戦後の各門です
コロイドの街は俺たちのような騎士などの一部を除いていつもの喧騒を取り戻していた。と言っても、もともとそれほど賑やかというわけではなかったのだが。
町への被害は0、死傷者はオークと戦っていた騎士たち数人と街から出た領主含む20数名。ほかには転んで膝をすりむいたという報告しか来ていない。その人数を減らした騎士たちは、後処理に追われていた。
後処理といっても、面倒だと考えていたオークたちの死体の処理は3人に任せているので、書類関係のことと、領主がいなくなったことでこの辺りの利権を乗っ取ろうと画策してくる貴族の相手。それから住民への説明などだ。
あの戦いの時、北のオークを仕留めきって少し経った頃、南から爆発音が聞こえた。そして煙がもくもくとあがっていくのが目に見えた。それを見た瞬間、俺と各部隊長たちだけで街中を駆け抜けた。嫌な予感が的中してしまった。そのときの俺たちに出来たことといえば少しでも早く到着して被害を減らすことだけだった。
だが、ついてみれば戦いは終わっていた。そこにはメイとマナのもう一人の仲間、ヒツギの武器である棺桶が1つどんと立っていた。どうなっているかわからず、警戒しながら近づいていくと棺桶の蓋が開いてヒツギが出てきた。
ヒツギは出てくると軽くのびをして俺たちに状況を語った。
簡単に言えば領主が町を出て、魔族が現れて領主が死亡。その魔族は少し戦って帰っていった。
とのことだ。領主の暴走はこれまで何度もみてきたが、それで死んじゃ元も子もないだろうが……。
それから、2,3人を、もしかしたらまだ来るかもしれないということで見張りに残し、西の門のところにいるはずのマナのところに向かった。
西の門の前の草原は、『クエイク』で作られた壁こそなかったものの、見る影もなく凸凹になっており一部地面が焦げていた。いや、これ焦げるどころじゃないような気が……まあしばらく近づくなと看板を出しておこう。
「マナ、オークたちはどうした? 死体が一つも見当たらないのだが……」
俺が疑問に思ったのはそこだった。棍棒とか完全に錆びきった武器が数本ちらほらと落ちているが、オークと思われる死体はひとかけらもない。
「私の魔法で燃やして蒸発させちゃったんですけどまずかったですか?」
「じょう……はつ? ま、まあ死体の処理をしてくれたのならこちらとしても助かる。これからメイのところに向かうのだがマナはどうするか?」
蒸発という水以外の物質に対して使うことなんかまずないような言葉が聞こえたがおそらく気のせいだろう。あぁ気のせいだ。昇華ではないのか? とも思うがそこは突っ込まないでおこう。
「私も行きます。メイにご褒美もらうんだぁ~」
マナの顔がこれでもかというほど笑顔になる。ヒツギも軽く笑みを浮かべているのが視界の端に入ってきたが、これ以上は見てられないので顔をそらして東の門へと向かう。あ、看板作るよう言っとかないと……。
そしてまた数人を残して東の門へと向かった。もう何が来ても驚かないぞ!
結論を言おう。
無理だった! なんでオークの死体は少しもないのに草原はきれいなままで武器だけが山のように積まれてるんだよ! あの広域殲滅魔法『黒槍の雨』とかいう魔法をつかったのなら確実に地面はぐちゃぐちゃになるはずなのに……。そして何より驚くべきは、メイが4mほどになった武器の山から折れていない棍棒を嬉々とした表情で次々アイテムボックスにしまっていく姿だよ!
そもそもオークの武器は大半が棍棒だ。錆びた剣や斧などを使う個体もいるが、それはほんのわずか。おそらく死んだ冒険者とか、武器を置いて逃げなくてはならない状況に陥った冒険者の武器を拾って使ってるんだろうが、手入れもされていないそれでは初めのうちはいいかもしれないがすぐにダメになる。そうなるとまた棍棒を使う個体が多い。
それは今回攻めてきたオークたちにも言えることで、北の門に限ってみれば棍棒以外はおよそ30体。約10%だ。全部を無事に回収できたとしたらその数は270本。そしてあの山には見た感じ100本以上は軽くある。それを次々放り込んでいるが、普通アイテムボックスにあんなに容量はない。
だめだ……この3人といると驚くなというほうが無理なのかもしれない……。
「ん? マナもヒツギも来たのか。ヘレンさんも無事で何より」
「なんとかな。何人かは犠牲になってしまったが……」
「数が数だったからな……。しっかり弔いは」
「弔いはもちろんするさ。彼らは命を賭して街を守ったんだ。その頑張りに報いないで何が騎士か」
「そういやオークの死体って処理しちゃったか?」
「いや、まだ集めてる段階だと思うが……」
「ならそれ俺たちにくれないか?」
「……死体をか?」
「ああ。ヒツギ、お前ならすぐ終わらせられるよな?」
「吸収するだけだからね。集めてあるならいちいち死体のある場所まで行かなくていいしすぐに終わるよ」
「吸収?」
「あーヒツギの武器の力なんだ」
「そんな武器があるのか?」
「できれば口外しないでね。あんまり知られていい力じゃないし」
「恩人を貶めるようなことはしないさ。他に何か要求があるなら可能な限りでなんとかするが……」
「ちょっとタンマ。マナ、ヒツギちょっと」
メイは二人に手招きをして俺から離れる。何やら話し合っているようだ。内容は聞こえないが何の要求をするか話し合っているのだろう。無茶なことを言わなければよいが……。
それから2,3分が経ち、話し合いが終わった3人はこちらに戻ってきた。さぁ、どんなことが来ようと覚悟はしているぞ!
