最悪の一日です2
令和最初の更新です。
「初めましてグラトニー。僕の名前はマモル。今代の魔王だよ」
魔王。男は軽い感じでそう名乗った。
「お前が……魔王?」
「うん。今僕そう名乗ったよね?」
「はい。しっかりと名乗っていました。ですのでその情けない表情をやめてください魔王様」
おもむろに傘を取り出して魔王の隣で佇む女は、やれやれと首を横に振りながら話す。そして、女の言葉に安心した魔王は笑顔に戻り、再びこちらに向き直った。
「それで、魔王がいったい何の用だ?」
「それは君がよくわかってるんじゃないのかな?」
「俺のことを『グラトニー』と呼んでいるってことはそういうことなんだってのは理解できる」
「なら話は早いよね。僕の物になれ。グラトニー。僕らには君の力が必要だ」
魔王はそう言って俺の方に手を差し出した。その目はまっすぐ俺を見ており、意識していなければついつい手を伸ばしてしまいそうになってしまうような、妙なカリスマ性があった。
「断る。俺はお前の駒にはならない」
「……理由を聞いてもいいかな? それとも、僕の方から理由を話すべきかな?」
「お前が、何を思って魔王なんていう、世界の敵を名乗っているのかはわからないし、わかるつもりはさらさらない。俺が遭遇したのはコロイドの町とミラの町の2か所だけだけど、ユウカやジョーさんたちから話は聞いてるんだよ。お前たちが、モンスターを率いて、誘導して、襲わせて、いったいいくつの町が死んだ? 罪のない人たちが、何人死んだ? 俺はあいつじゃないから世界を救うだとか、悪を許せないとか、そういうことを言うつもりはない。でも、俺の周りのやつが悲しむのは嫌だ」
「罪のない人たちね……まあいいや。しかし嫌、かー。みんな自分勝手なやつらばかりではあるけれど、君も相当みたいだ。別にいいけどね。君もあいつらの本性を知れば自分からこちらに来たいと思うようになるさ。そうなるまでは大罪で縛るしかないのかもしれないけど」
「魔王様、私がやりましょうか?」
「落ち着きなよ色欲。向こうは4人と5匹もいるのにこっちは2人しかいないじゃん? まずはみんなを呼ぶところから始めようよ」
「させると思っとるのか?」
魔王とラストの会話に割り込むようにしてユウカが2人に斬撃を放った。魔王の言うみんなとは間違いなく憤怒をはじめとする大罪の名を持つ奴らだろう。ヒツギのかつての仲間であるオルスとエルギウスの2人が来るというのですらあまりいいとは言えないのに、知らない大罪クラスの者が3人も来るとかなり厳しいだろう。
「危ないなあ。でも、そっちから仕掛けてきたんだから仕方ないよね。反撃しようか、ラスト!」
「はい」
魔王が向かって来る斬撃を踏み砕く。その足は勢いあまって地面を踏み抜き、魔王を中心に亀裂が走った。それに合わせるようにしてラストが空中に真っ黒い渦を作り出した。
「気を付けて! あれで転移してくるよ」
「あなたはそういえば見たことがあったんでしたね。だからどうというわけではありませんが」
「なら、それを潰せば!」
転移してくる場所が決まっているのであればその出先を潰すため、マナが渦に向けてヘルフレアを放った。
「無駄よ」
ラストが炎に向けて別の渦を作ると、炎はその渦にのまれ、後方に作った別の渦から後方へ飛んでいき、地面を焼いた。俺も『アイスレーザー』を放ってみるも、途中で軌道が変化し、渦にのまれて同じように後方へ飛んでいった。
「来たね」
「久しぶりだなヒツギ。元気してたか?」
渦から最初に出てきたのは怠惰のエルギウス。以前セン・グーテンを迎えに来た時と同じような仮面をつけた猫獣人だ。
「メイから聞いてはいたけど、あんた、その仮面まだつけてるのね」
「これがなきゃ俺が俺足りえない。お前ならわかってるだろ?」
「900年も経って、まだそんなことだから言ってるんじゃない」
スロースとヒツギが話す一方で、渦から続けて2人が出てきた。先に来たのは憤怒のオルス。そして、その後ろについて来たのは、見覚えのある女だった。
「彼女って……」
「たしか天上院のパーティの回復魔法の使い手じゃなかったか?」
「ふふふ。お久しぶりです。皆様お変わりないようで何よりです」
「なぜお主がそこにおるのじゃ? お主はそこにおるべき人間ではないじゃろうに」
