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死の草原ですーsideキャラビーー



「お願いします、道を開けてください! 怪我人がいます!」


 私はご主人様に言われた通り、ゼルセとみぃちゃんを連れてダンジョンから出ました。

 『バーニングバード』の4人はマナ様の回復魔法のおかげで怪我などは治っている。それでも目を覚まさないのはダメージがそれだけ大きかったということでしょう。


「あれ、『バーニングバード』じゃないか?」

「でもあの猫獣人は『マツノキ』のやつだろ?」

「人数が足りてないな」

「おいおい、『バーニングバード』が壊滅するってどんな敵が相手だよ」

「先に進みたくないわー」

「そもそもランク不足だよ」

「それな」


 いろんな人の驚きの声が聞こえるなか、少しずつ開いていく道を、「ありがとうございます」と礼を言いながらみぃちゃんを先頭に、ゼルセの様子を伺いながら進んで行く。ありがたいことに、中には怪我人が通ると声を張り上げて道を開けてくださる方もいました。ゼルセを見て悲鳴をあげる方もいますが、さすがに剣を抜く方はいませんでした。


 館へ続く分かれ道を町側へ進み、ようやく門が見えてきました。しかし、何やら様子がおかしいようでした。

 普段、門は門番が立っているだけで扉は開かれたままになっています。人の出入りの多いこの町でいちいち開閉していたら魔力やコストの問題ですし、当然のことだとは思います。しかし、今その門は閉じられ、衛兵が二人、槍を構えてこちらに向けていました。

 二人とも普段よく見る門番と同じ鎧ですが、普段つけていない兜もつけていました。それに隠れて顔は見えませんが、どうも普段の門番とは違う感じですね。


「止まれ! ここはグリムの町である! 何用か!」

 

 門の右側に立つ方の声が聞こえてきました。もしかして、襲撃と思ってます?


「ゼルセ、みぃちゃん、止まって。話をしてくるから」


「がう」


 ゼルセたちに待機してもらって、私は一人で二人のところに向かった。


「止まれ! 何者か!」


「パーティ『マツノキ』の冒険者、キャラビーと申します」


「『マツノキ』……ああ、あのユウカ様が加入したって話題になっているパーティの?」


「報告書にあったな。そこの呪われ館に住んでいる冒険者がいると」


「その『マツノキ』で間違いありません。ダンジョンで怪我人を見つけて、ギルドで休ませる場所を借りるために連れてきました」


「冒険者とはあのモンスターが肩に乗せている者たちか?」


「はい。『バーニングバード』です。3人は助けられませんでしたが、彼らは治療が間に合ったので、少しでも早く休ませようと思いまして、私が先に来ました」


「『バーニングバード』ほどのパーティが壊滅、にわかには信じられない話だが……彼らはたしかに『バーニングバード』のようだな。ギルドまで行かずとも、門の近くに詰め所がある。そこで休ませればよい。あのモンスターを中に入れるわけにはいかないしな」


 衛兵の視線がゼルセたちに向く。見た目だけだとどうしても狂暴そうに見えるのはしかたないですし、詰め所でも休ませられるならそのほうが早いですし、お願いして私はギルドに報告に向かったほうがよいでしょうか。


「では、あのモンスターたちを呼んでくれ。門を開けさせる。モンスターが向かってきていると連絡を受けたから閉めたのだが、少し早計だったか?」


「先輩、なんかあってからじゃ遅いですよ。あの場では閉めて正解です」


 私は2人が門の方に向かうのを見てゼルセたちのところに戻りました。


「があう!」


 私がゼルセたちの方に向かって歩き出すと、すぐにみぃちゃんが私に向かって駆け出してきました。その後ろからゼルセも『バーニングバード』を地面に下ろしてこちらに走り出していました。


「どうしたのみぃちゃん!?」


 みぃちゃんは私の驚く様子を見てもスピードを緩めずに向かってきて、そのまま私を横向きに押し倒しました。

 そして、押し倒された私の顔に真っ赤な血が降りかかりました。


「え?」


 状況がいまいちわかっていない私を、横から伸びてきたゼルセの腕が掴んでみぃちゃんの下から引っ張り出しました。後ろに投げられた私は『バーニングバード』の方々の近くまで飛んでいきました。すぐにゼルセも跳んで戻ってきて、何が起こったのかわかりました。


