最悪の一日です4
回りながらステュラを振りぬいたものの、耳元で声をかけてきたエルギウスはふわりと後ろに跳んでそれをかわした。「危ない危ない」などと言いながら汗をぬぐう仕草をするエルギウスの演技がかった様子に少しイラっときたが、追撃をかけようにも体がうまく動かない。剣の勢いに体が引っ張られてしまっているようだ。
意識のないヒツギの回復と防御を任せ、ステュラを構えてやつらに向き合った。
「怖いねー。俺の呪いもついでに解いてくれない? お金払うからさ」
「くそくらえ」
さらっと聞いてくるエルギウスの提案をけった。そんなエルギウスのところにセン・グーテンがやってきた。
「エル、俺は知ってるぞ。こういうのをツンデレと言うのだな?」
「お前は黙ってろセン。あと、たぶんそれは違うからな」
「ぬ、やはりニホンゴとやらは難しいのだな」
「お前がバカなだけだ。ラスト、なんでこいつ連れてきたわけ?」
「知らないわよ。渦をつないでいた僅かな時間で勝手に来ただけ。誰の近くにいたのかしら?」
「そろそろ何かありそうだったからラースのところにいたのだ。ここ数日な」
「ばかもここまでいくとすがすがしいな」
戦闘中にも関わらずおしゃべりを続ける3人のところに、ゼルセとコルクの2体を同時に相手していた魔王が飛んできた。魔王の戦闘を直接見てはいないが、コルクはともかくゼルセはかなり体表に傷が多くできていた。鱗もところどころ剥がれ落ちており、指も何本か折れているようだ。
「楽しく話してるところ悪いけど、そろそろみんなも動いてくれないかな? ラースはあっちのSランクに手間取ってるし、僕とグリードだけじゃ多勢に無勢なんだけど」
「グリードは決め手にかけているようだな。結界の内に籠って……たるんでる!」
「じゃあたるんでないセンは戻ったらグリフと模擬戦をしようか。ベガクロウを食べて、最近爪が伸びたって喜んでたから、どれくらい強くなったか見てみたいんだよね」
「私は用事がありますのでその名誉はスロースにお分けします」
「俺だっていやだっての。でも、俺ならさっさと寝ちまうかな」
「魔王様、問題ないようでしたら私が全員飛ばしてしまいますが」
「それはまだだよ。最終手段かな」
「出過ぎた真似を」
「いいよ。それより、みんなちゃんと戦おうね?」
「うす」
ふざけたように話していた魔王たちが戦闘モードに切り替わったようだ。全員がそれぞれの武器を構え、こちらに向き合った。正直そのままおしゃべりに興じて帰ってくれればよかったんだが、さすがにそんなに都合よくはいかないか。
向こうがやる気になったことで、こちらの警戒度が跳ね上がる。相手は6人しかいないが、一人一人の戦闘能力は非常に高い。正直、1体に対して全員で戦っていきたいという思いはあるが、そうもいかない以上は戦力を分散せざるを得ない。武闘大会で仮面男として参加していたエルギウスはともかく、グリード、ラストの2人は戦闘方法がまったくわからない。警戒と自身の状態の把握にかまけてそれまでの戦いを見ていなかった自分が腹立たしい。
「かう!」
「ガァア!」
従魔たちが声を張り上げて走り出した。ヒメがラスト、コルクがグリード、ゼルセがセン・グーテン、黄龍がスロースと、一対一となるように相手を引きはがす形だ。
「おお、何の相談もなくこんな風になるってすごいんじゃない? もしかしてこれって運命?」
「男と戦うことが運命とか嫌なんだが」
「うーん、そういうことじゃなくて、勇者と魔王は戦う運命にあるってことだよ」
「勇者ならお前が浚っていったじゃねえか。パーティごと」
「プライドのこと? あれはもともと素養はあったんだよ。グリードがうまくやってくれて開花したってだけで、大元は既にあった。だからこそ、『勇者』として覚醒しきれなかったんだからね」
「『魔王配下の勇者』とでも覚醒予定だったってことか?」
「そんなでも『勇者』として覚醒できていれば勇者さ。まあこの腐った国や世界が認めるかどうかは別だけどね。それに、彼の隠された『力』が何だったのかなんて僕には知る術はないよ。『魔王』として覚醒した僕でも、知ることができるのは今の強制覚醒した『やみおちの勇者』だけさ」
