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エルフの森です6



 エンシェントエルフは、メイの体を蝕む聖雪属性の魔力を抜くのに集中する。

 エンシェントエルフがメイの体から伸ばした魔力の糸が巻き付いた石は、3,4周ほど巻き付くとパリンと砕けてしまう。メイは自身の持つ膨大なスキルのおかげで何とか耐えているが、その体を蝕むその魔力のもともとの効果が発揮された結果だ。エンシェントエルフのアイテムボックスに入っていた石ではあるが、別に特殊なものだから入れていたというわけではない。普段生活をしている中でたまたま目についてアイテムボックスに入れていただけで、使い捨てるのにちょうどいいからこうして使っただけだ。

 石が砕けたのを見て、すぐに魔力の行き先を次の石に変える。間違っても地面に魔力が向かうことは避けないといけないとの判断があったからだ。


「思ったより石が砕けるのが早いね。砕けてもなんの問題もないゴミとかもってないかしら? 石の消費量と彼の体からはがせた量を考えると足りなさそうですので」


「それならうってつけの物がありますよ。結構な魔力を注いだら石を生み出す盾。名付けて生石盾です」


 エルメラが取り出したのは一見すると、十字の模様が入っているだけのただの盾だった。しかし、エルメラが魔力を注ぐと、十字の交差する模様の付近からポンと石が生まれ、その場に落ちた。


「ほんとは石礫のように飛ばして牽制でもできればいいなと思ってたんだけど、魔力消費は大きいし、その割にできあがる石は小さいし、どうしてもその場に落ちるだけで前に飛んでくれないし……」


「いまはそれがいいのだ! ゼルセ、ヒメ!」


「かう」


 遠い目をして盾の性能を語るエルメラをよそに、黄龍の言葉にお前に言われるまでもないと言うようにヒメが1歩前に進み出た。しかし、ヒメよりも先にエルメラの手からゼルセが盾を取り上げ、魔力を込め始めた。

 1個、2個と続けざまに次々と地面に石が落ちる。それらを黄龍とヒメが重ならないようにエンシェントエルフの周りに並べていく。


「ありがとう。これで心配はなくなったわね」


 エンシェントエルフはメイの体から魔力をはがすペースを上げた。次から次に聖雪の魔力が石に移されてはそのまま破裂していく。

 生石盾を握るゼルセが汗を流しながら石を生成し続けること10分。ようやくメイの体の見えるところから雪がなくなった。しかし、魔力の糸はまだまだメイから伸びていた。


「思った通り内部にも魔力が残っているのね。でも、もう一息」


 エンシェントエルフがそれまでのように手を触れるだけではなく、メイのお腹に置いた手をぐっと押し込んで魔力を抜き始める。表面からはがす時よりはゆっくりとしたペースになり、そしてついにはメイの体から出ていた糸が途切れた。


「もしかして終わったんですか?」


「……いえ、まだね。奥深くにまだ残っているわ。多分この魔力の肝になる部分ね。何かがつまっているような感じ。うまく出てこない」


「それは、どうにかならないんですか?」


「今すぐにどうというわけにはいかなさそうよ。でも、あまり時間をかけているとまた雪が体を覆わないとも限らない」


「さっきまで広がりは止まっていて、ほとんど抜きとれたのにまだ広がるかもしれないんですか?」


「たしかに彼のスキルのおかげで表面上の広がりと言うのは止まっていたわ。でも、この魔力の中心付近ではまだ打ち勝ったとは言えない状態だったのよ。今はその核部分だけだから広がっていないけど、すぐに彼の魔力を吸って雪の広がりを見せるはず」


「かうかう、かーう?」


「ふむふむ。そのきもというのはこのへんであってる?」


 魔力を抜くペースが落ちたことで石を並べるのを止めていた黄龍とヒメが、飛び乗ったメイのお腹の上で何かを探るようにしてぺたぺたと触り、2体とも同じところで手足を止めた。


「ええ。その辺りで間違いありません」


「かう」


「わかってるのだ。しっぱいはゆるされない!」


「何をするつもりなのですか?」


「じゅんびをおねがいするのだ! われがあわせる。思いっきりやるのだ!」


「かう!」


 ヒメと黄龍がメイの体の上からどいたのを見て、おもむろにゼルセがメイの頭と足の部分の土を押し上げる。そしてメイの真下の空いたスペースに黄龍が入り、先ほどエンシェントエルフに聞いた位置に背中側からその小さな手を押し当てた。