「俺たちが頼みたいのは4つかな。まずはさっきも言ったオークの死体を譲ってほしいってこと。その時は人払いもお願いしたい。見られたくないんだ」
「心得た。死体の処理を頼めるなら俺たちも他のことに人員を回せるからな」
「2つ目は装備がほしい。見ての通り俺たち防具もなんもないからさ。あ、マナは別だけどな。俺とヒツギの装備を整えるためにこの街の装備を売ってるとこで俺たちの防具を買う金を出してほしい。実は俺たち宿代くらいしかもってなくてな……。そんな高いのは選ばないから」
「この街の武器屋と防具屋ではましなものがあるかわからないぞ?」
「ああ。次の街で金を稼ぐまで使いたいだけだから。安物でいいんだよ。金銭的な要求はこれだけだから」
「うーむ……値段にもよるな。騎士団に充てられている予算の中で大丈夫なものであれば何とかしよう」
「ありがと。3つ目なんだけど、今回のことで俺たちがやったことを伏せといてほしい。まあ個人名を伏せてくれればそれでいいや。冒険者の協力でっていう風にしてさ」
「どうしてだ? 名前も売れるしギルドランクも上がるだろう。それに王都からスカウトが来るかもしれんぞ? 国王は優秀な人材を集めているそうだから」
「4つ目に関係があるんだけど、あんまり俺たちの名前が王都に知られるのはよくないんだよ。特に俺とマナは」
「何か訳ありというわけか……」
「まあな。詮索しないでくれるとありがたい」
「そんな野暮なことはしない。わかった。名前は伏せておこう。それで4つ目は?」
「勇者を名乗るやつか、王都から誰かが来たら俺たちのことはただの冒険者としてくれ」
「勇者というとあの数か月前に召喚された2人の勇者か?」
「勇者として動いてるのは1人だけどな。会いたくない」
「会いたくないって……どれだけ隠しきれるかはわからないぞ?」
「力づくでもってなったら名前くらいは言ってもいいけどできれば隠してほしい」
「わかった。武器と防具はいつごろ買いに行く予定だ?」
「明日の昼前」
「急だな。もうすこしゆっくりしてからでもいいのではないか?」
「できれば午後には出たいんだよ。ギルドマスターが絡んでこないとも限らないし」
「それは……。俺にはどうしようもない。だが、要求は4つとものむつもりだ。書類などをいじる必要があるな。失礼してもいいか?」
「頼んだ」
そして俺は詰所に急いだ。
その道中、偶然一緒になったメグに唐突に聞かれた。
「ねえ隊長、さっきのよかったわけ?」
「要求のことか? 別にできる範囲だと思うが……」
「情報に関しても?」
「…………これは俺の憶測でしかないんだが、マナとメイは勇者だ」
「はぁ!? それっておかしくない!?」
「以前隣の町に行った時に風の噂で聞いたんだが、召喚された勇者は3人という噂でな。うち2人はすぐに王都から姿を消したらしい」
「その2人がマナさんとメイさんだと?」
「憶測にすぎないから言いふらすなよ」
勝手な憶測を話しながら詰め所へ急いだ。
どうもコクトーです
『刈谷鳴』
職業
『冒険者 Lv41/99
格闘家 Lv41/50
狙撃手 Lv34/50
盗賊 Lv32/50
剣士 Lv31/50
武闘家 Lv26/60
戦士 Lv26/50
魔法使いLv32/50
薬剤師 Lv32/60
鬼人 Lv6/20
????の勇者Lv7/??
狙撃主 Lv1/70
獣人 Lv1/20 』
久しぶりのメイのステータスです
まだ更新してませんが…
ではまた次回