エンシェントエルフとの話です1
「あなたから濃厚な龍の香りがしていてるんだけど、どういうこと? それは誘ってるってことだよね。私が襲ってもいいってことで。OK?」
舌なめずりをしながらこちらに迫るエルメラさんを見て、俺はそこはかとない恐怖を感じていた。
「黄龍達と常に一緒ですから、それで匂いが移っているってことなんですかね?」
「その可能性はないかな。さっきの龍のオーガ君、黄龍ちゃんのどちらとも違う龍の濃い匂いがしてるから。もっと言うと、もしかして龍の素材も持ってる? それか龍の素材を使用した武器かもしれないけど。この豊かな土とそこに含まれる鉱石によって硬さをもたらす独特な匂いなら地龍系は間違いないかな。でも、素材とか関係なく2種類の龍の匂いがするんだよねー」
少しずつ後ずさりをして壁にまで追い込まれながら、2種類の龍と聞き、俺は自分の現在のステータスを確認した。あの戦いの最中に解放された2つ目の文字となる魔の字。これにより、俺の謎だった職業は『聖魔??の勇者』になった。聖の字のような、完全に俺の能力と相反する名前だったのが、ある程度俺の能力に合ったものになったといえなくもないな。
しかし、今注目すべきなのはそこではない。俺が見るべきなのはそれよりも下、有効化されている2つの龍人の職業の方だ。ミラの町を守護する4体の龍の1体である火龍様と、高ランクで国からの信頼も厚い冒険者であるラムダさんの2人には既に伝えてあり、まだ言い訳のできる龍人の職業と、その二方にも伝えておらず、伝え方を下手に間違えると大変なことになる可能性のある死龍人の職業。このタイミングでこっそりと職業を入れ替えたとしてもエルメラさんにはきっとわかってしまう。そんな予感がする。
「ほらほら~。早くしないと解体して調べちゃうよー」
「あー、メイさん。噂レベルではありますが、彼女は龍のためであれば文字通り命がけで何でもするそうですよ。今の彼女にはあなたを助けたお礼という大義名分もありますから、早めに話してしまわないと腕の2本や3本は覚悟することになりますよ」
「エンシェントエルフ様、どんな噂を聞いたのかはわかりませんが、さすがの私でもお縄になるようなことはしませんよ。そりゃあいいっていうなら腕を切り落として、どうして濃厚な龍の香りがしているのか調べたいところですが、話してくれるということなら血と髪の毛と爪と唾液と皮膚の一部で我慢します」
それは我慢と言えるのかと問いたくもあるが、本当に腕を持っていかれるよりは全然いい。
「ちゃんと話しますから、ひとまず向こうのソファに戻りませんか? 正直、目が覚めたばかりでいろいろと現状について聞きたいという思いもありますし」
「おっとごめんよ。大丈夫。天井のシミを見ているうちに終わるからね」
「何も話が通じてねえ!?」
「面白いですね。ですが、この方には私個人としても、このヤカリ森国の王という立場上も聞かないといけないことがありますから、とりあえずは落ち着きなさい。そのあとであれば何をしてもいいわ」
「エンシェントエルフ様にそう言われたら私も引かざるをえませんね。お楽しみは後で」
解放されたともされていないともとれるこの状況で、俺たちは話をするべくソファのところに戻った。
エンシェントエルフ様に許可をもらって、アイテムボックスの中に入っている料理を食べてお腹を満たしつつ、事ここに至るまでの話が始まった。
「まずは改めて自己紹介でもしてもらえますか? 現状、私たちが知っている情報は、あなたはメイという名前で、どこからかこのヤカリ森国に死に体で現れた龍の香りがするらしい少年ということしか知りませんから。いうなればただの不審者です。まあ、正直に言えば私としてはある程度あたりはついているものの、本当にあっているかどうかはやはり本人の口から語ってもらいませんと」
「ま、不審者だろうとなんだろうと私からすれば興味深い研究材料とも言えますけどね!」
「エルメラ、話をややこしくしないように。ではどうぞ」
エンシェントエルフ様がそれまでと表情を一変させて鋭い眼光で俺の方を見る。無意識のうちにごくりと唾をのみ込み姿勢を正す。嘘は一切通じないと、そう言われているようだった。
