善の洞穴ボス後です1
なぜか怯えた表情でこちらを見る2体をよそに、俺は事情を聞くべく、我関せずとばかりにそっぽを向いていたゼルセとコルクに視線を向けた。
「さて、ゼルセ……はしゃべれないし、わかるよな? コルク」
「あ、主よ、これには深いわけが」
「理由を聞いてるんじゃないんだ。黄龍は、さっき何のことを口をすべらしかけたのかって話だ」
「それは」
コルクの視線が俺の右手につままれているヒメに向けられた。俺にはヒメの後頭部しか見えないが、おそらくコルクに対して言わないように懇願するような表情をしているに違いない。
「申し訳ありません、ヒメ様」
「かう!?」
「よし。じゃあ教えてもらおうか」
「はい。もともと、主が得た経験値のうちの一部を、ヒメ様の力の及ばないみぃちゃんを除いた我々がもらい受ける形で成長をしていた」
「もともとってことはヒメが俺の従魔になった時にはもうその状況になっていたということか?」
「少なくともプラチナコングとして生まれ変わった時には」
「だが、今みたいにレベルが全然上がらないってことはなかったぞ。上級獣人や大鬼人なんかの上位職ならともかく、神官や舞闘家みたいなのまで上がらないってのはおかしくないか?」
「先日、主があの龍の王を喰らった後に倒れられた時、我々はかなり焦ったのだ。我々はみぃちゃん以外は死んだとしても主の魔力の中で生き返ることができる。しかし主が死んでしまっては意味がない。そこで、ヒメ様はさらに強くなるために経験値を少々多めにもらい始めました」
「俺に死なれたら困るってことならなおさら俺から経験値をとっちゃダメじゃないのか?」
「我々が守ればいい。そう言って少しずつ増やしていき、気がつけば先ほどのようにボスと戦う時以外はすべての経験値を我々がわけることになったのだ」
「ヒメ?」
「かうかう! かうかうかう! かうかーう!」
「ヒメ?」
「か、かう! かーう!」
「ヒメ?」
「かう、かうかう」
「ヒメ?」
「かう……」
「主よ、ヒメ様も反省しているからそのあたりで」
「……はぁ。お前らも俺のことを思ってやってたんだよな?」
「それはもちろん」
「なら罰は与えるけど怒ったりはしない。これからはそうだな……半分だ。半分は俺がもらうから、残りの半分をお前らが使え」
「よろしいのですか?」
「ただし、条件をつけさせてもらうぞ。ヒメだけじゃなくて、ここにいないアンナやカルアなんかも含めて全員にだ」
俺の言葉に従魔たちが息をのんだ。その一瞬の沈黙を破って俺は告げた。
「俺、いや、俺とマナとヒツギとキャラビー。俺たち4人に何かが起こったときはお前たちが全力を尽くして俺たちを守れ。それぞれが誰につくかはお前らに任せる。この条件だけは必ず守れ。それが出来れば俺は経験値を分け与えるのになんの文句もない」
「……かうかーう!」
「ちちさま、われはがんばるのだ!」
「ぐがぁあああ!」
「委細承知した!」
従魔たちは全員やる気に満ちた声を上げた。この様子なら仮に何かあってもマナたちの安全は大丈夫そうかな。
「それはそれとして、ヒメは5日間またお肉抜き。みぃちゃんとヒメ以外も3日間肉抜きな。アンナとカルアにも伝えておいてくれよ」
「かう!?」
「えー!?」
「反論は聞かんぞチビッ子ども。言っておくが、今日から3日は庭でスキルを調べたり模擬戦とかはやるがダンジョンには来ないからな。戦闘中にこっそり食べたりもできんぞ」
「げ」
「ゼルセ、それくらい俺が想定してないとでも思ったか?」
「がぁ……」
「わ、われはボスせん2かいもがんばったよ!」
黄龍が思い出したように声をあげた。俺の手をつかんでなんとかこちらを向こうと上を向いてジタバタしている様子がかわいかった。
「たしかに、がんばってたな。キャラビーを守るためにゴーストを倒してたし」
「そう、そうなのだ! だからおにくを!」
「お肉の野菜巻き9対1風だけ許可しようじゃないか」
「9たい1?」
「お肉の量が1に対して野菜が9の料理だ。野菜をたくさん食べればお肉が食べられるぞ」
「やさいいやぁあああ。おにくぅうう!」
「はいはい。3日間我慢してな。俺もその間は肉は喰わないから」
「そうなの?」
「もとはと言えば、俺を守るためにやってくれてたからだからな。ある程度は俺も同じ罰を受けるよ」
「かうぅ」
「5日は我慢しないけどな」
「かう!?」
「首謀者に慈悲はない」
