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マナの転移物語です8

今回もマナ視点です。ご注意ください。


「まだ寝てないとだめなの?」


 マイさんがやらかした後始末ではないけど、周囲に龍殺しの毒が散っていないか調べていると、じっとしているのに耐えられなくなってきたのか、マイさんが話し出した。


「下手に動かれると面倒なのでやめてください。ようやく調べ終わったんですから。やっぱり一部が空気中に流れてますね。時間がかかった分散っちゃってるみたい」


「大変だねー」


「あなたのせいですよね? そんな他人事みたいに言ってますけど。トーチさんには教えときますからね」


「そんなことされたら私が怒られるじゃないの。嫌よ」


「知りませんよ。怒られてください」


 マイさんを適当にあしらいながら私はイレイズヒールをさらに改造し始めた。空気中に散ってしまった龍殺しの毒は、そもそもがきっちり瓶に入れられていたこともあってそれほど量はない。この程度ならおそらく龍にもほとんど効果を発揮しないだろう。でも、確実にそうだと断言はできないし消し去っておくのにこしたことはない。


「ここを追加すればいいかな……でもここがずれちゃうから……」


「……トーチ様があなたのことを化物だと言っていたけど、目の前でそういうことをされるとそれが間違ってなかったってはっきりとわかるわね」


「こんなかわいい女の子を化物呼ばわりだなんてひどいですよ!」


「いやぁ、普通の女の子はそう簡単に魔法を改造しないからね? 隠す気がないみたいだけど、そんな精度で魔法陣をいじくりまわすなんて、こうして目の当たりにしている今もほんとは夢なんじゃないかと思うくらいには信じられないよ」


「誰でもできるとかを言うつもりはありませんけど、十分な知識があって、常識を壊すような考え方とやる気があればできますよ。でも私にはまだまだ知識が足りない。だから既存の魔法と既存の魔法を組み合わせて無理矢理1つの魔法として組み立ててるだけなんですよ。だからそういう魔法は使うまでに時間がかかるし、構成が甘いからちょっと強い敵ならそこをついてくる。まあこういう状況ならそんなこともないですけど」


「まあ教会とかに所属してその場でしか使わないってんならともかく、冒険者なら戦闘中に使えなきゃ回復魔法も価値は下がっちゃうよね」


「そういうことですね。とはいえ、この魔法もパーティメンバーが言うにはそもそも難しくて簡単には使えないって話ですけど」


「言っておくけどその魔法、あたしでも下手に触りたくはないレベルだからね? 少なくとも、自分一人で改変なんてやりたくないよ。一人でやるとなるとどうしても限界があるからね。あたしも過去にそれで挫折した人間だし」


「今こうしているってことはまあそういうことなんでしょうし、詳しくは聞きませんよ。うん。これでいいかな」


 そうこう話しているうちに、イレイズヒールの改変が終わった。今いるのは書庫の奥の方で、そもそも入れる人が制限されているエリアだから他の人が毒に侵されるようなことはないけれど、その制限されているエリアと言うのがまた問題ではあるね。ここは外から入られないようになのか、窓や通気口といった、扉以外に外部とつながっている場所がない。当然陽の光も入ってこず、意図的に浄化しなければ毒が消えることがないのだ。こんな場所で気化する恐れのある毒物を使用するなんて想定はしていないだろうし、マイさんの無茶は自身だけでなく、今後ここを出入りする人すらも危険にさらす結果になっていた。


「『希望の光が我が領域を蝕む龍殺しの力を消去する』エリア・イレイズヒール!」


 結界と転移魔法における座標指定を使って部屋の壁に沿って少しの隙間もないように空間を指定し、そこに残る龍殺しの毒を完全に浄化する。狙い通り空気中に散っていた毒はすべて消すことができたけど、それなりの量の魔力を消費することになった。もともとがその場の感覚で作ったものだし、その時は今よりも知識量と言う点で大きく見劣りしている。あれから新しい魔法もかなり覚えたし、その派生もいくつも作った。だからこそ、今の魔法の出来に満足できなかった。時間さえかければもっと魔力の使用量も抑えられたし、展開も素早くできそうだ。


