エンシェントエルフとの話です7
エンシェントエルフ様について俺は小屋から出て守護龍様の元へ向かった。
俺が寝かされていた部屋の窓からも見えていた姿ではあるが、外に出て改めて見えたその巨大な樹木は見るものすべてを圧倒するほどに存在感があふれていた。扉を開けてすぐには一歩を踏み出せず、エンシェントエルフ様に軽く声をかけられるまで足を動かせなかったほどだ。
小屋の扉を後ろ手に閉めながら外に出た瞬間、上から押しつぶそうとするような圧力を感じた。別に耐えられないようなものではなかったから同じように歩いていくエンシェントエルフ様のあとについていくが、守護龍様の元へ近づくにつれてだんだんとその圧力も強くなっていた。
守護龍様の元へまっすぐに向かっていた俺たちだったが、エンシェントエルフ様が唐突に立ち止まった。
「どうかされましたか?」
「この辺りまでは私も何にもせずに問題ありませんが、ここから先となると守護龍様の気分次第では危うくなることもあります。守護龍様の無意識の圧は感情に大きく左右されますから、体調の芳しくないあなたでは危険に感じるかもしれませんね」
「心配していただいてありがとうございます。正直寝ていたので覚えてはいませんが、ヒメたちは平気だったんですよね?」
手負いの状態のヒメたちが問題なく耐えられたというのにその主である俺が耐えられないというのは個人的に思うところがあるし、何よりもそれではヒメたちを従えるのにふさわしいとはとても言えないだろう。それはたとえダメージを受けていて体調が万全ではないとか、そういうのは言い訳にならない。
「そうですね。忠告は入れましたので、厳しくなったらその時はお声掛けくださいね」
煽りとも、応援とも感じられるエンシェントエルフ様の言葉にうなずくと、懐から宝石を取り出して自身に結界を貼るエンシェントエルフ様の横を通り過ぎる。
『ゆくぞ』
一歩。たった一歩エンシェントエルフ様の先を進んだその時、声が聞こえたような気がしたかと思えば圧力の桁が変わった。これまでの本当に無意識的に発せられている上からの圧力とは比べ物にならない、空気そのものが重くなったかのような全方位の圧力。決してそんなことはあるはずがないのに、まるで世界そのものが振動しているかのように感じるほどだ。
「耐えられないこともない」
俺は進むペースを落とさずに守護龍様の元へ歩みを進めた。一歩ごとに圧力が増す感覚があるがそれだけだ。敵意を持って襲ってくるようなこともない。ただ重く強いだけの圧力。守護龍様も半ば遊びのような感覚でやっているのだろう。
ペースが変わらない俺とは対照的に、徐々にエンシェントエルフ様との距離が開き始めた。一定の距離ごと結界とエンチャントを付与しなおしている結果だ。
別にエンシェントエルフ様の能力が低いとか、そういうことは一切ない。それどころか、マナと違い魔法に関してはスキル任せで何一つ研究とかもしていない俺ですらわかってしまうほどに高水準だ。
エンシェントエルフ様が使う結界は自身への圧力を弱めるためのものだけではない。そうした圧力からこの周囲の環境を守るための結界だ。守護龍様が放つこの圧は俺やエンシェントエルフ様でなければ息をすることもできないほどのものではある。エルメラさんが無防備にここに来たら間違いなく死ぬ。そう断言できる力を発揮している。
そんな人ですら殺してしまいかねないほどの圧が自然にとって害なさないはずがない。それを悪影響を与えないように弱め、分散し、向きを変え、霧散させているのがエンシェントエルフ様の結界だ。一歩ごとに強さを増す圧力の中を、まったく強度の変わらない結界で同じ効果を生むはずもない。エンシェントエルフ様は歩みを進めるたびに自身にかかる圧力から結界の強度などを事細かに計算し、組み替えているのだ。しかも自分へのダメージも与えないようにしながら。とても真似できるものではない。
守護龍様の放つ圧力の中をまっすぐに巨大な樹木にむかって歩いてきて、ようやく根元まできた。小屋付近であれば見えていたこの樹木の頂上も、ここまで来てしまってはどれだけ見上げても見ることはできない。そして、その表面に触れてみると、その存在感に圧倒される。
「今日はかなり強くかけていますね。守護龍様はこの中です。先ほどまでは白虎様たちと会話されるために外に出ておられましたが、普段はこの内側におられます」
「樹の中にいるってことですか?」
