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深淵よりの死を語る勇者です-前編-

第三者視点です。ご注意ください。

 『名もなき物語(ネームレス・テイル)』『深淵よりの死を語る勇者』


 そこはありふれた漁村だった。村人は海に出てそこに生きる魚や貝などの魚介類を獲り生計を立てる。しいて他の村と違うとことを挙げるとすればその地が主要都市と呼ばれるいくつかの都市、そのどれからも遠く、近隣には町はおろか村すらない。周辺の森には数多の魔物が住み、未発見のダンジョンすら存在しているとまで言われている。にもかかわらずそこに住む人々が元気に暮らしている。

 そして、何よりも大きく違う点はそこに住まう龍人(ドラゴニュート)の数が多いことだ。


 その地域、その村のみを治める領主が龍人であることが大きく影響し、その大きいとは言えない村には普通とはいいがたいほどに龍人が多く住んでいた。

 その地に住む龍人たちは魚人を除く他の種族ではたどり着けない深海にまで平然と潜り、その肉体の力で他の種族とは比べられないスピードで泳ぎ、数人がかりでなければ持ち上げられないような巨体を軽々と持ち上げる。そのフィジカルを十全に発揮し、他種族とともに生きる。そんな彼らがいたからこそ、この村は誕生から今日まで続いてきたのだ。



 その日もその村では漁が行われていた。いつもと変わらぬ光景。しかし、龍人たちの中でも水龍の系譜に連なる者たちはある違和感を感じていた。

 漁に出た船が海の魔物に襲われる。それもまたいつもの光景ではあった。だが、その数が普段よりもわずかに多い気がしていた。


「波がおかしくなってきた。いつもよりは早いが今日は引き返そう」


 一人の漁師がそう言い出した。違いをまるで感じていない他の漁師たちはそれに疑問を呈するものの、龍人たちがその意見に賛同したことにより、彼らは村へ帰っていった。その船を、それらは目撃していた。



 その日の夕刻、村長が2人の龍人を護衛とし、領主へ連絡を取るために都市へと旅立った。領主は普段冒険者として活動している。というより、冒険者だったその龍人を国が囲うために貴族位、そして領主という立場を与えられていた。何か村長では判断がつかない事態に限り、冒険者ギルドを通じて領主と連絡を取る。そうして今日まで成立してきたのだ。



 2人の龍人の全速力の移動により、本来なら丸一日ほどかかる道程を一晩で走破した。到着してすぐ、休むことなく冒険者ギルドに向かった村長は、すぐに領主へと連絡をとった。海の様子がいつもと少し違う。本来であれば領主へと報告するような内容ではない。しかし、それでも村長がとったこの判断がこの上なく正しかったことはわずか数時間後に明らかとなった。




 たまたまそう遠くない町にいるため、パーティメンバーの了承を取り数日中にはこちらに向かうと回答を得た村長は、その日は町に滞在し、2人とともに翌日に村に戻る途中、その光景を目にした。

 数km離れた力もはっきりと確認できるその巨体が村を蹂躙する光景を。



 その巨体が一歩歩くごとに地面が揺れ、大きいな口から放たれるブレスが家々を軽々と吹き飛ばす。その巨体の周辺を飛び回り、攻撃を加えていくのは空を飛べる龍人たちだ。しかし、その巨大な魔物はそれを攻撃とも受け止めていないかもしれない。自分の周りを飛び回る屈強な龍人たちがまるで羽虫のように無視され、そしてその巨体の動く余波で吹き飛ばされる。護衛の2人のうち、風龍の系譜に連なる龍人が空を飛びその様子を確認する。

 そう時間をかけずに降りてきた龍人の語ったことは想像をはるかに超えるものだった。

 海より訪れたその巨体の魔物。村を蹂躙し、建物を吹き飛ばすその絶望だけではなく、海から続々と上陸する魔物の数々。海の魔物は水中でのみ生きられるものが多い中、その絶望が連れてきたのはその例外と呼べる魔物たち。龍種、サハギン、スクイッド種、タートル種。数多の魔物を絶望が引き連れる。



 これまで村を共に守ってきた小さな戦士たちが1人、また1人と減っていく。その光景を目の当たりにした彼らがとった行動は町へ引き返すことだった。一刻も早くこのことを伝えなければならない。その思いに突き動かされ、彼らは町へ急いだ。


 冒険者ギルド、町の騎士団、そのどちらも、彼らの話を眉唾物としてまともには取り扱わなかった。しかしその3日後、地鳴りとともに遠くに姿が見えたその絶望を見て、初めて動きを見せた。

 城壁に騎士を、冒険者を集め、戦えぬ民を逆方向へ逃がす。その中にはAランクに匹敵する実力者が何十人もおり、次期Sランク候補と呼ばれる者も中にはいた。それだけにとどまらず、遠く離れた地にいた水棲の魔物を得意とするSランク冒険者さえも集められていた。偵察隊からも村長達から受けた報告と同様の報告がなされた。得体のしれない巨大な絶望と、その絶望に引き連れられた数多の魔物たち。対巨大魔物用の陣形、対巨大魔物用の合体魔法。その巨体故ゆっくりと近づいてくるその絶望に対し、着々と準備が進められていった。


 城壁と、そこに備えられていく武装の数々。それが琴線に触れたのか、たまたま目についただけなのかはまったくもってわからないが、それは唐突に起こった。

 絶望の大きな口が町の方角を向いて開かれた。まだ町までは10kmは離れているそこからでもはっきりと見て取れたその動きを見て、人々は一様に命というものを感じたという。

 そして、そこから放たれた1本のブレス。それは彼らが用意してきた数々の準備をまるでなかったかのように飲み込み、町1つをそのまま地図上から葬り去った。




 そんな絶望に引き連れられた魔物たちをまとめて引き寄せた数人の冒険者たち。その一方で、絶望と相対したのはたった1人の女傑だった。

どうもコクトーです。


メイ視点ではないので今回はステータスは無です。


先週は更新できずすみませんでした。あまりに眠くて書く余裕がありませんでした…

次の日には体調崩すしある意味正解だったと思っていますが…


今回は短めです。

ほんとは1話で書いてしまおうともおもったんですが予定以上に長くなってしまったのでいったんここで切りました。

前後編で終わる予定です。


ではまた次回

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