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エルフの森です1


「ああああああああ! すごいすごいすごいよこの匂い! 君か、君なのか、君なんだね!? いや、そこの倒れてる彼からももっと濃厚な香りがって……なんどぇすかこれは!?」


 ヒメたちが必死にメイの命をつなぎとめている時に突如として現れたその女性は、血走った眼で黄龍に頬ずりを続けながら倒れているメイを発見して大声を上げた。耳元で大声を上げられた黄龍は耳がキーンとなっていたが、それよりも今は大事なことがあった。


「かう!」


「お、お願いなのだ! ちちさまを助けて!」


「ぶはっ」


 黄龍が涙目でお願いする様子を見て、突然女性は血を噴き出した。


「待ってー。反則だってー。かわいいってー。龍というだけでも愛が溢れそうだったのにそれは反則だよー。思わず愛が溢れちゃったじゃない」


「ふぇ?」


 女性は黄龍が汚れないように退避させて、慣れた手つきで鼻からあふれ出ていた愛を止めると、2度3度深呼吸をしてヒメたちの方を見た。


「にしても、ちちさまとはこの見るからに瀕死の重傷で倒れている人族の男の子のことだよね? となると、君たちはこの子の従魔なのかな。ちっさい龍ちゃんと、ちっさい虎ちゃんと、でっかいオーガ……って、その子からも香しい龍の香りが!? あぁあああ! 腕がちぎれてる! 血が、龍の血が何もせずにこぼれるなんてもったいない!」


「がぁぁ」


「わ、われとゼルセの血ならあげるのだ。だからちちさまを助けて」


「任せておきなさい! 私は治療の専門家じゃあないけど、良くも悪くも昔から怪我は慣れっこだからね。なんで生きているのかわからないくらいの重傷だって何度も乗り越えてきたんだから!」


 女性はすぐに自分の魔法袋からいくつかの道具を取り出し、その中の筒状の道具を天に向かって撃ち出した。筒の先から飛び出した光がピーっと甲高い音を発しながら木々の高さを超えていき、5mもいったところでパンと光を放ちながら弾けた。


「とりあえず里に場所は知らせたから、すぐに誰かが来てくれるはず。今できることは少ないけど、専門家が来てくれた時に少しでも役に立てるように準備をしようか。君たちにも手伝ってもらうからね」


「もちろんなのだ!」


「かうかう!」


「良い返事だね。花丸あげちゃう。さて」


 女性は近くの木にグロウプラントの呪文を唱えて、メイたちを雨から守るように葉っぱの傘を作った。茂った葉っぱの隙間からまだ雨水が垂れているのを確認すると、別の木にも同じように魔法を使い3本に使ったところで完全に雨水が垂れてこなくなった。


「土系統の魔法が使えればよかったんだけど、仕方ないかな。オーガ君、つらいかもしれないけど持ち上げててくれる? 龍ちゃんはオーガ君の血がこぼれないようにこの瓶に入れてね」


 ゼルセは女性の言葉の意図を汲み取ってクエイクでメイの体を女性の腰くらいの高さまで持ち上げた。


「うわぁ、魔法まで使ってるよ。いや、龍なら普通のことなのかな? 土龍系のオーガなんて初めて見た。あれ? さっきまでこの男の子を温めてたんだよね? 火魔法と土魔法の2つを使う龍のオーガってこと? わーい解剖したーい。でも、今は人命優先だよね」


 若干思考がトリップしていたせいでゼルセがこの高さでいいかと目で問いかけているのに気付くのが遅れたものの、女性はこくりと頷く。そしてメイがこれ以上濡れないようにできたことで、肌がはっきりと見えるように側に置いていたナイフでメイの服を割いた。

 これまで、しみ込んだ血と熱によって焦げてしまった服で隠れていた肌が露わになった。


「おっと、これは……」


 メイの体はヒメたちの頑張りがあってもなお、ヒツギの使った聖氷魔法の魔力が蝕んでいた。左半身は雪像のように真っ白になっており、今もそれは広がり続けていた。


「私魔法はそれほど詳しくないんだけど、体が凍りついていってるのかな? 表面に切り傷があるとか貫通してるとかはないし、何かが埋め込まれてるんじゃないよね?」


「かう。かうかうかーう」


「ごめん虎ちゃん、私獣人じゃないからわかんないの。感じ的に多分ちがうってことだけはわかったんだけど」


「聖氷の魔力を体にながされたといってるのだ。われはそこはみていないけど」


「聖氷? 誰かの固有魔法なのかな。でも、離れていても相手をどんどん凍らせていくってなかなか強い魔法ね。魔法の効果っていうなら魔力を吸い取れば多少は軽減されるはず。痛いけど我慢しなさいよ」


