マナの転移物語です1
前半はマナ視点。後半は第三者(?)視点です。ご注意ください。
「彼の頑張りは見事ではあるんだけと、悪いわね。私のブラックホールは対象を飲み込むまでは止まらない。あなたも飲まれなさいな」
ラストの言葉通り、メイを飲み込んだ真っ黒な渦は勢いを落とさずにまっすぐこちらにむかってくる。渦に飲み込まれたメイが見せた最後の表情は笑顔だった。心配するなと、自分は大丈夫だと私に告げるかのように見せつけるような笑顔だった。
現状、私にはこの渦を止める術はない。闇、光、火、風、土、水、氷、獄炎、雷光。今の私が使えるすべての属性魔法を撃ちこんだけど、残さず渦に飲み込まれるだけだった。どれかの属性ならばちょっとだけ進みが遅くなるとか。渦のサイズが変わるとかそういうこともない。ただただ飲み込まれるだけだった。
渦に飲み込まれる各種魔法を見て、渦の解析はできた。でも、これを解除するには時間が、そして技術がたりない。少なくとも今の私には無理だ。
「私絶対にあきらめないから。今は触れてからじゃ座標を1つずらすので精一杯かもしれない。だけど、それでも私は生きて見せる。ある程度力も付けた。アイテムボックスの中身も充実してる。あの時と比べたら全然ましなんだから」
私は覚悟を決めて、渦に飲み込まれた。
渦の中は真っ暗で、ありとあらゆる方向から引き寄せられる力を感じた。おそらくこの力によって行き着く先が転移の先になるということなんだと思う。外から見ている限りだと入った瞬間にランダムに座標が決められて、そこに転移させられるという風に見えていたけど、実際に受けてみるとあっているようで間違いだったことがわかるね。
体感時間で数秒ほどその力を受けた後、一際強い力に引かれ始めた。これが私の転移先になるのだろう。
「座標27万3918、5092それで高さが……-9万7012!? 完全に地中じゃない! 高さをいじらないと」
元の想定通り、ここを突破して転移を無効化するのは無理。効果を書き換えるのも座標1つだけしか変えられないのは間違いない。今書き換えるべきなのは高さの座標だけだね。あの色欲を中心としているからかなり距離は離されてしまうけど、地上に出ればまだ対処の仕方はある。地中は即死の可能性しかない!
「どこにでるかわかんないけど、絶対にまた見つけ出すんだから。待っててねメイ!」
私は高さの座標をぐんと上げてなんとかプラスにまでもっていき、転移の時を迎えた。
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「では、まだ解析は済んでいないということか?」
ベスティア獣神国の北方、デルフィナとの国境に本部を構える巨大ギルド『魔法学園』。その建物の最上階、学長室と呼ばれる一室で、ギルドマスタートーチ・マツアキと、ベスティア獣神国国王ドルトムント・ベスティア・レルドの両名が机を挟んで向かい合って座っていた。
「そういうことになりますね。時間がかかるとは思っていましたが、現状手がかり一つつかめていない状態ですから。ここまで何もつかめないとは想定外です」
「ふむ……『魔法学園』の研究チームで何も進まないとなるとどこでやっても同じでしょう。今回の研究については魔法として使いこなせるようになれば魔王との今後の戦いで多少なりとも力になるだろうと思って始めてもらったものだ。村を潰されているうちとしてはあまり長くは待てないが、必須と言うわけではない。とは言っても、うちにも無限に物や金があるわけじゃないし、それは理解してほしい」
「もちろんです。魔法の研究は常にそれとの勝負になりますからね。あまりにも研究が進まなくて援助を打ち切られてしまって研究自体が途中で断念するなんてこともたびたびあります。何もつかめなかった自分たちが悪い部分はありますが、それまでの努力がすべて無駄になってしまうのはかなりくるものがあります」
「そうなってもらっては困るのだがな。できる限りは協力させてもらうが、俺も何度も国を空けることはできない。担当者が何か失礼なことはしていないだろうか? もともと我が国で研究者だった男だ。そちらの考え方も理解はしているだろうから無茶なことは言っていないはずだが」
「そこは非常に助かってます。必要な物資の申請は多少面倒なところはありますが、必要な物であればしっかりと援助していただいておりますので」
「ふむ、物資については先ほども言ったが無限にあるわけではないからな。デルフィナのような強国と違い、我が国は豊かだとはっきり言えるようなレベルではない。そんな中で下手に簡略化して着服なんかされようものなら大問題なのだ。慣れてくれとしか言えんな」
「わかっております。あまりわがままを言って援助を打ち切られては元も子もありませんから」
「そう言う割には新たな援助を求めてくるのだな?」
「行き詰っているのもまた事実ですから。現状の結果をまとめつつ、これまでとは別の観点から研究を行いたいというのが研究チームの意見です。担当者の方にもこれまでの結果を踏まえて説明させていただいています」
「たしかに、壁にぶつかった時に一度別の方向から挑みなおしてみるというのはどの分野でも一定以上の効果をもたらすこともある。魔法に関して言えば俺は素人だが、素人にしか気づけない点があるかもしれん。その説明を俺も聞いてよろしいか?」
「ええ。すぐに準備をしましょう。ですが、ドルトムント国王様向けに用意した資料ではありませんので、わからないところがあるとは思いますが、ご理解ください」
「わからないところは質問するとしよう。妹が趣味でやっている占いによると、今日、俺にとって、運命的な何かが起こるという話だ。もしかしたら研究を先に進めることができるほどの助言ができるやもしれん。……ところで、ここのセキュリティはどうなってるのだろうか?」
「外部からの魔法の発動を防ぐ結界があるのですが、どうやってここに魔法を出したんでしょうね? 調べてみたい」
2人の会話が続く中、天井に大きな黒い渦が現れた。強大な魔力を放つ渦を前にしてのんきに話している二人ではあるが、トーチは自身の杖を取り出し、ドルトムント国王は仁王立ちの構えでいつでも動けるように準備を済ませていた。
「鬼が出るか蛇が出るか。楽しみであるな」
ドルトムントがそうつぶやく目の前で、黒い渦から、女性が一人落ちてきた。
どうもコクトーです。
今回からマナ視点なのでステータスはなしです。
投稿遅くなりすいませんでした。
用事、風邪と続いてしまい、書けてませんでした……
当初は今週も連続夜勤の予定だったんですが木曜日に延期が決まって投稿できました。
その分どこかで夜勤が入るからそこで投稿できないかもです。というかできません
前回の投稿から今日までの間にまさかの6連勝でCS決めたりファーストステージ勝ち上がったり巨人にボコボコにされたりドラフトで高校生指名しまくったりといろいろありましたね。どこのタイガースとは言いませんが。
また、幸い自分のところは大したことなく済みましたが、台風で被災された方々、一日も早い復興を祈っております。
ではまた次回




