死の草原です2
「がぁあ!」
「かう!」
『死の草原』に転移してきた俺たちに、真っ赤なウルフが跳びかかってきて、頭の上からパッと消えたヒメに叩き落とされた。すぐに頭にステュラを突き刺してとどめを刺すと、今度は黄龍が頭の上に座った。ヒメはさっきまで黄龍がいたゼルセの肩に乗るようだ。勝ち誇った黄龍と恨めしそうに見るヒメは何度見てもかわいい。逆も好きだけどな。この2体の定位置争奪戦は何度見てもかわいいな。
そんなことを考えながら、俺は襲い掛かってきたウルフを『鑑定』した。
「オペラウルフ? あれ、オペラウルフって赤かったっけ?」
「よく見るのじゃ。これは毛の色ではないじゃろうが」
「血だね、これ。でもそんなに古いものじゃなさそう」
「ですがご主人様とヒメちゃんの攻撃以外に傷がみあたらないような……」
キャラビーとヒツギが倒れたオペラウルフの死体を見て色々考えていると、『気配察知(人)』に反応があった。警戒しながらそちらに1人歩いていくと、どこかで見覚えのある人たちが倒れていた。
「マナ、来てくれ!」
「どうしたの……って! ヒール5」
俺の声に反応してやってきたマナの魔法が倒れている人たちに降り注ぐ。既に事切れている3人は変化しないが、まだ息のあった4人は傷が塞がっていった。ユウカたちも突然マナが魔法を使ったことに驚いてこちらにやってくる。
「メイ、この人たちは!?」
「以前ユウカと行った会合に参加してたやつらだ。たしか『バーニングバード』だったかな」
「それがどうして……」
「1層2層でぎりぎりとは言っておったが、この状況はちとおかしいの」
「おかしい?」
その言葉に全員がユウカの方を見た。ユウカは腰の刀に手をかけており、周囲を見渡しながら話す。
「そうじゃ。いくつかあるが、こやつらはいったい何にやられたのじゃ?」
「さっきのオペラウルフ……じゃないよな。だとしたらこいつらが生きているはずがない」
「そうじゃ。そうなってくるとわからんことがある」
「彼らを殺した相手がどこに行ったのかということですよね? 罠……はないですが、ご主人様」
「気配察知は両方反応がない。そうなると、『バーニングバード』を殺したやつらはどこに行ったんだ?」
「転移陣で戻ったわけではないだろうけど、先に進んでるんだとして……生かしておく理由はないよね。あるとしたら……囮?」
「っ! 跳ぶぞ!」
俺は近くにいたマナを抱え上げて上に『小規模ワープ』で跳んだ。ユウカたちもその場から飛び退く。回復はしたものの、まだ動くことができない『バーニングバード』の奴らはゼルセとコルクが抱えていた。
俺たちがその場を離れた瞬間、地面からとげが伸びてきた。
「『ダークネスシールド』『シールドバッシュ』」
足元に展開したシールドでそのとげを粉砕した。すぐにヒツギがそこに棺桶をたたきつけて地震を起こす。すると、少し離れたところから何か黒い球体が浮き上がった。
「みぃちゃん、4人運べるか?」
「ぐるぅ」
「キャラビー、みぃちゃんとゼルセを連れてギルドに彼らを運んでくれ。邪魔になる」
「ご主人様!」
「キャラビー、頼んだ」
「は、はい!」
何か言いたげだったキャラビーだが、有無を言わせずに転移陣の方に向かわせた。ゼルセを付けていれば多少の暴漢くらいなら何とかしてくれるだろう。
キャラビーたちが転移陣に向かってすぐ、浮かんでいた球体が割れ、中にいたやつらが地面に降り立った。まん丸に太った男、髑髏を模した杖を掲げるエルフ、巨大なのこぎりを背負ったドワーフ、以前のゼルセを彷彿とさせる鬼人族。彼らは種族も性別もバラバラだが、全員が頬などの露出している部位に見覚えのある模様があった。
「こうもはっきりとわかるようにしとるやつがいるとは聞いたことがあったが、実際に見るのは初めてじゃの」
「俺が見たことがあるやつは服の下に隠してたっけな。『赤の団』のやつはしっかり出してたけど」
「そりゃそうでしょ。4大ギルドの証何て出さない方がおかしいし」
「そんなこと話してる場合じゃなさそうなんだけど」
