表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
407/593

マナの転移物語です10

今回もマナ視点です。ご注意ください。


 ミイさんに連れられてやってきた『魔法学園』の訓練所は、冒険者ギルドの訓練所にも劣らない広さを持っていた。ただ、その半分以上は魔法の試射場になっており、魔道具による結界で完全に隔離されているようだった。


「ここがうちの訓練所。結界の向こうは壁が特殊な作りでね。細かいことは言えないけど、あまりにも危険な魔法だったりしない限り、あの壁に向かって撃つ分にはここでは自由に魔法が使えるよ。入るときに一人一人を簡易型の結界で包んでくれる機能もあるからあんまり大きなダメージにはならないんだけど、危ないのには変わりないから、もし入ることがあったら気を付けてね」


「暴発とかしたら大変ですから」


「そういうこと。あ、あれあれ」


 そんなことをのんきに話している最中にも、試射場の奥の方で制御に失敗したのか、魔法使いが1人爆発した。すぐに周りの魔法使いの手で回復魔法がかけられるけど、あれでは意識はなさそうだ。


「幸いと言うかなんというか、回復魔法の使い手は多いからすぐに回復してもらえるのだけは間違いないよ」


「回復魔法に適性がないような人でも使える回復魔法もありますかね?」


「それは今後の研究次第だと思うよ。今でも様々な属性魔法を基にした派生型回復魔法はいろいろ生まれているし。今倒れている子を癒しているあれなんかもそうだね」


 私は魔法使いの手元に目を向ける。倒れている1人を回復するのに3人が魔法を使っているようだが、結界越しだからかうまく『視え』なかった。


「まああの中で訓練をすることがあれば3回に1回くらいは見る光景だから。私たち抜きではさすがにここの使用は許可が出ないでしょうけど、たまにならついてくるから」


「その時はお願いします。それで、あの中結構人がいるみたいですけど、どこでやるんですか?」


 爆発騒ぎで一時的に止まっていた魔法練習も、すぐにまた再開されていた。ひっきりなしに何十もの魔法が壁に向かって撃ちだされる。属性も、大きさもバラバラなそれらがまっすぐに壁に向かっていく様子はなかなか見ているだけでも面白い。結界の向こう側だったらいろんな情報が入り乱れて頭が痛くなるかもしれないけど、先ほどと違っておおよその構成だけは見えていた。手元で発動している回復魔法と、魔力が形を成している攻撃魔法との違いかと考えてもみたけど、こういう考察は後日にしよう。


「あの中って結構人がいますし、どいてもらうわけにはいかないですけどどこでやるんですか?」


「え? ここですよ? 範囲を指定して、そこのみを壊すっていう試験ですからね。そんな広い場所はいらないですし、この試験でそんな周りに影響を及ぼすような魔法を使っていたらもうその時点で失格です。そんなバカみたいな真似しないでしょ?」


「相手にもよると思いますけどね。龍みたいに巨大な相手だとさすがに厳しいと思いますし」


「大きさは私よりもちょっと大きいくらいだから、その辺りは気にしなくていいかな。じゃあちょっと場所空けてもらうから待っていて」


 ミイさんは結界のこちら側で訓練をしている数少ない人たちにお願いして壁際の一帯を空けてもらっていた。そして私を手招きで呼ぶと、魔法袋から宣言通りミイさんと同じくらいのサイズの鉄人形を取り出した。


「これはガーゴイルやゴーレムなんかの、魔法が効きづらい魔法生物の体を構成する物質を参考に生成した特殊な金属でね。私たちは抗魔鉄って呼んでるんだけど、それで作ったゴーレム人形。これを相手にしてもらうわ」


 私も、まだ一人で旅をしていた頃にガーゴイルは相手をしたことがあった。下位のストーンガーゴイルですら魔法が効きづらく、その時はストーンゴーレムを作って物理で叩き潰したくらいだ。実際に戦ってはいないものの、上位種ともなれば魔法を無効にできるような個体もいると聞いた。

 そんなガーゴイルの体を参考にして作られたゴーレム。それを相手に体の一部のみを魔法で潰す。普通に考えればかなり難しい試験だろう。


「せっかくの試練なんだからそれなりに難しいところを指示させてもらうつもりだけど、覚悟はいい?」


「もちろんです」


 そう即答する一方で、抗魔鉄のゴーレムの肩に手を置きながら、私へ問いかけるミイさんの後ろから、5人ほどの男の集団がやってくるのが見えた。私の視線がそちらに向いたことに気が付いたミイさんも後ろを振り向いた。


