死の草原です1
館に帰った俺たちは夕飯の前に一度リビングで集まっていた。
「キャラビーは部屋に寝かせてきた。マナとヒツギは疲れてないか?」
「うん、大丈夫だよ」
「私も平気」
「そうか。とりあえずなんか軽くつまめるものでも出すよ」
俺はアイテムボックスから皿と買っておいた果実やパンなどを取り出してテーブルに置いた。
「わしは心配してくれんのかの?」
「そこは信用してると受け取ってくれ」
「そう言われてしまうと何とも言えんのう」
「……なんだかんだでメイってユウカに甘えるよね」
「そうか?」
「お姉ちゃんには甘えてくれないのに」
「いや、だって……なぁ?」
「私だって甘えてほしいのに!」
「知るか!」
「むしろ甘えさせて!」
「年を考え「あ"ぁ?」いやなんでもないです本当に申し訳ありませんでした」
「ヒツギ、落ち着いて」
「今のはメイが悪いのう」
「反省しております」
「次やったら剥くからね」
「何を!?」
「ナニを」
「ヒツギ、少しは恥じらいをもとうねー」
「いつまでたっても本題に入れんではないか。メイ」
「ああ、悪いな。じゃあ本題に入るが……どう思う?」
「どうって……キャラビーだよね?」
「ああ。明日からいよいよ第二段階に入ることになる。連れていくかどうか、意見を聞きたい」
俺がみんなに聞きたかったのはそれだった。
キャラビーは、オークションで買った時と比べたら別人のように強くなっている。それがセン・グーテンの残した石碑に刻まれていたように、俺たちと一緒にいたから成長率という点で効果があったのかもしれないが、それでもキャラビー自身の頑張りがあったからこその強さだ。それでも、自分で言うのもなんだか嫌だが、俺たち4人とは大きな差がついている。これから第二段階に挑むにあたり、この差が問題にならないかと言うことを心配しているのだ。
今日戦ったエルダードンキーはランクで言えばB+。第二段階で挑むことになるオペラウルフは単体ではそれより下だから問題ないかもしれないが、出てくるモンスターはオペラウルフだけではないし、先に進めばAランクのモンスターも出てくる。未確認のモンスターも絶対いるはずだし、そうした相手が出てきたときに守りきれないようなことが起こらないとも限らないのだ。それに、最終的にダンジョン自体を攻略する予定である以上、ボスとの戦闘は避けられない。その時だけお留守番というわけにもいかないし、この初めて挑む段階で連れていくかどうかを決めようと以前話していた。
「俺としては問題ないと思ってる。疲労という点はまあどうしようもないけど、罠に関してはこの中の誰よりも上だし、1戦2戦なら全然大丈夫だろう。疲労の色が見えたら最悪俺が背負うかゼルセに運んでもらうから」
「疲れたらメイが背負ってくれるの?」
「キャラビーだけな」
「ひいきだ!」
「はいはい。マナは?」
「私もいいと思うよ。疲れだけはどうしようもないけどね」
「そうじゃのう。わしも連れて行くのに反対はせん。じゃが、疲労に関しては何かしら策を考えないといかん。わしも時々稽古をつけておるが、まだまだ体力づくりの段階から抜けておらんのじゃ」
「疲労を回復させる魔法ってのはないのか?」
「回復魔法はあくまで治癒だからね。少し程度ならなんとかなるけど、完全に疲労をとる魔法はわかんないかな。メイのスキルの『再生』だっけ? あれを解析できればなんとかなると思うんだけど……」
「魔法とスキルは別物みたいだからな。何とも言えん」
「ならあきらめるしかないかなー」
「まあしばらくはあんまり進むつもりはないし、第二段階に挑んだら次の日は休みにするくらいのペースで行きながら行こうぜ」
「そんなにゆっくり進むのかの?」
「最初のうちだけな。『死の草原』は4層までしかすすんでないんだろ? 急いでも他の高ランク冒険者たちが苦戦している群れをまともに相手することになる。オペラウルフとはまだ戦ったことがないし、群れになった時にどんな相乗効果があるかもわからない。そうなってくると対処しきれない可能性もあるしな」
「まあ相手が多ければ多いほど万が一の確率は上がるからね。メイが竜化して空からブレスを吐き続けたらなんとかなりそうな気もするけど」
「『竜化』は結構疲れるんだぞ? それに、器用にみんなを避けて敵だけに『ブレス』を当てるなんてできないって」
「挑むときは全員で挑むのじゃ。その時はマナに期待じゃな」
「魔法なら任せといて」
「その時までに討伐されててほしいけどな」
その後、キャラビーは起きてこなかったから仕方なく俺たちだけで夕飯を食べ、それぞれの部屋に戻った。
次の日、朝の鍛錬はなしにして俺たちはさっそくダンジョンに向かっていた。
今日行く『死の草原』は『生の草原』の奥にあるから『生の草原』の転移陣待ちの列に並ぶのだが、昨日俺たちが『生の草原』に挑んでいたのが広まったのか、昨日よりも長い列ができていた。それに伴って昨日もあった視線が今日は一段と多い。
「この視線には慣れそうにないな……」
「有名税というやつじゃな。こればっかりはわしにはどうもできん」
「ユウカはかわいいから余計に多そうだよね」
「メイもかわいいって言ってる人が多いみたいだよ。……男で」
「怖いこと言わないでくれ。そう言うのはモモさんだけでお腹いっぱいだ」
「ご主人様はかっこいいです!」
「ありがとな、キャラビー」
俺はキャラビーの頭を撫でまわして現実逃避をしながら順番が来るのを待った。
昨日は5分で使えた転移陣だったが、今日は順番が回ってくるまで倍以上はかかっていたと思う。その間ずっと撫でられ続けていたキャラビーも非常に満足げだ。
50層奥の転移陣に移動し、これまで使わなかった『死の草原』への転移陣の前に立った。実際にはないはずなのだが、威圧感を感じる気がする。
今日は、と言うか、今日もアンナとカルアは留守番で置いてきたから2体以外のやつらは既に全員呼び出してあった。ヒメはいつものように頭の上に陣取り、力を抜いてだらーっとしているが、戦闘になったら降りてくれるだろう……たぶん。
「ギルドの情報にもなかったし、入ってすぐにモンスターに襲われるようなことはないとは思うけど気をつけていくぞ」
「初めて入るダンジョンだし、何が起こるかわからないからね。キャラビー、罠の探知お願いね」
「はい! 罠も危ないものが増えてくると思いますのでご主人様たちも注意しておいてください」
「期待してるぞ」
「ご主人様のご褒美があればさらに頑張れると」
「調子に乗らない」
「あぁん!」
強めのチョップを頭に落として俺たちはそれぞれの武器をしっかり握って第二段階『死の草原』へと足を踏み入れた。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
有効職業
聖???の勇者Lv15/?? ローグ Lv42/70
重戦士 Lv45/70 剣闘士 Lv41/60
神官 Lv35/50 龍人 Lv5/20
精霊使いLv12/40 舞闘家 Lv12/70
大鬼人 Lv5/40 上級獣人Lv3/30
魔導士 Lv5/90
非有効職業
死龍人 Lv1/20 魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99 狙撃王 Lv1/90
上級薬師Lv1/80 』
卒論を出したら今度は発表用原稿とパワポの作成。勉強もしないと……書く時間をくれぃ。
寒い日が続いていますのでみなさんも体調には十分に注意してくださいね。
ではまた次回




