死の草原再びです3
「またくるよ!」
2層の探索を初めて1時間ほど経った頃、俺たちはビッグレオを伴って現れたレッドレオの群れと戦っていた。
「こっちのは俺が受ける。『強鬼化』」
「ーーー」
「ガァアア!」
「ちちさま、そこだめなのー!」
戦闘中に現れた3体目のビッグレオめがけて走りだす俺に、みぃちゃんの体にしがみつく黄龍から制止の声が飛んだ。直後に俺の足元に穴が開くが、『空蹴り』で一歩踏み出してその穴を超える。視線を足元に向ける暇もなくビッグレオの巨体が迫ってきた。
「『鬼の一撃』」
下から拳を突き上げて、噛みつこうとしてくる顎を跳ね上げる。折れた牙がつららのように何本か降ってくるが、まとめて『ダークチェーン』で縛り上げた。そのままそれらをアイテムボックスに収納すると、腹で俺を押し潰そうと体を降ろしてくるビッグレオを『クエイク』で受け止めた。
一時的に体が止まったものの、巨体を止めておくには土の壁では力不足のようで、すぐにそれごと巨体が降りてきた。それでも体の下から抜け出す時間は稼ぐことができた。巨体が地面に落ちたことで生じた風に軽く流されつつ、『小規模ワープ』で上に跳んだ。
「『一閃』」
頭の上に降り立ち、体を再び起こそうとするビッグレオの首を斬りつける。斬撃はビッグレオの堅い皮膚と筋肉に阻まれ、首を10cmほど切り裂いたところで止まってしまい、切断とまではいかなかった。
「ごめん、1体そっち行った!」
仕留めそこなった俺を、頭を跳ね上げることで空中にとばし、さらに噛みついてこようとするビッグレオから距離をとったところに、追加でやってきた数体のレッドレオのうち1体がこちらに向かってきていた。牽制に『ニードル』を3本展開すると、向こうも口から炎の玉を放って相殺してきた。レッドレオがうまくキャラビーたちを背後に置くように位置どっているためにあまり強力な攻撃ができないのが厳しいな。
まっすぐ向かってくるレッドレオに気をとられているうちにビッグレオの射程範囲に入ってしまった。ビッグレオの前足が横凪に迫ってくる。
「『ダークネスソード・纏』『ダークランス』『自重増加』『ダークネスシールド』」
突の体勢で構えて、地面をえぐりながら向かってくるそれを迎え撃つ。黒い槍が何本もそれを貫いた。その衝撃と痛みによってひるんでくれたのか、向かってくる勢いが落ちる。
「『シールドバッシュ』」
ステュラを押し込みながら『ダークネスシールド』で前足を押し返す。噴き出した血をそのまま闇の盾で防ぎ、足が浮いてがら空きになったビッグレオの首を今度は下から『一閃』で切り上げる。切断には程遠かったが、『コンボ』をつなげて『一刀両断』で完全に切り落とした。
ビッグレオの首とともに地面に着地したところを狙って先ほどのレッドレオが炎を纏った牙で噛みついてくるが、周りの連中を倒し終わって手が空いた黄龍の雷が先にその体を貫いた。体の内部から雷に焼き切られたレッドレオは、炎こそ消えたが勢いはそのままにこちらに飛んでくる。当たらないように裏拳で横にずらし、遠くまで飛んでいかないように上から『エアロ』を弱めに撃って地面に落とした。これで全部かな。
「疲れたー!」
「結構多かったのう。追加であれだけくるのは予定外じゃった」
「結局ビッグレオは3体だったけど、レッドレオは何体来た?」
「8回くらい追加があったからね。20体くらいはいたんじゃない?」
「レッドレオが上空に撃った炎弾に反応してビッグレオが来るなんて思わなかったもんね」
「あれは驚いた。みぃちゃんとキャラビーがひきつけてくれなかったらまずかった。ありがとな」
「えっへん、です!」
「ちちさまー、なんかきてるよー」
「『探知』にも引っかかった。長居はまずそうだし、回収できるだけ回収してこの場を離れよう」
「解体や吸収は後だね。マナ、ユウカ、入りそう?」
「ビッグレオは無理。レッドレオも何体もは入らないよ」
「わしもビッグレオは無理じゃな。そちらはメイに任せたのじゃ」
「私は発動した罠を回収します。黄龍ちゃん、覚えてますか?」
「われにまかせるのだ! こっちだよー」
それぞれがあたりに散らばる死体を回収に向かった。
1分とかからずに死体を回収し終わり、遠くにさっきまでの3体と比べたら小柄のビッグレオが見えたところで俺たちはその場を後にした。幸い、においにつられてきただけのようで、俺たちに気づかなかったビッグレオはそのまま別の方角へと歩き去った。