「『やみおちの勇者』なんて随分な名前になったんだな」
「まあ強制覚醒の影響だよね。今は聖なんちゃらの勇者って名前だけど、案外、君も同じような名前になるかもしれないよ?」
「それはない」
「有無を決めるのは君じゃないよ。『グラトニー』の力を持つ君は僕の仲間にするってもう決めたんだ。ようやくすべての大罪が揃う。今日のこれはただの勧誘じゃない。歴代の魔王たちに倣うわけじゃない。ここにあるのは僕の意思のみ。今代魔王たる僕の、世界に対しての宣戦布告さ!」
高らかに宣言した魔王が動き出した。魔王は地面から少しだけ浮かぶと、急加速をして俺の方に突っ込んできた。腕を体で隠すようにして飛んでくる魔王の攻撃を、俺は『ダークネスシールド』に『魔力盾』を重ねて受け止めた。勢いに押されそうになる体を必死に抑えながら、その武器を確認した。
魔王がその手に持つのは斧だった。短い持ち手に対して台形のような形をした両刃の部分が非常に大きく、どこかヒツギの棺桶を思い起こさせるようなバランスの悪さを感じた。その一方で、全体が真っ赤で統一されたその見た目からは、なぜか怒りのようなものを感じた。
魔王は2枚の盾に防がれた斧を、体の回転を使ってもう一度叩きつけた。その2度の衝突だけで俺の盾はヒビが広がってしまい、それ以上の防御はできそうになかった。もう一度回転する素振りが見え、俺は『不動明王』とステュラによる防御に切り替える。案の定、魔王の振るう斧は2枚の盾を砕き、俺が両手で握るステュラと激しくぶつかった。
「爆炎斧!」
「『サンダーブレス』」
魔王の持つ斧が纏った炎を、『サンダーブレス』でかき消す。ある程度は消すことができたものの、ステュラで受けたことでそこからさらに炎が噴き出した。どうもその炎は魔法ではないのか、俺の脇腹と腕を焼いた。すぐに『再生』が回復してくれるものの、その痛みはいつも以上に激しく感じた。
その痛みを我慢して地面から『ニードル』を飛ばして魔王を狙うが、魔王はそれらを足場に利用して俺から距離をとった。
「メイ! よけて!」
後ろから聞こえてきたマナの声で、魔王が後ろに跳びながらも魔力で生み出した小さい手斧をこちらに投げようとしてくるのに気が付き、それを撃ち落とすべく『ダークネスナックル』を構える。
「違う!」
今にも放たれるかという瞬間、俺は右からすごい衝撃を受けた。
めきめきと腕やあばらの骨が折れていく感覚が体を襲い、その衝撃を与えた塊がそのまま俺を弾き飛ばす。地面に頭を強く打ち付け、そのまま跳ねるように地面を転がった。
「何を、何をやってるの!?」
「ようやく戻ってきたみたいだね。時間がかかったのはそれだけ抵抗したってことかな?」
地面とその塊で2度打ったことで頭から血が流れているらしいが、先ほどと違い、なぜかなかなか『再生』が始まらないために、うまく頭が働かない。しかし、俺はそれが何なのかはっきりと見ることができた。
「なんで……なんでなの! ひつ姉!?」
「……」
俺を襲ったその塊の正体。それは、何度も見てきた、ヒツギの振るう、棺桶だった。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50)
有効職業
聖???の勇者Lv17/?? ローグ Lv46/70
重戦士 Lv62/70 剣闘士 Lv49/60
龍人 Lv10/20 精霊使いLv17/40
舞闘家 Lv29/70 大鬼人 Lv11/40
上級獣人Lv7/30 魔導士 Lv23/90
死龍人 Lv1/20
非有効職業
魔人 Lv1/20 探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90 上級薬師Lv1/80
呪術師 Lv1/80 死霊術師Lv1/100 』
前回に続き、遅くなってしまいすいませんでした。
思うように文字数が伸びてこないのです…
あと残業がやばくなってきたのもありますね。ついに会社から警告受けました(泣)
次回こそは遅れずに投稿できるかな?
ではまた次回




