最悪の一日です 終
後半はメイ視点ではありませんのでご注意ください。
『スキル:リジェネレイトLv4を習得しました。
聖氷耐性Lv2を習得しました。 』
渦が刻一刻とマナに迫る中、待ち望んだその一打がようやく訪れた。
耐性のレベルが上がったことによって、ヒツギの聖氷属性の魔力を帯びた雪によって阻害されていた各種スキルの一部が解禁される。『再生』や『リジェネレイト』などの体の内側に作用するタイプのスキルは何とかレベル1の『聖氷耐性』でも機能はしていた。してくれていたからレベルアップを続けて、『聖氷耐性』がレベルアップするまでの時間をつないでくれたともいえるだろう。
解禁されたスキルの中から、この状況を打破できる可能性のあるスキルを片っ端から準備する。必死に対応しようとしているが、渦はもうマナのすぐ側だ。ためらっているような時間はない。
「『獣進化』『やわらか熱毛』『迦楼羅』『ホット』火力最大!」
とにかく今は体が凍り付くのをなんとかするため、ちょっとじゃ済まないレベルで体を熱しだす。『獣進化』で体を覆うように生えた体毛を『やわらか熱毛』と『迦楼羅』が熱し、『ホット』で体の内側から根こそぎ焦がしつくす。
「きゃっ!」
体温が急激に上がって、その熱さにヒツギが反射的に俺を膝から降ろした。体表の雪は熱によって溶け落ち、接触による魔力供給がなくなったことで俺の体を蝕む聖氷属性の魔力が薄れていく。それでもまだまだ体が動かないのには変わりない。でもそれで十分だ。それでも俺は動ける。
「『ファイア』『自重軽化』『空蹴り』『魔力砲弾』『バーストショット』」
ステュラを掴み、その剣先から魔法を地面に撃つことで体を地面から浮かし、『バーストショット』による爆発と『魔力砲弾』の反動、そして『空蹴り』で一気に加速する。すべてを無理矢理動かしているから、スキル1つ使うたびに体が悲鳴を上げる。
「大人しくしてなきゃだめじゃない!」
マナの元へ向かう俺に、ヒツギが棺桶を飛ばしてくる。そうだ、この状況で俺を止められるのはヒツギだけだ。
「『ダークスラッシュ・纏』」
振り向くように体をひねって棺桶にステュラを振るった。無理に弾いたり叩き落とすような動きではなく、棺桶にくっつけるようにしてスキルを止める。発動させたスキルを無理矢理止めることで負担はさらに激しくなり、普段は膨大なスキルでごまかしていたスキル後の硬直が発生した。予定通りに。
体が動かないことで余分な力が抜け、体にステュラが密着して肩に刃が食い込むまで引き込む。『自重軽化』で羽のように軽くなった俺の体は、棺桶の勢いでさらに加速する。
自分が利用されたことを理解したヒツギが棺桶を引き戻そうと動き出す時には硬直も解けた。戻す前に最後に利用させてもらうため、俺は『鬼の一撃・付与』で力を上げて腕を伸ばした。さらに勢いがついた結果、オリハルコン並みの強度を誇るステュラが半ばから折れ、脇腹を貫くように突き刺さった。回復系のスキルはいまだに体の中で戦い続けており、体の火傷すら治っていない。このままでは出血も相まって危ないと判断し、残った半分はを手が痺れて落とす前にアイテムボックスに入れておいた。これで両手をマナに伸ばすことができる。
「お前らぁああああああああ! 約束を果たせ!」
声が戻ってきた。俺は広場一体に届くように叫ぶ。
体を傷つけながらもなんとか加速し続けたことで何とか体をマナと渦の間に挟み込んだ。そして力いっぱいマナを後方へ突き飛ばす。
「メイ!」
俺の体に何体かが戻ってくる感覚とともに、渦の引力にひかれて体が持っていかれる。『小規模ワープ』も『テレポート』も失い、ぼろぼろな俺の体ではこれに逆らうことはできなかった。
倒れたマナが俺に手を伸ばすのが見える。涙を浮かべるその顔がどこか愛おしくもあった。
俺は抵抗することもなく、渦に飲み込まれた。
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杖を地面にさして支えにして渦の引力に逆らいながら、その魔法のあまりの強大さにすくむ体を鼓舞するマナは、大量の魔法で相殺しようとするが、一向になんとかなりそうな光は見えていなかった。
しかし、あと数mというところでメイの文字通り体を張った飛び込みによって、マナはまた数mの猶予を得た。
渦にメイが飲み込まれるという大きすぎる代償を払って。
メイが渦に飲み込まれる瞬間、マナに見せた表情は笑顔だった。心配するなと、なんとか逃げてくれと、そうした言葉を発するのでもなく、俺がなんとかすると胸を張るのでもなく、ただいつものような笑顔を浮かべていた。
