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死の草原ですーsideマナー

マナ視点です。

メイの出番はありません。ご注意ください



 アンデッドの殲滅の最中、私は真ん丸男に様々な魔法を撃ち続け、そのすべてを食べられ続けていた。


「おいしー」


「これもダメ。なら今度は、マジックソード・ショート」


 いろんな火魔法を試してもダメだったから、今度は短剣サイズのマジックソードを飛ばした。


「ちいさいー。もっと大きなのが食べたいなー」


 かなりの速さで飛ばしたそれを真ん丸男は親指と人差し指の二本で捕まえた。まだマジックソードは私の支配下にあるけど、真ん丸男のパワーに負けてまるで動く気配がない。

 真ん丸男はポイっとマジックソードを口の中に放る。手から離れた瞬間に口内で暴れさせようとしたけど、口の中に入ってすぐに私の支配下を離れてしまい、それは叶わなかった。ボリボリと音を立ててスナックを食べるような感覚でマジックソードを食べてすぐに飲みこんだ。


「かう!」


 私の隣でヒメちゃんが半透明な牙を飛ばす。真ん丸男よりも大きい牙だけど、向こうも同じように半透明な牙を生み出して対抗した。牙同士の対決はヒメちゃんが勝ったけど、相手の牙を噛み砕いた直後に相手の口の中に吸いこまれていった。


「かうう」


 ヒメちゃんも悔しそうだが、それ以上に悔しそうな表情を浮かべているのはユウカだった。先ほどのアンデッドとの戦いでは、自分では仕留めることができずに足や手などを切り落としたりメイのフォローのみになり、その間もずっと警戒して牽制を続けていたヴァンハルトはメイに狙いをつけて1対1で戦闘を始めてしまった。メイの戦闘はもともとかなり特殊だし、殴り合いをし始めたあの戦闘に割り込むのは無理だろう。ヒツギとコルクのドワーフとの戦いも、ヒツギの鎖とコルクの魔法がなければ厳しい。

 一方で、この戦いもユウカは現状何もできていなかった。

 戦闘開始から、ユウカは何度も斬撃を飛ばし、時には近づいてその体を切ろうとしていた。しかし、真ん丸男は体がゴムのようになっているのか、攻撃が当たってもボヨンと跳ね返してくる。鉄なら切れると断言するユウカでも、こんな体の相手は初めてらしく、どうすればいいか決めあぐねているような印象を受けた。


「難儀な体じゃのう」


「だね。明らかに体よりも大きな魔法も食べちゃうし、持続力はないけど瞬間的なスピードはめちゃくちゃ速いし。エアシュート」


「かうう」


「せめてもの救いは、こやつが食べる以外の攻撃方法を持っておらんことくらいじゃな」


「まだ使ってないだけって可能性もあるけどね。エアブラスト」


「それはないと思いたいのう」


 話している最中も次々と魔法を放ってみてもすべて食べられた。後方に回り込ませても食べられる。下から急浮上して襲っても食べられる。逆に急降下も食べられる。目前で分裂して襲っても食べられる。急加速して方向を変えても食べられる。巨大な火の球でも食べられる。燃やし尽くすまで消えないはずのヘルフレイムも食べられる。どんな魔法なら効くんだろう。


「おそらく、胃が異空間にでもなっておるんじゃろうな。体はゴム、内は異空間。どこなら切れるというのじゃ」


「いっそ全体を凍らせてみようか?」


「確かに凍ればあの弾力もなんとかなるやもしれんの。頼んでもよいか?」


「任せて。レインスノウ」


 私は真ん丸男の頭上から雪のような魔法を放った。広範囲にゆらゆらと落ちるそれは、スピードこそ遅いものの、触れたものを凍らせる強力な魔法だ。そして何より、一度発動してしまえば効果時間が長いというところも私の負担が少なくていい。敵味方の区別ができず、すべて凍らせてしまうからあまり使えないけど、こいつが相手なら平気のはず


「なんかふってきたー? あーん」


 真ん丸男は口を上に向けて落ちてくる魔法を吸い込み始めた。風が渦を巻いて魔法を口元に運んでいる様はなんだか見覚えがあるような気もするけど、予想通りの行動だ。


「ユウカ行くよ! アイスロード」


 私からまっすぐに真ん丸男に氷の道が伸びていく。上を向いてレインスノウを食べ続けている真ん丸男はまったくよけなかった。氷の道が真ん丸男のところまで到達すると、すぐにその体を足元から凍らせていく。


「ちょいと力を込めるぞ。業堕」


 ユウカのもつ妖刀がその魔力を吸って、禍々しい魔力で覆われる。そして、真ん丸男の凍った右足を狙った。


「なんじゃと?」


 しかし、それは振り切ることはできず、表面の氷のみを切り裂き、またそのゴムのような体に止められていた。10cm以上肉がへこんでいるが、あくまでへこむだけでまったく切れていなかった。


「ふん!」


 レインスノウを食べきった真ん丸男が、力を入れると、腰元まで伸びていた氷は砕け、ユウカも弾力に押されて跳ね返ってきた。地面で一度バウンドしたユウカは空中で体勢を立て直し、両足で着地した。かなり力を入れていたために強く跳ね返り、地面にたたきつけられる形になったユウカにヒール3を飛ばすと、無言で手を上げて礼を伝えてきた。凍らせてもだめなんだね。


「へっへーんだ。そんなのいみないもんねー!」


「かう! かうかう!」


 私とユウカに一度ずつ吠えたヒメちゃんが、今度は牙ではなく魔法を真ん丸男に撃つ。最初の私のように次々と違う魔法を飛ばしていく。真ん丸男から外れるような軌道の魔法も、真ん丸男は飛びついて食べていく。そして少しずつだが、私たちから真ん丸男が遠ざ(・・)かる(・・)


「もしかして、時間稼ぎ?」


「もしかせんでもそうじゃろうて。今のうちに何か策を練るのじゃ」


 ヒメちゃんの行動の意図を一早く察したユウカがすぐそばまで来ていた。その顔にはあまり余裕はない。


「策って言っても、火もダメ、水もダメ、風もダメ、氷もダメ、土もダメ、雷もダメ、闇もダメ、光もダメ。時空は使えないし、無属性のマジックソードやマジックハンマーもすぐに食べられちゃってダメだったんだよ?」


「わしの斬撃もまったく歯がたたんしのう。さっきもいけたと思ったんじゃが」


「硬いゴムみたいな相手だからね。ヒメちゃんのファングショットは防ごうとするところを見ると、突きなら」


「ダメじゃな。やつの体はこう……皮があまっておるというか、皮が伸びて、それで勢いを殺されておる感じなのじゃ。わしの刀は突くのには向いておらんし、威力が足りんじゃろう」


「うーん、皮が伸びる……あ、いけるかも! ユウカ、1分ヒメと耐えてて! その間に作る(・・)から」


「何かはわからんが、今度は勝算があるんじゃな?」


「ユウカが仕留め損なわなければね」


「かっかっか。誰に向かって言っておる。わしは『神斬』と呼ばれた女じゃぞ?」


「期待してるよ」


 ユウカがヒメと時間を稼いでくれている間に私は魔法陣をいくつも展開する。そしてそれらから必要な部分を抜き出して、新たな魔法を創造する。


「……できた!」


 そしてちょうど1分。私はお目当ての魔法を完成させた。



どうもコクトーです。


今回はマナ視点なので職業レベルはなしです。


卒論が終われば楽だとか言ってたやつを殴り飛ばしたい…

忙しいじゃないか!というわけでまた遅れるかもです。


ではまた次回

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