善の洞穴ボスです1
『善の洞穴』50層のボス部屋は、これまでの広間とあまり変わらないようなドーム型とも言える空間だ。特に何もない空間だからこそ、その真ん中にぽつんと置かれた小さな墓石が存在感を放っていた。
俺たちが中に入り、扉がしまりきると、墓石の周辺から紫色の靄のような煙が上がり、それは次第に1つの塊になりつつあった。
事前に決めた作戦通りに、キャラビーは壁際でクエイクの魔導書を使った詠唱を始め、マナもいつでも魔法を放てるように杖の先に魔力をこめ始めた。俺とヒツギもすぐに動けるように構える。
散々悩んだものの、今俺が持っているのはステュラだけだ。スケルトン系はヒツギに任せてしまうことになるが、リッチの攻撃を防ぐのにはやはり使い慣れたこれのほうがいいだろうとの判断だ。
若干1匹ほど、みぃちゃんの背中に乗って楽をしようとしていたちびっこがいたが、無事振り落とされてキャラビーの足元に陣取っていた。魔法への対処法がないキャラビーの護衛にしたわけだが、これからの展開次第ではお仕置きだな。
「カカカカカカカカ」
煙が収まり、墓石から2mほど上にボロボロになったコートを羽織った骸骨が姿を表した。右手の指にはいくつかの指輪をしており、左手には木製の杖が握られていた。マナの杖とは違って先端に水晶はなく、完全に木のみで作られていた。
「エルダーリッチの方だ! 警戒しろ!」
俺は即座に『鑑定』で調べて叫んだ。エルダーリッチはリッチと比べて魔法への抵抗力も高いし、魔法の威力も高い。咄嗟の判断をするときにその違いはかなり大きいだろう。
「『カカ、カカカカカカ、カカカ、カ』」
エルダーリッチが耳障りな高音で詠唱を始めた。発声器官もないのにどこから音を出しているんだろうか。
エルダーリッチの周囲に俺たちとそう変わらないサイズの氷のつららが浮かぶ。それも1本2本ではなく、10本、もしかすると20本近くあるかもしれない。
「カカカカ、カカ!」
エルダーリッチが杖を振り下ろすのに合わせてつららが発射された。同時には操れないのか、1本ずつではあったが連続で放たれるつららは、正確に俺たちを狙っていた。
「ヘルエルフレイム」
しかし、俺の後方から放たれたマナの魔法が向かってくるつららを呑み込んだ。
「カカ!?」
発射されたつららをことごとく飲み込む炎の塊がエルダーリッチに迫り、焦ったように一部のつららをぶつけて相殺しようとするも、マナの炎の威力に勝てずにエルダーリッチをも呑み込んだ。その影響で発した煙で直接見えないが、発射前で空中に残っていた3本のつららが崩れるのを見て、一瞬、やったか? と思ったが、案の定倒し切れておらず、ボロかったマントがさらにボロボロになった姿のエルダーリッチが煙から飛び出した。
「カカカ、カ」
さすがボスと言うべきか、攻撃を受けながらも次の詠唱をしていたらしく、弾かれるように煙から飛び出したエルダーリッチの杖の先から紫色の光線が地面に向けて7本放たれ、そこからアンデッドが湧いて出た。
「右からゾンビ3体スケルトン1体、左からスケルトン2体、上からゴースト1体です!」
ようやく発動したらしいクエイクの壁の上からキャラビーの声が響く。右が少し多いらしいし、ちょうど今いる位置も右側だから先にそっちから片付けるべきかな。
「カカ? カカカカ」
エルダーリッチの指示でキャラビーにゴーストが向かって行った。
「黄龍!」
「わかったのだ!」
俺がゾンビやスケルトンたちの頭めがけて『ニードル』を放つのと同時に黄龍がゴーストに向けてサンダーブレスを放った。煙で見えにくかったこともあり、『ニードル』は反対側のスケルトン1体に避けられてしまったが、残りはすべて頭を貫いた。ゴーストも一直線に放たれたサンダーブレスで霧散しており、召喚したアンデッドたちがあまりにすぐに倒されたことに驚いたのか、マナに向けて杖を構えていたエルダーリッチは詠唱を止めてしまっていた。
「エルダーリッチ、こっちだ!」
「カカ?」
『ヘイト』を使ってエルダーリッチに呼びかけると、うまく効いてくれたらしく、再度詠唱を始めながら杖の先をこちらに向けた。しかし、その魔法を放つ前に時間稼ぎをかねて使った『アイスロック』で動きを止めた。すぐに砕かれてしまい、魔法の詠唱もすぐに再開してしまったから稼げた時間はせいぜい5秒くらいだろうか。
「短いけど、これでも十分か?」
「なんとかね。ヘルエルフレイム!」
