北の門、西の門です
私、マナは自分で作った壁の上に座ってオークたちの出現を待っていた。もう一時間くらいになるかなー。
壁は森の木々よりも高くなっているので見逃すことはないはず。それに森からここまでもけっこうな距離があるし。
そしてしばらくしたとき、風が強く吹いたと思ったら地鳴りとともにオークたちが森から姿を現した。
「さて、やりますか。魔法でメイに負けるわけにはいかないんだから!」
オークたちが向かってくるのを待ち構える。『クエイク』で作り出した土の壁は、お椀のような形にそびえ立っている。その直径約1km。うん、頑張ったね私!
オークたちは私の座っている、お椀の底に当たる部分を目掛けて走っている。ここを抜けるのが町に一番近いと知ってるようだ。オークたちが壁を避けて回り込もうとか思わなくてよかった。そうなってたら作戦台無しだったしね。
私はすっと立ち上がるとすーはーすーはーと2回深呼吸をして緊張をほぐす。そしてしっかりとオークたちを見据えると魔法を使うべく準備にはいる。
今ここには自分とオークしかいないからわざわざ呪文を唱える必要はない。クエイクを使ったときはいろんな人がいたから唱えていたけど、ないほうが早く魔法がうてるし、隙も少ない。
「まずはさっそく使わせてもらおうかな。『黒槍の雨』」
お椀の中程まで来ていた先頭のオークを中心にして40本の槍が降り注ぐ。それはオークを確実に仕留めてさらに地面を穿っていく。メイの試しうちによって凸凹になった地面をさらに深くえぐる。
「うーん、やっぱり少しは弱体化するっぽいね。なんとか強くしていかないと」
この魔法の基準はあくまでもメイのものだったため弱体化と言っているが、実際にはメイが使ったときより強かったりするのだが、それを知る術はなかった。
少しは戦力を削れて満足した私は、勢いがおさまらないのを見てすぐに次の魔法の準備をする。メイほど早くないにしても私も連続で魔法を使うことはできる。メイは1つの魔法を使ってる最中にいくつもの魔法を同時に使ってるみたいだけどそんなことできる人なんかめったにいないと思う。
「魔力が十分なうちに大きく削っとかないと。魔力ほとんど持ってかれるから後だと使えないし」
私は呪文を唱える。
「『すべての業を受けし火の鳥よ、いかなる傷をも癒す炎の鳥よ、死して尚灰より出でし焔の鳥よ、今ここに顕れん!』サモン・フェニックス!」
炎系超級魔法、『サモン・フェニックス』。私のレベルが低いからか、それともこの魔法が難しすぎるのか、両方なのかは知らないけど、私が呪文の詠唱なしで使えない魔法の1つ。自分の魔力量で消費する魔力と威力がある程度まで変わるという魔法。マツヤナさんの家にあった古い本に書かれていた魔法で、もともとはとある物語に出てくる魔法だった。しかし、私はその記述を見た瞬間使えると確信した。何でかと言われたら何となくとしか言えないけど、それでも使えたのだ。
私の目の前に全長2mほどの火の鳥があらわれる。近くにいるだけで暑いと感じるそれはオークたちにむかって低空飛行を始めた。地面すれすれで触れていないのにもかかわらず、通ったあとの地面には焦げあとができている。
オークたちはむかってくるそれを迎え撃とうなど一切思わず一心不乱に森に逃げようとした。しかしそんな簡単にいくわけもなくお互いがぶつかり合ってうまく下がれていなかった。
たとえ逃げたとしても逃げられるような魔法ではない。火の鳥はあっという間にオークたちに追い付き、のみこんだ。
森の近くまで行ったあと垂直に空へ向けて飛んでその先で消えた。
私の目の前にはオークたちのいた跡しか残っていなかった。
オークの全滅を確認できた私は魔法をうった反動で座り込んだ。
「うー、魔力ほぼ空になっちゃった…。やっぱりこれ強いけど控えた方がいいかな」
魔力の残量を考えると、ファイアとかフレアを一発撃ったらもう撃てないレベル。オークたちを全滅させられたからこそ今こうやって休んでいられるが、普通はまだ戦闘中なのだ。まああの魔法を耐えきるような敵と戦いたくはないけど……。
私は、他のところはまだかかるんだろうなーとか思いながら、休憩もかねて焦げあとから発生した煙が空に上っていくのをのんびり眺めることにした。
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俺は今、街が生きるか死ぬかの戦いの指揮を執っている。ほんとなんでこんなことになったんだっけか……。
俺の名はヘレン・アクトベルト。もともとはこのあたりのしがない下級貴族の末っ子だった。勉強も嫌いじゃなかったが、それ以上に運動が大好きだった。幼いころに家を出され、騎士団に入隊。それからひたすら訓練に明け暮れた。作戦考案の担当だった文官さんから戦のことを聞き、同期や先輩にいた剣のうまい奴からは剣を習い、後輩にいた防御がすげえうまい奴には武器ごとの対処のしかたを習った。身分や先輩後輩なんか一切関係なく、ありとあらゆる人に教えを請うた。そして気づいたらそいつらの大半は引き抜きか戦死。俺は騎士団長になっていた。
