話し合いです
リビングに集まった俺たちは、テーブルを囲んで隣にキャラビー、左右にマナとヒツギ、そして対面にユウカがくるように座った。
「じゃ、話し合いを始めるか」
「よろしく頼むのじゃ」
「今回の議題というか、話題はまあユウカを『マツノキ』に入れてもいいかどうかってことだが……3人はどうだ?」
「私たちは3人ともOKだよ。反対する理由もないし」
「ほんとにいいのか? あんまこんなこと言いたくないけど、俺らのことを知らない他人だぞ?」
「あー、メイに話してなかったけど、私たちのことはもうユウカに話してあるよ」
「は?」
「前に4人でお風呂に入ってた時にね。メイにも一緒に入ろって言った時だったんだけど断られちゃって」
「いやいやいや。なんでそんな時に。というよりもなんでそんな話に?」
「発端はユウカだったんだよ? パーティに入れてほしいって頼んでいる身なのに隠しごとをしているのはわしには耐えられないって」
「そうじゃ。以前お主に話したじゃろう? わしの祖母のことを」
「寿静さんだったか?」
「そうじゃ。あの話を3人にもしたのじゃ。わしがお主たちの来た世界、祖母の過ごした世界に行ってみたいということもの」
「それは……よかったのか?」
「マナが言ったじゃろ? わしは頼みこんでいる立場じゃ。それなのに自分のことを隠し続けるというのは耐えられん。わしの矜持が許さんというやつじゃな」
「……どこまで話したんだ?」
「私たちが地球から召喚の儀で呼ばれたってことと、キャラビーがファントムの血だってことくらいだね。私のことは細かくは話してないけど、話してもいいよ」
「いいのか?」
「うん。私の勘だと、ユウカはメイの敵にはならない。経験からくるものだから信じてもいいと思うよ」
「私もユウカが裏切るとは思えないかな。一番裏切らない楔があるからね」
「楔って?」
「愛」
「……」
「黙り込まないでよ。冗談で言っているわけじゃないからね?」
「冗談じゃないならなおのこと黙り込みたくなるんだが?」
「考えてもみてよ。メイはマナやキャラビーがメイを裏切るところを想像できる?」
「私がご主人様を裏切るはずがありません!」
「ね?」
「あー、なんとなくわかった気がする。俺が何かやって呆れられたりすることは容易に想像できるけどな」
「メイは結構頻繁にやらかすからね」
「俺がいつやらかしたよ」
「言っていいの?」
「……やめてください」
「はいはい。まあとにかく、私たちはユウカのパーティ加入は賛成。メイはどうなの?」
「別に俺も特に反対ではないんだが、2,3確認しておきたいことはある」
「なんじゃ?」
「俺たちの認識としてはユウカが『マツノキ』に加入するってことになっているんだが、ギルドとしてはどう扱われるんだ? こう言っちゃなんだが、俺たちとユウカではランクが大きく離れてる。俺たちはBで、ユウカはSだ。パーティに入る以上、個人への強制依頼ってことにはならないと思うんだが、パーティランクはBから上がるのは確定だし、強制指名依頼の適用もあるだろう。そのときはどっちのランクで判断されるんだ?」
「SランクとBランクとなると前例がないじゃろうが、他の事例で見れば普通は下のランクの者に合わせられていたはずじゃ。下手に上のランクで動かしてけが人を増やすわけにはいかんからの。じゃが、お主らの場合は第一段階の4つすべて攻略しとるし、A+くらいのランクの依頼なら出される可能性はある」
「やっぱりか。でも、ユウカのSランク基準で依頼をされるってことはないんだよな?」
「わしからはおそらく、としか言えんの。そこまで馬鹿なことをするとは思えんが、絶対とは言い切れん」
「さすがに世界に12人しかいないSランクをパーティとしての基準にしてほしくないよね」
「パーティじゃからこそSランク扱いされる者たちもおるが、それを言い出せばきりがないからのう」
「まあいざって時は最悪俺とユウカでなんとかしてくるか」
「私たちは?」
「キャラビーについてもらうよ。次に聞く予定だったけど、ユウカがパーティに入るってことで喧嘩をうってくるやつもいるだろうし、嫉妬で何かとんでもないことをしでかすやつも出てくるかもしれない」
「それはわしにはどうしようもないのじゃが……」
「どこまでやっていいのかって話だから。殺したりとかはしないけど、重症にするのはいいよな?」
「かなり過激じゃのう」
「一緒にいたってだけで喧嘩をうってきた馬鹿をすでに見てるからな。いちいちあんな風にやってたら面倒で仕方ない」
「そういえばおったのう。ふむ……骨折程度なら何の問題もないのじゃ。相手が貴族であれば何か言ってくることはあるかもしれんが、ある程度ならばわしが黙らせるから安心せい」
「それは安心していいものなの?」
「安心の材料にはなると思うがの。で、他には何があるのじゃ?」
「ヒツギ、つらいだろうけど話を頼む」
「あー、ここでそういうことなのね」
「なんじゃ? お主らが姉弟という話なら聞いておるぞ」
「そうはそうなんだけど、実は私は2人とは召喚された時代が全然違うの」
「時代、じゃと?」
