守護龍の試練です18
「『暴食の王』」
すぐ目の前にサメ型が迫る中、俺はビー玉ほどの小さな魔力球を生み出して迎え撃った。
このキングデーモンズスライムの液体の中では魔法を撃つことができないというのは放出された瞬間からその魔法に使用するはずだった魔力をすべてこの液体が吸収してしまうのが全てだ。
俺の『喰らう瞳』がその魔法そのものを喰らって『力』に変えるために効果までは無効化できないのに対して、この液体は魔法を発現するための魔力を吸収するために効果も発揮されない。暴発目的でうとうとした『エアロ』が失敗したのもそこが理由だ。
俺の使った『暴食の王』はその吸収速度を上回る早さで周りの液体を喰らいつくした。球体上に液体が消えた空間が出来上がる。サメ型は突然目の前の空間から液体が消え去ったことで方向を変えようとするも間に合わずに頭から液体のなくなった空間に突っ込み、その頭部が消えてなくなる。だらりと垂れるサメ型を逃さないようにゆっくりと『暴食の王』を動かす。周りの液体やお構いなしに突っ込んでくる魚たちを飲み込みながら大きさが少しずつ大きくなっていく。それに伴い液体のない空間も広がっていく。その拡大スピードに負けないように前に出していく。
『暴食の王』に飲み込まれ続ける液体と魚たちに危機を感じたのか、キングデーモンズスライムの体内にさらなる種類の魚が続々と召喚される。『暴食の王』の球体自体ではなく、それを撃った俺に狙いを定めて魚たちが槍を射出してきた。球体を避けるために山なりに放たれる矢だが、『暴食の王』の捕食範囲とでも言える距離に入っていたからそのすべてが液体を抜けた途端に『暴食の王』に喰われて消える。明らかに小魚やサメ型よりも素早いタイプも軒並み喰われていく。
他の魚たちが喰われていくのを見て、きちんと球体の捕食範囲を避けて液体のある場所を回り込もうとしてくる個体もいる。しかし、大量の液体と召喚された魚たちを喰らい、既に『暴食の王』はかなりのサイズになっており、少し上にずらすだけでそいつらも飲み込まれていく。範囲に入った部分だけでも喰い破られてしまえばバランス、そして力を失い広がり続ける捕食範囲に飲み込まれる。このままいけばもう30秒もしないうちに縦については完全にこの液体を断ち切れそうだと思うくらいのサイズ感だ。
『暴食の王』の操作に集中しつつも抜けてくる個体がいないことを確認できていたこともあり、完全に油断していた。『暴食の王』によって切り離される前にと、少しずつ俺のそばから液体がなくなっていくのも理由の一つかもしれない。
「ごふっ」
前方に集中しすぎていた俺に背中から小魚が突き刺さる。鋭い牙で背後から脇腹を噛み切って通り抜けた。血が液体の中にジワリと浮き出るが、すぐに『再生』によってふさがれる。体をひねってなんとかその魚を蹴りつけ、『暴食の王』の捕食範囲に飛ばす。しかし、液体の中でまともに足場もない状態ではしっかりとは蹴れず、魚は範囲に入る直前で止まった。その場で俺の肉片の付いた牙を剥き出しにして威嚇してくる。気が付けばそいつを中心としてその周囲には数体の魚が召喚されていた。
突然の攻撃に空気が漏れてしまったせいで、『竜化』で確保したとはいえ、少なくなっていたのが一気に減ってしまう。酸欠、喰い破られたことによる痛みも相まって、『暴食の王』の制御が一瞬途切れた。いや、途切れてしまった。
俺がこれまで『暴食の王』を使った時と今とで明確に違うことを1つ忘れていた。それは制御をサポートしてくれる存在、バアルコングがいないことだ。
そもそも、このスキルを俺1人ではそもそも操りきれない。だから今回も俺がこの液体の檻を抜け出せ次第『ベルゼブブ』で吸収して消す予定だった。その吸収に当たってもコルクによる制御のサポートがあってのことなのだが、すべてを喰らいつくす『暴食の王』と、それを吸収して我が力に変えるための『ベルゼブブ』。
たとえ一瞬のことであっても制御化を外れた以上、そもそも制御しきれない俺に制御を取り戻すことなどできるはずもなかった。
球体としてその身を保っていた『暴食の王』がウニのようにその身をあらゆる方向へ伸ばす。幸いなことに捕食範囲は『暴食の王』を中心に一定だ。それは伸びる先にも当然適用され、その伸びる先にいる魚たちが次々と喰われていく。