戦死した奴らの多くは森の奥で獰猛な魔物に殺された。領主から森の奥の魔物を討伐してこいって命令が下ったのだ。普通冒険者ギルドの仕事だよな? とか考えもしたが、その辺は先輩からマスターが領主の息子だと聞かされて納得してしまった。選抜されたメンバー20名で討伐に向かったが、帰ってきたのはわずか3人。目標の討伐は果たしたとのこと。
騎士団長として初めて、領主とギルドマスターと会ったときに俺はそのときのことを聞いた。やつらそんなこと覚えてないって言ってやがった。しかもギルドマスターの目の前で俺たちに討伐の任務を与えるとか意味わかんねえ。当然町の外にいる魔物の討伐は冒険者ギルドの仕事だと言ったが聞く耳をもたなかった。……これは俺が頑張らねば街は終わる。そのとき俺は強くそう感じた。
「あーなんで今あの時のこと思い返してんだろ……」
「隊長こういったやばめの作戦あるたびにそれ言ってません?」
「まあ隊長にもいろいろあるんだろうよ」
「んなのんきに話してる場合じゃねえよ!」
俺たちが話しているのは北門から200mほど離れた場所。そしてその目の前には……大量のオークの死体が転がっていた。残るオークはそれほど多くない。ところどころに騎士の死体も転がっているものの、その総数はおそらく20くらい。このまま終わったとしても決して完勝とはいえない状態だった。俺たちがやったことと言えば2つ。
1つは近づく前に弓で数を減らすこと。多くの奴の頭に当たるように超高弾道で打ちまくる。まあ風で流されてそこそこ無駄になっちまったがそれでも問題ない程度には削ることができた。避難誘導が完了して部隊がきちんと合流したのはオークたちの現れる10分ほど前。第3、第4部隊にはすぐに弓の準備をさせた。3と4はうちの部隊で最も弓の扱いに長けた部隊だ。最低でも弓スキルもち。分裂や貫通効果を付与できるような奴もいる。
そしてある程度減らした後は、できる限り複数対1の形をつくって、素早く殲滅する。といっても1人が囮として注意を引いて2人で首を掻っ切るか、足を斬って動けなくしてから倒す。それでとどめを刺したら次といった感じで数を減らす。奥のほうにいるやつは貫通もちの弓で減らしていく。
俺を含めた部隊長は別だ。第1部隊隊長でもある俺、2のメグ、3のジャン、4のクラニ、5のハープ、6のイーウ、7のアックス、8のヒネ、9のリュウ、10のハツ。それぞれが個人で次々オークを倒していく。特にリュウは特注の戦槌を手に一撃で複数のオークを吹っ飛ばしており、たぶん一番武功を上げてる。
オークたちはおそらく俺たちを無視すれば簡単に街にたどり着くことができる。それでも俺たちを執拗に狙いに来るのはたぶんなにか別の狙いがあるからだと俺は思う。
「つってもそれに対応できる戦力は今のところないしさっさと片付けないとな。各部隊隊長以外は下がれ!」
「はぁ? 数減ってるとはいえあと40くらいはいますよ?」
「一人4だ。いけるだろ?」
「俺なら余裕ですよ」
「そりゃお前と隊長だけだリュウ。俺みたいなちまちまタイプは1体潰すのに時間かかるの」
「私も余裕~」
「分裂にしても貫通にしても強いからな」
「お前らそれくらいにしとけ。リュウ、さっさと倒して周りのフォローに入れ。ヒネは余裕って言ってるしフォローなしでいいよな」
「それは無理ー! アックスは盾ね!」
「誰がやるか」
「お、全員下がれたみたいだな。下がったやつで動けるやつは全員東と西のカバー。あいつら2人ともそれぞれこの数を1人で抑えてんだ。街から煙や悲鳴が上がってないってことはなんとか食い止めてるってことだ。こんだけ頑張ってくれてるやつらを絶対に死なせるな!!」
俺はできる限りの大声で叫ぶ。
「1発でかいのいくぞ。俺らも東西に分かれねえと」
「ですね。ここだけじゃないってことをすっかり忘れていました」
「忘れちゃダメでしょ……。すぐに済ませるよ」
場の空気が一気にしまり直し騎士たちの動きも俊敏になる。それから5分後には北のオークは殲滅し終わった。まあ東西に行って戻ってきたやつからの報告を聞いてすでにオークの死体すら残ってないと聞いた時は茫然としたがな……。
そして俺たちはその時気づいていなかったが、うっすらと南から煙が上がっていた。
どうもコクトーです
データって消えると書く気なくなるんだね…
『刈谷鳴』
職業
『冒険者 Lv41/99
格闘家 Lv41/50
狙撃手 Lv34/50
盗賊 Lv32/50
剣士 Lv31/50
武闘家 Lv26/60
戦士 Lv26/50
魔法使いLv32/50
薬剤師 Lv32/60
鬼人 Lv6/20
????の勇者Lv7/??
狙撃主 Lv1/70
獣人 Lv1/20 』
次こそはデータ消えないといいな…
誤字脱字報告まってます
毎度感謝しております
ではまた次回