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エルフの森です2

「エルメラ! 救援信号が上がったから任務を中断して来てみたが、どういう状況だ?」


「重症患者よ。命に係わるレベルのやばいやつ!」


 エルメラはメイを指さして手短にそう伝えた。

 ハイエルフはエルメラの言葉を疑うようなそぶりを見せたものの、指さした先にいるメイの様子を見てすぐに考えを改めた。


「すぐに移動の準備を。状態はわかるか?」


「切り傷や刺し傷みたいなわかりやすい外傷は一切ないけど、この龍ちゃんの話だと、体の内側からだんだんと対象を凍らせる魔法を受けてるらしいよ。物理的な熱で溶かすことはできるけど、溶かした端から凍っていくみたい。魔力を吸収できる小刀で吸い取ってみたのが結構有効だったけど、キャパオーバーで吸いきるのは無理だったよ」


「どんな症状だそれは……少なくともそんな魔法を使うの魔物はこの辺にいないはずだが、どこから来たんだ?」


 部下が準備を進めるのを見ながらハイエルフが尋ねるが、エルメラは興味なさそうに答えた。


「さあ?」


「さあってお前……」


「私の興味はこの竜ちゃんと向こうの龍のオーガ君と、もっと香しい龍の香りを漂わせてるこの男の子。龍ちゃんとは彼を助けたら血をもらうって約束してるから、頼むわよ?」


 エルメラの回答にあきれるハイエルフだったが、いつものことだと諦めながら、メイの状態の確認に戻った。


「彼が起きたら詳しく聞くとして、龍ちゃん? に聞いたっていうのはどういうことだ? もしかして……その、しゃべるのか?」


「そうなんだよ! 3体ともすっごい頭よくて、私の言葉を完璧に理解してるだけじゃなくて、魔法まで使いこなすの! しかも話せる龍! これはもう見逃す手はないよね!」


「龍なオーガとかにわかには信じがたいが、お前が龍のことで間違うとは思わん。守護龍様も今は起きておられるみたいだし、エンシェントエルフ様にお伺いを立ててみるか」


「え? 守護龍様起きてるの? 素材もらいに行ける?」


「おま、ふざけんな! さすがに守護龍様に手出すなんて真似させるわけがないだろ! まだこりてなかったのか?」


「はっはっは。私がそんな簡単なわけがないじゃないか」


「それに納得してしまう自分が情けないよ。世話役(フィアー)はどうした? あいつの隊の隊長が今日お前の様子を見に行かせたって言っていたが、もしや入れ違いになったか?」


「いや、部屋が汚いって追い出されたよ」


「その時に龍の匂いに気が付いてってところか。それでやってきた先に彼が倒れていたのだな。運がいいのか悪いのか」


「日頃の行いがいいからね」


「だとしたら完全に悪い方だよ。っと、準備ができたみたいだな。移動を開始する」


 状態をざっと確認した後、土の台に寝かせた状態から担架に乗せられたメイをゼルセが担いで、エルフたちの後についていく。

 森の中を素早く移動するためにもヒメはゼルセの肩に乗り、黄龍はエルメラに抱きかかえられることになった。メイの心配が勝っているからエルメラに撫でまわされるのをそのまま受け入れているものの、その視線は肩ごしに見えるメイに向いていた。

 移動中も、部隊に配属されていた回復魔法の使い手によってヒールが使われていたものの、今のメイにはほとんど効果は発揮されなかった。別にエルフが手を抜いているとか、魔法が失敗しているというわけではなく、単純にヒツギの残した魔力をどうにかするだけの力を持っていなかったのだ。

 ゼルセが腕を犠牲にしなければいけないほどの火力や、ヒツギの残した魔力そのものに作用する魔力吸収の小刀と違い、使われたのは一般的なヒールの魔法でしかない。現状、『リジェネレイト』がレベルアップしたことでなんとか回復と凍結が釣り合っているからそれ以上雪は広がらないが、それを抑え込むほどの力はマナのような『力』もない、ただのエルフのヒールにはなかった。


 エルフたちについてしばらく森の中を進むと、ようやく里に到着した。隊長の指示のもと、すぐにメイは診療所へ運び込まれた。エルフの部隊は、報告に向かった隊長を除き全員がその場に待機することとなったが、彼らがいることで話はスムーズに進んだ。