予定外の長い戦闘でかなり疲れた俺たちは、マナと俺で二重に結界を張って少し休むことにした。さすがにハウステントを出して休むようなことはしなかったが、軽く食事をとって休んでいた。1層で解体していたオペラウルフの肉をおいしそうに食べる黄龍の頬をつついて癒されたり、それを見て自分もと横に並ぶキャラビーにデコピンをお見舞いしたりしているうちにあっという間に時間が過ぎていた。デコピンをした直後にキャラビーが嬉しそうに見えたのは気のせいだと思いたい。
先ほどの戦闘では、1層ではまったくなかった大量のモンスターとの連戦で、全方向からの攻撃に対応していたヒツギの負担が激しかった。俺とユウカが前線に出ているせいというのもあるのだろうが、マナの守りは必須だからな。そういう意味ではゼルセかコルクがいてくれると大いに助かるのだが昨晩寝ずの警護をしてもらっているし、今のペースで進んでいたら今晩もお願いすることになるのは間違いないし、今は少しでも休ませたいところだ。
「お待たせ。もう大丈夫だよ」
「もうよいのかの?」
「うん。疲れもだいぶとれたし、もう普通に動けるよ」
「で、これからどうする? やっぱり俺が跳んで目星をつけたほうがいいんじゃないか?」
「絶対にだめ。炎弾1発であれだけ集まってきたんだから、人が飛んでたらどうなることか……」
「マナの魔法で隠蔽系の魔法ってないのか?」
「あるにはあるけど、気配を抑えたり音を消したりするタイプばっかりだよ。ステルスみたいな魔法を覚えたいんだけどね」
「あると視覚に頼ってるモンスター相手には便利だよな」
「熱で対象を捉えられるスネーク系のモンスターもおるし、ウルフ系のモンスターは匂いで索敵ができるから油断はできんぞ。レオ系のモンスターもウルフほどではないが匂いには敏感じゃ。姿を消してもばれる時はばれる。それに、ステルスの魔法では微妙に対象の周囲の空間に違和感があるからわかる者にはわかるのじゃ」
「そうなんだ……。姿を消せばこっそりお風呂を、いや、なんでもないよ」
「今度から風呂に入るときは結界張らないと……」
「なし! 今のなし!」
「うるさいぞ変態」
「ひどいよー!」
「騒いでると気づかれるよー。メイ、地図だと行ってない方角ってどっち?」
「一番行ってないのはこっちだな。他だと、真逆の方角はあんまり広がってない」
「2択ですね」
「うーん、よし、黄龍! オペラウルフの肉とレオウルフの肉どっちがいい?」
「うーん、れおうるふなのだ!」
「じゃ、右で」
「どういう選び方なのよ……」
「こう迷ったときは勘に任せるしかないんだから、ちびっこどもの勘に頼ってもいいだろ?」
「おにくくれないの?」
「ちょっとだけな」
「わーい!」
手のひらサイズのレオウルフの肉を黄龍にあげて、あきらめたようにため息をつくマナをよそに、俺たちはいまだ地図が埋まっていない方角へと歩き出した。
黄龍の勘を信じたのは正解だったようで、その後、数度の戦闘は挟んだものの、連戦になることもなく、日付が変わる少し前くらいに3層への階段と、外につながる転移陣を見つけることができた。次の戦闘後に夜営に移ろうという話をしていたところだったから、夜営をせずに済んでみんなどこか嬉しそうだった。
転移でここに来れるようになったし、いつまでもここにいる理由もないから、俺たちはすぐに外に転移した。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
有効職業
聖???の勇者Lv16/?? ローグ Lv44/70
重戦士 Lv53/70 剣闘士 Lv47/60
神官 Lv38/50 龍人 Lv8/20
精霊使いLv15/40 舞闘家 Lv27/70
大鬼人 Lv10/40 上級獣人Lv5/30
魔導士 Lv15/90
非有効職業
死龍人 Lv1/20 魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99 狙撃王 Lv1/90
上級薬師Lv1/80 』
書籍でオリジナルの展開で話を書いていたこともあって、元の話を思い出せない…。
次の展開はきっちりメモが残っていたんですが、その間の分のメモが見つからないんです…。
どこにやったかなぁ。
来週は日曜日に夜勤が入っているので投稿できるかわかりません。土曜日に書ききれれば!
ではまた次回




