善の洞穴です6
『善の洞穴』の25層以降の攻略を始めて9日。俺たちは44層の安息所にいた。
30層の安息所で休んでから、俺たちは約3日で5層というゆっくりとしたペースで進んできた。
これまで、戦闘という面で見れば苦戦したところは特になかった。35層を超えたあたりから出現してきたゾンビリーダーなどのゾンビの上位にあたるモンスターたちも、ただのゾンビと同じように倒せたし、1体だけ通路で交戦したゾンビオウルも、気配がなく、臭いもなかったからいきなりの奇襲でびっくりはしたけど強くはなかった。
一方で、戦闘が順調になってくるにつれて増えていった素材によってキャラビーの魔法袋がいっぱいになってしまった。素材の種類によってはまだ入る物もあるが、いちいち確認するのも面倒なのでそこからは俺のアイテムボックスにしまっていた。後で館で整理するのが大変そうだ。
これから先はさらに警戒が必要になってくる。ここから先はこれまでのゾンビ、スケルトンに加えてゴースト系のモンスターが出現する。ゾンビオウルと同じように気配も臭いもなく、さらに実体を持たないから、安息所を除けば通路も広間も壁なんてあってないようなものだ。突然壁の向こうから現れて後ろから襲われるなんてこともよくあるらしい。実体がないから、魔法攻撃しかしてこないということもあり、魔法を感知できれば攻撃される前に気が付けるそうだから、ここからはマナ頼みになるな。俺もヒツギもキャラビーも魔力の感知なんかできないし。
ダンジョン内で10日目を迎え、情報の共有を終えると、すぐに45層に向かって出発した。
45層についてすぐに転移陣を有効化したが、その時に数日ぶりに他の冒険者を見かけた。彼らは俺たちが有効化してすぐにたまたま転移してきたパーティだった。『赤の団』の特徴的なマークがついていたから少し警戒していたが、お互いに目礼しただけで特に何もなかった。彼らが見えなくなってからマナから露骨に見すぎだと怒られたけど、これまで『赤の団』と会うたびに何かあったからしょうがないじゃんか。
俺たちが初めてゴーストに出くわしたのは45層に入って2つ目の広間のゾンビたちを殲滅した直後だった。
「上!」
予め決めてあった順番の関係で、俺が『アクア』でうまく触らないようにゾンビリーダーの表面の腐った肉をはがして、ゾンビの上位種にある程度の確率で形成される腐核と呼ばれる球体を取り出していると、近くでスケルトン系などから骨を回収していたマナが突然声を張り上げた。
俺はすぐに声の通りに上を向くと、5体ほどのガスの集まりみたいなモンスターが音もたてずに口を動かして魔法の詠唱をしていた。『鑑定』によるとただのゴーストが4体にブリーズゴーストが1体。ブリーズゴーストは名前からして風属性に特化した上位種だろう。
今にも発射されようとしている魔法ごと潰すため、俺は瞬時に『竜化』して広範囲に『サンダーブレス』を放った。きっちりと全員を巻き込むように放った雷がブリーズゴーストから放たれた魔法ごとゴーストたちを貫く。直撃したゴーストたちは霧散し、そのまま雷が天井に当たったことで起こった石煙に紛れていった。
「急にやったからちょっとびっくりしたけど、仕留め損なったのはいなさそうだよ。もう魔力は感じられないから」
「『鑑定』で上位種がいるのが見えたから、言ってからだと間に合わないと思ったんだ。しかしまぁ、壁だけじゃなくて天井もすり抜けるんだな」
「よくわかんないんだけど、この上って44層じゃないの? 『善の洞穴』は階層移動が下り階段だし」
「ダンジョンは時空が歪んでいて、実際の位置関係は関係ないそうですので一概にそうは言えないと思います」
「上が44層だったら今ごろ天井が崩れてるんじゃない?」
「恐ろしいことを言うんじゃねえよ」
「それにしても、ゴーストって先制するにはかなりぎりぎりみたいだね。メイが言ってた上位種の個体だと思うけど、ブレスが間に合ってなかったよね?」
「ああ。ブリーズゴーストって名前だったから、風魔法だったと思うけど、マナは見えたか?」
「私の位置からだとメイのブレスに隠れて見えなかったんだよね」
「そうか。でも、上位種がいたらあれくらいすぐに倒さないと攻撃を受けるってことだよな」
「種類にもよるだろうけど、その可能性は十分あるね。もっと早く気がつければいいんだけど……」
