブレスの威力を上げるため、被弾面積が広がるのを覚悟の上で、体を竜のそれへと変貌させる。
スライムの液体の中、空気も少なく、考えが回らない状況下で使っていたWAVE92の時は気が付かなかったが、俺の『竜化』は、記憶にあるその姿とは大きく変わっていた。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50) 剣闘士(60) 重戦士(70)
有効職業
聖魔??の勇者Lv19/?? ローグ Lv61/70
龍人 Lv15/20 精霊使いLv28/40
舞闘家 Lv50/70 大鬼人 Lv17/40
上級獣人Lv12/30 魔導士 Lv62/90
死龍人 Lv14/20 魔人 Lv10/20
探究者 Lv15/99
非有効職業
狙撃王 Lv1/90 上級薬師Lv1/80
呪術師 Lv1/80 死霊術師Lv1/100
アーマーナイト Lv1/99 剣闘騎士Lv1/99 』
またも遅れてすみませんでした。書ききって時計見て日付変わっていてびっくりしました。
関係ないけどデイリーミッションやり忘れた…
梅雨も明け(?)プロ野球前半戦も終わりましたね。
我らが阪神は(ギリギリ)首位ターン! はい、そこすぐに陥落するとか言わない!
オリンピックも間もなく始まるというところまで来ました。自分は今年も家で観戦ですね。
ではまた次回。




