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マナの転移物語です15

今回もマナ視点です。ご注意ください。


 トーチさんへの上位魔法の教授は、それほど長い時間はかからなかった。

 そもそも私が使える上位魔法自体が少ないのも要因の一つだけど、それ以上に説明のための資料が一冊しかないというのが一番の問題だった。トーチさんの知識の中に上位魔法の名前が少しもない以上、私がヒツギから聞いた話と、相当前にグラトニーが語っていた話。そして資料にある話が全てになってしまう。だからこそ、トーチさんとの知識との食い違いがある部分を突き合わせるのに一番時間がかかってしまった。

 トーチさんの知識は、基本となる8属性と雷属性の計9属性に関しては私の遥か上をいっていた。いろんな資料を読んだことで私の知識もかなり増えていたものの、そんな付け焼き刃的な知識ではない、熟成された知識とでも言える、年月をかけて自分の頭に、体に刷り込んだ知識だ。そんな人に教えないといけないというのがかなり苦労した。


 トーチさんに上位魔法について教えてみたものの、さすがにこの短時間で使えるようにはならなかった。この短時間でものにされたら私の立つ瀬がなかったけれどそれは免れたようだ。

 それというのも、現状私が使って教えることができる上位の属性である獄炎属性、聖氷属性、雷光属性、そして使えはしないけどなんとか教えられる暗黒属性の4つはトーチさんには適性がなかったのだ。私が初めて暗黒魔法を『視た』時に感じたのと同じ、その属性の魔法を使えないという感覚。それをはっきりと感じ取っていた。

 それでも、トーチさんにも、私がそれぞれの魔法を発動させて、それをトーチさんに制御を預ける形で渡すことでその制御の仕方、そしてその難しさについてはなんとか理解してもらえた。その魔法を自分で作り出すことだけはどうしてもできなかったけれど、今自分が使っている魔法にさらに先がある。その一端を理解できたということがあまりにも嬉しかったようで、わざわざ私が資料を読んで身に着けた魔法や改造した(いじった)魔法を練習する時間を設けて、その間中渡した小規模のヘルフレイムの制御とその魔法の構成を解析していた。たしか2時間くらいのはずだけど、それだけの時間他人の作った、自分には適性のない魔法を維持し続けるというのがいかに馬鹿げたことなのかは魔法使いである私にはよく理解できた。

 適性がない以上、魔法に魔力を追加で供給して維持するという方法をとることはできない。それはどれだけ魔法に精通していて魔力の操作が上手だったとしても変わらない。それはトーチさんであってもだ。でも、トーチさんはそれを下位属性にあたる火属性の魔力で覆うことで少しでも魔力の流出を減らすという力業でなんとかしてしまっていた。別に言ってもらえれば作り直したんだけどな。


 今日のところはこれで終わることになったけれど、トーチさんとの勉強会は今後も私がここにいる間はずっと続けられることになった。国王様がおいそれと来られなくなってしまったからには、しばらくの間はここにとどまることが決まってしまっている。だからその期間を有効に活かすためにもトーチさんとの勉強会は私にとっても歓迎できる話だ。トーチさん自身が忙しいから毎日と言うわけにはいかないが、2,3日に1回くらいの頻度で開催できるように調整すると言っていた。まあこの話を言い出したのはトーチさん自身だし、調整がうまく行かなかったときは私は私で資料を読むだけだから問題はないね。

 私にとっても益になるこの話だけど、これをやるにあたって、私自身が現在使える上位魔法をすべて見せる条件で1つだけお願いを聞いてもらえることになった。それは資料の閲覧許可を出すことができる幹部全員の紹介だ。

 今回、上位魔法の存在を知って、トーチさん自身も資料を読み直すことを決意していた。もしかしたら、これまで読んできた資料の中で見落としがあるかもしれないと。さすがに私が既に読んだような低い等級の資料には載っていないのは私も確認済だから飛ばすと言っていたけど、これから読み進めることになる等級の高い資料、特に一級資料はそもそもが禁術指定や固有魔法の内容が多く、細かいところまでは読み込めていないらしい。そうしたところに書いてあるかもしれないし、使い手の少ない上位魔法が固有魔法として書かれている可能性も否定できない。固有魔法だと思っていたから使えないと思われているのは普通にありえそうだ。


 それがどうして幹部の紹介につながるのかと言えば、トーチさんもこれまで国王様との関係性も考えて読むことを断念していた禁級資料の閲覧を頼むことに決めたからだ。

 ベスティア獣神国の首都であるレルドの王城地下書庫にしまわれている『魔法学園』の禁級資料。トーチさん曰く、その実態としては既に故人である初代のギルドマスターがセキュリティの不安もあり、ベスティア獣神国に保護を求めた資料なんだとか。どういう経緯があったのかは『魔法学園』には残されていないけれど、今も禁級資料という扱いで『魔法学園』の所有物ということになっているのは間違いないらしい。単純に考えればベスティア獣神国の所有物になっていてもおかしくないと思うのだけど、あえてそれに触れるようなことはしてこなかったらしい。さすがに国王様に対して、『あれって自分たちの物ですよね? 読みたいんですけど』なんて言うことは不敬にもほどがある。せっかく今代の国王であるドルトムント国王様とトーチさんは良好な関係を築いているのに、それを崩すようなことはしたくなかったらしい。

 関係性が一番の理由だったけれど、トーチさん自身がこれまでその資料を読んでさらなる知識を得る必要性を感じていなかったというのも理由の一つだったとか。世界屈指のギルドの一つである『魔法学園』の長であり、数多いる冒険者の中でも12人しかいないSランク冒険者。戦闘力という点で言えばSランクの中では相当下の方になるけれど、魔法という一点に限ればそのSランク(化け物)たちの中でも1位になれるほどの知識と技術を併せもっている。そんな自分が、リスクを負ってまでさらなる知識を得る必要があるのか。そんな思いがあったらしい。

 ただ、自分よりも圧倒的に戦闘能力の高いユウカが、彼女の得意分野である近接戦闘で幹部とはいえ、一部下にすぎない存在に負けた。そのことがトーチさんに大きな不安として襲い掛かっていた。

 ベスティア獣神国は魔王の治めるアーディアとは直接隣接はしていない。だけど、実際に過去には魔族によって獣人の集落が滅ぶという事例がある。さらに、現在、魔王の手の物による影響かは定かではないけど、隣接国であるヤカリ森国の様子がおかしいという状況がある。そうなった時にここを襲われたとして、守り抜くことができるのか、さらに言えば、自分自身が生きてその戦いを乗り切ることができるのか。

 でも、そんな不安を払拭できるかもしれない情報を私が持ってきた。今ある魔法をはるかに凌ぐ、上位魔法の存在。もしかしたら禁級資料にはその情報もあるかもしれない。また、自分一人では足りなくても、私と言う協力者がいればなんとかできる術を見つけられるかもしれない。それが決断させた理由とのことだった。


「よし、それじゃいこうかマナちゃん」


「国王様がやってくるまでに全員から許可を得る。その第一歩ですね」


 私とトーチさんは『魔法学園』の中を歩きだした。






 そして時は戻り、場所は変わる。

どうもコクトーです。


今回もマナ視点ですのでステータスはなしです。


先週は投稿できずすいませんでした。

土日というわけではありませんが夜勤もあり、ちょっと体調崩してました。

在宅ワーク中でも書けるとは限らないんですよ…。


予定では次回から別の話に入ります。ダレノハナシナンダロウナー。


ではまた次回

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