ギルドでの出来事です
私は今ある使命を胸に町へ向けて走っていた。その使命とはずばり、メイとイチャイチャすること! ……ではなくギルドにキャタピラーのことを伝えて戻ること。イチャイチャがメインでも全然構わないんだけどね!
ただそうも言っていられないのが現在の状況。あの場に集まってきたのが見えただけでもざっと100は軽く超えていた。まだまだ止まる気配は無さそうだったし200じゃすまないと思う。メイならなんなく乗り越えると思うけど、なにかおかしい。
そもそも、餌を求めてオークの通った跡を来たというのは改めて考えると無理があった。もともと森の奥ならば餌はたくさんあるはずだ。それなのにわざわざ自分たちより確実に強いオークたちが通った跡を行く理由がない。いった先でオークに出会ったら間違いなく殺される。それでも森の手前まで来たのは理由があったはず。少なくとも私はそう考える。
そしてようやく町にたどり着いた私の慌てようをみて衛兵さんが何事かとかけてきた。
「どうした!?」
「はぁ……はぁ……森の入り口に、大量のキャタピラーが…」
「キャタピラー? それくらいならそれほど慌てる必要も」
「数がおかしいのよ! 私が確認しただけで100オーバー! まだまだ途切れることなく奥から出てきてるの! あのペースなら200、いや300までいく可能性がある」
「300だと!? そんな数がきたらキャタピラーといえど恐ろしい敵になるぞ」
「今メイが1人で迎え撃ってる。今すぐギルドに伝えて冒険者をよこして。私は今からメイのとこに戻るから。できるだけ早くお願い。メイは対多数でも後れをとるとは思えないけど万が一があったら私は自分を許せない」
私は衛兵に伝えるだけ伝えるとすぐに踵を返してメイのもとへと走り出した。
私がはじめてのダンジョンに挑んでから早くも2ヶ月が経過していた。その間、彼の噂はなにもない。
そんな中、私はとある町で冒険者になった。ダンジョンから程近い町だった。そこで私はギルドに登録していろんな依頼をこなしていった。討伐に収集に迷子探し。そして気づけばランクC-になっていた。効率よく依頼をこなしていたからだろう。そしていまさっきまで私が受けていた依頼が『行商の護衛』だ。そろそろ拠点を移して情報集めもしないといけないと思っていたところに見つけたちょうどいい依頼だった。ランクD以上が条件だったから問題なく受けられ、町から町への片道の護衛。場合によってはその町から戻るときの護衛も別途依頼するとのことだったが帰りは他の冒険者に任せようと思う。
今のところあの町に用があるとすればダンジョン攻略だけだが、もう少し力をつけてからにしたい。べ、別にダンジョンがトラウマになってるわけじゃないからね? はじめてのダンジョンがスライムのダンジョンで、たまたま倒したスライムが目がついてるタイプのスライムで、攻撃で破裂したスライムの破片が顔に張り付いて、剥がしたときにちょうど目があったとかそんなのないから! ほんとだから!!
と、それより依頼を終えてギルドに報告に来ていた私は『クロウ』とかいうパーティに絡まれようとしていたが、それは飛び込んできた衛兵によって遮られた。そいつらは衛兵をみて慌てて逃げるように離れたけど、私はなにかヤバイ予感がした。普通、衛兵が見回りでギルドに飛び込むなんてあり得ない。だからこそ報告を終えて次の依頼を探すかとか考えていた頭をすぐさま切り替えた。
「た、大変だ。キャタピラーの大群が森の入り口に集まってきている!」
キャタピラー? それってランクE-のモンスターだよね? それが大群って30とか40とか?それくらいならランクDもあれば平気だと思うけど……。
「はっはっは、衛兵はキャタピラーなんかに怯えてんのか! そんなのこのパーティランクCのパーティのリーダー、ガル様にかかれば瞬殺だぜ!」
「いやいや俺でもできるぜ。グル、お前も楽勝だよな?」
「げははは、所詮キャタピラーだろ? 20や30くらいいても俺の火魔法の餌食だな」
さっきのやつらだ。衛兵が弱いと考えてすごい勢いづいてる。あいつランクCなんだ。装備がなんか良さそうなものをつけてるから大手ギルドの一員かな?