「この巨大な樹木は守護龍様のお力で生えている世界樹とも呼ばれるものの一本ですが、その内部には空洞があるのです。どの世界樹にも共通で核となる存在を収めるための場所と聞いていますが、世界樹の守護者たる者の居住空間とも言えますね」
居住空間と聞くと一気にアパート感が出てきたが、これほどの圧力をお遊び感覚で生じさせることができるような龍が守護するものがただの樹であるはずがない。
「あ、ありましたね。今日はあそこから入れそうです」
エンシェントエルフ様が指さす先には、直径3mほどの穴が開いていた。かろうじて開いているのが目視できるくらいの高さに開いており、言われるまで気が付かなかったくらいわかりづらい。
「転移系が使えなくなっていることですし、私が送りましょうか?」
「いえ、それには及びません。自分で跳びますので」
俺は『空蹴り』で穴に向かって跳び上がった。レベル上限に達した今、10回まで上に駆け上がることはできるが、穴がある位置はそれくらいでたどり着くような高さでもなく、何度か世界樹を足場として着地してリセットをかけながらスムーズに登って行った。
後を追うようにエンシェントエルフ様がフライを使って飛んでくる。調整してくださったのだろうが、それほど変わらない時間で穴まで到着すると、なぜか真っ暗で先の見えない穴の中をエンシェントエルフ様が手元に浮かべたライトの明かりを頼りに俺たちは守護龍様の待つ中へ進んでいった。
穴の中に入ったと同時に、それまで感じていた守護龍様の圧は鳴りを潜め、静かな一本道をただ進むだけになった。
「毎日とは言いませんが、守護龍様の元へ続く穴は場所を変えます。私だけであれば守護龍様の元へ転移で移動することもありますが、基本的には樹のどこかに開いている穴を探して、奥の空間まで進んでいくようにしなければ守護龍様には会えません。先ほどまでは白虎様にお会いにするために外に出てきてくださってましたが、あまり外に出たがりませんから」
「出たがると言いますか、出たらまずいのでは?」
「完全に出ないというわけではないですよ? とはいっても今回出られたのは600年くらいぶりでしたが。すでにこの樹と体が一体となってしまっておりますからそう易々と出ることはできませんが、樹に影響を与えないように分離させるのは守護龍様といえどかなり骨が折れておられました」
「600年とはスケールが違いますね」
「そうですね。おや、そろそろ出口のようですよ」
エンシェントエルフ様の言うように、真っ暗な道の先に光が漏れていた。ようやく守護龍様に会えるのか。
穴を抜けた先は樹の中とは思えない広さの空洞だった。中央には1本の樹が生えており、その樹の周りを取り囲むように横たわっているのが守護龍様だ。こちらを見てわずかに笑みを浮かべながら俺たちが下りてくるのを待っていた。
『よくぞ来た。エンシェントエルフ、穴を閉じる。先に小僧を下ろせ』
「空を蹴っていましたし大丈夫ですよね?」
「はい。では」
俺は穴からぴょんと飛び降りた。ある程度地面に近づいてから『空蹴り』で減速して着地する。そう思っていた。
『今代の白虎の主足らんとする者よ、試練の時間だ』
守護龍様の言葉に合わせて俺が降りるはずだった地面に穴が開き、これまでとは比べ物にならないレベルの重圧によって、俺はその大穴に叩き落された。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50)
有効職業
聖魔??の勇者Lv17/?? ローグ Lv46/70
重戦士 Lv62/70 剣闘士 Lv49/60
龍人 Lv10/20 精霊使いLv17/40
舞闘家 Lv29/70 大鬼人 Lv11/40
上級獣人Lv7/30 魔導士 Lv23/90
死龍人 Lv1/20
非有効職業
魔人 Lv1/20 探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90 上級薬師Lv1/80
呪術師 Lv1/80 死霊術師Lv1/100 』
先週は更新できずすみません。普通に書いていて間に合いませんでした。
今年ももうじき終わってしまいますね。
コロナ化という特殊な状況という点で、2020年は一生忘れることはないでしょう。
あんまり更新できなかったなぁ…
一応予定では年内にあと2話くらい更新しようと思っています。
まあ予定は未定、あくまで予定。です。
ではまた次回