その稼いだ5秒のおかげでマナの魔法が間に合った。マナの杖の先から先ほどと同じ炎が飛び出し、エルダーリッチに向かっていく。
「『カカ、カカカ』カッカ!」
エルダーリッチはすぐにダークシールドで防ごうとするも、数十枚と重ねて使っているわけでもなく、ただただ1枚のダークシールドでは、上位属性の魔法であるマナの獄炎魔法を止めるほどの力はなく、あっけなくエルダーリッチはダークシールドごと燃やし尽くされた。熱さで苦しそうに暴れる姿がなんだか儚いな。
俺の『ニードル』をかわしたあと、まっすぐヒツギに向かっていたスケルトンもあっさりと棺桶の餌食になり、残っていた死体が消え、墓石の前に宝箱が現れた。それと同じようなタイミングでクエイクで作った壁が下がり始め、バランスを崩さないようにキャラビーと黄龍はすばやくみぃちゃんに乗ってこちらにやってきた。
近くまで来たところでふわふわと俺の頭の上めがけて飛んできた黄龍をキャッチし、片手で胸に抱いて宝箱の方に向かった。マナとヒツギもハイタッチしながらこちらに来ており、壁が完全になくなるころ、キャラビーもみぃちゃんから降りて全員無事集合した。
「お疲れ様。マナの魔法はやっぱりさすがの威力だね」
「獄炎魔法はかなり使うのが難しいから、これくらいの威力がないと。たぶんもっと使いこなせてれば2発も必要なくなるんじゃないかな?」
「まだ威力が上がるのかよ」
「杖の先の水晶をいいものに変えたり、マジックエンチャントで強化したり、まだまだやれることはあるよ」
「俺の『アイスロック』は5秒も持たないのにな」
「相性の関係もあるからね。まぁ、こうした反省会は帰ってからにして、今はこの宝箱の中身を見よ!」
「罠は仕掛けてなさそうです。開けますか?」
「ここは功労者に開けてもらおうかな」
「はいはい。じゃあ開けるよ」
マナが開けた宝箱の中には杖が入っていた。『鑑定』で調べたら知樹の杖と表示された。『貴の山』の時のことを思えば大当たりではあるんだが、マナが今使っている杖の方がいい物だということもあり、これもギルドへ売却する物に追加することにした。ヒツギ曰く、知樹の杖は昔からあり、トレントの木材を使って作られた杖に、薄くしたエルダートレントの木材を巻き付けて作られた杖なんだそうだ。エルダートレントの木材だけで作られた賢樹の杖という杖もあるらしいな。エルダートレント自体はランクBーで、どこかのダンジョンの最下層近くで群生していたらしい。
来た時に誰かが挑んでいたこともあり、一度俺もボス部屋から出て、カードを回収して外への転移陣を有効化してから、俺だけがまた50層のボス部屋前に転移して戻った。みぃちゃんはキャラビーが毛づくろいしてくれるそうだから戻したが、黄龍は俺と一緒にもう1回だ。
例のごとく従魔たちと共に挑む予定だが、場合によっては俺だけで挑むことも考えていた。なぜなら、そろそろレベルが上がってほしいからだ。ここのところ、まったくと言っていいほどレベルが上がっていない。前のようにめちゃくちゃ苦戦した上で倒したなんてことは減っているが、ここまで上がらないというのは個人的に焦りを生んでいた。黄龍やヒメを筆頭に、従魔たちはどんどん強くなるから、スキルしか上がっていない俺はいつか抜かれるんじゃないかと思うこともあるのだ。もしも従魔たちが一斉に反旗を翻したとしたら止める自信がないしな。
そんなことを考えながらボス部屋の前に転移すると、今度も誰かが挑んでいるらしく、扉は閉まり切っていた。
順番を待つ間、俺は黄龍で遊んでいた。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 LvMAX(99)
狙撃主 LvMAX(70)
獣人 LvMAX(20)
狂人 LvMAX(50)
魔術師 LvMAX(60)
聖???の勇者Lv15/??
薬剤師 Lv51/60
ローグ Lv31/70
重戦士 Lv39/70
剣闘士 Lv30/60
神官 Lv19/50
龍人 Lv2/20
精霊使いLv4/40
舞闘家 Lv4/70
大鬼人 Lv2/40
死龍人 Lv1/20
魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90
上級獣人Lv1/30
魔導士 Lv1/90 』
ボス戦でした!
結果が出るよりも一次審査申し込みが終わる方が早いから勉強が終われない…
ではまた次回




