明の森、休みです4
「『悪の洞穴』と『賤の山』が7層、『死の草原』が4層、『暗の森』は5層だ。どれも次の階へ続く場所は見つかってない。そして、この状況は俺が知る限りじゃ1月はこのままだ」
ティグレさんは表情をわずかにゆがめながら、想像以上に進んでいない攻略状況を話した。
「1月進まないというのは別におかしいことじゃないんじゃないか? この町ができてから『貴の山』が攻略されるまでめちゃくちゃ時間かかっているわけだし」
「それを言えばそうなんだが、問題は20層までしかないのにここで止まってることだ」
「そうじゃのう。たしか前回問題に上げとったのはモンスターじゃったよな?」
「はい。前回、各ダンジョンで強力なモンスターが確認され、それらによって攻略が止められているという話があがってましたね」
「階層が違うのにそれぞれででてるんですか?」
「挑んでいる人によっても変わっているんだよね。『バーニングバード』みたいに1層2層でもぎりぎりで挑んでいるところもあれば4大ギルド様みたいに最前線でバリバリやっているところもあるから」
「うちも余裕ってわけではないんだけど。けが人は毎日のようにでているもの」
「なんとか死者は数人で済んでますけど、それでも痛いですよね」
「少なくとも第一段階のダンジョンは攻略していましたからね。功を焦ったとはいえ、死んじゃ意味がないでしょうに……」
「引き際が肝心ということじゃな」
「参考までにどんな敵が出てきたか聞いてもいいですか? 聞いたことがあるかもしれませんし」
「どのモンスターも聞いたことはあると思うず。『死の草原』はオペラウルフとレッドレオの群れ、『悪の洞穴』はリッチが率いるアンデッドモンスターの群れが複数、『賤の山』ではドン・グロウモンキーの群れだ」
「問題なのは数ですか……」
「『暗の森』だけはそうでもないんだよ。『暗の森』の7層にいるのは今のところ1体だけだからね」
「1体? ボスの階層でもないのにか?」
「うん。エルダートレントの変異種が1体中央に居座ってるんだ」
「ドン・グロウモンキーもそうでしたけど、エルダートレントも第一段階のボスですよね? そんなのが普通にでるんですか?」
「別におかしな話じゃないと思うがの。第二段階とは言うとるが、まったく別のダンジョンなのじゃから」
「それはまあそうですが、それがまだ半分も行ってないところで群れてるって、20層のボスどころか、10層のボスはいったい何がでるんだって話ですよね」
「そうだな。低くてもSランクは越えてくるかもしれんな」
「ランクエラーと見たほうがよいと思うけどな。正直俺たちじゃ相手するのは無理ってことだけはたしかだが」
「お主がそんなことを言ってどうするのじゃティグレ。『赤の団』のナンバー2がそんなことを言っておると若者がダンジョンに挑まなくなるかもしれんぞ?」
「これでも自分の実力はわかってるんでね。Sランクには届かないって」
「夢がないのう。メイよ、そう思わんか」
「Bランクの俺に何を言えと?」
「上げる気がないだけじゃろうが。まあよいか」
「いやーよくはないと思うけど……。それで、新規参加者の3人に問いたいんだけど、何かいい対策はないかな? いや、もっと基本的なことでもいいけど、対策みたいなことを思いつかないかな?」
「そうですね……『暗の森』ですが、エルダートレントを遠くから火で焼くことはできないんですか?」
『テルマ火山隊』のテラスさんがそう尋ねたのを聞いて、マナがエルダートレントを焼き殺したのを思い出した。あれは獄炎魔法ではあったが、俺の『火炎壁』もよく効いていたし、エルダートレントであるならばそれを思いつくのは当然だろう。
「さすがにそこは試したよ。トレント系には火魔法っていうのは常識だからね。でも、『暗の森』のエルダートレントには火魔法が効かないんだ」
「火魔法が効かないって、燃えないってことですか?」
「燃えないどころか、枝を使って受け止めて、それを跳ね返してきた例もあるくらいだよ」
「ほんとにエルダートレントですか?」
「解析を使って確認した結果だから間違いないよ。まあそれくらい異常じゃないと層をまるごと自分だけでってわけにはいかないってことでむしろ納得したよ」
「なるほど。他の魔法は効かないんですか?」
