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マナの転移物語です3


「……マナ様の話を聞いてはもらえないだろうか?」


 私の影から伸びた腕がドルトムント国王の拳を止め、ゆっくりと押し返しながら影からメイの従魔であるコルクが出てきた。ドルトムント国王は止められた腕を引こうするが、コルクがしっかりとつかんでいて引けないようで、反対の拳で殴りかかってきた。しかしそれも反対の腕で捕まえ、次なる攻撃が来る前にシャドウハンドがドルトムント国王の足を抑えた。


「ぬん」


 両手足がおさえこまれたドルトムント国王がコルクを狙って頭突きを繰り出した。足を抑えた時と同じようにシャドウハンドで抑えた。


「コルク、なんであんたが?」


「メイ様の命令に従ったまで」


「コルクと言うのか。それで抑え込んだつもりか?」


 ドルトムント国王がコルクを押し込もうと笑顔で力を込める。腕で直接捕まえている両手は動かないが、シャドウハンドで抑えていた頭が少し動いた。すぐにコルクが追加のシャドウハンドを伸ばして抑えたけど、それを見てドルトムント国王の笑みがさらに深くなった。


「国王様、ストップを」


 そうこうしているうちにトーチさんを閉じ込めていた三重のドームが解除された。周りに飛び散らないように、人が一人通り抜けられるだけの穴があけられ、まるでカマクラのような見た目になっている。誰も閉じ込めていないそのドームには何の意味もないからすぐに解除した。コルクがトーチさんからの攻撃に警戒している様子を見せるが、魔力の高まりを感じず、魔法を使ってくる気配はなかった。


「国王様、メイという名前、最近聞いた気がします。たしか……ユウカの関係者かしら?」


「は、はい! 『マツノキ』のマナと言います。話を聞いていただけませんか?」


「『神斬』のパーティだったか?」


「彼女がリーダーというわけではないと聞きましたが、そのパーティが『マツノキ』だったはずです」


「ふむ。このまま戦うとなるとここも無事では済まないだろうしな。そうなればまた金がかかる」


「研究のための人材も一部修繕に駆り出すことになる可能性もありますし、ご決断を」


「よかろう。いったん休戦だな。これを外してくれ」


 トーチさんの説得を受けてドルトムント国王が体から力を抜いたようで頭を引いた。戦意がないことを示しているっぽい?


「コルク、引いていいよ」


 ドルトムント国王が頭を引いた後もまったく手足を離す気配のないコルクに離すように促す。それを受けて、コルクもこくりとうなずいてシャドウハンドを解除した。その瞬間にドルトムント国王が攻撃を、なんてことはなく、自由になった手足をぷらぷらと揺らしてその感覚を確かめていた。

 10秒もかからないくらいの時間で終えると、さっきまで話し合いをしていたと思われる机の方に向かった。


「それじゃあ座れ」


「ちょっと待ってください。アイテムボックス」


 トーチさんがさっと机の上の書類をしまう。まあ私が見ていいものではないというのは間違いなさそうだし、下手なものを見てしまってどうこうなるよりはよっぽどいい。


「さて、察しているだろうが名乗っておこう。俺がベスティア獣神国国王、ドルトムント・ベスティア・レルドだ。それでこっちが俺の協力者だ」


「ギルド『魔法学園』のギルドマスター、トーチ・マツアキよ。学園長とも呼ばれているわ」


「よろしくお願いします。私は『マツノキ』のマナと言います」


「マナであるか。いろいろと聞かねばならんのだろうが、俺のところに来ないか? それなりの待遇は約束するぞ?」


「国王様、悪い癖が出てますよ」


「おっとすまん。悪気はない」


「え、あ、すいません。メイがお世話になるとかならともかく、どこかの国に所属するつもりはありませんので」


「はっはっは。将を射るにはまず馬をと言うが貴様は逆なのだな。しかし忠誠心が高いことはいいことだ。その忠誠が本物である間は裏切りを気にしなくていいからな。偽物にならないような行動が必要となるとそれはそれで面倒だが、当たり前のことを当たり前にしていれば問題ない。ならばそのメイとやらを連れてこい。俺自ら口説いてやろう」


「国王様はよさそうな人材がいれば片っ端から配下に加えようとする癖があるの。まあ私もその口説きに乗った口だからあまり変なことは言えないけれど、今は話が進まないので」


 ドルトムント国王はニヤニヤと笑いながら話をするが、それを聞いているトーチさんはやれやれと言うような表情で首を振っていた。


「悪かったな。ベスティアは資源に乏しい国だ。その分人が充実しなければ周りの強国、そしてアーディアとの戦いについていけない。よい人材は宝なのだ。多ければ多いほどいい」