 診療所には、もともと回復魔法や、薬に関する知識を持つエルフが数人待機していたが、エルメラが事前に調べていた情報と合わせて、火魔法の使い手も同時に招集された。しかし、そんな彼らでもメイの状態を回復させることはできなかった。

 そもそも、集められた3人の魔法使いには特に何もできることはなかったのだ。彼らもある程度の火魔法は覚えているし、火魔法には体を温めるような魔法もあるが、基本的に里とその周囲の森で生活する彼らにとって、そのような魔法を使う機会も、覚えるような機会もほとんどない。そのほとんどは戦闘に使える魔法だ。もちろん、いくつかは戦闘で使えない魔法も覚えているが、少なくとも人を高温で熱するような魔法は覚えていなかった。


「ちちさま、助かるよね?」


「もちのろんだよ! と、そう言ってあげたいところではあるんだけど、実際のところ厳しいと言わざるを得ないかな。ドクター、何かいい意見はあるかい?」


 ドクターと呼ばれたエルフの男性は、メイの体に当てていた魔道具を外し、力なく頭を振った。


「正直私にはどうにもできん。彼の症状は魔法によるものだと聞いている。私の見立てでも間違いない。だが、これはいったいどんな魔法なんだ? 対象を凍結させる魔法は見たことがあるが、雪で覆うように凍結させる魔法なんて見たことがない。私の知識にある薬でどうにかできそうなのはエリクサーなんかの特殊な物くらいだ。でなきゃ直接火であぶるくらいしか思いつかない」


「いや、人を火であぶるなんて、火葬じゃないんだから」


「そうだよ。この雪は幸い触れても他の生物に移るようなことはない。ないが、今も彼を蝕み続けている。いろいろと調べてみて、体の内側に彼の物とは別の魔力があること。そして、それがこの雪の大元であるということはわかったけれど、これをどうにかするには私達では無理だ」


「かう……」


「ちちさま……」


「へいへいドクター。私達ではってことは、なんとかできる人に心当たりがあるってことだよね? 龍ちゃんたちを悲しませるようなことしないでさ、教えてよ」


「教えるのは構わないが、この場にいる誰にもどうかできるとは思えん」


「できるできないじゃない。やるんだよ。でなければ私は龍ちゃんとの約束が果たせないからね」


「約束が何なのか知らないけど、一番無理だとわかってるのはエルメラ、あんただと思ってるんだけど。いいかい。なんとかできるかもしれない人物、それはエンシェントエルフ様だよ。あのお方は何百年も昔から生きておられる。もしかしたら、この魔法のことも知っているかもしれないし、その対処法もわかるかもしれない」


 エンシェントエルフならばどうにかできる。そう聞いて3体は希望を込めて目を輝かすも、周りのエルフたちはエルメラを除き、全員が目を背けていた。


「確かにあの方ならどうにかできるかもしれないけど、問題はどうやってお願いするかだなー。私目つけられてるし」


「だめなの?」


「直接会えれば土下座でも何でもするんだけど、そもそも会わせてもらえないんだよ。エンシェントエルフ様は常に守護龍様のところにいるから」


「かう……」


 ヒメたちの表情にも陰りが見えたその時、部屋の扉が開いて、先ほどの隊長が入ってきた。


「扉の向こうから少し聞こえていたが、どうにかなるかもしれんぞ」


「かう!?」


「どういうことなのだ!?」


 隊長の言葉にヒメと黄龍が素早く返すと、隊長は背筋を伸ばし、敬礼をとって彼らに告げた。


「エンシェントエルフ様より、白虎様、そしてそのお供の者を今すぐにお連れするように指示があった。エルメラも一緒でかまわないとのことだ」


 こうして、彼らはエンシェントエルフの下へ向かうことになった。




どうもコクトーです。


今回はメイ視点ではないので職業レベルは無です。


ちょっと間に合いませんでしたが、まあ誤差ということで。

1週間遅れたわけじゃないし…


前回少しあとがきで触れてましたが、サイトのラグの件はいったんなんとかなったみたいです。何が原因だったのかはわかりませんが、とりあえずは普通に書けます。ただ、PCのブルースクリーンが多発してまして、今話も2回ほど書き直してます。だから自動保存のないメモ帳は嫌なんだ…


次回は夜勤があるのでどうなるかわかりませんが、ガンマリマス。


ではまた次回

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