エルフの森です7
全身を襲う気怠い感覚が、意識が戻るのに合わせるようにして消え去っていく。意識のなくなる直前にはもはや言うことを聞かなくなっていた体に感覚が戻っていくのを感じる。今はどこかに寝ているようだが、既に痛みはなくなっており、感じていた寒さもなくなっていた。
重い瞼をあけてみると、俺はどこかの部屋のベッドに寝かされているようだった。
体を起こして自分の体を確かめてみる。左半身を覆っていた雪はなく、元の俺自身の肌に戻っていた。しかし、脇腹あたりには火傷の跡が円状にはっきりと残っており、『再生』がきちんと機能しているはずなのに一向に消える様子のないこの火傷跡は、ヒツギのあの攻撃を受けた影響なのだろうか。
現状、なぜか俺でも習得できる聖属性の耐性スキルである『聖氷耐性』。『再生』『リジェネレイト』と並び、おそらく俺の体をヒツギの攻撃から守ってくれていた殊勲スキルだ。これがなければおそらく死んでいた可能性が高い。大元になった短剣を譲ってくれたモモさんに感謝だな。
火傷跡こそ残っているものの、自分の体が問題なく動きそうだと確認した俺は、ベッドからでて立ち上がった。自分がどれくらい寝ていたのかわからないが、それなりには長い時間寝ていたのか、急に立ち上がったためなのか少しふらつく。
頭を振って意識をはっきりとさせると、自分の魔力の繋がりが少ないことに気が付いた。渦に飲み込まれる寸前でマナたちにつかせた影響か、アンナやカルアたちを感じられない。しっかりと感じ取ることができるのはヒメ、黄龍、ゼルセの3体だけだ。その3体も今は出ているらしく、そう遠くないところにいるみたいだ。
まだ体が重い感じはしているが、俺は部屋の扉の方に歩き出した。ベッドが部屋の奥にあるとはいえ、それほど広くない部屋だ。
「うぉ」
扉を開けようとした瞬間、向こう側から扉が開かれた。慌てて腕を引いたから当たらなかったものの、もう少し近づいていたら顔に受けていたかもしれない。
向こう側から扉を開いたのはエルフだった。その手に桶とタオルを持っており、おそらく眠っていた俺の面倒を見てくれていたのだろう。
「あら、目を覚ましたんですね。あちらで従魔の方々がお待ちですよ」
「えっと、あなたに助けていただいたんですか? ありがとうございました」
「私がと言っても間違いではありませんが、そもそもあなたの命をつなぎ続けていたのはあなたの従魔達ですし、あなたをこの場所まで連れてきて、二度とないであろう、守護龍様から直々に褒美を受け取る機会をふいにしてまであなたを助けるようにと頼んだのは奥で待機している別のエルフですよ。変態ですが」
「その人にもお礼をしに行かないといけないですね」
少しどころじゃなく気になる一言があったが、目の前のエルフが二度とないと断言するくらいの褒美を断ってまで俺を助けてくれたということだし、何か力になれることがあればいいのだが……。
「看病の邪魔になりますから向こうで待機してもらっていますが、あなたが起きたとなればすぐにでも会いたいでしょう。ボーっと立っていないで、どうぞこちらへ」
「どうも」
俺はエルフに手をとられ、ヒメたちのもとへ向かった。
「かぁぁぁぁああああうううううう!」
「ちちさまぁああああああああああ!」
ヒメたちが待機している部屋に入った途端、弾丸のごとく俺の胸に飛び込んできた2体に押し倒された。倒れる直前で手を離したからエルフは巻き込まなかったが、後ろの壁まで吹き飛ぶことになった。
「心配かけてすまなかったな」
「よかった、よかったのだ! ほんとに……うわぁあああん!」
俺の胸の上でヒメと黄龍はわんわんと泣き出してしまった。2体の頭をなでて泣き止むのを待とうと思ったが、緊張の糸が切れてしまったのか、2体ともそのまま泣きつかれて眠ってしまい、俺の魔力の中に戻ってきた。あの戦闘からずっと出続けており、俺が意識を失っている間もずっと頑張ってくれていたのだ。無理もないだろう。
ヒメたちのように飛び込んでこなかったゼルセも、同じように気が抜けたのか奥のソファでうつらうつらと船をこいでいた。何かをうかがうようになんとか目を開けてこちらを見たゼルセに対してうなずくと、ゼルセも目を閉じて俺の魔力に戻ってきた。
ヒメたち3体が俺の魔力に戻る様子を興味深そうに見ていた、俺を連れてきたエルフとは別に、ゼルセがいたソファで目をらんらんと輝かせてこちらを見ているエルフがもう一人いた。この人が褒美を受け取る権利を断ってまで俺を助けるように頼んでくれた人だろう。
「初めまして。ヒメたちの主のメイと言います。命を救っていただき、本当にありがとうございました」
「こっちとしては一方的に知っているだけだったかな。私はエルメラです。黄龍ちゃんとの約束を果たしただけではあるんだけど、助かってよかったよ」
「黄龍は今疲れて戻ってしまってますし、ちょっとその約束を聞けてないんですけど、俺ができることであればなんでも」
「ん? 今なんでもって言ったよね!?」
「え、ええ。命の恩人ですし、できることであれば」
あっという間にソファから目の前までやってきたエルメラさんは興奮気味に詰め寄ってくる。ちょっと失敗したかなという思いもありながら、俺の頭の中ではもう一人のエルフがこの人について話したあの一言がこれでもかと主張してきていた。
「うーん、まずは何をしてもらおうかなー。オーガ君と黄龍ちゃんの素材をもらうのはもう約束してるし
、ここはやっぱり前々から狙ってた龍を狩ってきてもらうのがいいか?」
普通にいけばなかなかぶっ飛んだことを考えているみたいだが、正直その程度であればありがたい。全財産とか言われていたら躊躇するところだったが、龍王クラスでなければなんとかできる可能性は高い。なんなら、ずっとアイテムボックスに入ったままの大量の龍素材の中に同じ種類がある可能性もある。
「あ、そうだ。まずはこれから聞いておかなきゃ」
「なんでしょう?」
「あなたから濃厚な龍の香りがしていてるんだけど、どういうこと? それは誘ってるってことだよね。私が襲ってもいいってことで。OK?」
舌なめずりをしながらこちらに迫るエルメラさんを見て、俺はそこはかとない恐怖を感じていた。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50)
有効職業
聖魔??の勇者Lv17/?? ローグ Lv46/70
重戦士 Lv62/70 剣闘士 Lv49/60
龍人 Lv10/20 精霊使いLv17/40
舞闘家 Lv29/70 大鬼人 Lv11/40
上級獣人Lv7/30 魔導士 Lv23/90
死龍人 Lv1/20
非有効職業
魔人 Lv1/20 探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90 上級薬師Lv1/80
呪術師 Lv1/80 死霊術師Lv1/100 』
ひっっっさしぶりのメイ視点でした。
投稿遅くなりすみません。仕事が忙しく、土日に体調崩すことが増えたりなどでなかなか書ききれなかったのとPCが結構やばかったのです。
日に何度ブルースクリーンを見ればいいのか……
この度新しいPCを買いましたのでしばらくはPC問題は解決しましたね。ヒャッホイ!
予め忙しいとされてきた8月を超え、新たに忙しい宣言を受けた9月が始まります。
確定じゃないけど夜勤7回くらい入ってたんですよ。月1でも多いと思ってたのに…
ではまた次回