「うん。ユウカは約1年前の召喚の儀の話は知ってるでしょ?」
「お主らが召喚されたものじゃろ? ん、待て、そういうことか」
「気づいた? 今回召喚されたのは3人そしてそれはメイとマナと行方不明の勇者君」
「……前回の召喚の儀で召喚されて、今まで生きておったということか?」
「惜しい! 前回がいつかはわからないけど、もっと前。私は900年前に召喚されたんだ」
「900年……じゃと!? しかしお主は」
「見ての通りピチピチの18歳だよ。私はね、どういうわけかわからないけど、あるダンジョンの奥で眠ってたんだ。メイが起こしてくれるまでずっと」
「にわかには信じられん話じゃが、この状況で嘘をつくとも思えんし、真実なのじゃろうな……」
「うん。証拠ってわけじゃないけど、私が召喚された時代にあったエルミーナ帝国のエルミーナ通貨だよ。わかる人にはわかるらしいけど」
「わしは通貨はさっぱりじゃが、エルミーナ帝国は聞いたことがあるのじゃ」
「なら話を続けるよ。当時は魔王はいない時代だったんだけど、仲間とともに旅をしててね。その当時の仲間の1人が今の魔王の軍勢の幹部なんだ」
「なんじゃと!?」
「オルスっていう龍人。今はラースって名乗ってるみたい」
「どういうことなのじゃ?」
「私が知る限り、魔王に付き従うようなやつじゃないんだけど、何らかの魔法をかけられてる可能性が高いと思う」
「むぅ……」
「もう2人いたぞ。スロースのエルギウス、それから、バラーガの体を持ったセン・グーテンもだ」
「そっか……あの2人も、か。メイムとシルはどうなのかな」
「そのメイムとシルという2人もそうなのかの?」
「わかんないや。メイムはエルフだからもしかしたら生きてるかも。シルはさすがになくなってるだろうけど、他の3人がそうだからね」
「そういえば、俺らも聞いてなかったんだが、シルフィードってどんな人だったんだ?」
「そういう扱いはしてなかったけど、立場的には奴隷だったってことくらいだな」
「そうだっけ? うーん、たぶんシルを一番言い表せる言葉は付与術師、かな」
「付与術師?」
「うん。シルはあらゆる属性に適性があったけど、生まれつきの異常で体外に魔力を放出できなかったんだ。当時は時々いたんだけど今もいるのかな?」
「お主らもこの間会ったとこじゃぞ?」
「会った?」
「モモがまさにそうじゃ。あやつの場合は無意識に魅了効果を振りまいておるからその影響があるかもしれんが」
「あの人シルと似たような体質だったんだね。まあでもいるなら話を続けても大丈夫だよね。体外に放出はできなかったシルだけど、触れた物に魔力を通すことは可能だったから、それを活かすために私たちに内緒で勉強したみたいで、初めて見た時はびっくりしちゃった」
「そんなにすごかったのか?」
「すごいもなにもその場で付与できるから、状況に応じて多様な属性の剣を使い分けて戦ってたくらいなんだよ。当時の私のパーティは魔法を使えるのが1人だったからほんと助かってた」
「複数の属性を使いこなせる存在はそうそうおらんからの。マナやメイは簡単にやってのけるが」
「俺やマナはそういう『力』だからな。また別だよ」
「そういえばそうじゃったのわしは魔法は苦手じゃからうらやましい限りじゃ」
「そういうなよ。これからは一緒なんだからマナから学べばいい」
「む? 一緒でよいのかの?」
「反対ではないって言ったろ? むしろこれからよろしく頼むよ」
「メイ……。よーし、今日はお祝いじゃな。よし、全員で風呂に行くのじゃ!」
「おっけーい!」
「行きましょう」
「全員でね」
「……『テレポート』」
「あっ、逃げた」
「探すのじゃ!」
「小規模ワープじゃなくてテレポートだったから近くにはいないかも。部屋に突撃しよ!」
ユウカの『マツノキ』加入を受けて、途端にあわただしくなった館を背に、俺は一人こっそりと森の奥に向かって行った。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『最大
ビギナー(10) 格闘家(50) 狙撃手(50)
盗賊 (50) 剣士 (50) 戦士 (50)
魔法使い(50) 鬼人 (20) 武闘家(60)
冒険者 (99) 狙撃主(70) 獣人 (20)
狂人 (50) 魔術師(60) 薬剤師(60)
有効職業
聖???の勇者Lv15/?? ローグ Lv42/70
重戦士 Lv45/70 剣闘士 Lv41/60
神官 Lv35/50 龍人 Lv5/20
精霊使いLv12/40 舞闘家 Lv12/70
大鬼人 Lv5/40 上級獣人Lv3/30
魔導士 Lv5/90
非有効職業
死龍人 Lv1/20 魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99 狙撃王 Lv1/90
上級薬師Lv1/80 』
かなり難産でした。ただでさえ時間がないのに思いつかないという地獄…
でも書籍用にマナの話を新しく書いてたし、仕方なーいね(ちょっとした宣伝)
ではまた次回