「思い通りとはいかないものっすね」


「猫を狙ったら虎が釣れたか。強さという点で見てみれば運がよかったとみるべきか?」


「先輩、猫が生きてたらこのことを話されちゃいますって。失敗ですよ」


 さっきまで私が話していた衛兵二人が、何事もなかったかのように槍を突き出したまま話をしていました。先輩と呼ばれた方は胴を、もう一人はみぃちゃんの頭を串刺しにしており、それぞれの槍が抜かれて崩れ落ちたみぃちゃんが光の粒になって消えました。槍や彼らに吸収されていくようには見えなかったですし、ご主人様の魔力に帰っていったのでしょう。


「あなたたちは何者ですか?」


「む? ただのしがない門番だ」


「そうそう。ちょっとばかし経験値に飢えているってだけのただの門番ですよー」


「なぜ攻撃を?」


「んー、だってずるいじゃん?」


「ずるい、ですか?」


「そうそう。あいつらは4人そこにいるけど、『バーニングバード』のメンバーに加えて『マツノキ』の4人分も経験値があるのに、俺たちは今回なかったんだよ? それがこんな風に持ってきてくれたおかげで俺たちの分ができたけど、さすがに町中でやるのはまずいから油断してるところをやるしかないじゃない?」


「モンスターだけになってしまえばいくらでも手はあるからな。こんな風にな。タカ」


「わかりやーした。すまない! そこの、モンスターが暴れる! 1体は仕留めたがもう1体も危険だ! こいつを倒すのを手伝ってくれ!」


 ダンジョンから帰ってきたところと思われる冒険者パーティに対してタカと呼ばれた方が声を上げました。その声に、初めは若干困惑したような表情を浮かべていた冒険者たちも、すぐに切り替えて武器を取り出すと、こちらに向けました。


「誤解です! 暴れてなんかいません!」


 私は二人からは視線を外さずに冒険者に声を上げました。あきらかに敵と言い切れる目の前の二人とは違い、彼らはただの冒険者です。門が完全に閉じられた現状で、門番からあんなことを言われたらこちらが敵であると判断しても仕方ないと思います。


「騙されるな! すでに四人やられてしまっている! 気を引き締めてくれ!」


「彼らは怪我人です! 私は怪我人を運んできただけなんです!」


 私の声が聞こえてか、少しどうするか悩むような声がかすかに聞こえてきました。なんとかなってくれるといいんですが……。


「俺に続いてくれ!」


 その迷いを断ち切らせるように、先輩と呼ばれた方がゼルセに向かって飛び出しました。ゼルセは『バーニンバード』の4人を守りながらの戦いになるし、この状況で下手に相手をするわけにもいかないと、腕で器用に槍をいなしながら、後ろに下がると、『バーニングバード』の4人を守るように自身の周りに結界を張って、攻撃を防ぎました。タカと呼ばれた方も私に槍を向け、いつでも動けるように腰を落としました。それを見た冒険者たちも迷いを断ち切るようにそれぞれの武器を構え始めました。


「よくわからんが、町にはいかせない」


 冒険者たちの一人がゼルセに弓を放ちました。先輩門番の槍の連撃と同様に結界に阻まれて地面に矢は落ちましたが、それで完全に冒険者たちも敵になってしまったようでした。私はタカを警戒しながら声をかけても、冒険者たちに答える様子はありませんでした。


「ゼルセ、みぃちゃんが戻った以上、ご主人様も気づいてくれたはず。戻ってくるまで耐えましょう。ユウカ様がいれば、冒険者はおとなしくなるはずです」


「があ」


 こうして、私とゼルセの耐える戦いが始まりました。




どうもコクトーです。


遅くなりました。新社会人としての生活が始まり、なかなか執筆時間を確保できませんでした。

これからもこれくらいの頻度になってしまうと思います。週末に書ければあげるくらいかなぁ。

まだまだですが、慣れてきたらもう少し書けるかもしれないですが、当分先になりそうです。


ではまた次回

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