門前の出会いです
『善の洞穴』のボス戦から4日目の朝、俺は森の奥の方にある広場に、ダンジョンに行ったマナたちについていったみぃちゃんと、いまだに肉抜きのヒメ以外の従魔たちを呼び出して、横1列に並ばせていた。
特に肉抜きを苦にしていなかったコルクとアンナはともかく、お肉大好きな3体は心なしか少しやせてしまったようにも感じるくらい覇気を感じなかった。
「いいか、お前ら。今回のようにご飯から肉が消えてほしくなければ、今後は俺に内緒で何かやらかしたりすることがないように。ヒメにそそのかされたり、ヒメに協力を持ちかけられたり、ヒメに命令されても断固として断れ」
言っておかないと自由に勝手なことをやらかすのは目に見えているし、しっかりとこうして言い聞かせておかないといけない。まあ心のどこかではなんとなく無駄とわかってはいるけどな。
俺は、アイテムボックスから、大きめに切り分けておいたアースドラゴンの肉を取り出して俺の隣に置いた。ゼルセの倍くらいの大きさに切り分けただけで何の調理もしてない肉の塊だが、焼きたければこいつら自分で焼くからこのままでいいや。
「じゃあ、現時刻をもって、俺とお前ら5体のお肉抜きの罰は解除する。これはお前らで食べていいぞ」
俺の言葉を待ってましたとばかりに3体がお肉にかぶりついた。豪快に肉を噛み千切り、頬をぱんぱんに膨らませながら3日ぶりのお肉を味わう。
「たぶんあれはあいつらが喰いつくすだろうから、アンナとコルクのはとりあえずこれな。足りなかったら追加もあるから」
「『ありがとうございます』」
皿に取り分けておいた分の肉を2体に渡す。さすがにあの3体に混ざって肉を食べろとは言えないからな。
その後、アンナは1回、コルクは3回、残る3体に対しては同サイズのものを4回追加する羽目になった。それでもアースドラゴンの肉は1体分しか減らなかったのだから恐ろしい……。
「かーうー」
ゼルセ達の食事も終わり、館に戻ってきて、誰もいないリビングでソファに座ってアイテムボックスの中身の確認と整理をしていると、ポスンと頭の上にヒメが落ちてきた。また勝手に出てきて、背もたれのところから飛び乗ったのだろう。
「どうしたヒメ? お腹が空いたのか?」
両手で抱えて膝の上に降ろすと、ヒメは力なくうなずいた。今朝はきちんとヒメ用にレタスとブロッコリーのサラダを山盛りにしてあげたというのに、それでは物足りなかったようだ。食いしん坊なやつだな。
俺はヒメのキュウリ嫌いに配慮して、右手でトマト、左手でニンジンを取り出した。
「ほら、どっちがいい? どっちもそのまま食べられるし、調理してもおいしいぞ」
「かうー!」
ヒメは涙目になりながら右、左と順に俺の腕をはたいた。ヒメの理性が働いたからか、腕を叩くのにあまり力が入っていなかったこともあり両方とも落とさずに済んだ。食料は無駄にできないからな。
「かうかうー!」
「お前の言いたいことはよくわかるが、あと2日、正確には明日の夜までは肉はやらんからな」
「かーうーあーうー!」
「そうごねても絶対にやらん! お肉抜きの間においしく野菜を食べられるようにいくつかレシピを教えてもらったからその料理でいいだろうが。お前もポテトサラダおいしそうに食べてたろ?」
「かうー」
ヒメは俺の話に分かりやすく視線をそらした。ヒメは肉抜きになって2日目の夜、ユウカが聞いてきてくれたレシピで作ったポテトサラダを余さず完食し、俺の皿に残っていた分にまで手を出すほどだったのだ。
「あれなら俺が作ってやるが、それを食べるか?」
「うー、かう!」
ヒメは悩むしぐさを見せたものの、結局肯定するように右足を上げた。
「了解。っと、言いたいところだけど、肝心のイモがないんだ。町に買いに行くぞ」
「かう、かーう」
ヒメが器用に俺の体を駆け上がり、頭の上についたのを確認すると、俺はテーブルの上に並べていた小物をアイテムボックスにしまいなおし、留守番のアンナとカルアに声をかけて町に向かった。
町の入り口には、いつも通り列ができていた。大きめの馬車が3つに冒険者のパーティが4つ。冒険者は皆町で見たことがある人ばかりだし、スムーズに進みそうだ。
ヒメのほほをむにむにしたり、ヒメにカピチュを食べさせたりしながら待つこと20分。列は予想に反してあまり進んでいなかった。
来た時に先頭にいた冒険者と、その次の馬車と冒険者2組はスムーズに進んだものの、その次の馬車が問題だったのだ。俺のいるところにまで門番の騎士と馬車の持ち主との大声でのやり取りが聞こえていたので、おおよその話はわかった。
乗っていたのは同じ商会の3人の商人で、馬車の中身は全て商品らしいのだが、3人のうち1人が身分証代わりに使っていた商人ギルドのギルドカードを前の町の店舗に忘れてきたらしい。他の2人も初めは門番に事情を説明して、商人ギルドに確認をとってもらおうとしていたみたいだが、確認をとる前に念のためにと門番が荷物の検査を行う旨を伝えたところで商人たちの様子が一変し、荷物検査を断固拒否。当然のように門番は怪しんで検査を行おうとするというやり取りがかれこれ15分以上続いていた。応援の騎士も数人姿を現しているけれど、巻き添えだけは勘弁願いたい。
