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南の門です2

 最初に動いたのはガルアだった。

 私との間を詰めようと剣先で地面を削りながら走り出す。対する私も棺桶を結ぶ鎖をつかんで、自分の体の左右で棺桶を振り回しながらすこし遅れて前に出る。

 ガルアは、巨大な剣をまっすぐ水平に構えて突きを繰り出してきた。

 ガルアの両手剣は長さがおよそ6m。剣の長さはそのままリーチにつながってくる。しかもそれを腕を伸ばした状態で突けばリーチはさらに伸びる。

 私はそれを横から棺桶で殴りつけて軌道をずらす。そのまま反対の棺桶でガルア本人に殴り掛かるが、それは剣を無理やり地面にさしてそれで勢いを殺し、後ろに飛ばれたことでかわされてしまった。

 再び間合いを測る二人。今度は私が動き出した。右手の棺桶でガルアを突こうと鎖を捻る。私のもつ棺桶は鎖で繋がれているため、その長さをみて、届かない、間合いを測り間違えた。と口許に軽く笑みを浮かべたガルアは届かずに止まったところで生じる隙に、大きな攻撃をぶつけてやろうと剣を上段に構える。

 そしてあと少しで鎖が伸びきるというタイミングで剣に魔力を集める。発射するのは完全に止まってから。伸びきった鎖のせいで防御は遅れるだろうとの狙いだ。

 しかし、私はそれをみて自然と笑みがこぼれる。棺桶はまったく止まらなかった。たしかに鎖は伸びきったのだが、それはいつも出てる部分だけだった。どういう理屈か、ある程度まではこの鎖はのびるのだ。棺桶の予想外の動きにガルアの技が止まる。そのせいもあり対応の遅れたガルアの腹に棺桶がめり込む。


「がっ!」


 後方に吹っ飛ばされるガルア。剣を離さなかったもののたまっていた魔力は霧散していった。

 私は追い打ちをかけるように前に出た。

 右手で鎖を引いて手元に戻しながら、げほげほと咳をしながら腹部を押さえるガルアを上から叩きつける。さすがにそれを簡単にくらうほど弱くはなく横に飛んでかわすガルア。だがそれに対して棺桶を薙ぐことで追い打ちをかけた。

 ガルアは剣を盾にして防ぐ。そしてその勢いを利用して距離をとる。


「ちっ、なかなかやるじゃねえか。ヒツギとか言ったか?」


「そうはいってるけどさっきのもあんまり効いてないよね?」


「ばれたか。まあびっくりしたのは確かだけどな。お前のそれなんでできてんだよ?」


「さあ?」


「さあって……」


「わからないものはわからないんだからしょうがないじゃん。それよりさ、なんでここを攻めてきたわけ?」


「あ?」


「ここにはダンジョンもないし有名な冒険者も貴族もいないし、ほんとになにもないと思うんだけど……」


「んなもんわかりきってるっての。なんの調査もせずにやったと思ってんのか? 下調べはしっかりやってんの。ここには結構強い騎士団はあるけどそれだけだ。これほど攻めやすいところはねえだろ?」


「そう言われればそうかな?」


「しかもそれなりに人口も多いからな。俺たちには都合がいい」


「……進化してないモンスターしかいないのはそれが理由みたいね」


 私のセリフに驚いたような顔になるガルア。その眼には驚愕以外にも尊敬の念も見られた。


「人間を襲って、それでモンスターのレベルを上げたりして進化させるのが目的でしょ?」


「なぜわかった?」


「魔族には前にあったことがあるし倒したこともある。その時になぜ人間を襲うのか聞いてみたの。その時に言われたのがこれ」


「……あーつまり俺がハメられたんだな。適当に言ってただけとは」


「まあたぶんそれは無理だけどね。ここの騎士団はあんまり舐めないほうがいいと思うよ?」


「なめちゃいねーよ。俺たちにも協力者がいるからな。そいつから聞いた話じゃここはギルドマスターも領主も腐ってる。ギルド自体にもその気がある。そんなとこで町の人間どもを守り続けてんだ。しかも隣の町にも派遣されてるらしいぜ? どんだけ頑張るんだか」