「そろそろ終わったよね? 空間に何か魔法も使っていたし、後始末まで完璧かな」


「あー姉さん、死んでますか? 死んでますよね?」


 私が空気中まで含めた解毒を終わらせてすぐに奥の部屋からトーチさんとミイさんが出てきた。言葉を聞いている限り、今のやりとりをすべて見ていたのだろう。


「勝手に殺さないでくれる? ちゃんと生きてるから。動かないようにマナちゃんに拘束されてるだけだから」


「別に魔法で拘束とかをしているわけじゃないですよ。下手に動かれると散った毒が動いてさらに面倒なことになりそうだったので動かないように言ってあるだけです」


「それに素直に従ってるお姉ちゃんというわけですね。ぷっ」


「あー、笑ったわね!」


「まあまあマイちゃん。処罰は後でするから。今は体を休めて今後のことを話しましょ」


「ちょっと、処罰ってやっぱり!?」


「龍殺しみたいな危険な毒をこんな場所で取り出すなんて処罰されて当然でしょう」


「言っておくけどマイちゃんの管理不行き届きってことでミイちゃんもだからね」


「なっ。姉の管理まで仕事のうちと言うんですか? 妹の仕事量多すぎませんか?」


「そんな話じゃないよー。ちゃんと書庫管理人としての仕事。だめじゃない。危険物を持ち込ませちゃ」


「あ」


「持ち込み自体は厳重に封印を施してあるのを知っているし、きちんと許可をとってるのもわかってる。でも、封印解いちゃだめじゃない。それに、管理人としては解かせちゃだめ。もっと言えばアイテムボックスから取り出した時点でアウトだよ」


 トーチさんにそう諭されたミイさんは、何やら反論の言葉を考えていたようだが、結局出てこなかったようでがくんと項垂れた。


「……そうですね。ああした物を触るときはいつも奥の隔離部屋でやっていたので気が緩んでいたようです。これは罰を受けるのも当然ですね」


「私は嫌よ! 彼女に一級資料の閲覧許可を出すためにテストをするのはトーチ様もお認めになっていたし、その内容は私に任せるとそう言ってたじゃない!」


 いまだに床に寝たままのマイさんがわーわーわめき散らす。


「確かに言ったね。でも、規則を無視していいなんて言った覚えはないよ?」


「お姉様、無理ですよ。非は私達というかお姉様にあります。甘んじて受けるしかありません」


「い・や・よ。こないだちょっと買い物しちゃったからお金がピンチなのよね……。今罰金や減給の罰は非常にまずい!」


「完全なる自業自得じゃないですか。というかあの金額を使い果たすなんて何を買ったんですか? お姉様って私と同じだけもらってますよね?」


「仕方ないじゃない。今やってる研究に必要だったんだから。ほんとは私のパーティで行こうとしたのよ? でもみんな暇じゃないって……」


「こないだ冒険者ギルドに取りに行ってたのはそれだったんだねー。依頼出すなんて珍しいなーって思ってたけど」


「ビッグレオが当たり前のように出てくるダンジョンなんてなかなかないから、実はレアモンスターでしたってならないように早めに抑えておきたかったのよ。あの鬣にはそれだけの価値があるわ」


 ビッグレオの鬣と言えば『マツノキ』でこなした依頼だ。相場より少し高いと思ってはいたけどまさかこんなところで依頼人に会うとは思わなかった。言葉にはしないけどね。


「確かにあれは研究にはいいだろうけどね。ま、そんなお金のないマイちゃんと一蓮托生なミイちゃんに朗報ね。これから言うことを次に国王様がいらっしゃるまでこなせば罰金も減給も無にしてあげる」


 トーチさんは私の隣で肩に手を回すと、2人に向かってにこりと笑いかけた。



どうもコクトーです。


今回もマナ視点ですのでステータスはなしです。


遅くなりすいませんでした。新年会の飲み会が続き、体調不良と普通に書ききれずに先週は上げれませんでした…。

2月の終わりからは夜勤が多くなるのが予定されてますのでどうなるかわかりませんが、なんとか周一投稿を守っていけたらいいなと思ってます。


ではまた次回

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