『暴食の王』の球体は止まることなく形を変え、その突起が俺の方にも伸びた。液体の中を何とか離れようとするが、『空蹴り』は空中ではないから使えず、他のスキルもこの液体の中では使えない。伸びてきた捕食範囲が俺の脇腹を喰らった。たまたますぐに引いてくれたおかげで致命傷にはならなかったが、少なくない体力を持っていかれた。
『暴食の王』の捕食範囲は、それまでと変わらず時を経るごとに、より多くを喰らうごとに広がっていく。今でこそ伸びたトゲの範囲は俺に届くが、中心たる球体の範囲は俺には届いていない。だが、それも時間の問題だろう。今も髪の先が少し喰われた。
全力で離れようとするが、普通の水よりも比重の重いこの液体の中でこれだけのダメージを負っていてはまともに動くことも厳しいか。
意を決し、その場で『暴食の王』が伸びてくるのを回避するのに専念し、足元めがけて伸びてくるのを待つ。だんだんとその捕食範囲を広げる『暴食の王』を完全に回避するのは難しく、腕や胴をかすめ、その部分の肉をえぐり取られる。
そして『暴食の王』のとげが足元に伸びてくるのを見て、俺はそこに左足を突っ込む。当然その足は『暴食の王』に喰われてとてつもない痛みをもたらすが、その痛みと引き換えになんとか空中に足を出すことに成功した。
『パワーエンチャント』『鬼の一撃・付与』『獣の一撃・付与』とこの液体の中でも効果を発揮するエンチャントスキルを使用し、全力で『空蹴り』を使って液体からの脱出を試みた。
もともとは壁際すれすれまで液体で満たされていたこの空間も、『暴食の王』によってかなりの量を食われてしまったというのもあるのだろうが、なんとか液体からの離脱を果たすことができた。出てすぐに生き残っている反対の足で宙を蹴り、勢いあまって壁に激突することなく地面に落ちる。さすがに脇腹と、片足が膝下辺りまで喰われてなくなっている状態でバランスをとって着地というわけにはいかないか。
何とかキングデーモンズスライムの液体から脱出できた。警戒を怠るわけではないが、目の前では『暴食の王』によってキングデーモンズスライムが内側から喰われている。俺が出したものではあるがその光景はあまりにひどいものだった。
キングデーモンズスライムが体内に召喚する様々な魚たちとともにその液体を少しずつ減らしていく。スライム側もただやられているわけではなく、一度に大量の小魚型を召喚して突入させたリ、遠距離からの射出で狙ってみたり、巨大なサメ型に突入させたりと手は打っている。しかし、相手が悪かった。
それから1分ほどかけて『暴食の王』はキングデーモンズスライムの液体をすべて喰い散らかし、範囲内に喰うものがほとんどなくなったことでそのまま消失してしまった。悔し紛れに『ベルゼブブ』を使おうとしてみても、そもそも発動してくれない。完全に虚空に消え去ってしまったようだ。
かなりの魔力を消費して『再生』で傷が塞がり、足が生えてくる光景を吐きそうになりながら眺めて回復を待っていたが、いつまで経っても次のWAVEの開始が告げられないことに疑問を抱く。だが、戦闘の邪魔になるからと切っていた『探知』を使ってみるとまだ1体だけ敵が残っているようだった。
キングデーモンズスライムであればまた液体に飲み込まれる可能性があると思いっきり空気を吸い込み敵が何なのか『鑑定』をかけた。
『デーモンフィッシュ(デーモン種)』
残っていたのはどうやら液体からはじき出されて捕食範囲から逃れた小魚の1体だったらしい。安堵の意味を込めてふーっとため込んだ空気を吐き出し、力なくぴちぴちと地面の上で跳ねるその魚にとどめを刺した。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50) 剣闘士(60) 重戦士(70)
有効職業
聖魔??の勇者Lv19/?? ローグ Lv61/70
龍人 Lv15/20 精霊使いLv28/40
舞闘家 Lv50/70 大鬼人 Lv17/40
上級獣人Lv12/30 魔導士 Lv62/90
死龍人 Lv14/20 魔人 Lv10/20
探究者 Lv15/99
非有効職業
狙撃王 Lv1/90 上級薬師Lv1/80
呪術師 Lv1/80 死霊術師Lv1/100
アーマーナイト Lv1/99 剣闘騎士Lv1/99 』
1日遅れてしまいましたが今日は個人的に有給でお休みだったのでノーカンということで…
予定として出してた有給まったくとってなくてちょっと?と呼び出されるのはもう嫌なのです…
今週は久しぶりに夜勤がないのはいいけど忙しそうなのでドウナルコトヤラ。
ではまた次回