「通常時であればそれでいいんですが、今は自重してください」


「ぬぅ。仕方がない。ではここに来た理由と、その目的を話してもらおうか」


「ここはベスティア獣神国とアーディアの境にある、『魔法学園』の本部その学長室よ。転移などの外部からの魔法を阻害する効果がある結界が貼ってあるの。国王様からしたらその目的の方が気になるのでしょう。でも、ギルドマスターをしている私にはその方法の方が気になります」


 それまでの笑顔からは一転して真剣な表情になった2人には、なんとも言えない凄みがあった。


「信じてもらえるか微妙なところなんですが、私がここに来たのは単なる事故なんです」


「事故、か。以前俺を殺しに来た男が同じことを言っていたな」


「あの時は嘘だとはっきりとわかりましたが不思議ですね。彼女は()を言っていない」


「嘘を見抜く魔法ですよね?」


「彼女の得意な魔法の一つだな。不快に思うかもしれないが初手で嘘をつくような者であれば話を聞く価値がない。それにこのような状況だ。一応身元は判明したとはいえ、こちらの立場からすれば貴様は謎のモンスターを従えた怪しい人物でしかない」


「それは理解しています。むしろその程度で信じてもらえるのであればぜひ使ってください」


「それなら続きを話せ。事故と言われても何の事故なのかさっぱりだ」


「グリムの町の近くで、魔王とその配下の七魔将に襲われ、色欲(ラスト)と名乗った女が使った転移魔法にのまれたんです。私がここに来る直前に渦がありませんでしたか?」


「トーチ」


「嘘は言っていません。余計に話が危なくなりましたね」


「つまり、ついに魔王本人が動き出したということか……。しかしグリムとはずいぶん遠いな」


「国王様との会合がありましたし、転移なしでは間に合わなかったからお断りしましたが、あの依頼はそういうことだったのね」


 私の回答に想定外だと、困ったような表情で頭をがりがりかくドルトムント国王だが、大きく深呼吸すると、質問に戻った。


「依頼内容については詳しく聞かん。なぜ襲われた? グリムは今どうなっている?」


「終盤とはいえ、私も戦闘中に飛ばされた身なので今がどうなっているかはわかりません。それと、襲われた理由については私自身整理がついていないので言えません。私も『嘘』であるかわからないので」


「それほど急なことだったということであるな。数日のうちに整理して回答を出せ」


「数日とはいえ、おいていただけるんですか?」


「トーチ」


「ギルドのメンバーでないのだから蔵書の閲覧は認めないけど、部屋を貸してあげるわ。扱い的には客ね」


「よい。回答がでたら連絡をよこせ。また会合を開く。構わないか?」


「はい。国王様の要望であれば」


「助かる。以前から配下による被害はでているが、魔王本人が動き出したとなればさらに変わってくるな。トーチ、俺はやることができた。資料はまた後日読ませてくれ」


「かしこまりました。転移魔法使いを呼びますか?」


「連れを待機させているからよい。あいつが都の大臣と連絡をとれるからな。抱えの転移魔法使いに来させるとしよう」


「承知しました」


「お前に頼むと高くつくからな。節約だ節約」


 ドルトムント国王はそのまま部屋を出ていった。てっきりトーチさんはついていくものだと思っていたけど、そのまま部屋に残り、私と2人きりになった。


「さてと、国王様も行ったことだし……疲れたー!」


 トーチさんはそれまで浅く腰かけるだけだったソファにどんと座り直し、表情を崩してうなだれた。そのあまりの豹変ぶりに私は声もでなかった。


「国王様にはああ言ったけど、ただの客じゃ面白くないじゃん。ねえ」


 トーチさんは自分の顎のあたりに手を添えながら机に身を乗り出し、ぐいっと近づいてきた。


「ビジネスの話をしましょう。これからの数日間、お互いの利益になるように」


 トーチさんに浮かんでいる表情は、いつか見た、あの王都の魔法使いたちのように、研究欲にまみれていた。



どうもコクトーです。


マナ視点ですのでステータスはなしです。


先週は夜勤もあって投稿できませんでした。

決してポケモンのソードが楽しすぎて書いてなかったわけではありません……嘘です。楽しすぎでした。

夜勤は事実ですが、まさか土曜日パソコンつけずに終わるほどやってしまうとは…

今週はちゃんと書きましたので許してつかーさい。

ちなみに水上自転車ゲットしたところですが、図鑑は230匹くらい埋まりました。殿堂入りが遠いなぁ…


感想機能が新しくなったようで、話ごとに感想が書けるようになったみたいですね。さっそく使ってくださっている方もいまして、ありがとうございます。これからも感想返しは極力全部やっていきますので、応援よろしくお願いします。


ではまた次回

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