 女性は追加で魔法袋から小刀を取り出してメイの凍ったお腹に先端を軽く突き立てる。女性が小刀から手を離すと、刀身が淡い光を一定間隔で点滅させ始め、小刀が刺さった場所を中心として小さく円状に雪が引いた。それと同時に雪が体へ広がるのも止まっていた。


「お、いい感じ。これは魔力吸収の効果がついた小刀。この子のこの状態が魔法で起きたことならしばらくはこれで抑えられるはずよ」


 女性がそう言ってすぐ、小刀の点滅が激しくなり、表面が凍り付き始めた。そして十秒も経たないうちに持ち手の全体にまで氷が広がり、パキンと音を立てて崩れた。


「こんなに早くキャパシティオーバー!? テストに使ったモンスターなら1時間以上魔力吸収できてた一品なんだですけどぉ! これはちょっと大元から断たないと厳しいか」


 頭を抱える女性の隣で、小刀だった氷の破片は地面に落ちるとそのまま溶けて地面のシミになった。

 小刀がメイの体に残っていた聖氷属性の魔力を完全ではなくとも吸い取ったことで、メイの体の雪は少し広がるペースが落ちついていた。そのせいか、一時的に雪の消えていた部分も結局戻ってしまったが、ゆっくりとした戻り方だ。


「どうするのだ?」


「がぁ」


「そろそろオーガ君の血も止まってきてるみたいだね。瓶を頂戴」


「はいなのだ」


 女性は黄龍から受け取った瓶を魔法袋に入れると、出したものの使わなかった道具をいくつかしまい、代わりにマフラーを取り出した。


「ヒーリングキャタピラーの変異個体の糸を使った再生のマフラー。結構なダメージを負った人間でも短時間で回復させちゃうすごいアイテムよ。私の自信作!」


「かうかう、かうかーうかうかう!」


 女性が取り出したマフラーをメイの首に近づけたところ、ヒメが間に入って短い前足でバッテンを作り、女性に訴えかけた。黄龍もヒメの声を聴いて女性に話しかける。


「ちちさまに頭装備はつけちゃだめなのだ! なくなっちゃう!」


「頭に既にゴーグルを着けてるから効果がないと思ってるのね。でも、これはアクセサリー扱いだからその心配は不要よ。私はプロの鍛冶師! その細かいバランスをうまいこと調整するだけの技術は持ち合わせているわ! まあこのマフラーはたまたまだけど」


「そ、そうじゃないのだ! ほんとにきえちゃうのだ!」


「龍ちゃん、君のご主人様を助けるためよ。私を信じなさい」


 黄龍とヒメの説得も虚しく女性はメイの首にマフラーを巻き付けた。


『スキル:リジェネレイトLv5を習得しました。 』


「あれ? 私のマフラーは?」


 首に巻かれたマフラーは、2体の心配通り『喰らう瞳』に消えてしまった。それは、メイのスキルを成長させるのに十分な能力があったらしく、『リジェネレイト』のレベルアップによって、ヒツギの残した聖氷属性の魔力の浸食に負けていた回復力がようやく均衡状態にまで押し上げることに成功した。


「かうかう!」


「雪がひろがらなくなったのだ!」


「え? あ、ほんとだ。マフラーの行方はきになるけどさすが私。さすわただね!」


 黄龍とヒメが女性に抱き着いて感謝と喜びを表す中、パキリという、木の枝を踏み折る音が木の陰から聞こえた。ゼルセがメイたちを守るべく立ち上がり残った腕に力をこめる。


「がぁああ!」


「オーガ君ストップ! ようやく来たよ」


 木の陰から姿を現したのは数人のエルフだった。その中でも先頭を歩くリーダー格のハイエルフがゼルセを警戒しながら女性に話しかける。


「エルメラ! 救援信号が上がったから任務を中断して来てみたが、どういう状況だ?」


「重症患者よ。命に係わるレベルのやばいやつ!」


 エルメラはメイを指さして手短にそう伝えた。


どうもコクトーです。


今回はメイ視点ではないので職業レベルは無です。


先週は投稿できずすいませんでした。風邪ひきました…鼻かみすぎてヒリヒリするしくしゃみ止まらないし…休日が寝て終わってしまいました。(´;ω;`)


ずっと自分が執筆する時に使ってきたサイトがなんだか調子悪く、文字を入力しても表示されるまで少し時間かかるようになってしまいまして…誤字脱字多かったらすいません。え、いつものこと? もっとごめんなさい。いつも報告いただく方ありがとうございます。ほんとに感謝しております。


ちょっと7月からは夜勤がかなり増えそうな感じですので投稿ペースがぶれるかもしれませんがご了承を。6月中は大丈夫…なはず。


ではまた次回

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