マナの転移物語です2
今話もマナ視点です。
なんとか転移先の座標を地中から地上に変えることに成功した私だったが、着地に失敗して地面に落ちてしまった。マイナスの数値が大きすぎて、少しプラスに行き過ぎてしまったから空中に出るとは思っていたけど
ピンポイントでどこかの部屋の中に出るなんて予想外だよ。
「いたた……ここはどこだろ?」
転移による急激な変化で少しふらつく中、部屋の様子を見渡した。見たところどこかの会議室だとは思うけど、何よりも目に入ってきたのは私を見下ろす2人の男女だった。
「ふむ、今宵の暗殺者は随分かわいらしいようだな」
「それにしては派手な登場の仕方ね。それだけ腕に自信があるということなのかしら。まあドルトムント国王様と私。どちらが狙いなのかはわからないけど、どちらを狙っているにせよ実力者でなきゃどうにもならないわよね」
「あ、え、あー暗殺者?」
突然私に向けられたその言葉に思うように口が動かなかった。でも、今の状況がどういう状況なのかはっきりと理解できた。そしてその誤解をすぐにでも解かなければ大変なことになるということも。
「ちょちょちょ、ちょっと待ってください。私暗殺者なんかじゃないです! ここに飛ばされたのはたまたまで」
「言い訳は結構よ。そもそもここの部屋に転移できるという時点で相当な使い手と言うのはわかっているわ。ここに侵入した時点で捕縛するのは決まっていることだから諦めて頂戴」
女性の魔力が高まるのを感じて、私は慌てて立ち上がり、対応できるように杖を構えた。
「やる気になったようね。でも、魔法で私に立ち向かうのはいい手とは言えないんじゃないかしら?」
女性は目の前にファイアランスを展開した。当たり前のように無詠唱で使ってくるけれど、その魔法って生け捕りにはまったくもって不向きだと思う。でも、込められた魔力はそれほど多くなく、手加減しているのはわかる。非常に助かるね。
向かって来る炎の槍をアクアシールドを使って防ぐ。ジュウジュウと音を立てながら20本の槍が水の盾に消えていくと、女性は次の魔法を構えていた。
「1発目は防いだみたいだけど、これはどうかしら?」
女性が今度はアクアランスとエアナイフを放ってきた。私は先ほどの魔法を受けて蒸発したアクアシールドを修復してその魔法を受ける。アクアランスはそのまま取り込んで盾の暑さを増すための水に変えて、分厚くなった盾の半ばまで来たところでエアナイフは止まった。
「バン」
女性の合図でエアナイフが膨らみだした。意図的に暴走を起こして破裂させる気だろう。
「アクアボックス」
この盾を破る威力はなさそうだけど、部屋に被害が出るだろうそれを黙って受けるつもりはなかった。エアナイフを囲う様にアクアシールドを6枚展開して抑え込む。盾の中でエアナイフが破裂したのを確認したのち、そのまま小さい盾をすべて盾に取り込んだ。
「今のも対応してくるのね。これはどうかしら?」
女性がさらに魔法を展開する。ダークスライサーとライトボール。その陰に隠れてアースナックルも向かってきている。込められている魔力から見てそれが本命で、盾を物理的に抜けるのが目的だろう。
そんな風に向かって来る魔法への対処と考察を続ける中で1つ気づいたことがあった。一番最初に使ってきたファイアランス、そして次のアクアランスとエアナイフ。その後の魔法もすべて別の属性だった。火、水、風、闇、光そして土。これだけ多彩な属性の魔法を操る人はそうそういないはずだ。
『トーチ・マツアキ(人種)』
「やっぱりSランクの人じゃん!」
「あら、今更何を言っているのかしら? それよりいつまでも見ている場合じゃないわよ」
トーチさんに意識を向けている間にも迫る魔法への対処は忘れたわけではなかった。光と闇はそのままアクアシールドで受け、アクアシールドを貫こうとするアースナックルは上からアースナックルを使って抑え込む。失敗したときに備えて念のために張っておいた結界に、砕けた石の破片がコツコツと当たって床に散らばった。そもそもがダンジョンとかと比べると狭い部屋だから動き回るようなことはしないけど、いざという時に危ないかも。
「これも防ぐのね。でも、終わりじゃないわよアップロック」
地面に散らばった石の破片が私に向かって襲い掛かる。隠してはいたみたいだけど不自然に魔力が残っていたから使ってくる可能性は十分にあったし、私は用意していたエアマントの魔法で石を弾いた。一部が風を抜けて結界に当たるけど、結界に傷がつくことはなかった。
「まだまだいくわよ!」
アイスソードとマジックソード・ノーブルが飛んできて、私の盾を切り裂いた。凍らせた箇所を正確に切りつけ、アクアシールドの利点が活かされないようにされたのだ。
「ライトニング」
崩れたアクアシールドの水を伝わせて雷で魔法の剣を破壊した。今度は崩れた破片を利用できないようにそのまま雷で焼き尽くす。
「ごめんなさい! 話を聞いてください! マルチスフィア」
次の攻撃が来る前にトーチさんを氷、雷、水の3属性で構成されるドームで包み込んだ。できれば攻撃はしたくなかったけど、このまま受けてばかりだとじり貧だからやむを得ないよね。
「これは……面倒ね」
「一杯食わされたか。気に入った。俺がもらうぞ」
これまでずっと仁王立ちで動かなかったドルトムント国王が動き出した。
拳を振り上げたのが見えて、私は距離があるうちにとすぐにアイスシールドを使おうとしたが、気づいたときには目の前に来ていた。
「痛いと思うが我慢な。獣王の拳」
メイの獣の一撃にも似たドルトムント国王の拳が迫る。その拳の圧力に思わず目を瞑ってしまった。
「……あれ?」
意識だけは飛ばさないようにと歯を食いしばっていたが、なかなか衝撃が来なかった。
恐る恐る目を開けてみると、ドルトムント国王の拳は、背後の壁にできた私の影から伸びた腕に止められていた。
「蛇が出た……いや、むしろ鬼が出たか?」
「……マナ様の話を聞いてはもらえないだろうか?」
「コルク!?」
私の影から伸びていた腕。その正体はメイの従魔の1体。バアルコングのコルクだった。
どうもコクトーです。
マナ視点ですのでステータスはなしです。
最近は毎回のように書いてますが遅くなりすいませんでした。
3日4日と連続夜勤でさすがに書けませんでした。ちなみに来週も夜勤ですので微妙かも…。
今年も残すところ早2か月……あと何話書けるかなぁ
これまで通りのんびり頑張って書いていきますよー
ではまた次回




