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マナの転移物語です11

今回もマナ視点です。ご注意ください。

 ミイさんは魔法袋から新たに取り出したペンで、鉄人形のちょうど右目にあたる場所に2~3cmほどの大きさの円を描いた。


「この大きさで筒状に貫いて。もちろん、他の部位に破損があれば合格とは認めないわ」


 周りの驚愕と動揺をよそに、私は何の魔法を使うか。それだけを考え始めた。


「それ触ってみていいですか?」


「だめね。あなたが戦闘中にモンスター相手に手で触ってそのモンスターの堅さや特徴なんかを把握するようにしているって言うのであれば別だけど」


「手で触れられるような距離まで近づくことの方が稀ですね。戦闘中って考えるなら距離もそれくらいにした方がいいですよね?」


「そうですね。的はここに固定しますので、壁際まで移動してもらえますか? それくらいの距離ならば戦闘でも比較的あり得る距離だと思いますので」


「わかりました。壁際から鑑定(見る)のはいいですよね?」


 壁際に移動しながら問いかけた私に対してミイさんはにこりと笑顔を浮かべるだけだった。何も言わないということは肯定……と言いたいところだけど、そもそも今回の試験はあの鉄人形の指定された部位のみを魔法一発で壊すこと。メイのスキルとは違い、私の場合は鑑定や解析も魔法であることには変わりない。魔法である以上は、それも一発と考えておくべきなんだろう。


「あなたが彼女に合格を言い渡すつもりがないというのはよくわかりました。いったい、何をしたいのですか?」


 金髪がミイさんに噛みつく。壁際でも十分に聞こえるくらいの声量で話しているあたり、やはりミイさんを悪役にたてようとしていると思えるけど、幹部でもないらしいなら、あの金髪のことを私が気にする意味はない。それよりも今はあの人形のことを考えないと。


「サーフェス、あなたはそもそもこの試練のきっかけを知らないんだから。それに、これが意味するところを気づけないならいいからちょっと黙ってなさい」


「たしかに、何があって彼女が試験を受けているのかはわかりませんが、彼女はギルドマスター、ひいては『魔法学園』のお客人です。そのお客人に失礼があってはいけませんからね。端から合格させるつもりのないこんな試験を出して、それがお客人のプライドを傷つける結果になったらどうするのです? そんなことも考えられないあなたが幹部であり続けるのは傲慢とは思いませんか?」


 人形の素材となっている抗魔鉄は、ミイさんの話を信じるのであれば、この『魔法学園』で生まれた未知の素材だ。ガーゴイルやアンチマジックゴーレムという、手本となる魔物の体。それを再現するために錬金術によって生み出された未知の鉱物だ。その硬さ、魔法の通りやすさ、抵抗力。そのすべてが今の私の知識に存在しない物質の人形を、右目の一部分だけをえぐり取るようにして倒す。普通に考えてみれば、やってることとしてはわけがわからないかな。


「何? それは私に幹部をやめろとそう言いたいのかしら?」


「そう聞こえたのであればそれはあなたが心の中で思っていることなのでしょうね」


 鉱物や石みたいな硬い体を持つ相手を倒すとなると、基本はやはりその硬い体を砕けるような魔法を使うことになるだろう。マジックハンマーをエアシュートで加速させて破壊力を高めてみたり、アイスロードで凍らせたうえでそこを狙う方法もあるかな。ユウカならそんなことお構いなしに切り殺すんだろうけど、今回は指定された部分以外に被害があるとだめだし、それも使えない。


「私が辞める時はトーチ様がギルドマスターを辞めるときか、『魔法学園』がなくなるとき。それくらいの覚悟を持っているわ。他の幹部も全員が自分の仕事を誇りに思い、その業務にあたっているわ。今のあなたではきっと耐えられないほどのね。そんな簡単に辞めるだなんて考えるのはあり得ないわ」


