ジョーさんたちとの話です2
「え? 嫌ですけど?」
獣のような笑みで俺に戦いを挑んできたジョーさんに対して、俺は即答で断った。ただでさえユウカがジョーさんより強い的なことを言っていたのだから、頑張っても頑張らなくても嫌な予感しかしない。それなのに戦いたいやつなんかただの戦闘狂じゃねえか。俺は戦闘狂ではない。……たぶん……おそらく……きっと。
「なんじゃ、やらんのか?」
「Sランクのジョーとの戦闘ということで怖気づいたんじゃないか? 僕でさえジョーと戦うとなれば少し躊躇するくらいだから、Bランクの彼にしたら当然だろう」
「普段からわしを相手にしとるのじゃ。Sランクなんぞ今更じゃろうが」
「ほっほっほ。何か理由があるのかもしれませんよ?」
フォローしてくれるのは風龍様だけだった。皆の視線が俺に戻り、理由を言えと語りかけてくる。
「避けられる戦闘は避けたいです」
「残念、避けられん戦いじゃ」
「いやいや、ユウカ、今日は死にかけるような戦いをしたところなんだよ? いくらメイでも休憩はいるって」
「ユウカを背負ってダンジョンから猛ダッシュで町までこれるだけの体力があるってことはその辺は回復してんじゃないか?」
「なにぃ! 貴様、ユウカさんを背負っていただと? そのあのたわわに実った果実を背中で感じていただと!? 許せん! ジョー、僕も戦いに参戦させてもらう!」
「欲望に忠実すぎるじゃろ。今お主を切りたくなったのじゃ」
「冗談はいいんですよユウカさん! 今はこの破廉恥男の処分についてでーーーー!!!」
大きな声で話し続けるゴールドさんだが、急に声が聞こえなくなった。自分が大きく口を開けて百面相をし続けるだけになっているのに気づいていないようだ。
「少々聞くに堪えませんでしたので声を消させていただきました」
「ありがとな爺さん」
「いえいえ。それでは続きをどうぞ」
「確かに疲労という点では回復しているけど、あの戦いの後だし、できれば今はやりたくない」
「それなら明日はどうだ? どうせ爺さんも今日はこっちにいるだろ?」
「ええ。メイさんに許可もいただいておりますし、ここに泊まらせていただきます」
「うらやましいな。俺は町に支部もあるし、顔見せがてらそっちに泊まっていくよ。何人か戦いを見せたいしな」
「そういうことならなおさらやれないです。自分の手札を晒すなんて真似はしたくないですから」
「それには私も賛成かな。ジョーさんやゴールドさんみたいにはっきりとわかってる人ならともかく、あくまでジョーさんのギルドのメンバーってだけなんでしょ? それを無条件に信じて、こっちの手札を晒せっていうのはさすがに傲慢なんじゃない?」
「うちのメンバーは信じられないってか?」
「なんで信じてもらえると思ってんですか?」
「ちょっとヒツギ、言い過ぎだって」
「信じられる信じられないの話じゃなくて、冒険者が自分の手札を晒すなんて馬鹿げてるって言いたいの。Sランクまでいった人なんだからそれくらい理解できて当然じゃない?」
「後輩の育成のためには必要なことだからな。ほかのやつの戦いを見ることも必要な鍛錬のうちだ」
「カームスピリット。落ち着きなさいジョーさん。頭に血が上りすぎですよ」
「あ……。あー、すまん」
「たしかに後輩の育成という点で自身の戦闘を見せるというのはいい手かもしれません。でも、あえて厳しめに言わせていただきますが、身内でやれ。赤の他人を巻き込むな」
魔法でジョーさんを落ち着かせた風龍様がきつい言葉をかける。その表情は怖いくらいに冷めていた。
「たしかにわしとお主は親しい間柄ではあるが、『マツノキ』と『ガルチア』が親しい間柄というわけではない。個人的な模擬戦闘のような形ならともかく、お主の後輩育成にからめるようであればわしも止める。一度前例を作ってしもうたら二度三度となることは目に見えてるからの」
「あー、ない、とは言えねえかな。それに足る実力、技術力をもつような奴ならな」