「ユウカ様、私は私ですよ? あなたに私の立ち位置を決める権利はありません。というよりも、私は最初からこちら側の人間です。あの時、魔王様、私が仕えるべき偉大なる神に出会った時から!」
「……狂信者」
誰ともなくこぼれたその言葉は、彼女のことを最も的確に示している言葉だった。
「あはは。こっちの君として会うのは初めてなんだから、名乗ってあげたらどう?」
「かしこまりました、魔王様! では改めまして」
彼女は両手を自身の胸に当て、1度大きく深呼吸をすると、凛とした表情になって俺たちに名乗った。
「私の名はサラ・ファルシマー。偉大なる魔王様から強欲の名を授かった、魔将の一人でございます」
「グリード……つまり強欲か」
「私の思いはすべて魔王様のために。いえ、私だけではありません。この世界のすべては魔王様のためにあるのです。それを魔王様が強欲と呼ぶのであれば、私は強欲と名乗りましょう」
「そこまで言い切るお主が、なぜ天上院なんぞのパーティにおったのじゃ? まあそこの魔王の命令なのじゃろうが」
「魔王『様』です! まあそうですね。私は魔王様からの命を受けてあのパーティにいたというのは間違いありません。そして、その命を達成したからこそ、再びこうして魔王様の元へ舞い戻ったわけです」
「その命とは?」
「そこまであなた方へ話す理由はないのですが……」
「話してあげていいよ」
「はい! 私が課せられた命は最後の大罪を探すこと。すでに適合者がいる6つの大罪の他、残された大罪に適合する強者を探して、こちら側に引き込むこと。それは、あのパーティにいてこそ達成できました」
「まさか!」
「そう。最後の大罪、傲慢の名は天上院古里。今日この場には来ませんが、『力』を手にした勇者が最後の大罪です」
「あいつが……」
「プライドが覚醒できたのは君のおかげでもあるんだよ? 詳しくは知らないけど、君が彼のプライドを文字通りへし折ってくれたおかげで、傲慢として覚醒できたんだから」
「俺の……せい?」
「メイのせいじゃないよ。あいつが勝手にグリードの罠にはまっただけなんだから」
「マナちゃんはきついことを言うね。でも、それも仕方ないのかな?」
「あんたに何がわかるって言うの? どちらにせよ、メイはあなたたちには渡さない」
「そう言うと思ったよ。まあ、やる気になってもらうのはあんまりいいって思わないけど、むしろ戦うと考えたらやる気になってもらった方がいいのかな」
魔王はそういいながらアイテムボックスから禍々しい光を放つ球を取り出した。それは『鑑定』なんかしなくてもわかる。呪われた品だ。
「1発しかないけど、ここでしか使うタイミングはないんだよね。さて、君たちはどう動くのかな!」
魔王はマナとヒツギの間に向かってその球を投げつけた。一瞬床を狙っているのかと思ったが、その先には俺が撃った合図を見てやってきたキャラビーたちがいた。キャラビーが広場に出る直前で急いだのか、カルアもみぃちゃんもキャラビーからは少し離れていた。
「私が守る!」
それにいち早く気づいたヒツギが、キャラビーたちを守るために両方の棺桶を重ねて盾として、その球の直線上に立った。
「なんで!?」
その球はヒツギの棺桶をまるでなかったように通り抜け、ヒツギの胸に当たった。
球からあふれ出た呪いが、ヒツギを覆いつくす。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
神官 (50)
有効職業
聖???の勇者Lv17/?? ローグ Lv46/70
重戦士 Lv62/70 剣闘士 Lv49/60
龍人 Lv10/20 精霊使いLv17/40
舞闘家 Lv29/70 大鬼人 Lv11/40
上級獣人Lv7/30 魔導士 Lv23/90
死龍人 Lv1/20
非有効職業
魔人 Lv1/20 探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90 上級薬師Lv1/80 』
GW最後に駆け込み更新です。少し間に合ってない気もしますが誤差です誤差。
いや、ほんとすいません。
前書きでも書いていますが、令和最初の更新です。まあその令和への改元対応のせいでGW中に夜勤が入ったりしてたけどキニシナイ。
令和でもよろしくお願いいたします。
ではまた次回