「では改めまして。俺の名前はメイ。『マツノキ』という冒険者リーダーをしています。今はグリムの町近辺の森の中に館を買い、そこを拠点に活動しています。ランクは一応Bです」
「グリムの町って最近新しいダンジョンが4つも見つかった町だっけ? ドラゴンが出るダンジョンじゃないみたいだから興味ないや」
「それで、アーディアに拠点を構えるあなたが、1人で、いったい何の用でこの森に?」
「黄龍ちゃんから聞いた話はエンシェントエルフ様に話してあるけど、どうも言っていることがわけわかめなんだよねー。黄龍ちゃんが言っていることだから本当だということは間違いないと断言してもいいけど」
「黄龍からどんな話を?」
「それは後。辻褄を合わせるために変なことを言うかもしれないし」
エルメラさんは黄龍のことを信じてくれているようだが、100%の味方というわけではないらしい。
「本当のことを話しても信じていただけるかはわかりませんが、簡単に言えば敵に襲われて敗北を喫しまして、その敵の1人が使った魔法でこの森まで転移させられました。他の仲間もみんな別々のところに転移させられていると思います」
「黄龍ちゃんの言っていたことと違うところはないけど、本当なわけ?」
「『マツノキ』を襲いに来た敵は魔王とその配下の魔将と名乗っていました。俺自身そいつのことは『鑑定』ましたし、間違いないと思います」
「魔王!? なんでそんな大物の名前が!?」
「今でも信じたくありませんが、仲間の1人が記憶を封印されていた魔将の1人だったんです。いよいよ本格的に動き出すためにと、そいつを迎えに来たそうです」
「そのお仲間だった方は何という名前なの? さすがに魔王の仲間ともなればただものじゃなさそうだよね。アーディアと隣接しているこの国にも攻めてくる可能性が大きい。そうなったらエンシェントエルフ様もいろいろ知っておいた方が各里に指示が出しやすいですよね?」
「そうですね。その方の名前、戦い方等いろいろとわかっていれば対処もしやすいですから」
「記憶を取り戻した彼女は俺たちが知らないような攻撃もしていましたから、どこまで有効かわかりませんよ?」
「その辺はチミが考えることではないのだよ。その情報をどこまで信じるのか、そしてどれほど活用するのか。それはエンシェントエルフ様や各里の長などが考えることだ」
「そうですね。聞いてから判断します。ですので、あなたは聞かれた通り、その方の名前と能力を教えなさい。あなたの真の名前とともに」
どういうことかと首をかしげるエルメラさんとは対照的に、エンシェントエルフ様の表情は非常に冷たいものだった。
「……失礼しました。俺の名前は刈谷鳴。そして魔将だったのは大きな2つの棺桶を自在に操り、聖雪属性の魔法を使って戦う俺の姉、刈谷柩です」
「……ようやく手掛かりをつかみました。話を聞かせてもらえますね?」
エンシェントエルフ様の表情は期待を込めた喜びのそれに変わった。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50)
有効職業
聖魔??の勇者Lv17/?? ローグ Lv46/70
重戦士 Lv62/70 剣闘士 Lv49/60
龍人 Lv10/20 精霊使いLv17/40
舞闘家 Lv29/70 大鬼人 Lv11/40
上級獣人Lv7/30 魔導士 Lv23/90
死龍人 Lv1/20
非有効職業
魔人 Lv1/20 探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90 上級薬師Lv1/80
呪術師 Lv1/80 死霊術師Lv1/100 』
先週は更新できずすいませんでした。
過去に書いてた話と同じと気づかずにガンガン書いてまして…。
投稿する前に気が付いてよかったです。そのせいで一週遅れましたがまぁ、ね。すいません…。
新しいPCになり、コントロールとファンクションのキーの位置が今までと逆になりました。
慣れねえ!
ではまた次回




