東の門です
門の外に出てそろそろ一時間が経つ。森の中からちょいちょい鳥が飛び立っているのが見えていて、だんだんと近づいてきていることが見てとれた。というか見える範囲での森の奥辺りに、偵察なのか数体のオークの姿が見えていた。それでもまだ攻めてくることはない。
それから10分後、見える数はどんどん増えてきた。もう隠れきれてねえじゃん。
そしてそれからすぐ、風が強く吹いた。木々が激しく揺れる。それが止んだとき、突如として地鳴りとともにオークの群れが森から飛び出した。
森から続々と飛び出してくるオークたち。視界を覆い尽くすほどのオークが一直線に俺の少し後ろの門を目指してくるのはなんかシュールだ。
そもそもなぜモンスターが町を襲うときに門を狙うのか? その答えは単純で、壊すのが楽だからだ。町を一周囲っている城壁はかなりの強度をほこる。それはどんな町でも変わらない。さすがにすべての町が囲われているわけではないが壁を作ってある町は基本固くしてある。これは魔法ではなく今はもう失われた技術らしい。
なんで失われたのかはわからない。一説ではある時代の王様が調子にのって継承させなかったとか、貴族の怒りを買ったとか、難しくて継承できる人がいなかったとか様々らしい。
まあ要するに現存している城壁はある程度のランクのモンスターの攻撃じゃびくともしないということだ。それはもちろんランクD-しかないオークには壊せない。
しかし、門は別だ。
門なんかは普通の木を軽く加工した程度でしかない。もっと大きな町になると鉄だったり鋼だったりでできていて頑丈になってることもあるらしいがモンスターの攻撃に耐えられるレベルじゃない。
ここの町はもちろん木。モンスターからしたら狙いやすいことこの上ないのだ。だからせいぜい荷馬車が2台並んで走れる程度しか幅のない門に大量のモンスターがむかってくる。ぶっちゃけいい的だわな。
「さーて、まずは早速魔法を試さないとな。せっかく覚えたんだから」
俺は向かってくるオークの先頭にいる個体がおよそ300mくらい先になったとき魔法を使い始めた。
「大きく削ってくれよ。『黒槍の雨』!」
俺が手を空に向けるとオークたちの上空に黒い球体が現れた。そこから勢いよく槍が放たれる。20本だけ。
「なんか少ねえ!?」
もちろんその20本の槍はオークをしっかり倒していくのだが見たところ300くらいのオークの前には微々たる数でしかない。オークは速度を落とさず迫ってくる。
俺は慌てて鑑定で『黒槍の雨』を調べる。そこでわかった事実。
『黒槍の雨:ダークランスを敵上空より放つ。威力はダークランスのレベルによってかわり、同時に使える数はこのスキルのレベルによる』
予想以上に弱くなってました。
しっかりと確認しなかった己を恨みつつ冷静に考え直す。そもそも覚えてすぐにあんなのが使えたらおかしいよな。そう思えばダークランス一発しか放たれなかったのも納得できる。レベルがMAXになったときはじめてあの数になるのだろう。
とりあえず今回の殲滅戦で主武器として使うはずだった魔法が予定とは違って役に立ちそうになかったので組んでいた作戦をすべて放棄して魔法連発での殲滅に変える。
すぐにダークランスを目の前にいくつも展開していく。今のは発動した端から槍が飛び出すように、魔力でのタイミング調整を一切していない。そのため右から順にオークを削っていく。
頭を貫けば確実に倒せるが、1、2体のオークを貫通したダークランスはその次のオークを貫けずに仕留めきれないことが多くある。その辺は数でカバーしているが、死んだあとも体が起き上がっているオークには腹が立つ。死んだならすぐ倒れろって。じゃないと槍が数本そいつを貫いたり倒したりで無駄になってしまう。
前方の味方を貫いてくる槍を危険視したオークたちは。門の前にたっている俺を完全に敵視して狙ってきた。