 そもそも、あんな小さい、的だけを狙う魔法があまり多くはない。べつにないなんて言うつもりはないし、候補はだいぶ絞り込んだけど、後はそれをどう扱うかだけだ。


「口の減らない女ですね」


「サーフェス様、どうしましょう?」


「ふむ……状況が変わりそうですね。よろしい。ここは私が見ておきます。あなたたちは訓練に戻り(・・)なさい」


「かしこまりました」


 今回扱える魔法は一発だけ。魔法を撃って、それを後からブーストするのはできないし、エンチャントをかけるのもおそらくダメ。一発にかける魔力量を増やして威力を上げるしかないのかな。


「それじゃ、始めようか。準備はいい?」


 ミイさんの声に右手を上げて応えた。使う魔法も決まり、どういうふうに魔法を使うかも決まった。そのために必要なところは既にその魔法に組み込んだし、準備は万端。私はアイテムボックスから杖を取り出し、その先端を鉄人形に向けた。

 鉄人形はすでにミイさんの魔法で下半身が完全に地面に埋まるような形で固定されている。さらに、ここにきて後方にミイさんがクエイクの魔法を使い、人形が後ろに下がらないようにちょうど1体分くらいの大きさの壁も作ってくれた。これで飛んで行ってしまうことはなさそうだね。


「手が空いている者は全員彼女の魔法をよく見るように! そしてその技術を少しでも己に還元しなさい!」


「アイシクル・チャージ・ドリルランス!」


 発射の直前にミイさんが叫んだことで一瞬制御がずれかけたがなんとかもち直し、杖の先端からあの円と同サイズで氷のドリルを放った。高速回転するドリルがまっすぐに鉄人形に向かって飛んでいき、想定通りの角度で鉄人形の頭に書かれた円の中心を捉えた。

 ギュルギュルと甲高い音を立てながらドリルは回転し、表面の氷が少しずつ削れながら、その先端が鉄人形の表面を超えた。周りの雑音が聞こえないほどの音量を放ちながら、まっすぐに鉄人形を貫かんと回転するドリル。そろそろ準備が役に立つころだ。


「バースト!」


 私の合図に合わせて、魔法に組み込んだ加速装置が発動した。ドリルの後方につながり、回転の勢いを増すために、回転に合わせて同時に風を放つ簡単な構成。あまり威力を出せないから細かいのを16こくらいに分けてみたけど、うまくいったようで、氷のドリルは鉄人形を奥へ奥へと食い込んでいく。


「魔法の暴発が!」


 かすかに聞こえてきたその声とともに、私に向かって炎の玉が飛んでくる。暴発とか言っているけど、しっかりと私を狙って撃ったのは見えていた。さっきの取り巻きの一人だ。


 暴発に見せかけるためなのか、それとも素の実力なのかはわからないけど、制御も甘く、魔法の威力も高くないし、何よりも雑だ。

 影の中のコルクが動かないように視線を向けて合図をした私は、その火の球に向かってマジックハンドを伸ばし、魔力で包み込むような形で制御を奪う。そして、流すように見せかけて鉄人形の方に投げつけた。


「危ない!」


 そのタイミングで鉄人形を貫ききった氷のドリルの進行方向を変え、直角に2度折れて火の玉をかき消させる。あんな雑で甘い魔法ではドリルはまるで解けず、火の玉を貫いた後、さらにもう1度折れて地面に突き刺さった。もう風のブーストもなくなったため、そうかからずにドリルの回転は止まった。


「……簡単にやってくれるわね。ふふ、マナさん。合格よ。それじゃあ戻りましょうか」


 ぽっかりと頭に穴の開いた鉄人形を回収し、地面をもとに戻したミイさんと一緒に、私はマイさんのところに戻った。

どうもコクトーです。


今回もマナ視点ですのでステータスはなしです。


今週は普通に更新でした!気が付けば早くも3月。コロナとかインフルとかで世間は騒がしいですが、私は元気です。週末に夜勤があったりしましたが元気、そう元気なのです…


そういえば最近、重要なことに気が付きました。

半年くらいこの話進んでなくね? と。オカシイナー。ナンデダロウナー。

やっぱり週一更新だと思うように進みませんね。そこ、元からとか言わない!


週末は体調を崩しているのがデフォみたいな自分が言えることではありませんが、

皆様体調にはお気をつけください。


ではまた次回

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