「つっても俺たちは魔力の感知なんかできないからな」
「私の棺桶にも今のところそういった能力はないからね。強化できる項目にもないし」
「こうなったら……ヒメ、黄龍」
俺はダメもとで2体を呼び出した。お肉大好きちびっこ2体ではあるが、他の従魔と比べてみても、なんだかんだとあらゆる面で突出した力を持っている2体であるし、もしかしたら気配のない相手への対策も持っているかもしれないと考えた結果だ。
「ちちさまー、ここなんかくさいよー」
「かうかうかーうー」
出てきてすぐに両手で鼻を覆いながら不満を垂れる2体だが、俺がしゃがみこんで真剣な表情をしているのを見せると、不満そうな顔を若干緩ませた。
「実は、ゴースト系のモンスターの対処に困っていてな。俺たちだとやつらが魔法を使うまでわからないからかなりぎりぎりなんだ。お前ら気配のないモンスターの探知とかできないか?」
「かうかうー?」
「あーいうやつ?」
俺の言葉にヒメと黄龍は同時にこれから向かおうとしている通路に近い壁を指差した。俺たちはつられてそちらを見るが、特に何かがいるようには見えない。
「もしかして、あの壁の向こうにいるのか?」
「うん! こっちきてるよー」
黄龍の言葉に半信半疑になりながらも警戒の体制をとると、すぐに壁の向こうからすーっとゴーストが1体姿を現した。しかし、俺のスキルやマナの魔法よりも早くヒメがファングショットで倒してしまった。2体の様子からも追加はなさそうだ。
「ありがとな。それにしても、お前ら気配も臭いもないのにどうやって探知しているんだ?」
「かうかうかう」
「んー、……よくわかんない! われはなんとなくそこにいるのがわかるってかんじだぞ!」
「ヒメも同じか?」
「かう」
ヒメも同じようで、俺の質問にうなずいた。何らかのスキルだったらよかったんだけどな。
「そうか。なら悪いんだが、ここから交代で俺たちとダンジョン攻略な」
「お肉は?」
「ダンジョンにいる間はいつもよりも多めにやろう」
「かうかうかう?」
「何を言いたいのかなんとなくわかった。そうだな……ヒメが頑張った日は野菜少なめにしてやる」
「かーうー!」
ヒメの言いたかったことはあっていたようで、4本の足でしっかり地面を蹴って顔にとびついてきた。器用に顔にしがみつき、モフモフでフニフニなほっぺをこすりつけてくる。
「あくまでも少なくするだけだからな! ちょっとは食べろよ」
「かう!」
そうして、そこから先、俺たちはヒメと黄龍にゴースト系、スピリット系の対処を任せながらダンジョンの攻略を進めた。壁を越えてくる前に気づく2体のおかげで、不意打ちで魔法を受けるようなことはなく、安定して倒すことができていた。残念ながらそいつらから回収できるものはなかったが、48層を進んでいる時に宝箱からキャラビーに渡しているものと同じ要領の魔法袋が出てくれたから今回の収支的には大幅なプラスだろう。
そして45層到着から2日後、俺たちは50層に到達した。
どうもコクトーです。
『刈谷鳴』
職業
『ビギナーLvMAX(10)
格闘家 LvMAX(50)
狙撃手 LvMAX(50)
盗賊 LvMAX(50)
剣士 LvMAX(50)
戦士 LvMAX(50)
魔法使いLvMAX(50)
鬼人 LvMAX(20)
武闘家 LvMAX(60)
冒険者 LvMAX(99)
狙撃主 LvMAX(70)
獣人 LvMAX(20)
狂人 LvMAX(50)
魔術師 LvMAX(60)
聖???の勇者Lv15/??
薬剤師 Lv51/60
ローグ Lv31/70
重戦士 Lv39/70
剣闘士 Lv30/60
神官 Lv19/50
龍人 Lv2/20
精霊使いLv4/40
舞闘家 Lv4/70
大鬼人 Lv2/40
死龍人 Lv1/20
魔人 Lv1/20
探究者 Lv1/99
狙撃王 Lv1/90
上級獣人Lv1/30
魔導士 Lv1/90 』
更新遅れてすいません。
個人的な事情で次の更新も遅くなるかもしれません。休憩、もしくは現実逃避中にちょこちょこ書く予定ですが、下手すると来月になるかも。
改稿を超スローペースで進めてますが矛盾点やおかしいところがたくさん…。
いくつかご指摘いただいた方もいらっしゃって、ほんとにありがとうございます。
ではまた次回
 