「あーらぁ、なんだか騒がしいわねぇ。何かトラブルかしらぁ?」
騒動を軽く聞き流しながらヒメと遊んでいると、後方から声が聞こえてきた。俺と同じように町に入るためにきたんだろうけど、この人も運が悪いな。
「そこのあなた、申し訳ないのだけど、何があったのか聞かせてくれない?」
「ああ。商人と門番が検査に関して言いあってるんだ」
声の高さから女性だと想像していた俺は、質問に答えながら振り向いて、そこで見た光景に絶句してしまった。
「あらぁ、門番さんも大変ねぇ……」
『スキル:病耐性Lv2を習得しました。』
右手を頬に添えて首を傾げる様子はまさに美女という感じで一瞬見惚れてしまうほどだったのだが、スキルのレベルアップと同時に一気に現実に引き戻された。フリフリがふんだんについたピンクのワンピースを着て、それにおさまりきらずに激しい自己主張をする筋骨隆々な体をしている女性。体格は、背の高さも相まって『パイフー』で見たオーガたちとほとんど変わらないんじゃないかと思うくらいだ。この人を見ても少しも動じないヒメをちょっとすごいと思ってしまった。
「様子を見る限りもうしばらく続きそうねぇ。どれくらい続いてるのかしらぁ?」
「だいたい15分くらいだな。でも、追加の門番も来たみたいだし、直に列も進むと思うぞ」
「そうなってほしいわねぇ。今日は日差しが強いからこうして外にいたらお肌が焼けちゃうじゃない。日傘を置いてきたのは失敗だったわ。混雑しているとは聞いていたけれど、これは予想外よ」
「さすがに門のところでトラブルが起きていることを予想できる人はいないでしょうよ。失礼かもしれないんだが、あなたも冒険者なのか?」
「えぇ、そうよぉ。これでも結構有名なのだけれど知らないかしらぁ?」
「あー、冒険者事情とかには疎くて……」
「あらあら。私、彼は嫌いだけれど、知らないとすねちゃう子もいるから、周りによく知っている人がいるなら聞いておいた方がいいわぁ。あなたは合格だから、私が今晩ゆっくりと教えてあげてもいいわよぉ」
「合格ってのが何なのかは知らないけど、よく知ってそうな人がいるからその人に頼むよ」
「あらぁ残念。もし気が変わったらいつでも声をかけてねぇん。あなたなら大歓迎よぉ」
「その時があればお願いしますよ」
「そうねぇ。私の名前はモモ。不本意だけど、桃色の暗殺者って呼ばれているの」
「暗殺者……」
「ほんと、ギルドは失礼よねぇ。私みたいな乙女に対して暗殺者だなんて!」
「漢女ですよね」
「そうよぉ。私としては桃色の姫様なんかにしてほしいわぁ」
「さすがにそれはいろいろと問題がでると思う」
「そうかしらぁ? あら、ようやく動き始めたわねぇ」
そう言われて振り返ると、もめていた馬車が騎士団に連れられて詰所に向かっていた。それに伴って次の冒険者が中に入って行き、馬車の方もすでに身分証を提示しており、すぐに終わりそうだ。
それから、すぐに俺とモモさんも中に入ることができた。本人が言っていた通り、有名な冒険者だったらしく、モモさんは町に入ってすぐに人に囲まれていたが、巨体を感じさせないほどの身軽さですっと屋根の上に跳びあがり、かなりの早さでギルドの方に走り去っていった。そういえば俺の名前を伝えるのをわすれてたな……。
その後、食材は買ったが、なんだかんだとカピチュを食べさせていたせいでポテトサラダは作らなくてよくなったのだが、それはまた別の話。
どうもコクトーです。
お久しぶりでございます。
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 LvMAX(99)
狙撃主 LvMAX(70)
獣人 LvMAX(20)
狂人 LvMAX(50)
魔術師 LvMAX(60)
聖???の勇者Lv15/??
薬剤師 Lv57/60
ローグ Lv42/70
重戦士 Lv44/70
剣闘士 Lv41/60
神官 Lv28/50
龍人 Lv4/20
精霊使いLv7/40
舞闘家 Lv12/70
大鬼人 Lv4/40
死龍人 Lv1/20
魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90
上級獣人Lv3/30
魔導士 Lv1/90 』
遅くなってすいません。ようやく一旦勉強から解放されて、書く時間が取れるようになりました!
ただ、完全に終わったわけではないので、もしかしたら今後また遅れるかもしれません。その時はご了承を…。
お休みしている間も読んでくださった方々のおかげでpvが気づけば2000万を超えていました。本当にありがとうございます! ここまで約3年。ほんとに感謝です。
とりあえずは更新再開ですので、これからもよろしくお願いします。
ではまた次回