「彼の頑張りは見事ではあるんだけと、悪いわね。私のブラックホールは対象を飲み込むまでは止まらない。あなたも飲まれなさいな」
ラストの言葉通り、渦はまったく勢いを落とすことなくマナに迫る。マナはそれまでのように魔法を撃つこともなく、ただただぶつぶつと言葉をつぶやくだけで、驚くほどあっさりと渦に飲まれていった。
「メイ、マナ!」
ユウカの悲鳴とも後悔の叫びとも聞こえる声が響いた。自身は神威解放の反動でまともに動けない状態ではあったが、それ故に目の前の事態をただただ見ていることしかできないということを思い知らされていた。
その一方で、メイの最後の言葉を受けてから、キャラビーは既にアンナの手によって広場から離脱させられていた。暴れないようにきっちりと気絶させられ、2体のモデルクイーンアントに護衛されながら館まで運ばれる手筈だ。キャラビーはもはや崇拝とも呼べるレベルでメイのことを慕っていた。もしも渦に飲み込まれる瞬間を見ていたら、それこそアンナの静止を振り切って飛び出しかねないレベルだ。だからこそ、アンナはキャラビーを離脱させていた。ソレがメイの意思であるから。
「さて、思いもよらぬ感じで暴食も飲み込まれちゃったけど、一応は予定通りなのかな?」
「ラスト、鳴はどこに行ったの? あと、真那はちゃんと殺したのよね?」
「知らないわ」
「知らないって何よ。いいから私の鳴を返しなさいよ」
「知らないものは知らないのよ。ブラックホールは色欲の能力を組み込んでいるせいで制御してないんだから。常にランダムに転移先が変わり続け、誰にもどこに何が飛ばされるのかわからない。そんな魔法なんだから」
「それじゃ私が鳴とイチャイチャできないじゃない!」
「そんなこと言われても、彼を抑えてたのはエンヴィーでしょ? できなかったからって私を責めないでよ」
「うぐ……。ま、まあ鳴はまた探すわ。エル、手伝いなさい」
「へーい」
「大変であるな」
「お前もやるんだよこのポンコツ」
「にしても、ランダムとなると、標的が死んだかどうかもわからないのではないか?」
「縦横高さ、私を中心に完全ランダムで転移させて、生きていけるような場所に転移する確率がどれくらいあるっていうのよ。高さがマイナスだったら地中、プラスでも上空数百m、数千mなんて当たり前のようにあるのよ? 場合によっては次元すら異なる場所に転移することだってあるし」
「ラスト、あんた、真那の前で渦何回使った?」
「そんなの覚えてないわよ。隙あらば彼の方だけじゃなく全部の戦場に魔法を飛ばそうとしてたのよ? それを全部捌くのに回数なんて数えられないわ」
「……あなたたちはあの子の恐ろしさを理解してないのよね……。断言しておくわ。『マツノキ』において最も厄介なのは鳴じゃなくて真那。あの子が生きてるなんてことがあれば、間違いなく危険よ」
「うーん、話してるところ悪いけど、一回戻ろうか。ラスト、急いで」
「魔王様、どうかなさいましたか?」
「嫌な予感がする。ユウカさん、ほんとはトドメを刺しておくべきなんだろうけど、そう簡単にはいかなさそうだし、それをしている時間もなさそうだからこれで失礼するよ。全世界に伝えておいてくれると嬉しいな。時は来た。僕たち魔王軍、そしてアーディアは動き出すと」
魔王は言いたいことだけ言うと、ラストの渦で全員を連れてその場を後にした。
それから間もなく、一陣の風が吹いてユウカを連れ去ると、天空から光が降り注ぎ、広場に大穴が空いた。
こうして、『マツノキ』は再びバラバラになった。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50)
有効職業
聖魔??の勇者Lv17/?? ローグ Lv46/70
重戦士 Lv62/70 剣闘士 Lv49/60
龍人 Lv10/20 精霊使いLv17/40
舞闘家 Lv29/70 大鬼人 Lv11/40
上級獣人Lv7/30 魔導士 Lv23/90
死龍人 Lv1/20
非有効職業
魔人 Lv1/20 探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90 上級薬師Lv1/80
呪術師 Lv1/80 死霊術師Lv1/100 』
遅くなってしまいすいませんでした。
平日の無理がたたりまくって休日にダウンということが多くて…
会社から正式に残業するなとお達しがあったので少しずつ残業は減ってきてるんですけどね。
そうなると今度は風花雪月やりたくなって(メソラシ)
この話で第8章は終了となります。
さっき気づきましたが8章だけで3年くらいかかってるんですね…おかしいなぁ…
間章を挟むかはまだ未定です。
ではまた次回




