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エルフの森です5

「えっと、本音はすっっっっっっっごいほしくはあるんですが、黄龍ちゃんとの先約がありますから辞退します。その代わり、そこに寝ている彼を助けてもらえないでしょうか?」



 エルメラの問いに、唖然とするエンシェントエルフをよそに、守護龍は大声で笑いだした。



「はははははははは。おいエンシェントエルフ、聞いていた話と違うぞ?」


「そうですね。私も報告に聞いていただけではあるのですが、正直驚いています」


「え? どういうことです? だめですか?」


「いや、別にだめということはない。だがよいのか? 今回を逃せばわしの爪、素材を手に入れるチャンスなど二度とないぞ?」


 守護龍はエルメラに対していじわるそうな笑みを浮かべたまま問いかける。エルメラはエンシェントエルフの手元にある爪を改めて見て、断腸の思いと言わんばかりに声を絞り出した。


「やっぱりすっっっっっっっごいほしくはあるんですが、やっぱり、私は約束は守る女なので。黄龍ちゃんと、彼を治すと約束した以上は誠心誠意お願いするだけです。私には治す力が足りませんし」


「そうか。今なら以前はがれたウロコも付けてやろうかと思ったのだがな」


「うっぉまじでいいの!? っじゃなくて、彼を治してあげてください!」


 守護龍の誘惑にのってしまいそうになりつつも、エルメラは頭をさげて守護龍に頼み込んだ。すっとエルメラの横に並んだ黄龍とゼルセも同じように頭を下げていた。守護龍の視線がエルメラたちからずれ、ヒメの方を向くと、同じようにヒメも頭を下げた。


「さすがに誘惑がわかりやすすぎたか? エンシェントエルフよいな?」


「かしこまりました。ですが、私にもできるかどうかわかりませんからね? 長く生きていますから回復魔法はそこらの魔法使いなんかよりは得意ではありますが、まだ容態を見ていませんから」


「お前でも無理なのであればその時は倉庫の方にエリクサーがあったはずだ。それを飲ませればだいたい治るだろう」


「あれは現存する数少ないエリクサーの1本とお聞きしておりますがよろしいのですか? 万が一の時のためにとおっしゃっておりましたが」


「主が傷つき倒れた時、わしが助けられる状態であればと思ってとっておいたものだからな。既に戦士として最後まで戦い、敗れ、生まれ変わってこうしてわしの目の前にいる。こうなってしまえばもはや不要の産物だ」


「かうかう」


「ふふ、『白虎がそれを使って延命したいと望むと思うのか?』ときたか。確かに、あの主であれば傷ついた配下に使えと言ってきそうではあるな。わしがそれを素直に聞くとは思わんが」


「かうかーう」


「エンシェントエルフ、頼んだぞ」


「かしこまりました」


 エンシェントエルフが地面に寝かされたメイの下へ歩み寄る。同じくメイの下へ向かうヒメと対照的に、治療を邪魔をしてはいけないとエルメラを抱えたゼルセがメイの側を離れようとするが、エンシェントエルフがそれを手で制した。


「とりあえず彼がこうなった状況を教えてもらえるかしら? 見たところ外傷は回復しているようだけど」


「私が森で見つけた時はもっと酷かったんですが、黄龍ちゃんたちの頑張りと、彼自身の回復能力が優れていた結果ですね」


「森にそんなことをできるようなモンスターがいたかしら?」


「ここにはてんいされてきたのだ。ちちさまもわれらも、おうちのちかくでまけてしまったのだ……」


「転移ですか。ですが、『おうち』と言うことは彼らが拠点としていた建物があったということ。近くに白虎様が住んでいたのであれば守護龍様が気づかないはずがない。どれくらいの距離を飛ばされたのですか?」


「わかんないのだ。『しのそーげん』のちかく!」


「『死の草原』は聞いたことがあるね。以前やってきた冒険者が話していたダンジョンのはず」


「ふむ、私は知らないわね。守護龍様も当然知らないでしょうし」


「でも、あそこは『デルフィナ』の中でも東の方にあったはずだけど、そこから飛ばされたの?」


「かなり遠いですね。まあ詳しくは彼を起こして聞きましょうか。外傷はもうないということは体の中にダメージが残っているか、精神体にダメージを負っているせいで起き上がれないか。どちらかという感じでしょうかね」


「黄龍ちゃんが言うには、体の中に敵の攻撃で魔力が残っていて、それが体を蝕んでいるんだとか。私の作った魔力吸収の小刀で多少は抜いたのですが、キャパシティオーバーで抜ききれなかったんですよ」


「まああれほどのモンスターたちを従魔として従えている人間が並の魔力ではないことはあなたにも想像ができていると思うけど」


「いやー、あの時は黄龍ちゃんとかオーガ君とかで興奮してまして。それに、テストでモンスターに使った時はそんなことにはならなかったですし」


「相当運がよかったのね。魔力吸収の効果を持つアイテムがキャパシティを超えた時って爆発することもあるから」


「そうなんですか!? 凍って砕けてくれたのってラッキーだったんだなぁ」


「待って。小刀が凍ったの? そのまま砕けたんじゃなくて」


「そうですね。傷はもう塞がったんですけど、お腹の雪像っぽくなってる辺りに突き刺して吸収していたら、急に刺さってるところからだんだんと凍っていきまして、最終的に全部凍ったらそのままパリンと」


「そう。なら私も魔力を抜くのに注意しないといけないわね。それにしても彼、今は随分落ち着いている様子なのね」


 エンシェントエルフがメイの様子を確認するようにお腹を触っていると、ヒメがエンシェントエルフに吠える。


「かうかうかーうかうかう」


「守護龍様、聞こえましたか?」


「白虎よ、お主の言葉はわからんとさ。その者、メイというらしいな。そやつのスキルが凍り付くのと拮抗しておるからなんとかなっておるそうだ。あまり見ないスキルを山ほど抱えておるみたいだが、その分負担も激しかろう。いずれ拮抗が崩れるぞ」


「ありがとうございます。方策も見えましたし、私でもなんとかできそうです」


「おお! ちちさまはたすかるのだな!」


「何も起こらなければね。じゃあ抜くわよ」


 エンシェントエルフは近くに石ころを20こほど落とし、メイの体に手を置いた。そしてその手を少し浮かせたところで止めると、毛糸が解けるかのように、凍った端から細い糸状になった魔力がメイの体から浮き上がり、地面に落とした石に巻き付きだした。


「っ! これは!」


「かう?」


「どうしたのだ?」


 突然目を見開いてメイを見たエンシェントエルフに、何かあったのかと尋ねるヒメたちだったが、エンシェントエルフは大丈夫だと首を振った。


「いえ、この方(・ ・ ・)に聞かないといけないことができただけですので。全力をもって治療します」


 エンシェントエルフは、再びメイの体を蝕む聖雪属性の魔力を抜くのに集中した。




どうもコクトーです。


今回もメイ視点ではないのでステータスはなしです。


2週空いてしまい申し訳ないです。祖父ががんで亡くなりまして、そのために書けるような状態になかったのと、純粋に書ききれなかったので時間がかかってしまいまして…


最近はまたコロナが増えてきているみたいですね。自分の職場でも、別の建物で仕事してる開発の方々で出たみたいです。恐ろしや…

皆さんも家に帰ったら手洗いうがい、略して『手うが』!

しっかりとしていきましょー。


ではまた次回。

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