「おやおやミイ殿。珍しいですな。抗魔鉄の鉄人形(おもちゃ)なんてものを持ち出して。しかもそこにいるのは部外者じゃありませんか? いけませんねえ。ギルド所有の訓練所にギルドとは無関係な人間を入れるだなんて」


 男は金色の髪をかき上げて、ミイさんを挑発するように話す。他の魔法使いたちとは明らかに違う、ゴテゴテとしたローブを纏っており、周りに控える4人もローブには金糸で刺繍がされているのがちらりと見える。ゴールドさんとは違う、実用性のない、見せびらかすための金色だ。


「ごきげんようサーフェス。彼女はギルドマスターの客人よ。彼女に私からの試験をするために来ているの。当然、ここに連れてくることも許可はとっているわ」


「許可? それは誰の許可ですかな? 少なくとも、この訓練所総監督たる私のところには何の話も来ておりませんよ」


「ギルドマスターからの許可では足りないと?」


「ここの管理を任されているのはこの私なのですよ? その私に何の断りもなくそんなことをされてはたまりませんね。ひょんなことから客人に事故でも起こりようものならいったい誰が責任をとるおつもりか?」


「その時は引率者である私が責任を持つわ。ま、彼女ならばちょっと流れ弾(魔法)が飛んでくるくらいじゃなんともならないわよ。それくらいの実力があるのは私はもちろんとして、マイやギルドマスターの折り紙付き。まさか幹部候補の一人とされていながらその程度も見抜けないなんてことはないわよね? 幹部となる人間が身に着けているべき素養の一つである、他人の実力、そしてその魔力を測る力。それがないということならあなたを候補から外すことも考えないといけないわ」


 ミイさんがきつい口調で金髪に告げると、取り巻きの一人が顔を赤くしながらミイさんに向かって叫んだ。


「貴様! いくら幹部と言えどサーフェス様に向かってなんたる無礼!」


「よいでしょう。そこまで言われてこれ以上何かわめくような私ではない。いやぁ、試験、でしたか? 何をされるのか知りませんが、くれぐれも周りのギルドメンバーに危害を加えないようにしてくださいよ」


 取り巻きを片手を上げることで制止した金髪は、やれやれと言うかのように首を振りながらミイさんと私に注意を入れた。それに対して、ミイさんはわかりやすく金髪を挑発し始めた。


「どうせならあなたもやってみる? この試験は私も、マイもできない内容だから、これができれば実力()、私に勝っていると証明できるわよ?」


「そんな挑発にやすやすと乗ることはしないですよ。これでも己の実力はちゃんと見えていますからねえ。しかし、あなた自身できないと断言するようなことをどこの誰とも知れない客人にやらせるなんて、頭がおかしいんじゃないですか?」


「別に危険なことではないもの。ちょっとこの人形の一部分だけを魔法一発で壊してもらうだけ」


 軽く告げるミイさんの言葉に5人は一様に驚きの表情を浮かべた後、バカにしたような態度で笑い始めた。


「くはっ。上級魔法耐性を持つその鉄人形の一部だけを魔法で壊すなんて、そりゃあなたでも無理なはずですねえ。そんなものを試験として課すなんて、意地の悪い。御見それいたしました」


 少し離れたところでこちらを見物している人たちにも聞こえるくらいの声で金髪が話したことで、彼らの視線が私を憐れむような視線に変わっていく。それと同時にミイさんに対してあまりよい感情とは言えない思いの籠った視線にも。

 あまりこの場にいたくなくなってきた私はミイさんに話しかけた。


「あのー、そろそろ始めませんか? なんだか皆さんの訓練の手を止めさせてしまっているみたいですし……」


「あなたも災難ですねえ。こんな茶番に付き合わされて」


「おかまいなく。それで、どこを狙えばいいですか?」


 私の問いを受けて、ミイさんは魔法袋から新たに取り出したペンで、鉄人形のちょうど右目にあたる場所に2~3cmほどの大きさの円を描いた。


「この大きさで筒状に貫いて。もちろん、他の部位に破損があれば合格とは認めないわ」


 周りの驚愕と動揺をよそに、私は何の魔法を使うか。それだけを考え始めた。


どうもコクトーです。


今回もマナ視点ですのでステータスはなしです。


先週は投稿できずすいませんでした。

夜勤には勝てないのです。夜勤中も忙しかったしなあぁ…疲れました。


今週末も夜勤ではありますが土日と言うわけではないのでどうなることか…


ではまた次回

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