「いーち、にーの、さん! でんじほうなのだ!」


 黄龍がメイの体を貫く雷撃を放った。そのまま天まで飛んでいく雷撃が過ぎた後、メイの体にはしっかりとその跡が穴と言う形で残っていた。


「いやぁああああ、黄龍ちゃんなにやっちゃってるの!?」


 エルメラの悲鳴がやかましく響く中、『再生』によって穴がふさがり始める前に、黄龍がその手を穴に入れ、電気を流し始める。


「はんのうは?」


「かう!」


 電気を受けながらもメイの体に空いた穴を覗き込むヒメが、チリチリと焼ける表面に混ざる、異物の核を見つけた。

 それはメイの内臓の一部を取り込み、血管を網のようにして自分にまきつけて固定されていた。すぐにヒメがカチカチと数度歯を噛み鳴らすと、半透明な牙が血を浴びながらその巻き付いている血管を噛み切り、既に融合しかかっている内臓の表面ごとえぐり取った。


「あう」


 血で汚れるのも電気で顔を焼かれるのもためらわず、穴に顔を突っ込んだヒメがそれを咥えて空高く放り投げた。


「今なのだ!」


「そういうことでしたか。守護龍様に負けず劣らずの無茶苦茶です」


 エンシェントエルフはまだ辺りに残っていた石をさっと拾い上げると、魔力を込めてヒメが放り投げた核に投げつけた。


「伏せてください」


 エンシェントエルフがそう言って数秒後、投げつけた石が爆発し、核を風の球体が包み込んだ。


「切り刻みます」


 風の球体に指先を向け、くるくると動かすと、指の動きに合わせるようにより中の物を粉々に切り裂きながらどんどん球体は小さくなっていった。

 ゆっくりと下降しながら小さくなる風の球体は、最後にはエンシェントエルフが指先でつまめる程度の大きさになって、その口の中に消えていった。


「食べた!?」


 コロコロと舌先で楽しむように口の中で転がし、そのまま球体を飲み込むと、エンシェントエルフは身震いをして恍惚の表情を浮かべる。


「あぁ……ごちそうさまでした」


「あ、あの、それ食べて平気なんですか? さっきまであんなに」


 不安そうに尋ねるエルメラに見向きもせず、余韻を楽しむエンシェントエルフだったが、すぐにそれも終わらせ、メイの方に向きなおった。


「私の風で魔法そのものを砕いたので問題ありませんよ。聖雪属性の魔力なんて何百年ぶりでしょうか。彼の方はもうこれで大丈夫そうですね」


 胸をなでおろして安堵の表情を浮かべるエンシェントエルフの視線の先で、メイの体に空いた穴は既にほぼほぼ塞がりかけていた。それまでのダメージの影響からか、円状に火傷跡が残ってしまったものの、呼吸も落ち着きを取り戻し、命に別状はなさそうな様子だった。


「どれ……完全に魔力も抜けましたね。しばらくすれば目を覚ますと思います」


「「よかったー」」


 もう大丈夫だという言葉を受け、力の抜けた2体と1人がその場にへたり込んだ。


「主よ、よかったのであるな」


「かーうー」


「守護龍様、彼が目を覚ますまで、一時的に私の屋敷にお連れしたいと思います、よろしいですか?」


「うむ。そこのエルフもわしの前よりは楽に休めるだろうしな」


「お言葉に甘えます」


「それがいい。おい鬼、運んでやれ」


「がぁあ」


 渋々といった感じでゼルセが守護龍の言葉にうなずき、エルメラを肩に担ぐと、ヒメと黄龍がのっかったメイをそっと抱え、エンシェントエルフの後についていった。



どうもコクトーです。


今回もメイ視点ではないのでステータスはなしです。


先週は投稿できずすいませんでした。ちょっと書けなくて、気づけばこんな時間に…

直ったと思っていたPCの不具合がまた発生し始め、新しいPCの購入を検討する今日この頃。

でもリモートの設定やり直すの面倒くさいなぁ…


今月は仕事が忙しいのでうまく書けるかわかりませんが、なんとかガンバリマス。

休日にまで仕事はしたくないでござる…


ではまた次回

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