「なぜその時に襲わなかったの? 派遣されてる時にやれば確実に町はあなたたちの手の中だったのに」


「まあいろいろあるがそれを教える必要があるか?」


「……ないね」


 そして再び黙り込んだ二人は、同時に動き出した。お互いの武器が確実に相手にあたる距離で武器をふるいはじめる。剣が振りおろされてそれを棺桶がはじく。反対の棺桶で襲うも、防がれて次の攻撃が放たれる。剣で攻撃する合間に魔法が混ざりはじめた。

 私は棺桶の1つを完全に防御用として使い始めた。ガルアは剣を握る手を変えながら魔法を使ってくる。なので剣を持っていない手の方は防御に徹しさせる。

 魔法の余波で熱かったり、冷たかったり、風が吹き付けたりと完全には防げてはいないけれど大きなダメージはない。剣もしっかりと防ぎきれているので問題はない。

 しかし、片方を完全に防御専門にしたことで手数が半分になった。相手の剣と打ち合っているだけで攻め手がないのだ。完全に後手に回っている。


「おいおいどうしたよ! さっきから攻めてこねえじゃねえか!」


 ガルアはいやらしい笑みを浮かべながら叫ぶ。「攻めたくても攻められないの!」とは口に出せない私は黙って防御を続ける。そのまま攻防は1、2分続いた。

 しかし、そのとき私の身に思わぬことが起こった。



「「「『炎がその身を焼き付くさん』フレア!」」」


 背中に魔法が当たった。そのせいでバランスの崩れた私はガルアのエアロをくらってしまい、吹っ飛ばされた。痛む体を棺桶に追加されていた力でゆっくりと回復しながら上半身をあげる。


「誰?」


 そこには三人の人間(・・)がいた。


「ガルア様! 邪魔物をぶっ飛ばしましたぜ!」


「ま、俺たちにかかればこれくらい簡単ですよ」


「げはははは。愚かな女だな。後で俺たちが可愛がってやろう」


 それぞれが武器を持って町から(・・・)歩いてきた。

 改めて見直してみるとその三人は見覚えがあった。

 冒険者パーティー『クロウ』の3人だ。たしかガルとギルとグル。


「ガルア様、まだ町にオークたちがやってきてなかったんですが、どうなってんすか?」


「……」


 剣をしまって、こちらに見向きもせずにガルアに近づく。なんとか生きのびられたら探索系のスキルか気配察知のスキルをポイント貯めてつけると誓ったりした。


「もういいよ」


「「「へ?」」」


 ガルアが無造作に振るった剣は3人の体を上半身と下半身に分けた。呆気ない最期を迎えた3人。同情なんかしないけどね。


「俺は情報を伝えろとは言ったが俺の相手に攻撃しろなんて言ってねえだろうが。あっさり人間を裏切ったのを以前に見てんだ。今みたいに1対1の最中に後ろから裏切られ(攻撃され)ちゃたまらねえ。お前らのような屑はいらねえんだよ」


 ガルアの瞳は完全に冷め切っており、今自分が切り殺した3人をあきらかに見下していた。


「さぁて、第2ラウンドと行きたいところだが……」


 ガルアのすぐ後ろに黒い渦のようなものができる。そしてそこからは一人の女性が出てきた。

 ローブで顔は見えないがその胸元でこれでもかというくらい存在を主張しているもののおかげで性別はわかった。なんでだろう……負けた気がする。


「ガルア、あなたの負けです。帰りますよ」


「状況は?」


「生存1。貴方だけです」


「まじか……やっぱこの方法は厳しかったか……」


「捕虜も0、奪った物資も0、被害だけですね」


「あの数の大飯食いがいなくなっただけでも収穫だろ? てことで悪いな女、この決着はまた今度」


「……逃がすと思ってるの? ……って言いたいけど今は無理ね。まだ勝てない」


「かっ、こんだけ攻撃防いどいてなに言ってんだか。まあいいや。帰るぜ」


 そう言い残してガルアは女性と共に帰っていった。





どうもコクトーです


これでここでの戦いも一段落です

第2章はまだしばらく続く予定です

といっても5話くらいかな?

あくまで予定ですが……


ではまた次回

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