期待する表情から絶望した表情へと一気に変わったヒメを頭の上に乗せ、黄龍を右肩に乗せると、ボスを倒したことで中身が消え、その場に残ることになったゾンビパーティと化していた冒険者たちの装備とギルドカードを集めてくれていたコルクとゼルセを帰還させ、『罠察知』や『気配察知(魔物)』などの察知系のスキルをONに戻してその装備のところに向かった。
「一人はA-、残りは全員B+ランクか。もしかしてさっきのリッチキングってエルダーリッチがこいつらを倒して進化したってことなのか? ……まあ今となっては確認することもできないか」
残された武器防具の中からまだ使えそうな鋼鉄製の盾を2つと、ドワーフが使っていたかなり重いメイス、そしてA-ランクのやつが持っていた魔剣をアイテムボックスに入れた。
魔力を通すと剣に炎を纏うことができるという、火龍様にもらった魔剣炎顎と同じような効果ではあるが、こちらは火力が低いから、使うのに何の問題もない。火龍様には悪いけど、いまだにアイテムボックスの肥やしになっているだけのあれよりもだいぶいいものだな。名前がフレイムソードという、そのまますぎる名前なのは少し残念だ。
しかし、この魔剣に関しては使うつもりはさらさらなかった。それというのも、正直『ファイア』を撃った方が効率もいいし、威力も高い。なんらかの方法でスキルが封じられたときに使うかもしれないだけだろう。それに、ちょっと気になるのが、魔剣の柄頭がどうももとからの物ではないらしく、羽をかたどったレリーフがついていた。それに気づいてから改めて他の武具防具を見ると、同じ模様がついている物があり、ギルドかパーティの象徴なのかもしれない。もし冒険者ギルドでこれを知っている奴がいたら渡してしまおう。
残った服などを『火炎壁』で燃やし、燃え残った物はダンジョンが吸収してくれると判断して俺は宝箱の方に向かった。
宝箱は2つあるが、片方がもう片方に比べて大きく、正確にはわからないけど倍くらいはありそうだ。
「『鑑定』。罠はなさそうだな。じゃあ小さい方から」
罠を調べてから蓋を開けると、中には1冊の本が入っていた。調べたところ、ヒール2の魔導書のようだ。これがあれば俺でも回復魔法が使えるのかな? もしそうならば何度習得しても消えていくヒールの仇がうてるな。
「そしてもう1つは……骨か?」
大きい方の宝箱に大事そうに入れられていたのは1本の骨だった。太さは俺の腕と変わらないくらいだが、長さはそれほど長くなく、15cmくらいしかない。前と同じようにスケルトン系の骨だろうが、どのスケルトンのものだろう。
「『鑑定』」
『無限豚骨:10時間ごとに何度でも濃厚な出汁をとることができる豚骨』
お肉を禁止している今の状態からしたらもう嫌がらせとしか思えないような物だな。普段ならばおいしいスープが作れるし、うれしいものではあるんだが、俺自身が3日間我慢すると言った以上、それを破るわけにはいかないし、豚骨スープはおあずけだな。麺をまだ見てないし、作り方もわからないからラーメンが食べられないのが残念だ。ユウカの言っていた料理人の人なら見たことあるかな?
頭の上と肩の上でうなだれるチビッ子2体を帰還させ、奥のダンジョンコアのある部屋からダンジョンの外に出た。そして、先にみんなが帰っているはずの館に戻った。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 LvMAX(99)
狙撃主 LvMAX(70)
獣人 LvMAX(20)
狂人 LvMAX(50)
魔術師 LvMAX(60)
聖???の勇者Lv15/??
薬剤師 Lv57/60
ローグ Lv42/70
重戦士 Lv44/70
剣闘士 Lv41/60
神官 Lv28/50
龍人 Lv4/20
精霊使いLv7/40
舞闘家 Lv12/70
大鬼人 Lv4/40
死龍人 Lv1/20
魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90
上級獣人Lv3/30
魔導士 Lv1/90 』
ボス戦後でした!
以前感想で言われましたが、ヒメ以外もきちんと従魔の登録をしてあります。
普段ほとんど書かないで飛ばしている日常パート的なところで登録してあります。1回書けばいいかなーとか思ってました。すいません。
ヒメ→右前足
コルク→右手首
ゼルセ→右腕
カルア→右足
みぃちゃん→首
黄龍→腰
アンナ→首
についています。
ではまた次回