「火魔法以外は特別効く効かないっていうのはないようだよ。普通のと変わらない感じかな」
「そうですか……思いつくのはそれくらいですね」
「俺もリーダーと一緒ですね。火魔法が効かないとなるとかなり厳しいな」
「そうか。メイさんはどうです?」
「んー、『賤の山』に関して言えば、『貴の山』でボス戦をなんども繰り返すってのはいい訓練になると思います」
「というと?」
「ユウカがよくやってるみたいですけど、ボス戦を終えたら、転移陣で50層の入口の方に戻って、順番はきちんと守ってですけど、もう一度挑むんです。それを何度か繰り返してれば群れとの戦闘もドン・グロウモンキー自体との戦闘もできますし、止め時はきちんとしないとまずいですけど、何度も繰り返せばいい訓練になると思います」
「いや、それができるのはユウカさんだけだって……」
「え?」
「え?」
「できるの?」
「できないんですか?」
「「……」」
隣で嘆くように呟いたアーラさんに答えてしまったためになんとも言えない空気ができあがってしまった。実際にやってみればかなりできると思うんだけどな。
一度会場全体がそんな空気になってしまったからか、その後はそれほど大した話はなく、30分ほど内容があるようでないような話が続いてお開きになった。
話し合いが終わり、俺とユウカは建物を出て、キャラビーがいるガンダさんの店に向かっていた。
「メイもこれで有名人じゃの」
「ユウカのおかげでな。しかし、ボス戦を繰り返すって第二段階に挑んでいるやつでも厳しいのか?」
「そうじゃの。お主は普段わしか従魔たちとばかりやっておるから感覚が麻痺しとるかもしれんが、普通ならばボス戦を日に何度もやるような人間はおらんよ。それこそパーティランクA+のパーティでも、じゃ」
「でもできるのとするのは別じゃないか?」
「ティグレのところのパーティだったらたぶん可能じゃろうが、2戦目はかなり厳しいものになるじゃろうな。あ、Sランクどもならできる者はごろごろおるぞ。こないだあったモモでも3戦は余裕じゃろう」
「ユウカはその気になればどれくらい連戦でできるんだ?」
「上位種が絡むとわからんが、そういったことがなければ最高で20戦くらいかの」
「そんなにやってたのか?」
「呪いを解くのにいい魔道具が出たという噂を聞いて、極力体力を消耗しないように心がけてひたすら挑んでおったからの。若気の至りというやつじゃ」
そんな話をしていると、ガンダさんの店の前まで来た。
「ガンダさん、いますか?」
「おう。いるぞ。キャラビー、メイが来たみたいだぞ」
「はい! ご主人様!」
店の奥でガンダさんと奥さんと話していたキャラビーがかけてきてギュッと抱き付いた。ちょっとびっくりしたものの、俺はキャラビーの頭をなでる。
「どうした? なんか怖いことでもあったか?」
「……スン、スン。ご主人様から女の人の匂いがします……」
「キャラビーって猫獣人じゃなかったっけ!?」
「かっかっか。これは今夜が楽しみじゃ」
「笑い事じゃねえよ!」
俺はキャラビーをとりあえず引きはがし、若干あわてるように館へと帰っていった。
その日の夜は部屋の入口に結界を張って、ハウステントで寝たけど特に理由はない。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 LvMAX(99)
狙撃主 LvMAX(70)
獣人 LvMAX(20)
狂人 LvMAX(50)
魔術師 LvMAX(60)
聖???の勇者Lv15/??
薬剤師 Lv57/60
ローグ Lv42/70
重戦士 Lv44/70
剣闘士 Lv41/60
神官 Lv28/50
龍人 Lv4/20
精霊使いLv7/40
舞闘家 Lv12/70
大鬼人 Lv4/40
死龍人 Lv1/20
魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90
上級獣人Lv3/30
魔導士 Lv1/90 』
遅くなってすいません。書く時間がたりないんですよぉ…
前話の最後(今話の最初)のティグレのセリフですが、ダンジョンの攻略状況の話が過去にちょろっとだしたこととずれていたので直しました。具体的には270話での話です。すいません。
ではまた次回




