攻略パーティです
空の色も暗くなり、俺たちは、リビングの机の上に所狭しと並べられた料理の数々を見て、そわそわしだしたチビッ子の首根っこをつかみながら、ほどよく飲み物の注がれたコップを片手に机を囲っていた。
「あー、こういうのって俺でいいのか?」
「お主以外に誰がやるというのじゃ」
「そうよぉ。これは『マツノキ』のお祝いパーティなんだから」
「こういうの苦手なんだよ。マナ、チェンジで」
「だーめ。ほら、さっさと始めないと」
「ご主人様、ファイトです!」
「メイがんばれー」
女性陣の助けは得られそうにないので、給仕として壁際に佇むシーラさんに視線を向けてみるも、無言で首を横に振られてしまった。くそぅ。
「えー、じゃあ、この度は、『マツノキ』の『善の洞穴』の攻略記念パーティにお越しいただき、ありがとうございます。みんなのおかげで、こうして無事に攻略を終えることができました。つーわけで、乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」
こうして、俺たちの『善の洞穴』攻略記念パーティが始まった。
「すごい、すべすべ」
「なにこれ、すごっ!」
「すごいですね……」
「そんな風にほめられると照れるわぁ」
「うれしそうじゃのうモモ」
「それはうれしいわよぉ。乙女たるもの、肌のお手入れには力をいれるのは当然。それを褒められる機会なんてあまりないの。最近の男はみーんな顔や胸ばっかり。もぅ嫌になっちゃう」
「あーわかります、それ。私たちがどれだけ頑張ってるのかわかってるのかー! って思いますよね」
「そうなのよぉ! 男にはこの苦労がわからないのよねぇ。どうしても戦闘は生活と切り離せないから他の人よりも荒れちゃうのにぃ」
「そうそう。男ってどうしてああもがさつなんだろうね?」
「そうよねぇ。あ、じゃあ3人にはこれをプレゼントしようかしらぁ。お祝いってことで」
俺が従魔たちとアレフさんの旨すぎる料理を堪能していると、女性陣で集まって話していたモモさんが自身の腰に下げた魔法袋から小さな瓶を3つ取り出した。一瞬毒かとも思って『鑑定』をしたが、その心配は不要だった。
「私がお肌のお手入れに使っている油よぉ。どうしても人によって肌にあうあわないがあるから、あわないようだったらすぐに使うのをやめてねぇ」
「これがあのすべすべお肌の源……」
「ありがとうございます! さっそく今晩使ってみますね」
「そう喜んでくれると嬉しいわぁ。と言っても、やっているのはこれだけというわけではないけどねぇ。マッサージとか他にもやっていることはあるわぁ」
「やっぱりそうなんですね。参考までに聞いてもいいですか?」
「もちろんよぉ。まず」
女性陣はモモさんの肌ケア講座に夢中になってしまったので、俺は1人ヒメたちの世話に戻った。あー、もう口元がベタベタだよ。まったく……。
パーティが始まって2時間が経った。
女性陣はモモさんから教えてもらったマッサージを試したり、俺が入る余地のないガールズトークで盛り上がっていた。一方で、開始からアレフさんの料理をノンストップで食べ続けていたチビッ子たちは、お腹をぱんぱんに膨らませて寝転がっていた。俺は終始ヒメたちの世話をやきながらご飯を食べていたが、このパーティでシーラさんの厳しい視線は受けなくなっていた。それというのも、ユウカの過去を少し聞いてしまったことが大きかった。
ユウカとシーラさんが出会ったのは王都の裏路地だったそうだ。ユウカからは所長になってすぐの頃から自分に仕えてくれているとしか聞いていなかったが、シーラさんは40年にわたって仕えてきた家の次期当主の仕掛けた罠によってすべてを失い、刺客に狙われてもう死ぬしかないと思っていた時、ユウカと出会ったのだそうだ。
訓練所の所長時代のユウカはとにかく孤独だったそうだ。正確に言えば、そう見えたということらしい。館の外では信頼できる人はおらず、館の中ではシーラさんやアレフさんを含めた初期の頃から仕える人たちには心を許していたが、女が近衛騎士団の訓練所の所長をやること自体が気にくわないと思う貴族たちから派遣される刺客たちのせいで館の中でもそれほど休めない。交流のあった冒険者の人々との接点も最低限のみに制限され、日々笑顔が減っていったそうだ。
しかし、今年に入り、ある貴族に奪われていた愛刀を取り戻し、所長をやめてからは少しずつ笑顔が戻っていったらしい。そして王都を離れ、冒険者としての生活に戻ったユウカに笑顔が戻ったのは歓迎したいことだが、ユウカの話から聞こえてくるのは1つのパーティの話ばかり。しかもそのパーティ唯一の男に気があるとなれば、騙されたり脅されたりしてるのでは? と心配になるのは当然のことだ。
だが、今日パーティの中でマナたちと楽しそうに話す姿を見てそれは杞憂だと安心したと言っていた。ただ、俺がユウカにふさわしい男かどうかの見極めは今後も続けていくとのこと。俺にその気はないと言ってるんだけどな……。
パーティ開始から3時間が経ち、モモさんも宿に帰る前にギルドによりたいということもあり、パーティは解散になった。先に開始していたシーラさんとアレフさんの手伝いをする形で後片付けをして、終わるころには時計は10時を回っていた。客間も余っているし、時間が遅いということで2人も館に泊まることになった。
部屋に戻った俺は、ベッドに横になりながら、去り際にお祝いとしてこっそりとモモさんにもらった短剣を眺めていた。
『魔剣氷雪:魔力を灯すと刃に冷気を纏うことができる』
その形は以前火龍様にもらった炎顎と似たような形だが、効果は真逆とも思えるような魔剣だ。モモさんが自分は使わないからとくれたものではあるが、なんだかお祝いというにはあまりにも高価なものをもらってしまったな。渡された時は薄い水色の刃を持った短剣としか思っていなかったがこうやって『鑑定』してしまうとどうも使いにくくなってしまった。
「かーうー!」
「うわっ!?」
ぼーっと考えていたところに急に現れたヒメに驚いて、俺は氷雪を握っていた手を緩めてしまった。
『スキル:聖氷耐性Lv1を習得しました』
「おいヒメ!」
「かうかう、かうかーう!」
僕悪くないよ、とでも言う様に首を左右に振り続けるヒメだが、そんな潤んだ瞳に騙される俺ではない。
「明日お肉抜き!」
「かーうー!」
ヒメの悲痛な叫びが館中に響き渡った。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 LvMAX(99)
狙撃主 LvMAX(70)
獣人 LvMAX(20)
狂人 LvMAX(50)
魔術師 LvMAX(60)
聖???の勇者Lv15/??
薬剤師 Lv57/60
ローグ Lv42/70
重戦士 Lv44/70
剣闘士 Lv41/60
神官 Lv28/50
龍人 Lv4/20
精霊使いLv7/40
舞闘家 Lv12/70
大鬼人 Lv4/40
死龍人 Lv1/20
魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90
上級獣人Lv3/30
魔導士 Lv1/90 』
ようやくのパーティ回でした。
2話分も引っ張っておいてこれで終わりですよ。ええ…。
ではまた次回