「20や30どころじゃない! 確認できただけでも100超、推定200か300はいくくらいだ」
「「「は?」」」
200って、弱いモンスターでもそれだけ集まったら体力も魔力ももたないし小さな町ならあっという間に破壊し尽くされる。ここはそれなりに大きいけど被害は甚大だと思う。だから衛兵が飛び込んできたのね。
「それだけじゃない! 今2人組の冒険者の片方が足止めをしている。もう一人も既に救援に向かった。彼らが危ないんだ! 出れる冒険者はすぐに対処に当たってくれ!」
場に沈黙が訪れる。そりゃ300のモンスターを1人、あるいは2人で足止めしてて、それの救援なんて普通できない。普通なら2人を切り捨てて町でその脅威に備えるのが当たり前だといえる。しかし、今回に限って言えば2人を切り捨てる必要性はかなり薄い。この場にはランクD以上の冒険者が自分を含めて4人もいる。それならば自分たちが出て迎え撃てばいい。撃ち漏らしたものは街に残る冒険者が対処して自分たちは本隊をたたく。それが最適なはずだ。
「私とそこのパーティで救援に行くわ。いいわね」
「あ、あぁん! てめえ何しきってやがる! 俺様はランクCの――」
「そんなに自信があるならこんなところで言い争ってないでさっさと行くわよ。時は一刻を争うの。せっかく命を張って頑張ってくれてる冒険者たちを見殺しにする気?」
「ま、まて、俺たちはまだ準備ができてないから」
「ならさっさとしなさい。後どれだけ待てばできるの? 30秒? 1分?」
「そんなに早くできるわけないだろ! 最低でも30分は」
「そんなに準備に時間はいらないでしょ。あなたたち3人とも防具もつけてるし武器も持ってる。回復薬は私のをあげるから問題ないわ。あとなにがあるの?」
「えっと……そうだ、そうだ! 情報がまったくな――」
「キャタピラーの大群が森の入り口にいる。必死に2人の冒険者が足止め中。敵の種類と現在いる位置。そして味方の情報。これ以上に情報がいる?」
「あとは……俺たちこれから依頼を受けないと」
「あなたたちが持ってるのは討伐依頼でしょ? しかもキャタピラーの。問題ないじゃない。というかランクCでなんでそんなの受けてるのよ……」
「う、うるさい! あとは……あとは……」
ここまで言ってもまだ動こうとしない3人組を見ててだんだんと腹が立ってきた。今も同じ冒険者が命がけでモンスターの侵略を食い止めているのにこの場での最高ランクで、なおかつ対処できる可能性のある私たちが動かないでどうするって言うのよ!
「もういいわ。あなたたちみたいな腰抜けの臆病者に頼ろうとした私がバカだった。悪いけど私一人で行くわ。念のため他の冒険者の人で街の入り口の警護をお願いするわ。撃ち漏らしとか別働隊がいないとも限らない。そちらの対処をお願い。衛兵さんは2人を救出できた場合即座に回復する必要があると思うから回復の専門家を用意してもらえる? 私も一応回復魔法は使えるけど本職に任せた方がいい可能性もあるし。じゃあ頼んだわよ!」
私は返答もまたずに門へと駆け出していった。森の入り口に近い門の場所はわかってるから私は『スピードエンチャント』をかけて全速力で森に急いだ。そこにいる冒険者の2人がまだ生きていることを祈って。
そして森にたどり着き、戦闘を続ける男女の冒険者を見た時、私はようやく目的の人物に巡り合えた。
「鳴……」
「真那!?」
感動の再会は周りがキャタピラーの緑色の体液で一色に染まった森の中だった。
どうもコクトーです
今回はほぼメイでなかったのでとくになにもありません
今日もう1話投稿します
ではまた次回