手に持っていた棍棒や錆びた剣を投げつけてくるやつも出始めたのだ。それを見て真似するように他のやつらも狙ってくる。そういうのは全部『結界』ではじいて俺の回りに落としていく。あとから回収しとこう。武器大量ゲットだなこりゃ。
ただ、一部の武器が俺からそれて町の方へと飛んでいく。つっても門までだいぶあるから届かないんだけどね。
「ダークランスだけでもなんとかなりそうだけど…」
俺はダークランスの発動を止めずに『鷹の目』で少し他の場所の方を見る。『鷹の目』は少し遠くを見れるスキルだ。間違っても鷹のように上空から離れたところを眺められるスキルではない。言うなれば双眼鏡だ。
北の方では矢が一方からひっきりなしに飛んでいくのがかすかに見えるか見えないかとかそのレベル。東は煙が上がっているので分かりやすかった。街中から煙はないことを考えると今のところ無事らしい。
俺は視線をオークたちに戻す。俺が視線を外していたのはおよそ6,7秒ほど。その間にオークたちは若干動きを変えていた。
まっすぐ進むだけではだめだと判断して扇状に広がりながら近づいてくる。たしかにそうすることで一発で当たる数は減り、自分達が門にたどり着く確率はあがるだろう。
だがそうしたところで俺も攻撃を変えるだけだ。ダークランスの合間合間に黒槍の雨を入れる。横から抜けようとしているやつを中心に上から殺す。1匹も逃すわけにはいかんしな。中途半端に広がられても面倒になるし取りこぼす可能性も高くなる。いかにオークと言えど一般の人からしたら恐怖でしかない。ここで確実に全滅させる気でやらないといけない。
散々殺していたためだんだんと終わりも見えてきた。オークたちの間から森の木が見えたのだ。それまではオークの変な緑色しか見えなかったが今は茂みのきれいな緑色が見える。終わる目途がたつってすばらしいな!
「数も減ったならスキルの試し打ちしても取りこぼすことはないな」
俺はアイテムボックスから剣を取り出した。ヘレンさんに頼んで1本だけもらっておいたものだ。白虎戦の後いろいろあって武器とか防具とか買えなかったしとりあえず一本だけでもありがたかった。
剣を水平に構えた。ダークランスを止めたことでオーク達は数が減っているのにもかかわらず勢いが増した。手に持った武器を天に掲げ、そのまま向かってくる。
「『剣閃』」
剣を横に振るった。
剣の軌道にそって、衝撃波が向かってくるオークたちに飛ぶ。思ったよりも威力が出ずに一列目のオークに軽くめり込み体を半分ほど切ったところで止まる。何体かは倒れるが多くはそのまま向かってきていた。
俺は振り切った剣を戻すことでもう一度飛ばした。
「コンボ2『剣閃』」
さっきより強い衝撃波が飛ぶ。本来なら『剣閃』は『一刀両断』と同じように攻撃後に体が硬直してしまう。だがそれを止めてくれるのがスキル『コンボ』だ。
魔法以外のスキルを使用した際にすぐに次のスキルを発生することができるスキル。例えば『鬼の一撃』で連打とかができる。さらに2発、3発とコンボが重なる毎に威力を増していくスキルだ。
今の俺のコンボ数のMAXは3。
つまりあと一発つなげられる。その状態で俺はためらいなく『剣閃』を使った。一発目は体半分。2発目は一体と表面を切る程度。そして最後の3発目は……
「……殲滅完了」
残るすべてのオークを切り裂いた。
どうもコクトーです
遅くなりました
次回からは3日に1話に(書けていれば)戻ります(あくまで予定です)
『刈谷鳴』
職業
『冒険者 Lv41/99
格闘家 Lv41/50
狙撃手 Lv34/50
盗賊 Lv32/50
剣士 Lv31/50
武闘家 Lv26/60
戦士 Lv26/50
魔法使いLv32/50
薬剤師 Lv32/60
鬼人 Lv6/20
????の勇者Lv7/??
狙撃主 Lv1/70
獣人 Lv1/20 』
次は北と西かな?
西だけでおわるかも…
ではまた次回