「それをやったらわしらが全員敵に回ることを忘れるでないぞ?」
「それはきつそうだ。というかうちじゃ勝ち目はないな」
「ほっほっほ。彼らは数千とも思える邪龍を相手に勝利を収める実力者ですからね。とはいってもあの場にはもう数人いましたが、ユウカ様もいませんでしたしとんとんといったところでしょう」
「わしはどちらかといえば単体特化、近接特化じゃからのう。その場にいたとしてもどれだけ役にたつかわからんぞ?」
「たしかにあの時はマナが大活躍だったからね。私はあんまり倒せなかったし」
「それぞれの役割があるからいいんだよ。ヒツギはちゃんと役立ったって」
「そうですね。火龍と水龍もほめていましたよ。あの防御力は素晴らしいと」
「嬉しいやら悲しいやら……」
「そこは喜んでおきな。それで、ジョーさん話は以上ですか?」
「後輩育成ってのは俺が行き過ぎたってのは認めるが、個人的な戦闘は諦めてねえぞ?」
「嫌ですよ。メリットもないですし」
「メリットか……今はそんなに良いものも持ってねえしな」
「さすがに物でつられるような男じゃないですよ」
「そうでなきゃユウカが惚れたりしねえだろうよ。あ」
「あ?」
「俺は使うつもりもねえし、使うような相手もいないから死蔵してた品があったんだ」
「だから物でつられるような男じゃないですって」
「じゃん」
戦いたくない俺に対して、戦いたくて仕方ないジョーさんは自身のアイテムボックスから小瓶を取り出した。親指と人差し指でつまめるような大きさで、ほのかにキラキラの混じったピンク色の液体が入っている。もう色といい大きさといいなんだか嫌な予感しかしない。
「それは?」
「特殊な媚薬」
「「「媚薬!?」」」
俺が断る前に三人が即反応した。
「いらないです」
「まあまあ、メイもう少し話を聞いてみるべきじゃない?」
「ご主人様、もう少し聞きましょう」
「何が特殊なんですか?」
「お、おう。こいつは普通の人間には効果がなくて、普通の薬が効かないようなやつに対して強い効果を発揮する薬なんだ。特別な道具で鑑定したら特定のスキルに反応して効果を発揮するらしい」
「そのスキルとは!」
「完全にわかってるわけじゃないが、毒耐性や薬耐性、魅了耐性系統のスキルだな。レベルが高いほど、あるいはその上位スキルであればさらに効果は高いらしいぞ」
薬耐性と魅了耐性なるスキルはないが、俺の『毒耐性』スキルはLvMAXだし、その上の『毒無効』も持っている。『麻痺再生』のように再生まで行っていないのが救いなのかもしれないが『毒無効』でもアウトな気がする。
「メイ、やっぱり勝負するべきじゃない? こんなに言ってるんだし」
「ご主人様、ジョーさんほどの方と戦えるというのはなかなかないことですし、ご主人様のかっこいいところが見たいです」
「新しいスキルも覚えたんでしょ? こんな相手に試せるなんてめったにないよ?」
こうなった女性陣が強いというのはわかりきっていたことではあるが、その後の俺の抵抗も虚しく、いつも俺とユウカが鍛錬している広場でゴールドさんを含めて戦うことになってしまった。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
有効職業
聖???の勇者Lv16/?? ローグ Lv44/70
重戦士 Lv53/70 剣闘士 Lv47/60
神官 Lv38/50 龍人 Lv8/20
精霊使いLv15/40 舞闘家 Lv27/70
大鬼人 Lv10/40 上級獣人Lv5/30
魔導士 Lv15/90
非有効職業
死龍人 Lv1/20 魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99 狙撃王 Lv1/90
上級薬師Lv1/80 』
昨日は朝から草刈りに駆り出されて疲れ果ててしまいました。
せっかくの休みが…
次は日曜に更新できるかな?
ではまた次回