エルフの掲げる杖が不気味に光り、彼らの周囲の地面から次々と腕が生えてきた。そして続々と体も地面から出てくるが、その数は20体前後。どいつもこいつも武器防具を装備しており、球体から出てきた4人よりもさらに種族がバラバラだった。
「ユウカ・コトブキと『マツノキ』だな」
「随分な挨拶じゃのう。『バーニングバード』をやったのはお主らか? 『闇の爪』」
「知っていたか。まあ当然と言えば当然か」
「お腹すいたー」
「これだけはっきりと出してるんだからわからないはずないよねー」
「で、裏ギルドがいったい何の用だ?」
「依頼があったんだよねー。いやー、あんたらも運がないねー」
「すまんのう。たぶんわしの客じゃ」
「謝る必要はねえよ。ユウカの客は俺の客だ」
「かっくうぃー。決ーめた。あれ私のコレクションにしよっと」
「ヒツギ」
「マナ」
「「敵だね」」
「あんたら敵認定遅いんじゃあないのかい?」
「余裕があるって勘違いしてるんじゃないか? 俺たちの名前が売れているとかそういうわけじゃないからな」
「そうじゃのう。それほど目立つ姿であればわしも知っていてもよいものじゃが……以前見せてもらったリストにあったのは鬼人族のお主くらいのものじゃ」
やつらと話しながら、こっそりと『上級鑑定』で全員を調べていくが、レベルだけでいえばはっきり言って相当強い。キャラビーを逃がしたのは正解だったと言い切りたいほどに。それでもさすがにSランクのユウカとは比べるまでもないが、名前がまるで知られていないのは不思議なくらいだ。だが、第一段階を攻略して第二段階に挑むような実力があることは追加で地面から現れたアンデッドのオペラウルフたちが証明してくれている。中でも鬼人族の男は他3人よりも断然強い。
「気をつけるのじゃぞ。あの鬼人族は賞金がかかるほどの男じゃ。皆殺しのヴァンハルト。ジョーの奴が追っておった気がしたが、こんなところで会えるとはのう」
「えー、あんた賞金なんかかかってんのー?」
「お腹すいたー」
「盛大にやらかしたからな。あれは楽しかった」
「楽しかった、ね。ユウカ、こいつは何をやったの?」
「自分の所属していたギルドの仲間を全員殺したのじゃ。まさか『闇の爪』に入っておるとは思わなかったのう」
「副首領からスカウトされてな。なんでも今は戦力を集めていると言っていたが……まあお前たちには関係のないことか」
「さすがに言いすぎじゃない?」
「別に構わんだろ」
「さっきから聞いてると、こっちにはSランクもいるっていうのに随分な言い方だな」
「これでも私たち精鋭って呼ばれてんのよねー」
「第二段階に来れてる時点でわかると思うがな」
「これまでも第二段階で3組くらい余裕で狩ってるしー、余裕でしょー」
「後でギルドに報告しておこうかのう」
「逃がすと思っているのか?」
「余裕で」
「……死んじゃえー!」
「お腹すいたー」
エルフの女が杖をこちらに向け、アンデッドたちが動き出したことで戦いが始まった。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
有効職業
聖???の勇者Lv15/?? ローグ Lv42/70
重戦士 Lv45/70 剣闘士 Lv41/60
神官 Lv35/50 龍人 Lv5/20
精霊使いLv12/40 舞闘家 Lv12/70
大鬼人 Lv5/40 上級獣人Lv3/30
魔導士 Lv5/90
非有効職業
死龍人 Lv1/20 魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99 狙撃王 Lv1/90
上級薬師Lv1/80 』
10分程度なら誤差ですよね。誤差ですよね?
書籍化効果か、ブックマークがぐんぐん伸びております。こんな無駄に長い作品を…ほんとにありがとうございます!
一方で誤字脱字報告と矛盾点の指摘以外の感想はいつも通りほとんどない…。感想返しが追いつかないほどいただくのってどんな感じなんだろう…。
いただいた感想はありがたいく読ませていただいて返しますよー。ネタバレ以外。
ではまた次回




