死の草原です8
久しぶりのメイ視点です。
「うにゅう……」
「お、目が覚めたかキャラビー。痛みは残ってないか? だるいとかは?」
「ご主人様? ……夢でしょうか。夢ならばご主人様のご主人様をはむはむしても問題ないはず」
「夢じゃないから怒るぞ。でも、その様子じゃ大丈夫そうだな。俺はマナたちを呼んでくるからこれでも食べて待っててくれ」
「は、はい」
俺はベッドの上で起き上がったキャラビーに切ってしまってあったリンゴを渡し、部屋から出た。
時間は戻り、『死の草原』を出た俺たちは大急ぎで町に向かった。戦闘をしていた場所から階段に向かうまではモンスターが出てこなかったこともあり、みぃちゃんがやられてからはまだ5分も経っていない。それでも嫌な予感が止まらない。
マナの魔法で速度を上げて、全速力で走り続けていると、ようやく外壁が見えてきた。まだ上のほうが見えただけだが、煙が上がったりはしておらず、ざわざわと騒がしくなっている様子は見られない。
「ガァ!」
速度をさらに上げて進むと俺が来たのを感じ取ったのかゼルセの声が聞こえてきた。焦るような声ではなく、平然とした感じの声だ。
「今のってゼルセだよね?」
「ああ。すぐそこみたいだ」
俺たちがさらに町に近づいていくと、そこでは気絶した冒険者たちを縛り付けている男と、『バーニングバード』の四人とキャラビーの手当てをしている老齢の男性がいた。
キャラビーは生きてはいるみたいだけど意識を失っているようで、短剣を側において大人しく手当てを受けていた。ゼルセも頑張ってくれていたからか、すぐに戻っていった。あとでたくさん肉をあげないとな。
「ん? お前らは……ってユウカじゃねえか。お前の客だぞ。縛るの手伝え」
「ジョー、なぜお主がここにおるのじゃ? それにそちらは」
「セバスさん?」
「ほほほ。残念ながら彼は今仕事がたまっていてここに来られるような状態ではありませんよ」
「もしかして風龍様? もう動けるようになったんですね!」
「マナ様、ヒツギ様、その節はお世話になりました。町の守護としての役目は娘に受け継ぎましたが、普通に生活ができるようになりましたよ」
「爺さん、用事がある知り合いってこいつらのことだったのか?」
「ええ。まさかユウカ様を背負ってやってくるとは思いもしませんでしたが」
「あ、お、降ろさんか! 早く!」
指摘されてか、知り合いに見られて恥ずかしいのか背中でユウカが暴れる。激しくなるにつれて背中に感じる幸せも大きくなるが、マナたちから感じる無言の圧力も強くなった。これ以上考えるのはやめよう。
ユウカを降ろすと、まだ多少ふらつくようですぐにヒツギが肩を貸して支えた。ジョーさんも不思議そうな様子でこちらを見ていた。
「まあ事情がありそうだな。爺さん、闇ギルドの連中と『バーニングバード』は俺が運んでいくから先に行ってくれ。ユウカ、なんでこいつらの人数が若干足りてねえのかってのは後でしっかり教えてもらうからな」
「わかっておる。お主にも関係がありそうなこともあるしの」
「そうかい。猫獣人の嬢ちゃんはお前たちの仲間でいいんだよな? 状況的に」
「ええ。キャラビーです。助けてくれてほんとにありがとうございました」
「俺は最後のおいしいところをもらっただけだ。それができたのはあいつらを守り続けてたオーガときっちり一人に致命傷を与えた嬢ちゃんの頑張りがあったからだよ」
「それでも傷の手当てもしてくれて。感謝しかないですよ」
「そう言われて嫌な気はしないな。ユウカ、後で俺も館に行かせてもらうから」
「わしじゃなくてメイに聞くのじゃ。わしの館ではないからの」
「全然いいですよ。待ってます」
「おう」
ジョーさんはアイテムボックスから大きな箱と荷台を取り出すと、捕縛した奴らを箱に入れて、荷台に括り付けた。そして『バーニングバード』の4人をそっと荷台に乗せると、それを引いて町に向かっていった。
「マナ様、キャラビーさんの回復をお願いします。最低限の手当てはしましたが、お腹の傷はかなり深いです。ゆっくりしていると傷跡が残ってしまうかもしれません」
「わかりました。ヒール3」
マナ使ったヒールの光がキャラビーを包み込む。風龍様が巻いてくれたのだろう包帯に隠れていて見えないが、完全に傷もふさがってくれたかな。
「いつまでも地面というのもかわいそうですし休ませられるところに行くべきかと」
「そうですね。俺が運びます」
俺たちは館に向かって歩き出した。俺はキャラビーの看病で部屋に残り、他のみんなはリビングで休むことになった。
「メイ、キャラビーが目を覚ましたの?」
俺がリビングに行くと、パンや果実をつまみながら風龍様と話していたマナたちがすぐに聞いてきた。俺がそうだとうなずくと、みんなでキャラビーを休ませていた客室に急いだ。
キャラビーの回復をみんなで喜び、ジョーさんが来るまで女性陣は各自の部屋で休むことになり、俺はなぜか風龍様と一緒に、ゼルセ達にご褒美のお肉をあげるために外に出た。
「くえー!」
外に出てすぐ、森の中からカルアが飛び出してきた。俺は胸で受け止めてその背中をなでる。
「元気な子ですね」
「元気すぎて困るくらいですよ。カルア、アンナは近くにいるか?」
「くえー」
俺の質問にカルアは翼を右に伸ばして応えた。
『お呼びでしょうか?』
「アンナ、何か問題はなかったか?」
『問題といわれましても、特には。みぃちゃんが一度倒されたことと関係があるのですか?』
「ああ。襲われてな。キャラビーを守ってやられたみたいだ」
『そうですか。後で回復を助ける薬草でもあげておきましょう』
「助かるよ。みぃちゃんは後になるけど、皆にご褒美をあげに来たんだ。カルアたちは肉として、アンナは何かいるものはあるか?」
『そうですね……。その前に主様、そちらの強大な力の方は?』
「そうお気になさらず。私は風龍と申します。危害を加えたりはしませんよ。ですので周囲から狙っている子たちを下げていただけませんか?」
「アンナ、ほんとか?」
『すぐに下げさせます。キィィイ』
アンナが甲高い音を立てると茂みからがさがさと20匹の蟻が出てきて、一礼すると森の中に消えていく。あんなにいたのか。
「ありがとうございます。あのままだとつい攻撃したくなってしまいますし」
「ははは」
風龍様は軽く笑みを浮かべながら話すが、その笑みがとにかく怖い。あのままだと間違いなく即死級の攻撃が蟻たちを襲っていたのだろう。
『ほしいものとのことですが、主様、よろしければアイテムボックスにある龍の素材を一部いただけませんか?』
「龍の素材?」
『はい。風龍様の前で言うのもおかしなことかもしれませんが』
「お構いなく。メイ様の所持している龍たちはすべて邪龍の類です。人、そして人と共存する道を選んだ龍たちに害をなす者どもでしたから、むしろ素材として使われるのならば是非にといいたいところです」
『そう言っていただいて安心しました。細かくほしい素材はまた後日でよろしいですか?』
「ああ。いろいろあるから悩んでくれ」
『そうさせていただきます。少々問題が起こったようでして、ここで失礼します』
「俺は行かなくていいのか?」
『主様やヒメ様に迷惑をかけるような問題ではありませんので』
「いろいろ頼んでおいてあれだが、無理だけはするなよ」
『はい』
アンナは速足で森の奥に消えていった。ここからは肉好きメンバーの時間だ。
「風龍様、ちょっといかついやつらも呼びますがよろしいですよね?」
「ええ。黄龍様も呼んでいただけますかな?」
「あいつもお肉大好きですからね。どうかしましたか?」
「私が来た理由に大きく関係しているのですが、いわゆるメッセンジャーというやつですね」
「メッセンジャー? ピッチャー、じゃないですよね。風龍様が伝言役ってことですか?」
「ええ。少々無理を言って変わっていただきました」
「またどうして」
「いえ、年寄というのはなかなか子供に弱いものでして。半年も経っていないというのにもう顔を見たくなってしまいまして……」
「ははは。そういうことでしたら。お前ら、出てこい」
俺は魔力の中で休んでいるみぃちゃん以外の奴らを呼び出した。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
有効職業
聖???の勇者Lv16/?? ローグ Lv44/70
重戦士 Lv53/70 剣闘士 Lv47/60
神官 Lv38/50 龍人 Lv8/20
精霊使いLv15/40 舞闘家 Lv27/70
大鬼人 Lv10/40 上級獣人Lv5/30
魔導士 Lv15/90
非有効職業
死龍人 Lv1/20 魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99 狙撃王 Lv1/90
上級薬師Lv1/80 』
明日はちょっと書けなさそうなので今週は土曜日更新です。
5月1日から発売している俺が勇者じゃ救えない!?2巻ですが、
まだまだtwitterキャンペーンは継続中です!
14日までなので後約10日ですね。
もしも買ったけどやってないよー。って方がいたらぜひ参加してください!
想像してニマニマできるヒメのSSが読めますよ!
詳しくはHJ文庫の公式teitterか自分のtwitterで!
ではまた次回




